普通がいいと思うのですが!?   作:ニュイン
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 色々とキャラ崩壊がある作品です。
 俺の嫁を汚すな! こんなの違う!
 そう思った人は回れ右した方がいいです。


Action1 入学式

 入学式というのは心踊るイベントの1つであり、高校生にもなるとこれまた感慨深いものである。

 だが、勘違いしてはいけない。それは一般的な感想で普通の高校に限定される。

 

「ーーでは自己紹介をしてもらいます。次は……織斑一夏くん!」

「はい! 僕の名前は織斑一夏です。趣味は女装することで好きなタイプの人は……きゃっ!」

 

 自分の右斜め前に位置する女子生徒の制服に身を包んだ親友は、俺を見ると顔を紅潮させ勢いよく着席した。

 この変態女装癖野郎が! すぐにでも天罰が下らないだろうか。

 

「次は……篠ノ之箒さん!」

「はい。ーー私は篠ノ之箒だ、趣味というわけではないが小・中と剣道をやっていた。もちろんここでも剣道をやるつもりだ。好きなタイプだが……ふっ」

 

 自分の前の席に位置する女生徒。自己紹介をしたその姿は大和撫子のようだが何故、俺をガン見しながらだったのかはたとえ幼馴染であっても理解したくない。

 色々ツッコミたくなる自己紹介もそろそろ佳境になってきていた。

 

「では最後に七星暁人くん!」

「はい。俺は七星暁人ーーとりあえず普通が1番というのがモットーです。趣味は安寧な生活を探すこと。好きなタイプは世間一般的な女性です」

 

 これからの3年間、俺の安寧は成層圏を突き抜けて宇宙の彼方へと飛んでいってしまったんだと分かってしまった入学式だった。

 何故なら副担任である山田真耶先生に進行を任せ、担任である我が親友の姉の織斑千冬はせっせと携帯を可愛くデコレーションしていたからだ。

 

 

 自己紹介も終わり、ちょうど休み時間となった瞬間2人の変態がこちらに近づいてきた。

 捕まり、心身共に疲弊している自分は関わりたくない思いで胸が一杯だった。

 

「ねぇ暁人、僕の制服姿はどうかな? 似合いすぎて欲情してきたかな?」

「おい暁人! お前は剣道部に入るだろうから入部届けは2人分持ってきたぞ。……入るだろ? 入ってくれ頼む、というか入れ!」

「待て待て、俺は聖徳太子じゃないんだからいっぺんに喋るなよ。一夏はまず男子の制服を着てくれ、それに欲情はしねぇから! それで箒は剣道部だったか……入らない以上」

 

 自分がここまではっきりと言っているのにも変態2人はまたまたそんなこと言って、という顔をしている。

 責任は誰にあるのかはわかっているのだ、自分であると。

 一夏の女装癖は顔が整ってるなら女の子の格好でも似合うのではないか? という言葉。

 箒は一見するとわからないが、痛みを快感としてしまう超が付くほどの被虐趣味全開なのだが、これは剣道素人の俺が小手を防具に包まれている部分ではないところへ強打してしまったからだろう。

 

「クソッ、クソッーークソが!」

「暁人! 机を殴るなら私を殴ってくれ!」

 

 優しく俺に木刀を握らせる箒。

 まだこれならいいが腕を広げ、嬉々として待ち構えないでほしい。

 

「どうした暁人、遠慮せずともいい。渾身の一撃を私に……さぁ、きてくれ!」

「ちょっと暁人! 何でなの? 髪も伸ばしたし、無駄な毛も処理したのに!」

「だから努力の方向性が間違ってんだよ! このクソ野郎が!」

 

 どこか遠くへ、変態がいない場所に行きたい。俺はただ普通に生活したいだけなのだ。

 一夏が女性にしか反応しないISを動かしてやっと平穏に暮らせると思ったのに。

 何が世界一斉男性操縦者検査だ! というか何で俺はISに反応してIS学園に入らなきゃいけねぇんだ!

 

「ちょっと、よろしくて?」

「見ればわかんだろ、取り込み中だ!」

「まぁ何ですか、そのお返事は!」

「お嬢様、取り乱してはいけません。貴族としてーーオルコット家の当主としての器で許容すべきです」

 

 話しかけてきた金髪ドリルの女生徒は自分の返答が気にくわなかったらしく、メイド服の女性に宥められてはいたが怒りは収まっていないらしい。

 だが、この女生徒も女生徒だ。この状況で話しかけてくるだろうか?

 この学園はISについて学ぶ学校、故に生徒も女性に限る。これはISが女性にしか反応しないからだろう。それでも空気を読んでほっといてほしかった。

 

「んんっ! 私はイギリス国家代表候補生にして貴族のセシリア・オルコット。オルコット家の当主ですわ!」

「流石お嬢様、先程の無礼を許すとは立派にご成長なられて。このチェルシー・ブランケット感激いたしましました」

 

 誇らしげに胸を張るセシリア・オルコットとハンカチで目元を拭うチェルシー・ブランケット。

 正直、変態2人と比べると普通のカテゴリーに入るだろう。

 

「それに素晴らしい立ち姿ですお嬢様。これは貴族ポイントプラス10、このままいけば今夜はパンの耳にジャムを使用してもいいでしょう」

「そそ、それは本当ですのチェルシー!」

「はい。このままいけば、ですが」

「やっと、塩と水だけの生活から抜け出せるのですわね」

 

 撤回。このお嬢様は普通ではなかった。

 それにメイドの方も普通ではないだろう。なにせオルコットを色々なアングルで写真を撮っているのだから。

 手鏡で自分をチェックしている女装野郎、息を荒げて両手を広げるドM少女、夕食がパンの耳とジャムで号泣する金髪お嬢様、涎を滴ながら金髪お嬢様を撮り続けるメイド。

 予鈴のチャイムが鳴り響き、自分の目の前で起こっていることが現実だと再認識させてくれていた。

 

「この時間の授業はISについての説明をする。では山田先生、私はやることがあるので頼む」

「わかりました。……では皆さん、ISというのはですねーー」

 

 山田先生の説明は丁寧で、かつ理解しやすいように配慮されていた。

 けど千冬さん、授業を山田先生に任せて自分はアップリケ制作に没頭するのはおかしい。

 

「さて、ここまでの説明でわからない人はいませんか? 特に織斑くん、七星くんは大丈夫ですか?」

「僕は大丈夫です、どうぞ先に進んでください」

「俺も大丈夫っす。山田先生の説明がわかりやすかったので」

「なら良かったです。では先に進みますね」

 

 本当に良かった。山田先生だけが俺の心のオアシスになりつつある。

 山田先生の笑顔があれば俺は後10年は戦える。

 

「そういえば、再来週に行われるクラス対抗戦の代表を決めなくてはいけなかったな。……七星、お前がやれ」

「そういえば、でしたね。七星くん、1組を代表するといっても仕事は学級委員のようなものですし、他のクラスとの実力も入学して間もないですから大丈夫ですよ」

 

 千冬さん、アップリケ制作が上手くいかなかったからって俺に八つ当たりしないでください。

 山田先生も少しは自分を庇護してくれると思ったが、千冬さんの威圧感が半端無さすぎてチワワみたいに震えていて期待できそうにない。

 

「わ、わかりまーー」

「納得いきませんわ、そんなふざけた選出では!」

 

 渋々承諾しようとした時、オルコットが異を唱えてくる。

 いいぞオルコット! 今日のお前は凄く輝いてる、もっとあの乙女チックな理不尽大魔王に言ってやれ!

 

「ほぅ、この私に意見するか小娘。……最期に言い残すことはあるか?」

「ひぃ! せ、せめてケーキを……ケーキをお腹一杯食べてからにしてくださいですわ!」

「お嬢様、今ので貴族ポイントマイナス20。今日の夕食は塩と水です」

「そ、そんな……。あんまり……ですわ」

 

 あんまりだよ、本当にあんまりすぎるよオルコット。

 今まで教室にいなかったのに何処から出てきたんだよこのメイド。

 

「ですが織斑先生、オルコットさんの言い分もわかりますしここは多数決でーー」

「ならばこうしよう。七星、オルコット両名は1週間後に模擬戦をして勝者がクラス代表とする。これでいいな」

 

 山田先生の提案を遮り、千冬さんが強引に終わらせる。

 流石だぜ千冬さん、理不尽さでいったらあなたの右に出る人はいないな。

 

「勝ちますわよ、オルコット家の名にかけて!」

「流石です、お嬢様。ですが、涙目により貴族ポイントの変動はありません」

 

 俺は逃げられるのだろうか。

 

「羨ましいな、痛みを味わえる戦闘がやれるとは」

「うーん。枝毛が気になるなぁ」

 

 理不尽な現実から抜け出して普通の生活を送れる日は来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 




七星暁人……苦労人。

織斑一夏……1度、女装してその魅力に目覚める。

篠ノ之箒……小学生の頃にドMに目覚める。

織斑千冬……世界最強は健在。だが未だに少女趣味。

セシリア・オルコット……ハリボテお嬢様。最期の晩餐はお腹一杯にケーキを食べること。

チェルシー・ブランケット……完璧なメイド。神出鬼没はデフォルトで装備。

山田真耶……唯一の常識人。暁人の心のオアシス。

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