東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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2日目からいきなりお仕事

紅魔館に大きな穴が開いた時、私は紅魔館の外を見ることになった。

紅魔館は湖に覆われている、私は霧の中を進んでいたから分からなかったけど

あの場所に道があったんだ、気が付かない間にあんな場所を通ってたんだ。

それにしても、霧に軽く遮られながらも届いてくる日の光

輝き方が1分1秒と常に変化している、凄く幻想的だよ。

まるで雲の中にいるみたいな感じ、凄いなぁ。

 

「かなり嬉しそうな表情をしているわね、フィル、主の館が壊されたって言うのに」

「へ!? い、いえ! それで嬉しそうな表情をしていたわけじゃ!」

「分かってるわよ、多分あれでしょう? 視線の先からしてみて、日の光を見ていたようね」

「あ、はい、霧のお陰で光り方が何度も変わってるのが綺麗で」

「ふーん、私には忌々しい光りがチラチラしているようにしか見えないわね」

 

忌々しい? そう言えば、吸血鬼って日光に弱いんだったっけ。

確か、何処かで聞いた気がする・・・・あれ? 何処だったっけ?

 

「吸血鬼も大変なんですね、日光に弱いって」

「そうよ・・・・それとフィル、前から少し思ってたのだけど」

「なんでしょうか?」

「あなたって、記憶喪失の割に結構色々と知ってるわね」

「はい、そうなんですよ、どうしてその事を覚えているのかは分からないんですけど」

 

見たことも聞いたことも無い筈なのに、何故か私の頭の中ではそれが何かが理解できる。

理由はさっぱり分からないけど、もしかしたら、私の記憶喪失って一時的な物だったりして

でも、それだとしても記憶は一時的でも消えるはず・・・・じゃあ、どうして私は?

・・・・・・どうして、私は色々と知ってるの?

 

「どうしたの? 随分と悩んでるようね」

「あ、はい・・・・その、どうして私はこんな風に記憶が無いのか考えてて」

 

私の記憶喪失、私が覚えていない物は最初は自分の名前、今は家、出身

どこから来たか、誰から生まれたか、母親の顔、父親の顔

何処でこんな知識を得たのか、どうやってここに来たのか

このマフラーがなんなのか、自分の種族・・・・・・もしかして、私の記憶は

私がそんな事を考えていると、不意に背中から小さな手が私を軽く叩いた。

 

「フィル、無駄に悩んでも意味ないわよ、記憶なんて今すぐ思い出さなくてもいいの

 大事なのは過去じゃ無く未来よ、過去を知るのも良いことだけど、未来を作る方が良いわ

 どうせ私達は長生きしすぎる妖怪、時間はいくらでもある、そんなに焦ることは無いわ」

「あ、はい、そうですね・・・・ありがとうございます、レミリアお嬢様」

 

さっきまで何か私自身の確信に迫りそうになったけど・・・・なんだったかな。

忘れちゃった、まぁ、その内また思い出すよね。

 

「それじゃあ、さっさと部屋に戻るわ、咲夜、フィル、あなたも付いてきなさい」

「あ、はい、分かりました」

「了解しました」

 

私と咲夜さんはレミリアお嬢様の指示通りにレミリアお嬢様の後に付いていった

そして、お嬢様の部屋、そこにはへばっている妖精達が倒れていた。

 

「お嬢様、この妖精達は?」

「魔理沙の攻撃で動揺して私の部屋まで来た妖精よ、なんで従者が主に助けを求めてるのかしらね

 普通は身を挺して守ろうとするでしょうに」

「それで、怒ったお嬢様が全員倒したと?」

「7割は自滅、3割は私が大人しくさせたわ、うるさかったのよ」

 

周りに倒れている妖精達の何人かはおでこに大きなたんこぶをつくって目を回している。

ただ、その内の何人かは頭の頂点が膨らんでいる、多分これはレミリアお嬢様が制した妖精だよね。

じゃあ、このおでこにたんこぶをつくって倒れてるのは・・・・妖精さん達同士でぶつかったから?

 

「なる程、7割はお互いに正面衝突で意識が飛んだのですか」

「そうよ、やっぱり妖精って馬鹿よね、こんな中で走り回るって」

 

確かにいくらレミリアお嬢様の部屋が広くても、こんな人数で走り回ったらそうなるよね。

 

「はぁ、ただでさえ無能なのに、ここまで醜態を晒すとは、すみませんお嬢様

 この失態はメイド長である私の指導不足です」

「構わないわ、それで咲夜、1つ提案があるのよ」

「はい、なんでしょう」

「少しの間、フィルにメイドの仕事をさせようと思ってるのよ」

 

わ、私がメイドの仕事を!? あれ? 出来るのかな、私なんかに出来るのかな!?

 

「あ、あの、わ、私なんかにメイドなんて言う凄いことが出来るでしょうか!?」

「そりゃあ、無能な妖精でも出来るんだし、出来るでしょう

 まぁ、何も咲夜みたいに完璧に働けというわけじゃ無いわ

 ただこの無能な妖精メイドの10人分位は働いてくれたら良いわよ」

「じゅ、10人分ですか!?」

 

それって、凄く大変だよね!? 10人だよ! メイドさん10人分の仕事って絶対無理だよ!

 

「そう、10人よ、あと、そこまで焦らないで良いわ、こいつらの10人分なんて

 部屋1つを掃除できれば簡単に達成できる課題よ」

「ず、随分と簡単に10人分働けますね」

「妖精メイドは無能だからね、一応仕事をすることはあるんだけど、大概散らかしてるし」

 

メイドさんがむしろ部屋を散らかすってどういうことなんだろう。

それって、メイドさんって言うのかな? 集団の悪戯じゃ無いの?

 

「そうですね、最近私の仕事量も増えてきましたし、今日更に仕事が増えました

 そろそろ私1人だと手一杯な気もしてたので、フィルをお貸ししてくれるのはありがたいです」

「さ、咲夜さん! 本気ですか!? 私、何もしたことが無いんですよ!?」

「大丈夫よ、ある程度は私が教えて上げるわ、安心しなさい、少し教わるだけで

 妖精メイド10人分の仕事は出来るだろうから」

「そんな簡単に出来る物ですか!?」

「大丈夫よ、フィルなら出来るわ、そもそも、あなたに拒否権は無いの、ペットは主に絶対服従よ」

「は、はぁ、では、レミリアお嬢様の恩に報いるため、私は頑張ります!」

「そう言う事ね」

 

私がお嬢様に対して決意表明をした途端、私の服がメイド服に替わっていた。

それも、とんでもなくきっつきつの、パンツ見えそう!

 

「はへ!?」

「そこら辺にあった物だけど、ギリギリ入るわね」

「い、いや! 咲夜さん! ギリギリすぎます! これ、パンツが見えそうなんですけど!?」

「そりゃあ、そこら辺に転がってる妖精メイドの服だからよ、妖精は体は小さいわ

 でも、比較的大きい奴から取ったから、まだ大丈夫よ」

 

その言葉を聞いて、少し周りを見渡してみると、1人だけ背が高い様に見える

妖精さんが裸で倒れていた・・・・うつぶせだからまだ良いけど、仰向けだったら危ない。

いや、そもそも! あの妖精さんの身長、私より絶対低い! レミリアお嬢様と同じくらいだよ!?

 

「そう言う意味じゃ無くて! こ、これじゃあ、恥ずかしくって満足に動けません!」

「大丈夫よ、なんの問題も無いわ、ここには女しか居ないわ」

「そうかも知れませんけど! そ、それに動きにくいです!」

 

結構ぴっちぴちだから、動くときは凄く窮屈だよ、この服。

服の横のサイズは結構あってるけど、縦の長さが全然違うせいで凄く引っ張られるし!

 

「そうね、確かにそれは由々しき問題ね・・・・でも、何カ所か破れば動きやすくなりそうよね」

「え? な、何でですか?」

「引っ張られる場所が破れるわけだし、動きやすいでしょう?」

「いや、そんなはず!」

「まぁ、試してみなさい」

「はい」

「で、でも、これはあの妖精さんのメイド服で!」

「大丈夫よ、いくつも支給してるから、はい、やりなさい」

「さ、咲夜さん! ストップ! そのナイフを置いてくださ、ひゃーー!!」

 

結局私の抵抗も虚しく、私が着せられたメイド服は咲夜さんのナイフでびりびりに破られた。

まぁ、確かにピッチリしていたところが切れて、動きやすくなったけど。

・・・・何だか凄く恥ずかしい気分だよ。

 

「まぁ、こんな物ね」

「うぅ、何でこんな目に・・・・」

「あなたが文句を言うからよ、ほら、仕事に取りかかりなさい」

「・・・・はい」

 

はぁ、仕方ない、レミリアお嬢様の命令だからね、こんな服でも頑張らないと。


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