エロゲー世界に神様転生したのに負け組じゃないの? 作:のぶほし
――――芸能事務所ドクツ第三プロダクション、代表室――――
「失礼します。ハンス・ウルリッヒ・シュペーア、参りました」
「おお、よく来てくれたシュペーア君。
紹介しよう、今日から一緒に働くことになったグレシア・ゲッベルス君だ」
自分の
ということは推薦したアイドル候補者も採用が決まったのだろう。
「そして新たな
とは言っても三人とも既に面識があると思うがね」
「……え?」
こんなに可愛い女の子と出会っていたら忘れるはずなんて無いじゃないか。
「はああ、貴方って本当に
この女、また童貞とか言いやがって!!
「やれやれ、こうなるとゲッベルス君の諫言は受け入れるしかないね」
「ヘス代表、何のことですか?」
「ふん、私は覚えているぞ。
先日、大通りでゲッベルスに出会ったとき、後ろにいた愚民だな?」
「ゲッベルスと一緒にいた……?」
「ホントに覚えてないの?(呆れ)
あのとき『ドクツに力を! 無所属 レーティア・アドルフ』
ってスケッチブックを掲げてた女の子よ」
「えっ? あのボロボサの服装と髪型の、やぼったい眼鏡の地下アイドル?」
ついつい二、三度、アイドル候補者をガン見してしまう。
確かに身長と髪の色、瞳の色は同じだ。それでも記憶の中の彼女と一致しないし信じられない。
「ボサボサの髪は、ちゃんと洗って、トリートメントして、ブラッシングしたら
……想像してた通りの天使の輝きを取り戻したわ」
「服装ですって? そんな取り替えのきくものなんて見るべきところではないわ。
よく見なさい、レーティアの白くて綺麗な肌を。
みずみずしくて、ぷにぷにで、どんなステージ衣装だって似合うに決まってるわ」
「貴方はボソボソと喋る彼女の言葉を、声を、真剣に聞こうとはしなかった。
私には分かったわ。内に秘めた真摯な想いを歌詞に変えれば多くの人を惹きつける。
それに甘さを備えた声は、歌を歌わせれば、みんなを和ませることができるって――」
反論の機会も与えず矢継ぎ早に繰り出せれる言葉のボディーブローに俺は耐えるしかない。
「女の子は魔法の力-メイクアップ-で化けるのよ。
本質が見抜けないプロデューサーに最高の原石(才能)を磨くことができるのかしら?」
「まあまあ、ゲッベルス君。そのくらいにしておきたまえ。
シュペーア君は何か反論はあるかね?」
「いえ、ありません。……彼女の言う通りです」
惨めな俺にヘル代表が救いの手を差し伸べてくれたが、すべて彼女の言う通りだ。
レーティア・アドルフの件に関しては自らが節穴だったと認めざる得ない。
苦し紛れの下手な言い訳は己の評価を更に下げることになるだろう――。
「ふむ、それではこうしよう。
アドルフ君の育成業務は専属マネージャーのゲッベルス君が担当する。
シューペア君は音楽プロデューサーとしてゲッベルス君を助けてやってくれたまえ」
「「えっ? こいつと一緒にですか?」」
シューペアとゲッベルス、二人の男女の台詞がハモる。
「私はアドルフ君が書いた
政治、経済、軍事、発明と多岐にわたる
不満があるみたいだが、ゲッベルス君だけでは彼女の考えを
「そ、それは……」
「シューペア君は新米で今は未熟だが
専門の軍事だけではなく、政治、経済な
きっとゲッベルス君の足りないところ助けてくれると思うがね」
「わかりました。ヘス代表がそう仰るなら異存はありません」
「アドルフ君も、シューペア君もそれでいいかね?」
「私は構わない。アイドルや総統選挙のことは何一つ分からないんだ。
アイドル候補者としての私の才能を評価し、信じてくれた
「ヘル代表、汚名返上の機会を与えて下さってありがとうございます。
専属マネージャーのゲッベルスと協力して、必ず彼女を
「よし、ゲッベルス君は専属マネージャーとして
アドルフ君の側につき、人付き合いや機微の利かぬ彼女を助けてあげなさい」
「はい」
「シューペア君はアドルフ君が
時に厳しく、時に優しく、指導してくれたまえ」
「はい!」
「アドルフ君、君は並ぶ者のない天才かもしれないが、この業界では素人だ。
ゲッベルス君もシューペア君もそれぞれの分野で
「わかった」
「それじゃあ、契約を始めよう♪」
ヘルマン・ヘスが大袈裟なポーズでパッチと指を鳴らすと部屋の景色が見る見ると変わっていく。
――
――
ヘス代表がドイツ語の呪文を唱えていくと、
空間に古代ルーン文字が浮かび上がり代表室を包み込む。
――
応接室が御伽噺に描かれた奇妙な異世界のような異彩を放つ空間へと変貌を遂げ始める。
俺と同様にゲッベルスもアドルフも唖然と周囲を見渡している。
――
色鮮やかな異空間に、かわいい感じの生き物から、怖いと感じる生き物まで、
見たことも無い様々な生き物たちが法則性の理解できない不思議な躍りを踊っている。
―――
「これが“白い淫獣”とも呼ばれる私の
【
この平行世界で結ばれた契約は必ず遵守される。
もし契約を途中で破棄した場合、対象は世界規則から破棄され
白い肌の淫獣が大きな赤い瞳を輝かせながら楽し気に説明する。
「ば、ばかな。幻覚だ。こんなことはありえない……」
「
シューペア君とゲッベルス君は覚えておくと良い。
一流と二流の差は“想い”の強さだ。
そして一流と超一流を隔てる壁が
「
ついにアドルフが
「
「淫子……まさか日本人宇宙物理学者の
あんなふざけた
「私は
この世界には
働く力が間違いなく存在する。その力の源を私は淫子と呼ぶ」
「たしかに聞いたことがある……
生身で宇宙を飛来し巡洋艦を沈めた
素手で駆逐艦を沈めた
刀一本で宇宙怪獣を切り伏せた
触れた他人の心を読む
レーザー兵器をバリアで防いだ
裸一貫、銛一本で宇宙魚類を
真空の宇宙空間を
……前世界大戦で広まった噂は戯言だと思っていた」
「東洋では神力、道力、仙力、超能力などと呼ばれる力だ。
私は汎用性のない個人に依存する力であることから
「すごい! 証明できればローベル賞ものの大発見だ!
利用できれば世界の軍事科学技術が一変するぞ!!
宇宙産業革命に次ぐ第三の技術革命だ!」
「なるほど。さしずめ淫子(インQベーター)革命、IT革命と言ったところかね?」
「いいネーミングだ!
さすが世界を変える素質を持つ魔法少女だけあってアドルフは平然としているが、
無言の俺とゲッベルスは先ほどから精神が摩耗し限界が近い。
SAN値(正気度)がドンドン削られてまともに頭を働かせることができない。
この
「ヘス代表、早く契約を」
「そ、そうね。私も早く契約を結びたいわ」
この日、俺とゲッベルスは契約書の中身をまともに確認もせず
6923プロの
この業界に、クーリングオフの制度はない。
対価として
この日、俺はアイドル業界の闇を初めて垣間見た――。