東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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永遠亭

てゐさんは不機嫌なままで私達を案内してくれた。

そして、大きな和風の建物が竹林の中から見えてくる。

さっきまで竹しか無かったのに出て来た建物の周りには竹はあまり生えてない。

 

「ここよ」

「ようやく付いたわね、永遠邸だっけ」

「あってると思うけど、何処か違う気が…まぁ、永遠亭ね」

「同じじゃ無いの」

「同じだと思うけど…」

 

永遠亭って言うんだ、何だか凄く広大な名前だなぁ。

永遠の邸宅って意味? それとも永遠の停止とか?

どっちにしても、何だか凄い名前だ。

 

「てゐ、お客さん? って、げ! あんたはいつぞやの吸血鬼」

 

てゐさんに案内して貰うと、足元に届きそうなほど長い薄紫色の髪で

真っ赤な瞳。

頭にはヨレヨレのうさみみがあって、根元にはボタン見たいな物がある。

服装は制服の様だ、女子高校生が着るようなツーピース制服だ。

兎の耳があるって事はこの人も兎さんなのかな?

でも、耳の付け根にあるボタンって何? もしかして付け耳?

確かにバニーガールとか聞いたことあるけど

そう言うタイプ? じゃあ、この人は人間?

うぅ、分からない…どっちだろう。

 

「あら、覚えててくれたの? 兎さん」

「そりゃ覚えてるわよ…色々と面倒な奴は」

 

め、面倒…お嬢様が面倒って言われた。

でも、お嬢様は一切動揺すること無く平然としている。

 

「で、今日は何の用? 3姉妹でわざわざ来るなんて」

「この子が妹なのは事実だけど、こっちは妹じゃ無いわよ?」

 

姉妹に見えるのかな? それともただの冗談かな。

 

「まぁ、あなた達全員、波長が全然違うし姉妹には見えないけどね」

「失礼ね、フランは私の妹よ、フィルはペットだけど

 あんたとここの姫様みたいな関係ね」

「それは違う気が…まぁ良いわ…でも、どうも異様な波長なのよね、その子」

「え? 私ですか?」

 

波長って言うのがどう言う物なのか分からないんだけど

異様と言われると…何だか嫌だな。

 

「不安定…いや、一定なのだけど、何処か不安定な波長

 妙にランダム性が強いと言うか…」

「えっと…どう言う意味ですか?」

「ねぇ、この子、多動だったりする?」

「いいえ、命令に忠実な子犬よ」

「なんか変な風になったとか」

「知らないわね」

 

うーん、なんなのかな? 私ってやっぱり何処か変なのかな?

 

「…まぁ良いわ、特に害は無さそうだし、でも、永遠亭に入れるには師匠の許可が」

「構わないわよ、私はね」

「師匠!」

 

大きな兎の人と私達が話をしていると、新しい人が姿を見せた。

彼女は後ろから長い銀髪を三つ編みにしていて前髪は真ん中で分けている。

何より特徴的な服装は左右で色の分かれる特殊な配色の服だ。

青と赤から成るツートンカラー。

上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色、変わった色使いだ。

袖はフリルの付いた半袖だった。

頭には、服と同じく色合いのナースさんが被ってるような帽子で前面中央に赤十字マークがある。

色合いだけでも結構変わっているけど、服のあちこちに星座が描かれている。

流石にどんな星座かまでは分からないけど、綺麗だ、まるで宇宙みたい。

でも、スカートの裾には魔理沙さんがもってた道具にも描かれていた模様が描かれている。

服装は星座なのに、裾にはあの模様…何か意味があるのかな、あの模様。

 

「それに、そろそろ日が昇るわ、吸血鬼が屋外で歩き回るには厳しい時間よ」

「そうね…心遣い感謝するわ」

「あなたから感謝されるってのはかなり妙な気分ね、妖怪さん」

「私もあなたに感謝するなんてかなり妙な気分よ、月人さん」

「つ、付き人? え? 付き人なんですか? 誰の?」

「…月に人と書いて月人よ、あなた見た目通りお馬鹿さんなのかしら?」

「うぅ…しょ、初対面の人に馬鹿って言われた…」

「まぁ、実際馬鹿だしね」

「お嬢様も酷いです! それよりも…月に人って居るんですか?

 私は月には兎さんしか居ないと」

「兎も居るけど人も居るわよ、ふふ、良いわ面白い。

 ちょっと位、月についてお話ししてあげましょうか」

「はい! お願いします!」

 

やっぱり兎さんも居るんだ! どんな可愛い子が居るのかな?

 

「兎さん…やっぱり居るんだ! うふふ~」

「あなた、そんなに兎が好きなわけ?」

「はい! もふもふしたいです!」

「……月にいる兎はあなたが思ってる兎じゃ無いと思うわ」

「え? 兎さんは兎さん以外に居るんですか?

 と言うか、今更ですけど月の兎さんとここの兎さんって何か違うんですか?

 あ、いえ、分かりますよ? だって、空気が無いと普通の兎さんは死んじゃいますけど

 月にいる兎さんは元気ですし、こう、何かあるのかなとか、そう言う違いは」

「いや、根本的に違ううさ」

「私も月には行ったことあるけど、地上の兎の様な奴は見てないわね」

「お嬢様お月様に行ったんですか!? どうやって!?」

「パチェが作ったロケットでポーンと」

「どうやってそんな物を作れたんですか!? え!?」

「さぁ、詳しい事はあまり聞いてないわ、あ、原動力は確か

 霊夢が降ろした神様だったかしら、ハッキリとは覚えてないけど」

「霊夢さんそんな事も出来るんですか!?」

「霊夢だしね」

「霊夢だもん、大体何とか出来るよ」

「…や、やっぱり凄いんですね、博麗の巫女さんって」

「まぁ、霊夢でもあいつらには勝てなかったけど。

 とか思ったけど、霊夢あれ絶対本気出してないわ」

「あいつらって誰ですか?」

「私達月人よ」

「月の人達って、そんなに強いんですか!?」

「勿論よ、師匠筆頭に依姫様に豊姫様、サグメ様

 幻想郷の全勢力が月に挑んでも勝てるわけ無いわよ」

「そ、そうなんですか、う、兎さんを沢山もふもふ出来ると思ったんですけど」

「月人は排他的だし、絶対にあなたの事を受入れたりはしないでしょうね」

「う、受入れない…」

 

うぅ、何だろう、受入れないという言葉は…何故か嫌い。

自分でもどうして嫌いなのか分からないけど…

 

「あなたみたいな弱っちい妖怪が挑んでも排除されるだけよ!」

「は、排除…」

 

うぅ…物騒な単語だなぁ、やっぱりこういう言葉も嫌いだよ…

 

「少しだけ波長がぶれたわね、こう言う単語苦手なの?」

「え? あ、はい…多分そうです」

「ふーん」

「何にせよ、ひとまず上がりなさい、日の光が差してきたわよ」

「あ、はい!」

「灰になるかと思ったわ、セーフね」

「日の光って昇る瞬間が結構綺麗なんだね」

「私達は見れないけどね」

 

私達は銀髪の女の人に付いていき、永遠亭に入った。


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