東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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お料理

やった! 出来た!」

 

必死に頑張って、私は咲夜さんにお願いされたお部屋の掃除を終わらせた。

後は自分から出て来ちゃった尻尾の毛と耳の毛を回収すれば…あれ? ない?

さっき、あんなに沢山落ちてたはずなのに、私が落としていた毛のゴミが何処にも無い。

 

「あ、あれ?」

「あら、掃除終わったの、よく頑張ったわね」

「あ、ありがとうございます!」

 

私がお掃除を終わらせたタイミングで咲夜さんがやって来た。

でも、凄いなぁ、ピッタリのタイミングで来るなんて凄いタイミング。

 

「思った通り、あなたは妖精メイドなんかの何十倍も役に立つわね」

「あはは、ありがとうございます」

 

頭をなでなでして貰って褒められるの、凄く嬉しいなぁ。

こんな風に褒めて貰えるんだから、もっと頑張りたいって思う。

 

「よーし! やるぞー! 咲夜さん! 次のお仕事は!」

「そうね、掃除でもう少し時間が潰れると思ってたからあまり考えてないのだけど

 良いわ、今度は料理ね、お嬢様達の料理…は、まだ速いでしょうし

 使用人の料理を作ってみて」

「はい!」

「料理の作り方を軽く教えてあげるわ、ちゃんとみて、聞いて学びなさい」

「はい!」

 

咲夜さんは私をキッチンまで案内してくれた。

 

「うわぁ…」

 

案内されたとき、私は言葉を失うくらいの衝撃を覚えた。

凄く大きいし、沢山の道具、お皿、よく分からない機材が列んでいる。

その中で料理の材料はいくつも真ん中にある大きなテーブルに置いてあって

料理の材料は全て時間が止まっているみたいで、温かくも冷たくも無い。

 

「ここがキッチンよ」

「こ、ここでのお料理も…もしかして、咲夜さんが全部…」

「えぇ、そうよ」

「…さ、咲夜さん、大丈夫ですか? その、凄く大変じゃ」

「まぁ、大変ではあるけどやりがいがあるわよ」

「そうなんですか」

「ま、少しでも私は楽したいし、あなたが料理が出来るようになれば、私は嬉しいわね」

「はい! やります! やって見せます! 私もぱーふぇくとめいどを目指すのです!」

「心意気は十分ね、でも、分かっているでしょうけど、それだけじゃ何も出来ないわ」

「はい! ご教授お願いします!」

「じゃあ、まずは見本を見せてあげるわ」

 

そういって、咲夜さんはテキパキと料理を始めた。

 

「まずはこれね」

 

材料を手に取り、凄い速度で千切り、輪切等の色んな切り方で材料を切り始めた。

その食材によってこの切り方が良いと言う切り方があるらしい。

その後、すぐに大きな鍋に水を入れ、感覚で水を入れ、鍋を秤納得した後

すぐにその鍋を弱火で火にかけた。

その間に材料を…切って、入れて、確認して、火の強さを調整しているけど

私には速すぎて何が何だか分からなくなってきてしまった。

 

「まぁ、こんな物ね、簡単にカレーで手本を見せてあげたけど、分かったかしら?」

「全く分かりませんでした」

「そう、いつもの速度でやり過ぎたわね

 じゃあ、今度はフィルが作ってる間に教えてあげるわ

 どうせ役立たずの妖精メイドの料理だから失敗しても良いわよ」

「い、いえ、失敗しないように頑張ります」

「そう、じゃあ頑張りなさい」

「はい! よーし、やるぞぉ-」

 

料理は難しいけど、咲夜さんに教えて貰いながらなら絶対に出来る!

まずは野菜を切るんだっけ…えっと、人参? えっと…こう…かな?

 

「少し大きいわ、もう少し小さく」

「すみません! ち、小さく!」

「今度は小さすぎよ、サイコロサイズね」

「あぅ…」

 

何だか大きさの調整が難しいなぁ…うぅ、どうしよう。

どれ位が良いのかな? 最初とさっきの真ん中くらいかな?

 

「えっと、最初とさっきの中間くらいの大きさで…」

「あのね、最初のサイズと今のサイズかなり違うのよ?

 その中間をとっても小さいわ」

「あぅ…じゃあ、どれ位が…」

「仕方ないわね、良いわ、目安を出してあげる」

 

そう言って咲夜さんが慣れた手つきで人参を切ってくれた。

そもそも形が違った……そこを言って欲しかったよ。

 

「まぁ、これね」

「そもそも形が違いました…教えてくれてもよかったのに」

「いつ気が付くか気になったから放置してたわ

 まさか最後まで気が付かないとは思わなかったけど」

「すみません…」

 

うぅ…最初からからかわれてた…全然駄目だぁ!

私、料理の才能無いのかな? でも、頑張ろう!

 

「えっと」

 

私は咲夜さんのお手本通りに人参を切り、サイズもピッタリに切れた!

 

「へぇ、見本があれば出来るのね」

「何だか見本があるとやりやすくて」

「そう、じゃあ、手本なしで頑張りなさい」

「あ、え? あ、はい」

「もしかして見本を私が出してくれると思ったのかしら?

 残念ながらこれは練習よ、練習、この練習は出来ないことを

 出来るようにするのが目的、なら出来ないことを鍛えるのは当然でしょう?」

「は、はい! 頑張ります!」

「まぁ、さっきも言ったけど、どうせ役立たずのご飯なんだから

 あまり気負いしないように作りなさい、最初はそれが丁度良いのよ

 そもそもまだ新人であるあなたが重要な仕事を任されるわけが無いんだから」

「そ、そうですよね…」

「あまりがっかりしないで、どんな仕事でも任されていることに変わりないわ

 それはつまり、あなたに期待をしているという事よ

 しっかりと段階を踏んでまぁ、今の全力を見せなさい

 成長は全力の先にしか無いわ」

「咲夜さん…はい! 私、頑張ります!」

「まぁ、精々頑張りなさい、それじゃあ、私はこのカレーを

 お嬢様にお出ししてくるわね、その間、一人で頑張りなさい」

 

咲夜さんは時間を止めること無く普通に運んでいった。

きっとこれは私が一人で頑張る時間を作るためだ!

よ、よーし、ひ、一人で出来る限りのことをやるぞ!

あまり出来ないけど、今できる全力でお料理を作ってみせる!

何だか心の底から闘志が出て来てる気がする!

うん! 特に根拠はないけど、今の私ならきっと出来る!


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