エロゲー世界に神様転生したのに負け組じゃないの?   作:のぶほし

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『ALICEの館』のテーマBGMを聴きながら書きました。


序章
第01話 女神の館 プロローグ


 

「こんにちは。あなたは死にました」

 

「ちょっ、まっ……」

 

突然のことで理解が追いつかない。

目の前には女神を名乗る黒いリボンが特徴的な金髪美少女がいる。

ライトブルーの綺麗な瞳に合う淡い青色のエプロンドレスが特徴的だ。

 

空間には何度か聴いた記憶がある癒しの音楽が流れている。

 

「ガー」

 

何故か小さなカラスが僕の隣で鳴いている。

 

「あ、この子はペットの――」

 

「あのー。ペットの名前とか、どうでも良いので、

 説明をお願いできないでしょうか?」

 

「わかりました――」

 

生前の記憶は朧気だが、どうやら僕は死んだらしい。

とにかく死んだ原因が神様の手違いとか何とかで、

別の世界に転生させてあげるという話になった。

 

なんというテンプレ。いわゆる神様転生キタコレ!

 

しかも金髪美少女が担当する異世界はエロゲーの世界らしい。

 

俺TUEEEEどころか異世界ハーレムとか最高ッッ!!

 

しかし、その喜びもつかの間のことだった。

 

「では、一番人気『ランスⅩ』で良いですか?」

 

「えっ、……それって『ルドラサウム大陸』でしょうか?」

 

「はい。私の担当で一番多くの転生希望者がいる人気世界です」

 

ちょっと待て欲しい。たしかに「ランスシリーズ」は面白い。

平成元年から平成の最後までを駆け抜けた大長編エロゲの最高傑作だ。

 

老若男女問わず魅力的なキャラクターも大勢いるし退屈はしないだろう。

しかし問題は創造主である“巨大な白クジラ”ルドラサウムの存在だ。

 

ヤツは苦しみ、憎しみ、哀しみといった負の感情を心地よく感じるサディストだ。

死や破壊を好み、悲劇と混乱の観賞をこの上ない愉悦とする歪んだ精神の持ち主。

 

ランスシリーズの舞台となるルドラサウム大陸は、

魔物はもちろんのこと魔王や魔人といった無敵結界を持った存在が跋扈する危険な世界。

 

特にシリーズ最新作の「ランスⅩ」はディザーサイトの記憶によると――

ジャンルは大戦争RPGで、開幕から魔物と魔人が世界全土を突然襲う。

予期せぬ破壊と殺戮によって人類は戦力の大半を失い滅亡寸前という状態からのスタートだ。

 

たしか開戦から僅か2週間で1200万にも及ぶ犠牲が出てたはずだ。

 

そんな世界でエロエロと生きていけるのだろうか?

 

「えっと……何か能力(チート)はいただけるのでしょうか?」

 

「そうですね。上司に確認してみます」

 

女神様には上司がいるんだ……。

 

「上司に曰く『ランスくんの邪魔をしない程度なら大丈夫』だそうです」

 

女神の上司はゲーム主人公の「鬼畜戦士ランス」を大切にしているみたいだ。

神様転生特典(俺TUEEEE)で主人公を踏み台にしてハーレムとかいう展開は無理みたいだ。

 

能力の設定が書かれたキャラクターシートのようなものを手渡される。

才能限界は一万人に一人ぐらいのレベル。技能レベルはLV1が二つ貰えるのか。

時代はLP歴6年末「ランス9」のエンド直前で、ランスXの開始までは少しの猶予がある。

選べるのは自由都市の冒険者、ゼス所属の魔法使い、リーザス青の軍の兵士……。

 

って!死ぬし!この能力だと死んじゃうし!大戦争に参戦するにも地位が半端だ。

 

「qあwせdrftgyふじこlp」

 

「どうしましたか?」

 

よくよく考えたら僕はランスⅩ(2018年2月23日発売)をプレイする前に死んだのだ。

 

金髪美少女の話によると……その心残りを可哀想に思った神様(死亡の原因)が、

女神の上司に頼み込んで、異世界転生の手続きをすることになったのだと言う。

 

ありがたいような、ありがたくないような話だ。

これでは転生オリ主特有の原作知識チートとかもできない。

 

_| ̄|○ il||l

 

技能LV3(バランスブレイカー)は無理だとしても、

せめて必殺技が使える技能LV2は欲しい。

もう少し才能限界もサービスしてくれたって良いんじゃないかと(困惑)

 

とてもじゃないが鬼畜戦士ランスの作中に絡めるような地位のキャラじゃない。

そして魔人戦争といった死亡フラグ満載の世界で生きていける気が全くしない。

 

額から汗を垂れ流して必死に優しそうな女神様の情に訴える。

 

「お願いしますっ! 無理です。ランスシリーズは死んでしまいます!

 ほ、ほ、ほかの……他の世界は無いのでしょうか?

 ほら、超昂シリーズとか闘神都市とか色々とあると思うんですが……」

 

咄嗟に思いついた作品を並べたが、ほのぼのとした世界が無いぞ(激汗)

あ、アトラク=ナクア……駄目だ、あれはクトゥルフ神話系だ(白目)

 

「あっ、そうだ! 人妻や熟女好きの人のシリーズは駄目でしょうか?」

 

ええいっ!風麟世界はNTR(寝取られ)があるが少なくとも命の危険はないはずだ!!

 

「すいません。私の権限では何とも言えないので上司に聞いてみます」

 

女神様は何かと親切だが、やはり上司の意志が第一らしい。

 

…………

 

……………………

 

「そうですね。大シリーズであれば良いそうです」

 

丁寧にまとめられた設定資料が渡される。

 

大シリーズもアリスソフトの看板作品で、

今まで「大悪司」「大番長」「大帝国」の三作が出ている。

それぞれ世界観の違う作品で地域制圧SLGというジャンルのみ共通だ。

 

順に説明すれば、ヤクザ、番長、WWⅡだろうか……。

いずれにせよ暴力と血の匂いがするセックスバイオレンスな世界観だ。

 

転生するにしてもアリスソフトってエロゲーメーカーなのに、

シビアな世界設定が多いな……(泣)

 

(´Д⊂ モウダメポ

 

「あれ? 大帝国だけ他と比べてキャラの待遇が良くないですか?」

 

大悪司は、オオサカ市議会職員で進駐軍ウィミィの担当者で立場が弱い。

大番長は、暴走族集団カントウ獄煉の三下幹部のパシリだ。

大帝国だけ、何故かドクツ第三帝国の要人の地位が示されている。

 

「そうみたいですね」

 

女神様は案内役の看板娘で上司の意図まで分からないそうだ。

 

但し書きには、

 

レーティアちゃん(公式人気投票No1)の人気に比べて

 アルティメットアイドルENDの評判が芳しくないので何とかして欲しい』

 

と書いてとある。

 

ただの要望じゃんっ!!

 

『幹部候補、原作ゲーム未経験大歓迎、若い女性が頑張っているアットホームな環境、

 笑顔が絶えない職場、有能な上司の下で風通しの良い組織、勢力拡大のためやりがいあり、

 あなたの頑張りで原作改変できます……etc.』

 

若干ブラック求人の臭いがするのは気のせいだろうか……(汗)

 

ランスシリーズはキャラも世界も魅力的だけどチートが無いと無理。

大悪司や大番長の凡キャラは話にならない。

大帝国で社会的地位の高いキャラの方が良いかな?

 

よくよく考えてみたら大帝国はモテモテ設定の肉バイブ系主人公(東郷さんに抱かれたらきっと分かるよ)に、

僕がイマイチ魅力を感じなかっただけだ。

思い起こせば登場する女の子(ヒロイン)も多いし、かなり魅力的だ。

サブキャラも含めれば、属性もロリからBBAまでと幅広い。

R-18Gのキングコアルート(監禁・凌辱・拷問なんでもあり)さえ回避すれば悪くないかも知れない。

 

「決めました。これでお願いします!!」

 

選んだキャラクターシートを金髪美少女の女神様の前に差し出す。

 

「与えれる提督スキルは【敏腕P】です」

 

敏腕Pは、原作ゲーム主人公の東郷毅が持つ【大戦術】と同じ効果を発揮する強力なスキルだ。

地域制圧SLGは、登場する提督に細かなパラメータが殆どないが、

索敵と航空の<特性>や<指揮>にも不足はない。

特に気に入ったのが神様転生特典(チート)の一つなのだろう<幸運B>と<黄金律B>だ。

ラッキースケベも期待できるし、お金に困らないのも嬉しい。

原作知識チートに必要な<前世の知識>も設定に書かれている。

 

最近では高齢者を相手に最初に多数のオプション契約を結び、

後で解約を申し込んだら高額な解約料を求めるといったケースも多々ある。

設定(契約)内容のチェックに抜かりはない。

 

「はい。不足はありません」

 

同意書にサインすると「ガー」といってカラスが用紙を咥えて遠くの光に向かって飛んでいく。

 

徐々に身体が淡い光に包まれて薄く消えていく……

去り際に金髪美少女の女神様が爆弾発言を投げる。

 

「気を付けてください。敏腕P(プロデューサー)女性キャラ(アイドル)に手を出すと死にます(GAME OVER)

 

「えっ? ど、どうしてですか? 

 だって、原作はエロゲーですよね!? おかしくないですか?」

 

※二次創作元の『えろかみ大帝国(勝ち組)』はR-18二次小説です(宣伝) 

 

「だって、えっちなのはいけないと思います」

 

「ちょっ、まっ……」

 

「やらしいことばかり考えるのもアレだから記憶(人格)消去(デリート)した方が良いわよ?」

 

突然現れた眼帯に黒いエプロンドレスの金髪美女が口を挟む。その傍らには白い鳩がいる。

 

「えー かわいそうだよー」

 

「そう? なら封印は弛めておくわ」

 

「またねー」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

抗議の言葉を口にすることなく僕の記憶は眩い光の中で薄れていった――。

 




二次創作元リスペクトの熱いダイレクトマーケティング

※改訂の補足
第12話投稿前に、第1話~第11話の文章規則のガイドラインを統一。
引用符による強調のガイドラインを決めてルビを減らした。
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