東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

80 / 245
外の世界でエンジョイ!

不思議な人に、あの人は親身に私に色々としてくれた。

沢山の服を買ってくれたし、尻尾を隠す方法も考えてくれた。

グレーのTシャツの上に茶色っぽいベストを着る。

これで中のTシャツも見えるし、クールに仕上がると言っていた。

帽子は菫子さんがもっていた帽子を借りた。

下はサルエルパンツという、全体的にブカブカしたズボンを履いた。

これなら尻尾で浮いていても、あまり違和感も無いだろうとの事。

 

「だ、大丈夫ですかね…これ」

「まぁ、あまり目立たないしね」

「はぁ、ありがとうございます」

「それと、私が帰ってくるまでは家で待っててね

 私も蓮子も高校があるからさ」

「高校?」

「そう、学校…って、分かるかな?」

「が、学校…ですか」

「ん? 少し顔色悪いけど」

「あ、いえ、何でもありません」

 

うーん、何だか嫌な記憶が…ハッキリ覚えては居ないけど

あまり考えたくは無い。

 

「えっと、ご飯とかはどうしようか、お父さんもお母さんも居ないしね」

「居ないんですか?」

「まぁ、海外に行ってるし」

「そうなんですか!?」

「そうそう、だからカップ麺ばかり食べてるんだよねぇ」

「か、カップ麺?」

「そうそう、蓮子も私も料理得意じゃなくてね」

「…カップ麺ってなんですか?」

「え? あぁ、カップ麺無いんだ、そっちの世界って」

「はい、そんな物は見たこともありません」

「へぇ、それじゃあ、初体験だね、まぁ待っててよ。

 あ、冷蔵庫の中身とかは自由にして良いからね」

「は、はい」

 

その日、私はずっとこの家で休んでいた。

でも、やることがない…何もやることがないなぁ。

外に出るわけにはいかないし、やることもない。

だから、暇つぶしにこの家を掃除することにした。

色々な所に物が無造作に置かれていたり

洗濯物がそこら辺に落ちてたり…それをひとまず全部片付けた。

台所にも沢山の空になった入れ物が置いてあった。

紅魔館でよく見ていたから、この言葉も分かる。

えっと、カップヌードル…うーん、聞いたことが無い。

 

「うーん」

 

まぁいいや、ひとまずはこれを全部ゴミ袋に詰めて

それと、これを玄関の外に運んで、後は食器を洗って。

そう言えば、ご飯を食べてないなぁ、とりあえず冷蔵庫を開けてみよう。

えっと…うーん、あり合わせの物しか出来そうにないなぁ。

 

「うへぇ、今日は午前中だけとは思わなかった…」

「そう言えばメリーもそんな事を言ってたきがするわ」

「あ、外のゴミ袋も不思議に見えたけど、家の中超綺麗!」

「あ、お帰りなさい、菫子さん、蓮子さん」

「え? まさかあなたって料理出来る!?」

「はい、さほど上手には出来ませんけど、色々と教わってるので」

「うっそ、私達、2人がかりでも料理とか出来ないのに」

「まぁ、ゼロに何掛けてもゼロってよく言われてるしー」

「姉さん、それは私達がゼロだと言う事よ。

 でもまぁ、レシピ本とかあれば余裕だけどね」

「いやいや、100+-100はゼロよ」

「どれだけ私達料理下手なのかしら」

「まぁ、それは良いとして! お腹空いたからご飯頂戴な」

「あ、はい、丁度出来ましたから」

「おぉ! 良いねぇ! 家にメイドさんが居るみたいだ!」

「いや、お客さんだからね? あの子はお客さんだからね?

 でもまぁ、素晴らしいお客さんなのは間違いないけど!

 だって耳に尻尾よ!? さいっこうじゃない!」

 

あはは、何だかテンション高いなぁ、でも、嬉しい気がする。

 

「それじゃあ、早く盛って!」

「はい、お任せください」

 

2人は私の料理を美味しそうに食べてくれた。

本当は自分1人で食べるようだったから、あまり沢山作ってないけど。

 

「ふぅ、もうお腹いっぱい…だけど、まだ半分くらい残ったわ」

「2人とも、少食なんですね」

「は? いや、どっちかというと沢山食べる方だと思うんだけど…」

「そうなんですか? この位の量はぺろっと」

「え? もしかして、あなたって結構大食らい?」

「因みに、この料理は何人分なの?」

「1人分です」

「なぁ! い、いやぁ、侮ってたわ、向こうの世界の住民って大食いなのね」

「この子が異常なだけじゃないの?」

 

や、やっぱり私、食いしん坊なのかな…うーん、我慢した方が良いのかも。

そうだよね、お世話になるんだし沢山食べたら駄目だよね。

でも、とりあえず残った物は全部食べよう、勿体ないし。

それからしばらくの間、私は2人と過ごした。

たまにメリーさんがやってくるけど、仲が良いんだなぁ。

 

「さて、あなたがこの宇佐見家にやって来て、もう1週間ね

 そろそろ外に出てもいい頃なんじゃないの?」

「そ、そうですね…が、頑張ってみます」

「良いのかしら」

「まぁ、今日は4人でだし、大丈夫でしょ」

「はい」

 

今日はメリーさん、蓮子さん、菫子さん、そして私の4人で外出。

お金は持っているけど、どうやらこの世界では使えないみたいで

3人が持っているお金でお買い物をする事になった。

何だか申し訳ないけど…お金がないしなぁ。

 

「さて、今日は何を買おうかしら、ひとまずスポッチャに行ってみましょう」

「スポッチャ?」

「まぁ、スポーツが出来るお店…みたいなところかしら」

「ふふん、私はこれでも運動は得意なのよ」

「私も姉さんには負けないわ」

「この中だと私、1番駄目駄目な気がするわ」

「スポーツ…」

「あ、もしかして向こうにはスポーツの概念とか無い?」

「はい、言葉は知ってますけどね」

「ふーん、じゃあ楽しめるかもね、ルール説明は任せなさい」

「はい」

 

私はそのままスポッチャという場所に連れて行って貰った。

 

「よーし、最初はバッセンね!」

「ふふ、100kmはまだ打てるわ」

「私はちょっと無理かしらね」

「じゃあ、最初はメリーね」

「何でよ!」

「苦手な人からやるのは当たり前でしょ」

「くぅ、自分は出来るからって、良いわよ! 見せてやるわ!」

 

あの緑色のネットの中に入って、ボタンを押す。

そうすると、目の前のモニターに何かが出て来た。

 

「よーし、来なさい!」

 

メリーさんはバッティングの構えをした。

そして、モニターの動きに合せて、遅い球が飛んでくる。

 

「うりゃー!」

 

全力でバットを振ったけど、メリーさんはバットを遅れて振った。

 

「擦りもしてないわよ」

「れ、練習よ! 次は当てるわ! えい!」

「擦りもしてないわよ」

「二度も言うな! い、言ったでしょ、これも練習! うりゃぁ!」

「擦りも」

「しつこい! 私は打つのよ、この一撃に力を込めて、ちぇりゃぁ!」

「か」

「良いから! 黙ってみてなさい!」

 

18球たまが飛んできたけど、当らなかった。

 

「メリー」

「はぁ、はぁ、あ、当てるわ! うりゃぁあ!」

「あ! 当った!」

 

19球目でメリーさんが飛んできた球を打った。

 

「おぉ! やるじゃんメリー!」

「ふ、ふふ、これが私の実力よ」

 

でも、20球目は打てず、今度は蓮子さんの番になった。

 

「ふふん、まぁ、運動音痴のメリーは私の活躍を見ていなさい」

「く!」

「私は100Km挑戦ね」

 

蓮子さんも同じ様に構え。

 

「さぁ、来なさい! 打ってやるわ!」

「く! 外しなさい!」

「打つに決ってるでしょ、さぁ、そこだぁ!」

「ぷふ! 外してるじゃないの!」

「なぁ!」

 

全力で振ったけど、蓮子さんのバットは球を捉える事は無かった。

 

「く、こ、これは練習よ! それ!」

「擦りもしてないわ」

「なん! れ、練習よ! そら!」

「げ! 打った! 全く空気を読んで何度か外しなさいよ!」

「ふふん、私は運動できるからね、さぁ、まだ打つわよ!」

 

そのまま20球の内、蓮子さんが当てたのは14球だった。

 

「く! なんでそんなに打てるのよ」

「運動してるし」

「じゃあ、今度は私ね、姉としての威厳を見せてあげるわ」

「姉さん、超能力使うの無しだからね」

「え!? マジで!?」

「使う気だったの!?」

「い、いやほら、まだほら、あれよほら、まぁ打つわよ!」

「良いのかな? まぁ良いわ」

 

蓮子さんと同じ様に菫子さんもバットを振った。

菫子さんの結果は20球の内16球。

 

「く! 姉さんに負けた!」

「ふふ、さぁフィル! 私の記録を抜いてみなさい!」

「え? あ、はい…えっと、どうすれば良いんですかね?」

「とりあえず、数字が大きい方が得点大って事よ」

「はぁ」

 

とりあえず、私も緑のネットの中に入って

…とりあえず、一番数字が大きいこれにしようかな。

200ポイントって凄いよね。

 

「げ! あの子ヤバいの押したわよ!?」

「いや、あれはプロでも無理じゃない!?」

「変化球とかあっても面白いかもね」

「いや無理でしょ! あれは打てないって!」

「えっと、これで飛んで来るボールを打てば良いんですよね」

「ここって最高速度を選んだら上のモニターに表示されるのね」

「目立つじゃないの…」

「あれよ、全部空振りさせれば目立たないから、ひとまず変化球込みで」

「そもそも何もしなくても打てないと」

「それ!」

「な!」

 

うん、こうすれば良いんだね、難しそうに見えたけど簡単だ。

それにしても、ボールって変な動きをしたりするんだね。

ひとまずだけど、ボールの回転を見ればどう動くか分かるや。

 

「……へ、変化球押したのよね?」

「お、押した、スライダー押した」

「打ったけど…」

「な、ならこれよ!」

「ちぇりゃ!」

「フォーク打った!」

「へ、変化球込みでも余裕で当てるじゃんあの子!」

「しかもホームラン級よ!? 運動神経抜群ってレベルじゃないわよこれ!」

「ちょ、超高校級なのね」

「いや、そんなレベルじゃ、まぁ多分変化球は遅いのよ」

「じゃあ、次は速球勝負ね」

「っと」

「軽く打ったけど!?」

「……あの子、実は超ヤバい?」

 

それから20球色々な球が飛んできたけど、とりあえず全部打てた。

もう少し速い球じゃないと簡単すぎるよ。

弾幕を避ける方が難しいや。

 

「ぜ、全弾命中、滅茶苦茶注目されてるけど…」

「じょ、嬢ちゃんスゲーな!」

「ひえ!」

「意外と恐がりなのか? でも、半端ねぇな!」

「人は見た目に寄らないって奴かな、めちゃ可愛いけどめちゃ打つのうめーし」

「なんでただの女子高生があんなにスゲーんだよ。

 俺達なんて野球やってるのにあのザマだし、女のくせに」

「黙れよお前! 失礼だろ!? そんなんだから友達居ないんだよお前!」

「なにぃ!」

 

…うぅ、ちょ、ちょっと圧迫感が…ど、どうしよう。

 

「仕方ないわね、っとと」

「ありゃ?」

 

さっきまで沢山居た人達が全員眠った。

 

「な、何したの!?」

「私の超能力を侮らないで頂戴、記憶を奪う事もお手の物よ!」

「べ、便利ね」

「まぁ、正確には記憶が無いと何度も教える催眠術の類いよ。

 そりゃ、私が本気を出せば、鉄骨だって操れるしね」

「実際、姉さんの超能力って化け物じみてるわよね」

「妹のあなたはただのGPSだしね」

「なぁ! 私の能力も大概でしょ!? 時間も分かるのよ!?」

「でも夜だけだし、しかも当たり前の様に遅刻するし意味ないじゃないの」

「まぁまぁ、ふ、あれよ、姉より優れた妹は存在しない的な」

「死ぬ奴じゃん!」

「いや、蓮子が私を殺そうとしない限り大丈夫よ」

「どんな状況よ全く」

 

でも、なんとか菫子さんのお陰で助かったよ。

 

「さて、それじゃあ、次は何にしましょうか」

「ならテニスね」

「いや、フィルちゃんが居たら勝ち目無くない?」

「そこはあえて、1対3とか面白いかもね」

「それじゃあ、仲間外れみたいだし、やっぱり2対2でしょ」

「まぁ、そうね、それじゃあ遊ぼうかしら」

 

…誰かと遊ぶのって、何だか楽しいかも。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。