東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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目指せ! 兎天国!

「うぅ…まさかここまで馬鹿にされるとわぁ」

「えっと、元気出してください」

「似たもの同士、傷のなめ合いとかかしら?」

「お嬢様!」

「まぁ、フィルのからかいやすいからな、似たもの同士だぜ」

「私がこの人と似たもの同士って! 私、ここまで強くないです!」

「え? あっと」

「まぁ、片手で持ち上げられてたからね」

「力はちょっとあるみたいで」

 

あまり自覚は無いけど、私はそこそこ力があるみたい。

でも、お嬢様の方が強い気がするんだけど…

 

「まぁ、このコマ犬の事はどうでも良いとしてよ」

「良くないですよ!」

「フィル、色々あって忘れてるかも知れないけど

 あなたが本来ここに来た目的…覚えてる?」

「え? ……あ!」

 

そうだった! 兎天国を満喫するんだった!

 

「忘れてました! 兎天国ですね!」

「え? あ、いや、そっちじゃ無く」

「行きまーす!」

「待ちなさいよフィル! 日傘持ちなさいって!」

「私達が灰になるよ!」

「……まぁ良いか」

「良くねぇだろ、あいつ、ボール3つ持ってるんだぞ?

 めっちゃ狙われるだろ、あれ」

「狙われるの?」

「7つボールを集めたら願いが叶うんだぜ? そのボールを3つ

 あいつさえ倒せば3つも手に入るんだ、噂を知ってる奴なら追うぜ」

「…まぁ、大丈夫でしょ」

「何の根拠があってだい?」

「あの子相手にそんじょそこらの妖怪じゃ傷1つ付けられない

 聖人でも魔法使いでも、あの子には勝てないわ」

「あんなひ弱な妖怪を過大評価しすぎだね」

「まぁ、あいつの回避能力はえげつないからな」

「…そうね」

「……霊夢、その話し、詳しく聞かせて頂戴」

「……仙人まで出てくるなんてね、言っておくけど、あなたでも勝てないわよ」

「じゃあどうすれば勝てるか、教えて頂戴…あのボールは危険よ

 何も知らない妖怪が3つも持っていて良い物じゃないわ」

「…勝つ方法ね、不意打ちくらいしか無いと思うわ

 まぁ、あの子は勘も鋭いし難しいかもだけど

 さて、それじゃあこっちも質問良いかしら」

「何?」

「あなたはあのボールの事…何処まで知ってるの?」

「……そうね」

 

 

 

兎天国! もふもふもふもふ! 兎天国!

 

「フィル! テンション上げすぎよ!」

「だって兎ですよ兎! 可愛いんですよ!?」

「実物の兎って、私も見たこと無いし興味ある!」

「いや、兎と言っても、付け耳兎しか私には記憶に無いけど」

「うーさぎうさぎ、何見て跳ねる~」

「どんだけ兎が好きなのよ、まぁ、良いけど」

 

ここが竹林! 竹ばっかりだからすぐに分かった!

私は一切の迷いも無くその竹林の中に入ったけど…兎が居ない!

 

「う、兎が居ません…」

「何処にいるのかしら、霊夢が嘘を吐いているとは思えないけど」

「もう帰ろうよ、暗くなってきたし」

「うぅ…兎天国…」

「まぁ、後日ね」

 

しかし、帰ろうとしたけど…全然出口が見えてこない。

 

「…出口、何処でしょう…同じ景色しか見えない…」

「あぁ、何か思い出してきたわ、竹林ってあそこか」

「知ってるんですか?」

「えぇ、確かに兎は居たわね、確か月の賢者とか言う奴が居る場所があるわ

 そこに兎がわんさか居た記憶があるわね」

「兎本当にいるんですか!? じゃあ、その失礼ですが案内を!」

「いや、それがここ迷いの竹林って言われてて、1度はいるとまず間違いなく迷うわ」

「え!?」

「あの時は空を飛んだけど…それでも迷ったくらいだし

 歩いて探すとなると絶望的だと思うわ」

「じゃあ、出口に向うしか…」

「そこもまた絶望的なのよね…」

「そうなんですか!?」

「うぅ、兎に会いたいし家にも帰りたい…あぅ…まぁ、これはこれで面白いけどね」

「そうね、ただ…フィル」

「はい、何でしょう」

「お腹が空いたわ」

 

あぁ、そう言えばお昼にこの竹林に入って、ずっと兎を探していたから…

今は夜、お嬢様もお腹が空いてくる時間だ。

そう言えば、私もお腹が空いてきたような気がする。

 

「そうですね、ご飯を…」

「……用意できるの?」

「あ!」

 

そうだ! ど、道具も無いし材料もない! ここから出ようとしても

出ることは出来ない! どうしよう…あ! そうだ!

ここに人がいるというなら、私の力を使えばきっと!

 

「わ、分かりました! 今すぐ出口を!」

「それよりもお腹が空いてるのよ」

「いや、ご飯を食べるために出口を」

「……私もお腹が空いてるの」

「ですから、出口を見付けて」

「そんな暇は無いわ、お腹が空いたわ」

「……あの、私の首元を見て…どうし」

「青ざめたって事は理解してるわよね?」

「い、いえ! お待ちくださいお嬢様!」

「フィールー」

「ひえ! フランお嬢様も落ち着いてください!

 無理です! お2人に血を吸われたら私!」

「こんな事態になったのはあなたが原因よ? 責任を取りなさい」

「いや、でも…」

 

ど、ど、どうしよう…無理だ! 死ぬ!

 

「無理で」

「逃げるの? ここで別行動なんてしたらまず間違いなく迷うわよ?」

「うぅ…」

「多分、別行動なんてしたら再開するのは困難よ?」

「……う、うぐぅ」

「だから、逃げちゃ駄目よ?」

「あ、あはは、えっと、あの…八重歯が恐いです」

「フィルも八重歯見えてるじゃん、私はフィルの八重歯可愛いと思うけど」

「……いえ、それは嬉しいんですけど…いや、不敵な笑みを浮かべないでください

 無理ですよ!? 死にますよ!? 私、血を吸われたら死んで!」

「前は大丈夫だったし、今回も大丈夫でしょ」

「いや、ま! あ! お、押し倒さない、うわぁああ!」

 

あぁ、ゆっくりと力が抜けていく…ど、同時にはぁ…

あ、意識が…もう駄目だ…死んでしまう…うぅ。

 

 

「ふぅ、やっぱり恐ろしく美味しいわね、フィルの血」

「うん…でもお姉様、フィル、死んだんじゃ無いの?」

「いや、大丈夫でしょ、血色は悪いけど首の噛み跡はもう完治してるし」

「あ、本当だ、やっぱり凄い回復能力だね、私達でもここまで早くないよ」

「まぁ、目を離した一瞬で癒えるし、私達以上は間違いないわね」

「でも、フィルはお腹減ってるんだよね? 大丈夫かな?」

「…一応、食事を用意してあげましょうか」

「あ、フィルを背負っていくんだね」

「放置して移動したら見失うしね、後、大事な非常食だし」

「お姉様、それは酷いよ」

「冗談よ、大事なペット…いや、大事な家族だからね」

「ふふ、お姉様も素直じゃないよね」

「飽きない奴ってのは大事なのよ、ほら、行くわよ」

「はーい!」


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