東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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不死の鳥

「さてと、それじゃあ始めようか」

「は、はい」

 

うーん、なんで行く先々で戦いになってるんだろう。

さっきもそうだし、今回も…どうしようかな。

 

「考え事をしてる場合かい?」

「な!」

 

私が考え事をしていると、妹紅さんは私に接近していた。

一言告げたと同時にサマーソルトを仕掛けてくるって事は

最初から私へ攻撃するつもりだったてこと。

やっぱり戦いは避けられない。

 

「く!」

 

私は反射的に反応し必要以上に後ろに下がり、攻撃を回避した。

完全な不意打ちを最初に食らったから、これだけ間合いを取った。

本来なら必要無いくらいの間合い、すぐに反撃に転じることが出来ない程に

大きな間合い…普通ならこの手は愚策だけど、今回だけは運が良かった。

 

「わぁ…」

 

妹紅さんの蹴りに合せて、真っ赤な炎が展開していた。

あの攻撃と同時に炎が出たと考えるのが普通だけど

人間にそんな事が出来るなんて…もしもギリギリで回避していたら

私はあの炎でダメージを受けていたのは間違いない。

痛いのは嫌だし、運が良かった。

 

「見とれてる場合か?」

 

妹紅さんは着地すると同時に地面を蹴り、間合いを詰めてきた。

妹紅さんが蹴った地面は真っ黒に焦げていた。

間合いを詰めるときの蹴りにも炎を纏わせていたって事だ。

 

「熱!」

 

妹紅さんの攻撃を防いだは良いけど、やっぱり熱かった。

拳にも炎を纏わせていたって事だ…なんでこんなに炎が!

 

「へぇ、フィルに攻撃を入れるなんて、結構やるじゃない」

 

うぅ、防いだ腕が火傷しちゃってるよ。

 

「一撃を入れたは良いけど、あまり応えて無さそうだな」

 

私は火傷した腕を軽く撫でたら、少しずつ痛みが取れた。

 

「よし、なんとか」

「…火傷が治ってる? 大した再生能力だな」

「不死のあなたから見てもそう思う?」

「あぁ」

 

ちょっと撫でただけで火傷が治ったんだ。

やっぱり私って妖怪なんだな、人間だったらこんなに早く治らな…

うぅ、ちょっと頭が…うーん、何でだろう。

 

「なんだ? 体調が悪そうだな」

「あ、いえ、大丈夫です」

「そうか、じゃあ、このまま続けるけど?」

「はい、大丈夫です…でも、これからは私も少しだけ積極的に行きますよ」

「そうかい、じゃあ、きな、げ!」

「うりゃ!」

 

私はすぐに地面を蹴って、妹紅さんに接近し攻撃を仕掛ける。

 

「ぐぁ!」

 

妹紅さんは私の一撃を防いだけど、周りの竹を折りながら吹き飛んでいった。

だ、大丈夫かな!? やり過ぎたかな!?

 

「……ど、どうしよう!」

「自分でやって顔を真っ青にするのね

 何だか、八雲の修行から帰ってきてから妙に積極的ね

 前までは攻撃することすらしなかったのに」

「えっと、逃げてるだけじゃ勝てないからで…」

「その通りね、逃げてるだけじゃ勝てないのは間違いないわ。

 だから、この攻撃は何も悪くないし当たり前。

 でも、それなら攻撃を決める度に動揺したら駄目よ。

 これは決闘で遊びなのよ、それにあいつは不死、死にはしないわ」

「あぁ、その通りだよ」

 

妹紅さんが吹き飛び、道が出来た竹の道。

その奥から声が聞こえたと思うと、そこから青い光が見えた。

その青い光はゆっくりと揺らめき、素早く飛び上がった。

 

「わぁ…」

 

飛び上がった光りを見ていると、その光りが鳥の形をしているのに気付いた。

ゆらゆらと青く煌めく火の鳥…その姿はまるでフェニックス!

そのフェニックスは私の前に降り立ち、炎の形が崩れた。

 

「何度でも甦る不死の鳥。甦るたびに強くなる伝説の火の鳥。

 それが私だ」

 

炎の形が崩れ、背中に青い炎を纏った妹紅さんの姿が見えた。

妹紅さんは少しだけ笑みをこぼしている。

 

「さぁ、掛かって来な、本番はこれからだ。

 何度私を殺せるか試してみると良い。

 その度に私は蘇り、不死の炎はお前を包む」

「…その姿、何だか凄く格好いいです、炎を纏った姿。

 だけど…私は狼、相手が鳥なら狩るだけです」

 

何だか気持ちが高鳴る、あの青い炎は本当に格好いい。

 

「フィル、あなた炎を操れるの?」

「え?」

「いやほら、口から少し火が出たから」

「そうなんですか!?」

「…何だか気が抜けるな、まぁ良いか、幻想郷の決闘なんてそんなものか。

 本気で命の取り合いはしない、ただの遊び。

 それでも、いや、だからこそ…何だか燃えてくるね」

「…そうですね、行きますよ!」

「来な!」

 

私はさっきと同じ様に間合いを詰めた。

 

「っと!」

 

だけど妹紅さんは私の攻撃を流したと同時に蹴りを仕掛ける。

 

「く!」

 

私はすぐに体勢をわざと崩して身を転かす。

そのまま地面を少しだけ転がり、再び地を蹴り接近。

 

「甘いね」不死「凱風快晴飛翔脚」

「う!」

 

私が接近すると同時に妹紅さんは私を蹴り上げてきた。

私はその攻撃を防ぐけど、上空に吹っ飛ばされる。。

 

「そら!」

「うぅ!」

 

妹紅さんは既に私よりも上に飛び上がっていて

空中で少し動きが取れない私へ向って叩き付けるような蹴りを仕掛けてくる。

 

「まだ!」

 

だけど、私は近くの竹を蹴り、その場から退避する。

 

「へぇ」

 

妹紅さんはそのまま地面を蹴り、そこから紅い炎が柱のように突きだした。

 

「なる程、竹林が不利だってのは間違いないみたいだな」

「私、負けられませんし、本気で行かせて貰いますよ!」

 

私は竹を蹴り、一気に妹紅さんに接近する。

妹紅さんはその攻撃を避けるけど、すぐに地面を蹴り仕掛ける。

 

「さっきと同じか?」

「いえ、少し違います」束縛「小さな鎖」

「な!」

 

スペルカード宣言と同時に、妹紅さんを鎖が繋いだ。

私はその隙に妹紅さんを爪で攻撃する。

 

「ぐ!」

「まだまだ!」

 

次は竹を足場にして、背後からの攻撃。

私が足場にした竹は根元から折れ、同じ場所は使えない。

だけど、数的には十分ある。

 

「うりゃりゃぁ!」

 

そのまま10本の竹を犠牲にして、妹紅さんを攻撃した。

地上で使えば少し時間が掛かるこの攻撃だけど

この場所ならすぐに次の攻撃、次の攻撃と

連続して攻撃を仕掛けることが出来た。

拘束が解けたとき、妹紅さんは殆ど動けないほどにボロボロだった。

 

「……いやぁ、やっぱり痛いのってのは嫌だね」

「これで!」

「でも、私は死ねないのさ!」*こんな世は燃え尽きてしまえ!*

「え? うわぁああ!」

 

妹紅さんを中心に青い炎が拡大し、私と妹紅さんを包んだ。

炎は私の体を焼き、焦し…凄く痛い。

でも、その中心にいる妹紅さんはきっともっと熱い。

 

「フィル!」

「……はぁ、はぁ、ふぅ、どうだ? 結構応えたろ?」

「……そうですね、でも…私はまだ動けます。

 と言うか、それは…一体…」

「あれを受けても…はぁ、負けた負けた、私の負けだよ」

 

妹紅さんからあの気味の悪いボールが私の元に来た。

 

「やれやれ、ここまで強いとは意外だな」

「…ありがとうございます…だけど、あの技は一体?」

「このボールがあるときに使える都市伝説って奴か?

 確か怪ラストワードだったかな、結構高威力だぞ?」

「そんなのが…どうすれば使えるんですか?」

「石を握れば都市伝説は発動できるかな

 ラストのあれは力を込めれば発動可能だ」

「教えてくれてありがとうございます、今度機会があれば使って見ます」

「使わなくてもお前なら余裕そうだけどな」

 

そんな力が発動できるなんて思わなかった。

でも、良い情報を知れて良かったよ。

それにしても、あの火傷…もう全部治ってるや。

本当に私は人間じゃ無くて妖怪なんだ…ちょっと寂しいかも。

 

「なぁ、フィル」

「はい」

「お前との決闘、楽しかったぞ、またやろう!」

「…はい! 私も楽しかったです! またいつか機会があれば」

「あぁ、楽しみにしてるぞ、フィル」

 

…でもいいや、何だか楽しかったし、難しい事はどうでも良いかな。


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