東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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即席の1日メイド

レミリアお嬢様の指示だし、メイドさんの仕事は頑張ろうと思うんだけど

どうしても自信が無いなぁ、私は本当に能力が低いんだから。

でも、自分の能力なんて正直分からないし、やってみるしか無いのかな。

そうだよね、やる前から不安になって何もしないよりは、とりあえずでも良いからやってみよっと。

その方が気が楽だし、もし失敗してもやっぱ駄目か、で自分の中で完結できるし

もし出来たら、私が出来る事が増えるんだ、挑戦するしか無い!

 

「咲夜さん、どうか私にメイドの技術を教えてください!」

「さっきまであんなに嫌がっていたのに、随分とやる気を出したわね、覚悟が出来たのかしら?」

「はい、私はレミリアお嬢様に受けた恩を返すために頑張ります!」

「よろしい・・・・でも、1つ良いかしら?」

「はい、なんでしょう?」

「あなた、まだ来て2日よね? そこまで尽くすほどの恩は受けていない気がするのだけど?」

 

・・・・そう言えば、私が紅魔館に来て、まだ2日しか経ってないんだった。

何だか初日が色々とありすぎて、そんな感覚は無かったけど。

でも、お嬢様に尽くすだけの恩か・・・・勿論ある!

 

「ありますよ! 昨日沢山美味しいお料理をごちそうになりましたから!

 一生を尽くす理由など、それ位で十分なのです!」

「美味しいご飯を沢山食べた程度で一生を尽くすの?」

「あ、安心してください、それ以上にお嬢様方が素晴らしいから一生を尽くそうと思った方が大きいです

 本当に1日の間だったのですが、分かる位の寛大さ、強い口調の中にある優しさ

 家族思い出で、咲夜さんみたいな優秀な人も使えているそんなお方ですから

 フランお嬢様は純粋で、無邪気で姉思いで優しく可愛いし、私なんかに声を掛けてくれたりと

 記憶が無い私の記憶を探すのも手伝うと言ってくれましたし、焦らないで良いとも言ってくれました

 だから、私はそんなお2人に付いていこうと!」

「分かったわ、あなたがお嬢様達に忠誠を誓ったことは分かった

 だから、そんな早口で色々と言わないで頂戴、聞き取りにくいわ」

「あ、はい、すみません」

 

つい色々と言いたくなって話しちゃった、うぅ、何だか今更だけど恥ずかしい。

でも、1日で私なんかがここまで魅力に気付けるんだし、凄い魅力の持ち主なんだろうなぁ。

きっと、もっと良いところは沢山ある筈、当然悪いところもあるだろうけど

そこも含めても私はお二2人に忠誠を誓おう。

 

「本当にあなたは純粋な馬鹿よね、最初に来たのが紅魔館で良かったわ」

「どういうことですか?」

「ここ以外に行って、利用されるだけ利用されないで良かったって事よ」

「えっと、例えば?」

「そうね、迷ってる間に男に餌付けされて大変なことになったり

 面倒な連中に目を付けられて逃げ回ったり、利用されたり

 まぁ、ろくな事は無いでしょう、あなたみたいなタイプだと」

「・・・・そ、そんな人が居るわけ無いじゃないですか」

「あなたは少し純粋すぎるわ、純粋すぎて本当に怖すぎるほど

 ハッキリ言うけど、普通はあなたみたいなタイプは長生きできないわよ」

 

妖怪だから長生きできそうだと思うけど・・・・でも、殺されちゃうこともあるだろうし

それに、咲夜さんが嘘を言っているようには見えないし・・・・本当に紅魔館に来て良かった。

 

「まぁ、とにかく訓練と行きましょう、まずは掃除ね、基本の手順を教えて上げるわ」

 

そう言って、咲夜さんはテキパキと部屋の掃除を始めた。

その手つきはかなり手慣れていて、私なんかじゃ真似できそうに無いほどだった。

流石は咲夜さんだなぁ、紅魔館のメイド長ってだけあるよ。

 

「まぁ、こんな物ね、床の掃除だけど箒でも出来るわね

 でも、基本はこのブラシでの掃除になるわ、手順としては箒かこの長いブラシで軽く掃除

 後に小さなブラシを使って細かい所の埃を出すことね

 次に机よ、ここは机ふき用の雑巾があるから、それを使って四隅を綺麗にするのよ

 1回だけでは駄目、満足するまでとにかく続けなさい、それは窓掃除も同じ事よ

 ただ、窓掃除では隅を拭き損ねないようにしっかりと角に当てること」

「は、はい!」

「詳しく話すと、もっと長いことになるから言わないわ、とりあえずこれだけやれば良い」

「はい! 分かりました!」

「よし、ならやってみなさい」

「はい!」

 

私は咲夜さんの合図で急いで道具を準備して、言われたとおりに細かく掃除を始めた。

その間に咲夜さんから何かしらのだめ出しを受けることは無かった。

でも、私は掃除をしている間に気が付いたことがある、それは、私の耳の毛と尻尾の毛が落ちてること。

考えてみれば、私は犬の半獣・・・・毛が落ちてしまうのは当然だった!

このままだと、お掃除をしてもお掃除が終わらない・・・・ど、どうしよう。

 

「うぅ、さ、咲夜しゃん・・・・ごめんなさい、私がやったら掃除が終わりません・・・・」

「ど、どうしたのよ! いきなり泣き出して」

「うぅ・・・・だって、私が掃除をしても、すぐに毛が落ちて」

「・・・・あなた、本当に真面目で細かいわね、あのね、時には力を抜きなさいよ

 それに、それは仕方がないことでしょう? 泣いてたら何も始まらないわ」

「うぅ、で、でも・・・・」

「常に完璧にこだわらない事よ、時には妥協も必須、大丈夫よ毛の1本や2本くらい」

「でも、それだとお部屋が汚くなりますし、レミリアお嬢様が怒りますよ」

「お嬢様はそう簡単には怒らないわ、分かってるでしょう?」

 

確かにお嬢様はそう簡単に起ったりするような人じゃ無い

だって、自分の館に穴を開けられても許してたし。

でも、だからこそ妥協はしたくない・・・・だけど、今は仕方ないよね。

 

「うぅ、分かりました・・・・でも、いつかこの弱点を克服します!」

「それで良いわ、それじゃあ、掃除の方は大丈夫そうだから、私は行くわね

 他の部屋の掃除もお願いするわ、それじゃあ、頑張って頂戴ね」

 

そう言い残して咲夜さんは後ろを振り向いて部屋から出ていった。

そして、その後を追いかけて部屋の外を見てみると、何処にも居なくなっていた。

なんだろう、咲夜さんの移動の仕方って凄く格好いいなぁ

とてもクールだし、咲夜さん格好いい、いつか私もあんな風に振る舞いたい!

でも、あんな風に振る舞う前に、まずはお部屋の掃除をしないとね

頼まれたお仕事も出来ないようじゃ、咲夜さんみたいになれない!

 

「よーし! やるぞー!」

 

私は咲夜さんに渡された掃除道具一式を強く握りしめ、気合いを入れるために叫んだ。

よし! とにかく皆様に貢献しないと! 私は私が出来る事を頑張るだけだもんね!


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