エロゲー世界に神様転生したのに負け組じゃないの? 作:のぶほし
――――6923プロ会議室 育成および方針の決定、第13週――――
「まさかレーティアに何か異常が?
ハッ! シューペア、あなたアイドルにコミュニケーションとか言って
パイタッチとかしてないでしょうね!?
同性の私ならセーフでも、異性の貴方はアウトよ。すぐに通報するわ」
「プロデューサーが担当アイドルにセクハラなんかするかよッ!
それにコンディション管理はマネージャーの仕事じゃないの?
責任転換はいい加減にしろよな!!」
ゲッベルスと同僚になってから自分の沸点が下がっているような気がする。
「いや、ゲッベルス君は専属マネージャ―として十分やってくれている。
もちろんシューぺア君がセクハラをしたなんて話も聞いていない。
それとは別の問題がアイドルではなく、我々支援者の側にあるんだよ」
「「私たち《プロデューサー》に?」」
「オッホン。担当の
レーティアの成長の伸び率をグラフにしたところ緩やかに鈍化している」
「そ、それは……たしかに、初期の進化ともいえる成長率と比べれば……」
ビジュアルレッスンを毎日付きっきりで行って成長を間近で見守っていた
ゲッベルスにも自覚があったのだろう。反論ができず口ごもる。
「ビジュアルのレッスンでは水を吸い込むスッポンジのように、
新しい取り組みは何でもすぐに覚えて、実践していきましたからね。
早熟タイプのアイドルが初期の爆発的な成長期から
安定期に入ったと考えるべきでは?」
「なるほど。レーティア君の成長タイプは早熟型かね?」
「……判断は早計ですが、初期の急激な成長は成熟型に多いかと。
それに俺の担当するボーカルとダンスのレッスンは始まったばかりです。
今の成長速度でも大選挙区までにはボーカルとダンスの底上げで、
十分にA級アイドルの力量まで育成できるのでは?」
「ふむ。シューペア君がそこまで言うなら置いておくとしよう。
今後のレッスンはアイドルの成長も注意しながら見守ってくれたまえ」
「はい!」「わかりました」
「さて、ベルリン星域の南部ミュンヘン地区に籍を置く我が6923プロは、
中選挙区では南ブロックにあたり、そこのグループAに立候補する」
「「はいっ!」」
いよいよ中選挙区戦だ。やっぱり気合が入る。ゲッベルスも同じ様子だ。
「流石、我が6923プロの精鋭諸君だ。気合が入っているね。
小選挙区は新人アイドル候補者のスカウトを含めて
弱小芸能事務所の準備ということで設定された期間も長かった。
しかし中選挙区は最終投票日が第24週だ。
期間は小選挙区の半分だが、スケジュール管理は大丈夫かね?」
現在は初めての会議から数えて第13週目だが、
小選挙区はレーティアがやゲッベルスが所属する前から始まっていた。
6923プロは小選挙区の途中から準備を進めて候補者を擁立した。
「2ndシングル『READY!!』は作詞作曲の骨格ができています。
音楽プロデューサーVTVN先生と協力すれば来週にもリリースできます」
「ドクツ民の団結による新生ドクツの幕開けが歌謡曲『READY!!』です。
これはレーティアの魔法少女としての願いそのものでしょう。
借りて来たものではなく彼女が綴った政策課題から生まれた理念です。
マネージャーとしてレッスン期間も問題ありません」
「よくわかった。諸君が裏方の主役だ。よろしくたのむよ!
中選挙区では最初に候補者のお披露目がある。
第15週から幕を開ける南ブロックの全党大会(フェス)がそれだ。
フェスにはA~Dグループの全てのアイドル候補者が一斉に集まる。
ライブパフォーマンスも考えておいてくれたまえ」
「わかりました」「大丈夫です」
「それに中選挙区では中堅・大手の芸能事務所が、
複数擁立のアイドル候補者の中から党首を選別しようと見定めている。
同じ選挙区の他アイドル候補者のアイドル戦闘力を肌で感じる機会だ」
泡沫候補と呼ばれる地下アイドルの戦闘力を二桁だとすると、
小選挙区の舞台で戦った政党団体所属のアイドル候補者は、
アイドル戦闘力三桁が大半で四桁あれば突破といった戦いだ。
シューペアの前世の知識にある
Zの前の天下一武道会や大魔王との戦いといった惑星レベルの段階だろう。
中選挙区になればアイドル戦闘力も四桁が基本、五桁あれば当選確実と言われる世界だ。
Zで言えば序盤だが、いよいよ
「それと、ひとつだけ注意しておこう。
総統選挙は芸能界と政界が協力した一大イベントだ。
中選挙区ともなればオジャルマルの議員候補も参加してくる」
与野党問わず大手の芸能事務所は、
数多くの政治・芸能業界出身のアイドル候補者を抱えている。
しかしオジャルマル共和国議員が総統選挙に転身するのは難しい。
例えば若手国会議員のラディッツ氏の推定アイドル戦闘力は1500LP。
これは一人前の芸能業界人の実力としては最低レベルだろう。
現役の共和国の大臣やヒンデンブルク首相でさえ、
推定アイドル戦闘力は約2000~3500LPほどだと推測されている。
オジャル共和国議会の閻魔大王、ベルリン北区の界王と言った
政界で実績のある議員たちも人気取りで総統選挙に立候補している。
ただある程度はアイドルたちの引き立て役だと割り切っている。
もし総統選挙でC級やB級のアイドル候補者になれれば、
元アイドル候補の審査員として引退後に芸能界へと天下りできる。
また総統選挙で将来のアイドル総統とのコネを気づいて取り入れば、
政治家としての栄達の機会もある。
アイドル総統は政治権力とと密接に結びついた存在だ。
芸能界に巨額の資金が投資されているのも当然だろう。
「全党大会《フェス》には業界人が集まることになる。
アドルフ君が蜘蛛の糸と呼ばれる利権構造に、
絡み取られてしまわれないよう注意したまえ。
もちろん君たちプロデューサーもだ」
「……はい。気を付けます」
業界の闇に詳しくないゲッベルスも剣呑な雰囲気に息をのみ応える。
「蜘蛛の糸……まさか旅団《クモ》ですか?」
「シューペア君、迂闊なことを口にするのはくれぐれも気を付け給え。
芸能事務所“歓喜力行旅団”は総統選挙には、
現在のところアイドル候補者を擁立していない。
私は業界の複雑な利権構造をクモの糸に例えただけだ」
「しかし893プロは多くの系列を持つ業界最大手――」
「シューペア君、歓喜力行旅団のハイドリッヒ団長は、
芸能事務所を数字で呼ぶことを嫌う。分かっているのかね」
「……はい。失礼しました」
「プロデューサーの迂闊な発言がアイドルを
身の危険に晒すことだってある。注意したまえ」
いつになく重い声でシューペアに注意を促す6923プロ代表ヘス。
歓喜力行旅団の団長ロベルト・ハイドリッヒは、
かつて芸能界で“最強P”と呼ばれたヘルマン・ヘスの憎むべき仇敵。
伝説の男性アイドル“黒覇王”ルシルフルのプロデューサーとして
芸能界の頂点を極めて893プロを設立。今や芸能界のフィクサーだ。
狩人《ハンター》と呼ばれる好戦的なアイドルが系列に多数所属している。
「失礼しました……申し訳ありません」
シューペアも自らの迂闊さに気付き失言を詫びる。
893プロは“殺し屋”ゾルディック芸能事務所(564プロ)とも繋がりがある。
旅団(クモ)を敵に回すことは、芸能界の闇を全て敵に回す覚悟がいる。
「あの、ヘス代表? よろしいですか?」
とあることに気付いたシューペアがヘスに質問をする。
「今すぐにはともかく中選挙区が進めば、
レーティアの人気が高まりファンの注目も集まります。
今のところレーティアの送り迎えは、
マネージャーのゲッベルスが担当してますが……
女性二人だけでは何かあったときに危ないのでは?」
「ふむ。たしかにシューペア君も付き添うこともあるが……
まずはアイドルの警護については信頼できる外部委託先を利用する。
ただ我が6923プロ単独の党大会《コンサート》の主催も考えれば、
警護担当の要員《スタッフ》も必要なるだろう」
「そうですね」「そうね」
「ふむ。プロダクション側も課題が多いようだね。
他にはあるかね?」
「私は今後重要機密が増えることを考えれば、
情報処理に長けた事務担当のスタッフが必要だと思います」
6923プロは経理業務や申請業務や各種手続きなんかは、
かなり効率化されて外部にアウトソーシングしている。
電話してお願いすれば業者がやってくれるのだから超ホワイトだ。
それでもアウトソーシングできない書類業務もあるから
今はハッカーの俺様がサクサクと対処してる。
ゲッベルスは書類仕事は得意とはいえない人間だからな……。
今後は俺の業務が増えることを考えれば事務担当は必要だろう。
「たしかにシューペア君に頼り切りも問題だ。
人員は増やしたいが……
元スカウトの私はアイドルもスタッフも質にこだわるタイプなんだよ。
少数精鋭《ライトスタッフ》によるホワイト経営が、
我が6923プロのモットーだ。私も人材は探しておくが、
素質を備えた人材が居ればアイドルに限らずドンドン推挙したまえ」
「はい!」「わかりました」
根本な人手不足(マンパワー)の問題を、
小手先の業務効率の改善計画とか、謎の機器の導入とか、
根性論による就労時間の増加とかで対処しない
ヘス代表をブラック企業を見習って欲しい。
二流・三流の経営者は「賃金が、固定費が、内部保留が」というが、
目標(経営理念)が高ければ、投資がかさむのは当たり前だ。
企業イノベーションは、創造的破壊スクラップ&スクラップからしか生まれない。
例えばアマゾン星域のアステカソフトだって、
エロ同人誌の通販業務を始めた際に多額の投資をして馬鹿にされた。
ハニーはCEOはエロ同人誌を売るために世界中に物流拠点を作ったのだ。
エロ同人誌を売るために巨大倉庫を各地に作った埴輪を皆が馬鹿にした。
そして書籍のネット通販から始まったアステカソフトは、
次にソフトウェアの販売に流通網を広げ、
今や電化製品から生鮮食品まで幅広く取り扱っている。
アマゾン星域の闇ネットにアクセスすれば手に入らないものはない。
ブルセラショップと呼ばれる宇宙の闇市エロカリもアステカ帝国にある。
実は闇ネットを通じた世界の物流の支配者は今や埴輪たちなのだ。
ガメリカの軍産複合体が唯一支配できていないが、
ハニーCEOが構築したアマゾンの物流および販売網なのだ。
ハニーCEOは今まで株主に利益を一銭も配当したことがない。
投資家の評判も、株価も気にせず、規模拡大の赤字経営を続けた。
儲けたお金は次のビジネス(遊び)に次々と投資していった。
最初は皆がハニーの放漫経営ではいつか破綻すると馬鹿にしていたが、
今やハニーCEOの勢力を馬鹿にする投資家は一人もいない。
世界で<埴輪陰謀論>などの噂が広がっているのはそのためだ。
暗号仮想通貨EroCoinは日本帝国の投げ銭文化から広まりを見せた。
しかし闇ネットの事実上の基軸通貨となっているのがハニーポイントだ。
ハニーポイントはアステカ帝国の法定通貨ではない。
あくまでアステカソフトの企業通貨ポイントに過ぎないが、
金券代りのギフトカードなどが、
各国で売られ殆ど公的な通貨と同じ扱いになっている。
オジャルマルクやスペース円より国際的な信用があるのだ。
俺が考え事をしている間に……、
ゲッベルスが担当アイドルのレーティアのためにと
女性の視点から働きやすいプロダクション作りの提案を行う。
内容はヘス代表に了承され十分な予算もおりたみたいだ。
「――ふむ。プロダクションの課題としてはこんなところかね。
何かあればいつでも言ってくれたまえ。
さて話を全党大会《フェス》に戻そう。
中選挙区は、各プロダクションにとってアイドルの育成期間でもある」
中選挙区をマイナーリーグと呼ぶ人がいるは育成の意味込めてだ。
大手の芸能事務所が使い捨てとして複数の業界未経験者を擁立している。
育成途上の新人アイドル候補者たちは、
業界では栽培マン《シンデレラガール予備軍》と呼ばれている。
彼女たちの推定アイドル戦闘力の初期値が1200LPほどだ。
中選挙区レベルでエラそうにしている中堅アイドル候補者の
アイドル戦闘力が4000LP程度とするとかなり低い。
しかし急激に成長しトップアイドルとなるシンデレラが生まれる可能性もある。
「他プロダクションの魔法少女の才能を持つ者に注意したまえ。
グループ上位のアイドル候補者の実力を自らの目で確認することも大切だ。
南ブロックはベルリン地区の北ブロックに比べれば……激戦区とはいえないだろう。
それでも大選挙区で戦うライバルの底力も体感することができる」
例えばエリート戦闘民族《一流芸能人》のカクトは大選挙区からの参戦になるが、
芸能界で一流アイドルとして活躍していただけあって、
総統選挙という特殊な舞台でも戦闘力はA級アイドル候補者の18000LPと推定されている。
大選挙区では戦闘力五桁が当たり前、ドラゴンボールでいえばフリーザ編序盤だろう。
当初シューペアは初週100万枚の売り上げたレーティアの才能に、
かなり自信を持っていた。それは井の中の蛙大海を知らずだった。
芸能界のトップクラスともなれば1000万の売り上げが当たり前の世界だ。
今回の総統選挙にも中選挙区からVRユーチューバーの上位者、
ネットアイドル四天王が参戦すると噂されている。
「それに他事務所の敏腕プロデューサーとも出会えるかも知れない。
君たちプロデューサーのレベルだって、
アイドル候補と同様に比較されているのだよ」
中堅・大手事務所は成長したアイドル候補者を弱小事務所から引き抜くことだって可能だ。
移籍はアイドル候補者にとっても、より良い環境で成長でき、
大手のバックアップを受けれて更なる高みに昇れるというメリットがある。
また弱小事務所にとても移籍金は大事な収入源だ。
資本力がなく規模の小さいプロダクションでは大選挙区は戦えない。
そこでアイドル育成ビジネスを主軸に置いた芸能事務所も数多く存在する。
この業界で敏腕と呼ばれるプロデューサーになれば、
アイドルでなくとも大手からの引き抜きだって十分にある話だ。
全国区の大選挙区をメジャーリーグと呼ぶのはそのためだ。
メジャーとマイナーの舞台では、すべてに大きな差がある。
893プロ歓喜力行旅団だけではなく
大手といわれる事務所は数多くのプロダクションを傘下に収めている。
プロダクションごとに得意とする分野があるので、
特徴に合せてアイドル候補者を分散させるのは容易い。
当然だが系列のアイドル同士が戦わないように、
談合して選挙区を分けるプロダクションもある。
逆にあえて系列アイドル同士をじゃんけん大会などで競わる所もある。
893プロの系列では蟲毒のようなサバイバルレッスンが行われる。
過酷な競争下で鍛え上げられたアイドルは他所とはギラつきが違う。
生き残った者だけが旅団《クモ》の狩人《ハンター》なり、
ライバルオーデションなどで他事務所のアイドルを情け容赦なく蹂躙する。
「とにかくアドルフ君の才能に引っ張られるだけでは駄目だ。
私たち大人もしっかり成長してアドルフ君を支えてあげる必要がある。
それがプロデューサーとプロダクションの課題だ。
今後もしも所属アイドルが躓くようなことがあれば、
それはアイドルの責任ではなく、我々の責任なのだからね」
「アイドルの成功は、アイドルのもの。
アイドルの失敗は、プロデューサーのもの
それがプロデューサーの心構えだ。
一に勉強、二に勉強、我々も成長を忘れてはいけない。
何よりアイドルの失敗を、アイドルにせいにしてはいけないよ。
私からは以上だ。……さて、他には何かあるかね?」
会議中のメモをざっと眺める
・中選挙区の南ブロックAグループに立候補
・南Aグループ本命はマインシュタイン大将
・特別公開討論の[TOP×TOP!]の党首討論会に参加(第19週)
・2st曲として『READY!!』をリリース(第14週)
・南ブロックの全党大会《フェス》が開催(第15週~)
・レーティアのレッスンは成長タイプを考慮しながら様子見
・警護担当の要員を雇用予定(要警備指揮能力)
・事務担当の要因を雇用予定(要情報処理能力)
ゲッベルスが俺の情報端末を覗いてくる。
てめえは社会人ならメモくらい取っとけ!
「あ、選挙ポスター《グラビア》の撮影がまだよ!」
「それだっ!!」
小選挙区で意図的に露出を控えてたから、選挙ポスターを用意していない。
全党大会《フェス》に選挙ポスター《グラビア》は必要だ。
「ふむ。写真家《カメラマン》の手配は……そうだね。
シューペア君にお願いしてもいいかね?」
「はいっ! 分かりました」
写真家の伝手はないけどドクツのファンシズム連盟にでも相談に行けば大丈夫だろう……
あそこは芸能界における商工会議所のようなものだ。
できるだけ原作ゲーム「大帝国」の登場キャラ(軍人)が使いたい。
ということで無理やり理由を付けてアイドル総統選挙に投入してますが、
やはり業界関係者が足りないのでオリキャラも多いです。
ロベルト・ハイドリッヒはライバル事務所のポジションです。
893プロは961プロよりずっとえげつないですが……。
総統選挙編では宇宙艦隊の艦隊戦とかは書けないので、
アイドル候補者たちによるオーデション(公開討論会)での
ViDaVoを駆使した熱いアイドルバトル(政策討論)がメインで行われます。