普通がいいと思うのですが!?   作:ニュイン
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前回のあらすじ!

一夏「男同士でヤルのに何の問題が?」
箒「ええやん!頂戴、そういうのもっと頂戴!」
暁人「お前ら精神状態おかしいよ……」

暁人「しょうがねぇなぁ……。俺のカツ、一口やるよ!」
セシリア「ありがとナス!」

本音「暴れるなよ、暴れるなよ!」
暁人「んぐぐ! んぐぅ!」

多少違っているけど大体あっている。


Action3 賽の目の行方

 人生山あり谷あり。

 この諺は今の自分に深く、それも抉るように刺さるものがある。

 人生というのは幸せも不幸もあるのは当たり前。人の数だけその種類も様々であり、捉え方でさえ度合いが違ってくるもの。

 例えばだ。

 幸福・不幸という振り子の振り幅が小さいと自分では思うが他人から見た時、それは大きいではないかと言われることもあるということ。

 だが少し考えてみればわかることかもしれない。

 他人は所詮他人で、それを感じる当事者にしか計れない。

 いくら視野を広げても考え方を変えても、ましてや自分の立ち位置を変えても無駄である。

 そこには山も谷もありはせず、観客も居ない。舞台袖からはナニかが手招く手が見切れ、気づくと視界は暗転して意識はフェードアウトする。

 進んだ先が奈落ならどれほど良かっただろうか? 実際は回転する独楽のようなものが人生であり、回り続けた先には何も無い。

 あるのはただ消費し、失い続けた操り人形がポツリと落ちているだけかもしれない。

 

 

 

 

 朝、全身に感じる重さによる息苦しさで目が覚める。

 目線を下げてみると、そこには気持ちよさそうに寝息をする布仏が俺の腹の上にいた。

 

「あ~。……なるほど、ね」

 

 息苦しさの正体は人一人の重さによるもの。理由も昨日の顛末も把握した。それでも、これが未だに自分の夢であり日々のストレスによる妄想が作り出した幻覚であってほしいのである。

 時間はもうすぐ七時を記録しようとする。同居人でもある布仏を起こし、身支度を整えなくてはならない。

 意を決して幸福な夢を見ているであろう白雪姫を起こすとするが、王子様の口づけで起こすのがセオリーだろう。しかし自分の配役は王子様ではなく、毒林檎がふさわしい。

 

「おい布仏! そろそろ起きてくれ」

「うみゅ~……」

 

 俺が声をかけると、目元を擦りながら呻き声を発する姿は素直に可愛いと思う。

 その手に握りしめられた注射器は見なかったことにしたい。

 

「やっと起きたか布仏ーー」

「本音……」

 

 何故だろうか?

 寝起きの彼女の眼はまだ据わったままなのは。

 

 思考が追いつかない。

 瞬きをしていないのに注射器を俺の首筋にあてがう動きが全く見えなかったのは。

 

「あ、あの……」

「本音……。昨日~名前で呼んでって~言わなかったっけ~?」

 

 名前を言えば事は収まるだろうが、言ったが最後のような気がしてならない。

 

「呼んでくれないんだ~。そっか~……そうなんだ~」

 

 彼女の人差し指に力が加わり、撃鉄を起こそうとする。

 一刻の猶予などなく、判決が下されようとされる。

 

「ほ、本音! そ、そろそろ時間だから準備しないと!」

「……時間? あ~本当だ~!」

「な! な! もう、いい時間なんだよ。だから、な!」

「そうだね~。じゃあ~準備しよっか~」

 

 判決に待ったが通り、一時的に助かった。これが俗に言う首の皮一枚というやつだろうか。

 俺という毒林檎を捨ててほしいが、彼女はそれ以前の問題だと気づくべきだったのかもしれない。

 例えそれが毒林檎だとしても彼女は大事にするだろう。それは不安定な神様のように意味もなく自分の領域に置きたいだけなのだから。

 

 

 

 

 何とも朝から寿命が縮んだものだ。およそ十年は減っただろう。いや、十年の時間を僅か数分の間に進んだと解釈すると、気分も超能力者になるかもしれない。

 

「七星ここにいたか」

 

 自分を呼ぶ声に振り返ると、そこには仁王立ちする理不尽大魔王こと織斑先生。

 逃げるコマンド連打待ったなしの状況が作られた瞬間だった。

 

「おい、私の顔を見るなり嫌そうにするな。一応これでも非の打ち所がない美女だぞ?」

「痛い痛い痛い、玉が割れる! 玉がぁぁぁぁ!」

 

 非の打ち所がないというのはありえない。

 他人の、それも男の大事な部分を握り潰さん勢いで掴む筈がない。恥じらうどころか嬉々とした顔でやるなんて以ての外だろう。

 

「仕方ないな……。『あなたはとても美しく、儚く、完璧な程の絶世の美女にも拘わらず何故男は言い寄ってこないのか不思議でなりません』……さぁ、復唱しろ。すれば解放してやろう」

「あなたはとても美しく……は、儚く……か、か完璧な程の絶世の美女にも拘わらず……何故男が……言い寄ってこないのか不思議でなりません!」

「そうか、そうか! そこまで言われたら仕方ないな解放してやるが、次は気をつけろよ?」

「は、はい……気をつけます……」

 

 脂汗が止まらない。それも尋常ではない量が噴き出している。

 軽い走馬灯を見たが、まともな人生を歩んできてはいないので反吐が出る情景を見せられただけだった。

 

「それはそうと、貴様に専用機をと話があってな。貴重な男性操縦者だ、一応織斑にもこの話をするつもりだがな」

「そう……なんですか……」

「専用機だぞ、もっと喜ぶかと思ったが違うのか?」

「い、いえ。嬉しいといえば嬉しいです。でも、変に目立つのはちょっと……」

 

 正直な話、専用機というのは嬉しい。ISの核となるコアが有限であり、増やすというのが無理な状況で個人専用に使うのはそれだけの価値がそいつにあるからだ。

 だが、自分には誇れるものはない。ましてや一般家庭で育ったために強力なバックがいないのも問題だ。

 

「そうか……なら七星、逆に考えればいい。これはチャンスだとな」

「チャンス? 何でですか」

「簡単なことだ。貴様はここにいる三年間で結果を出さなくてはならない。出せなかった場合生きた実験台としての未来が待っているからだ」

「そんな馬鹿な話がーー」

「あるのさ。それも神も仏もいないこの肥溜めみたいな世界は、な。だが安心しろ七星、もしそうなる場合この私が貴様を貰ってやろうじゃないか」

 

 最悪だ。それも永遠に続く悪夢だ。

 何がなんでも結果を出さなくてはいけない理由ができてしまった。それも死に物狂いで挑まなければならないほどに。

 確かに織斑千冬という女性は容姿端麗、高収入。さらには世界最強の称号“ブリュンヒルデ”を得ている。

 しかしそれは奈落へと続く落とし穴だ。なぜなら、それを余りあるマイナス要素が揃っている駄目人間だからである。

 

「と、とりあえず頑張ってみます……」

「遠慮なんかせず素直に私と結婚しろーーというかなってくださいお願いします!」

「用事を思い出したのでここで失礼します!」

「待て七星! いや、待ってくれマイダーリン!」

 

 音を置き去りにするほどの全力疾走する自分の後方で、切なく必死な声が聞こえるが立ち止まった瞬間に何もかもが終わる気がした。

 

 

 

 格納庫。

 ここは訓練機である『打鉄』や『ラファール・リヴァイブ』が置かれているだけでなく、各ISを整備するための施設である。

 何故に自分がここへ来たかというと訳がある。それはーー

 

「やぁ、よく来てくれたね。待ってたよ、あっくん!」

「久しぶりっすね、束さん……」

 

 両手を腰にあて、仁王立ちする目の前にいる女性は篠ノ之束。IS開発者にして自称天才科学者のマッドサイエンティストである。

 

「それで? わざわざ山田先生を脅してまで自分をここに呼んだ理由を聞きたいんですけど」

「そんなの簡単な話だよ。あっくんはちーちゃんと結婚したいかい?」

「死んでも嫌です!」

「あっはっは! だよね~!」

 

 プルプル震え、さらには涙を限界ギリギリまで溜めた山田先生が自分に頼んできたのだ。頼むから格納庫に至急行ってくれ、と。

 自分も山田先生の頼みならと何も疑わずに来てしまったことに些か後悔しているが、もう遅いだろう。なぜなら自分は簀巻きにされた状態なのだから。

 

「さて、と。面倒だからさっそく本題に移ろうか。あっくんはちーちゃんと結婚したくない、束さんはあっくんをちーちゃんなんかにやるつもりもない。ここまではいいかい?」

「はい……。大丈夫じゃないけど大丈夫です」

「おーけーおーけー。ならあっくんには、この大天才科学者の束さんが作ったISに乗って世界最強になり束さんのお婿さんになってもらいます。以上!」

「ちょっと待てアンタ! 前半はいいが後半のお婿さんっていうのはおかしいだろうが!」

「え~。全然おかしくないよ?」

 

 駄目だ、この人本当に色んな意味で駄目だ。

 馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったもので、この人のためにある言葉だろう。

 だが、今はいい。一度機嫌を損ねると危険な人で、昔に起こった事件ーー白騎士事件でガンを飛ばされたという理由で、日本に攻撃可能な各国のミサイルを一斉にハッキングして日本に向けて発射した程なのだから。

 

「……わかりました、わかりましたよ! やればいいんでしょ!」

「あっくんならそう言ってくれると思ってたよ! じゃあ早速乗ってくれるかな、かな?」

 

 彼女は後ろにあるISを俺に見せるように横にずれる。

 ゴツゴツとした外見をしていて、さらに紫色というのがまたなんとも無骨感を際立たせている。

 

「機体名は“ワンダー・ラビット”さらには戦闘用AIを搭載しているというオマケ付き! 武装はなんとたったの六個。だけど初心者にも安心安全な規格外な物ばかりなので問題ナッシング!」

「え、待って。今、なにかーー」

「じゃあ早速試してみよっか!」

「人の話を聞けよぉぉぉぉ!」

 

 無理やり機体に乗せられ試運転することになり地獄は始まる。

 六基のチェーンソーが付いた剣のようなモノが駆動する。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ腕がぁぁぁぁぁぁ!」

「あっちゃー」

 

 右肩に折り畳まれた砲身らしきモノから弾が発射される。

 

「ほあぁぁぁぁぁぁ!」

「これぞロマン砲!」

 

 四角い棒が扇状両肩から左右に展開した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁアリーナが焼け野原になってるぅぅぅぅぅぅ!」

「最っ高だね!」

 

 右肩にあるユニットが展開した後、ミサイルが発射した。

 

「ふぉぉぉぉぉぉ!」

「たーまやー!」

 

 超デカイ剣。いや、建築資材。

 

「待って待って、ちょ、俺まで引っ張られてるぅぅぅぅぅぅ!」

「ちょうどいらない柱があったから……つい、やっちゃたんだぜ!」

 

 フジツボが太くて長い筒状になった。

 

「アリーナのバリア切り裂いたんですけどぉぉぉぉぉぉ!」

「歓迎しよう、盛大にね!」

 

 俺が地獄の片鱗を味わっていた頃。

 

「あ、暁人……。これ以上放置されたら私は……私は!」

 

 ドMサムライガールが一人、剣道場で幸せそうな顔をしながら悶えていた。




七星暁人……真っ黒に燃え尽きる。

織斑一夏……予約していたエステへ行っていた。

篠ノ之箒……昨日の夜から剣道場でスタンバってました。

織斑千冬……婚活中の世界最強。

山田真耶……兎恐怖症。

セシリア・オルコット……ベッドの上で省エネ生活。

チェルシー・ブランケット……主人のために半纏を購入するため外出中。

布仏本音……隠密行動。

篠ノ之束……色んな意味でぶっ飛んだ兎。






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