エロゲー世界に神様転生したのに負け組じゃないの?   作:のぶほし

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この話はTHE IDOLM@STER SPに登場する
ライバル961プロのプロジェクトフェアリーの
デビュー曲『オーバーマスター』を聞きながら書きました。

作中で同名の曲が登場しますが、
実際にレーティア・アドルフが歌った曲は当然別物です。


第10話 ルーキーズ党首討論会

 

――――1103プロダクション 応接室、第08週――――

 

「あら、シューペアさん、御機嫌よう」

 

ひとみ芸能事務所(1103プロ)は個人経営の小さな芸能事務所だ。

正体不明のヴァーチャルプロデューサーの“電子の妖精”マリーPと

コンタクトの取れる数少ない芸能事務所の一つだ。

6923プロのヘス代表とは知り合いで相互に友好的な関係を築いている。

 

先日お世話になったばかりのシューペアは、

握手会(パーティー)に代わる選挙資金確保のお礼にレーティアの新曲を持参してきたのだ。

 

1103プロ総統選挙(アイドルアルティメット)には候補者(アイドル)を擁立していない。

 

「レイコが連れて来たアイドル候補者(魔法少女)も逸材でしたけど……はぁ」

 

夫のドクツ人バイオリニストと結婚したことで、

オジャルマル共和国の国籍を取得した日本帝国生まれの仁美・ミキ代表が、

完成したばかりのレーティアの1stリリース曲『オーバーマスター』を聞いてため息を漏らす。

 

魔法少女(アイドル)の仁美が寿引退後に芸能事務所を設立したのは、

お世話になった元プロデューサーのヘス代表の夢を叶える力になれるような

世界を変える魔法少女(ディアリースターズ)を見つけるためだった。

 

しかしヘス代表から“世界を変える魔法少女”(飛びっきりの魔女の卵)を見つけたと連絡があった。

 

P志望のレイコがスカウトしてきた魔法少女との奴隷(アイドル)契約は諦め、

この芸能界でも政治の世界(業界の闇)に関わらない場所で活動することを薦めた。

また総統選挙に興味を持つマリーPには、信頼できる他の芸能事務所の代表を紹介した。

もちろん経営者として金蔓の芸能事務所からの仲介手数料は弾んで貰ったのだが……。

マリーは気まぐれなヴァーチャルプロデューサーだが敏腕Pとしての手腕は本物だ。

魔法少女の才を持つ少女も総統選挙とは別の“きらめく舞台”で活躍できるだろう。

 

「それにしても凄いですわ。私も夫の関係で古典音楽(クラシック)には詳しい方ですが、

 事前に知らなければVTVN氏の作詞作曲だなんて全く分からないですわね」

 

6923プロの新米プロデューサーが持ってきた販売前の曲は、

ベルリンフィルの指揮者で古典音楽界の大御所であるVTVNが手掛けている。

 

発明芸術家(マルチクリエーター)のVTVNは、初の総統選挙に取り組む音楽プロデューサーとして、

アイドルソングに挑戦し、挑戦的な新曲(ポップス)を作り出していた。

 

6923プロはVTVNとの独占契約を公表しておらず、

この新曲も作詞作曲6923プロとだけ書かれて制作者は明らかにされていない。

 

基本的に新人アイドルのデビュー曲は政党団体(プロダクション)の所属のプロデューサーが作るので、

よほどのことがない限りは作詞作曲者を売りにすることはない。

 

「プロジェクトを手動しているマネージャーのゲッベルスによると、

 著名な音楽プロデューサーVTVN氏の名前を全面に出して販売したら、

 売れても候補者(アイドル)の存在が付属品(おまけ)になってしまうとのことでした」

 

「ええ。その者の言う通りだと思いますわ。

 プロデューサーはあくまでも、裏方でありアイドルの引き立て役ですもの」

 

仁美は元Pのヘス代表を命の恩人として慕っており、

シューペアから相談を受けた資金洗浄(マネーロンダリング)の手助けした。

 

シューペアは何故か多額の暗号仮想通貨EroCoinを入手しており、

それらを政治献金として、6923プロの政治資金にしたいと考えていたのだ。

 

出処は漏らせないそうだが、VTVN氏との契約に資金が必要だとは聞いた。

清廉潔白なヘス代表に迷惑をかけたくない気持ちは仁美も良く分かる。

 

量子通信による星域間ネット(ダーク・ウェブ)で生まれたの暗号仮想通貨EroCoinは、

仮想世界内で基軸通貨のスペースユーロ、スペースドルに代わる勢いで広まっている。

 

一流芸能人カクトも暗号通貨を絶賛し、新しい仮想通貨事業を始め宣伝しており、

欧米でも日本帝国に続いてEroCoinバブルが始まりつつあった。

庶民派の中には世界恐慌の不景気の中で汗水たらして安い賃金で働くより、

暗号通貨に投機(マイニング)した方がリターンが大きいと考えるものもおり、

実際にそれで利益を上げるものも増え始めていた。

 

ハイパーインフレで為替相場が乱高下している

オジャルマル共和国では政府が仮想通貨取引の税制強化や規制も検討していた。

 

芸能界(せいじのせかい)にはJKリフレの裏オプション(タックスヘイブン)のような方法で、

風営法の抜け穴をついた租税回避行為を続ける芸能事務所(政党団体)も少なからずある。

先日も芸能事務所シックスナイン(69プロ)の代表が風営法違反で逮捕された。

 

かといって綺麗ごとばかりで魑魅魍魎どもが蠢く芸能界では生きていけない。

清廉潔白なことから“白い騎士”(ホワイトナイト)と言われた辣腕営業マン(プロデューサー)のヘスは、

担当アイドルに枕営業(ハニートラップ)を強要するようなことはなかったが、

芸能界(せいじのせかい)において枕営業(ハニートラップ)による炎上商法(プロモーション)はありふれた出来事だ。

 

炎上を飯のタネにする芸能記者(パパラッチ)も業界には数多くいる。

 

シューペアの用意したEroCoinは、1103プロを通じて換金された。

 

知り合いのチュン帝国人の金満福耳(2933プロ代表)は黒い噂も絶えないが、

移籍業務(人身売買)資金洗浄(マネーロンダリング)といった代行(エージェント)業務で儲けていた。

話題のEroCoinにも大いに興味があったようで、話を持ち掛けたら案の定食いついて来た。

 

仁美も2933プロが、何処の事務所から現金(ナマモノ)を引っ張って来たのかは知らないが、

総統選挙(アイドルアルティメット)の裏側では、これまでにない多額の闇資金が動いてるのは確かだ。

 

未だ業界の闇に疎いだろう新米プロデューサーと言葉を交わしながら、

仁美はヘス代表について考える。最初に出会ったときから不思議な雰囲気の人物だった。

しかし彼は彼で業界の闇を見つめ続けて戦いながら敏腕Pとなった人間なのだ。

せいぜい中堅レベルの自分が心配することではないと気づく。

 

「あら、もうこんな時間……。ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 

 

――――特別党首討論会ルーキズ、第10週――――

 

「全員集合したわね? さあ、今日集まってもらった皆を、紹介するわ!」

 

集まった売り出し中の新人アイドルたちに審査員が声をかける。

 

複数のアイドル候補者を抱える大手芸能事務所からの参加者はいない。

党首討論会(ライバルオーディション)による党首ダメージは、政党団体そのもの損害に繋がるため

新人の登竜門である“ルーキズ”は総統選挙(アイドルアルティメット)法規制(ルール)では、

どうしてもギャンブル性が高いと考えられ敬遠されているためだ。

 

だから集まったのは一発逆転を狙う弱小芸能事務所(政党団体)の他に、

中堅どころの芸能事務所から代表候補者(アイドル)が党首として僅かに参加している。

 

中堅規模の芸能事務所の代表アイドル候補者(党首)となると

少なくとも10万人以上の支持者(ファン)を集めており小選挙区(Cランク)は勝ち抜けるだろう。

しかし中選挙区(Bランク)の勝ち抜きを見据えた芸能事務所(プロダクション)にとって、

ルーキズはリスクを冒してでも参加する価値のある魅力的な舞台に思えた。

 

C級アイドルとB級アイドルは、例えるなら市議会議員と国会議員くらいの差だろうか?

選挙区(ランク)が変わればアイドル選挙活動で動く金銭も手に入る利権も桁が大きく違うのだ。

 

集まったアイドル候補者達の力量を流行りのイメージレベルでいえば、

レベル4~6のアイドル候補者が中心の公開討論会(オーディション)と言えるだろう。

 

全国区で放送される特別公開討論(スペシャルオーディション)だけあって、

小選挙区(エリアオーディション)の平均レベル(1~3)に比べれば、随分と高いのは間違いないだろう。

 

「あら、忘れてたわ! みんなに素敵なお知らせよ。

 今日は何と芸能記者(政治記者)さんと外国特派員(海外諜報機関)さんが、いらしてるのよ!」

 

当然ながら注目度も決戦のバトルフィールド(メジャーリーグ)と呼ばれる全国区(大選挙区)と同レベルとなり、

将来の金の卵を生む鶏(トップアイドル候補)を探しに業界関係者が駆けつけてくる。

 

審査員は政治(やみ)には疎い生粋の芸能(メディア)関係者で自らの仕事に誇りを持っていた。

だからこそ芸能記者(パパラッチ)はともかく内政干渉ともいえる外国特派員(海外諜報機関)の存在は気に入らない。

最近では各国から審査員に圧力が加わっているという噂さえ聞く。

 

実際に今日の三人の専門審査員の内、外国審査員が二人もいる。

 

ビジュアル担当がファンシズム先進国を謳うイタリン人の子豚で、

ダンス担当が各国の政治的綱引きの結果選ばれた日本帝国の駐在武官(芸能顧問)だ。

 

ドクツ人審査員は「巨乳至上主義」(おっぱいサイコー)の傾向が強いイタリンの子豚を信用していない。

極東後進国(HENTAI JAPAN)の駐在武官(芸能顧問)にアイドル候補者の何が分かるのかと馬鹿にしている。

 

だからこそボーカル担当および審査員長の自分がシッカリしなければと思っている。

 

「運命の分かれ道って、いきなり来るものなのよ。ゾクゾクするわね!」

 

あえて作ったキャラクターのオカマ口調で声を出し自らを盛り上げる。

 

「う~ん、そうねぇ、1番ちゃん! 皆を代表して言うことないかしら?」

 

ふと見知らぬ無名アイドルに目が留まって思わず声をかける。

 

ゲッベルスが用意したビヨンドザスターズと呼ばれる

ビジュアル面の強調に特化した黄金色に輝く漆黒のステージ衣装が、

レーティア・アドルフの金髪と白い肌をより一層映えさせる。

 

「レーティア・アドルフだ。よろしく。

 この中からトップアイドルになるのは私だけだ。

 悪いが、みんな堕とさせて貰う」

 

少しだけ騒がしかった控室内の空気が、

吹雪でも入って来たのかと錯覚するほど一気に凍る。

 

「あ~ら、カッコつけた(ヤツ)は嫌いじゃないけど、

 出だしで目立とうとした作戦が失敗すると恥ずかしいわよん。

 次の計画(プランB)は用意してるのかしら?」

 

有権者に媚び売る牙の抜けた候補者が多い中で、

久しぶりに心が疼くホンモノが現れたと審査員は感じた。

 

だからこそ場の雰囲気を温め直そうと軽口を叩く。

 

「ハッタリかかどうかは、すぐに試してみればいい。

 もちろん、次の計画も用意されてはいるだろうが、

 プランBは中選挙区で、プランCは大選挙区の為の物だ。

 私はアイドル総統(アイドルマスター)になるつもりだから今年の楽しみにするといい」

 

この候補者(アイドル)は最初から狙う目標(ランク)が高すぎる!

 

審査員は内心の驚きを巧みに隠す。選挙参謀(プロデューサー)は正気か?

候補者(アイドル)の大半や付き添い(プロデューサー)、他の審査員も唖然としている。

 

総統選挙(アイドルアルティメット)の短い期間で無名の新人アイドルが、

トップアイドル(A級アイドル)に昇り詰めるなんて夢物語に近い。

 

E~Dの候補者はそれこそ万人単位でいる。

Cランクといえるアイドルは千人くらいだろう。

Bランク、全国区のアイドルともなれば百人にも満たず。

トップアイドルと呼ばれる存在は欧州星海域(ヨーロッパ)でも十人いるかいないかだ。

 

アイドルを夢見るなら誰だってトップアイドルになりたいと言うだろ。

言うだけなら無料だ。想うことだって自由だ。

 

だけど市議会議員に立候補する無名の新人候補者が、

街頭演説で一年以内に大臣や総理になりますなんて言ってたら、

誰もがほら吹き以前に頭の中身を疑うだろう。

 

プロデューサーやプロダクションの指示で、

高嶺の花というキャラづくりをしてるだけかもしれないが……。

 

「アピールタイムは十分ね。

 けどアイドル候補者なら、最後は自らの曲が

 有権者の心に響き渡らなくちゃ意味がないわよ」

 

注目を浴びたと同時に全ての候補者を敵に回した。

舞台の上に刺激的で危険な香りが漂う。

あえて初手から業界のタブーを冒したともいえる。

 

そして……この日、妖精が……

 

偶像の集う世界(せいじのせかい)で、初めて舞い踊る。

 

~~♪

 

今までの芸能界(せいじのせかい)では耳慣れない導入曲が流れる。

この曲をクラシックの巨匠が作詞作曲したと言っても信じる者はいないだろう。

 

~~♪~~♪

 

どこまでの自分の才能に絶対の自信を持ったアドルフが歌う曲。

 

今まで自分の才能を学術論文(ロジック)以外で、

他者に表現する手段を持ちえなかった大天才(アドルフ)が、

天才芸術家VTVNの力を借りて、その小さな美しい翼を大きく広げる。

 

ここに何一つ(リスク)を恐れない。絶対無敵(アルティメット)のアイドルが爆誕する。

 

~~♪~~♪~~♪~~♪

 

芸能界(せいじのせかい)のルールなんて関係ない。

私の魅力(才能)が見抜けない愚民(ファン)は相手にするつもりはない。

 

私は私のやりたいようにやると言わんばかりの態度を、

ボーカル(歌詞)とダンス(踊り)で見事に表現する。

 

オーバーマスターはゲッベルスの依頼に共感したVTVNが、

ボーカルもダンスもビジュアルの為に全振りした新曲(アイドルソング)だ。

 

~~♪~~♪~~♪

 

強気な態度とは相反する甘い声に可愛いルックス。

そのアンバランスな魅力が審査員を惹きつける。

 

何よりも素晴らしいのは圧倒的な存在感(ビジュアルアピール)だ。

 

~~♪

 

レーティア・アドルフがデビュー曲『オーバーマスター』を歌い終えた後、

全ての代表候補者が舞台に上がることを拒否し、党首討論の辞退を申し出た。

 

各芸能事務所のプロデューサーも所属政党団体へのダメージを恐れてそれを認めた。

 

辞退理由は仮病でもダブルブッキング何でもでも構わない。

この化け物と比べられるくらいなら、

最初っから参加しなかったことにした方がマシだと判断した。

 

異例づくめの党首討論会(ライバルオーディション)は、

6923プロ所属の新人アイドルの独演会(ライブステージ)となった。

 

アドルフの『オーバーマスター』は小選挙区の新人候補者のデビュー曲としては、

異例の初週ミリオンセラーを達成し、一度の討論会(オーディション)で100万人の支持者(ファン)を獲得した。

突如、現れたホンモノのアイドルは総統選挙における台風の目玉となる。

 

 




これで第一章、第一部が完結です。
原作ゲーム「大帝国」におけるアイドル総統の実力を加味すれば、
小選挙区や中選挙区のステージなどで苦戦するはずもありません。

小選挙区はあくまで物語の軸となる
プロデューサーとアイドルの出会いと紹介が中心です。

第二部の中選挙区では原作ゲームに登場する様々な人物が、
アイドルとしてプロデューサーとして芸能関係者として登場します。

※EroCoinネタの投稿後に仮想通貨全体が大幅下落して笑った。
できればワルプルギスの夜編で大暴落して欲しかったネタ的に
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