取扱説明書をください   作:独辛

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なんでこうなったかな。

きっと原因は書きながら動画を見ていたせいだと思う。


出会い

 

朝起きた時思った。

 

やっぱり変わった気がしない。

 

 

 

さて、昨日は一族の秘儀だとか秘術だとか言われるスキルを継承した僕だが、残念ながら一家全員がスキルに興味を示していない。父さんは現代魔法の研究に力を入れているし、母さんはそもそも古式魔法の名家の生まれらしい。祖父は祖母からスキルに関してはあまりきいていなかったらしく、もしくは聞いていても忘れてしまったらしい。

と、いうことで現状のスキルの手がかりは僕の頭に入っているスキルの一覧のみ。

これを仮にスキルリストと呼称しよう。これを参照しこれからスキルを使っていくことになるのだが、いかんせんこれが使いづらい。

まず、ソート機能がない。

それにカテゴリー訳もされてない。

最後に、詳細が書いてない。スキル名と、要約のみとかこれは酷い。

 

 

『動物のいない牧場/ボンレスファーム』 骨を抜くスキル。

 

 

とか意味がわからない。使い道も分からなければ、恐ろしくて使いたいと思わない。本当になんなんだこれは、喉に刺さった魚の骨でも抜いてくれるのだろうか。

そもそも範囲がわからない。対象は? 制限は? 規模は? 条件は?

何一つ書いてない。

使ってみるまではわからない。箱の中身がわからない、ブラックボックスみたいなものだ。怖くてなかなか踏ん切りがつかなかった。

 

そうやって布団の中で唸っていると、階段を上る足音がこの部屋に近づいて来るのがわかった。

木製の扉を二度、ノックする音が木霊する。

起きていることを伝えると、扉はゆっくり開いた。顔を見せたのはなにやら怖いくらい笑顔の母さん。

 

いったい何事か。

 

「ほら、早く着替えなさい。今日から魔法の練習よ」

ちょっと待ってほしい。

 

僕は昨日スキルを貰ったばかりだ。しかもそれを使いこなせる気がしていない。ともすれば今日、少しずつ安全そうなものから使っていこうと考えていたところだっだんだ。

 

それなのに魔法?

ちょっと待ってほしい。ただでさえ未知の力の習得に苦難しているのに追加とか辛い。そもそもスキルを使いこなせれば魔法なんて要らないと思う。

 

「なにいってるのよ。籠目が将来なにになるのかなんてわからないけど、魔法師の家系が魔法を使えないなんて恥さらしもいいとこよ? それに私はいいけど実家が煩いし、なによりお父さんが張り切ってるわ」

 

おい父さん。スキルのときと偉い変わりようですね。代々受け継がれてきた秘術より現代の魔法が大事か。

 

「ね? それに覚えておいて損はないでしょ? 貴方が使うスキルだってもしかしたら使えなくなる時が来るかもしれない。そういった時に、他の手段があった方が便利じゃない?」

 

なるほど、たしかにそうだ。スキルはスキルでしかない。膨大な数を持っていてもそれはスキルという種類なのだ。可能性としてあるかどうかは不明だが、スキル封じなんて技術がもしかしたら存在するかもしれない。

そんな時、どうするか。

きっと僕はなにもできないだろう。

そんなのは嫌だ。

で、あるならば魔法という選択肢はかなり魅力的ではないか。それに魔法だ。しかも教えてくれる人がいる。

おお、なんだかワクワクしてきた。

チョロいとか言わないで欲しい、だってまだ子供だもの。

 

 

 

 

 

 

「待っていたぞ」

昨日と同じ襖の部屋に僕はいる。

たしかここは試験場と言っていた気がする。昨日と変わらずここの空気は澄んでいて、スキルのことで少し荒んでいた僕の心が落ち着くのがわかった。

「さて、聞いてのとおり今日からお前には魔法を覚えてもらう。用途は好きにしろと言いたいところだが、これは使い方を謝れば人を殺すことすらできる力だ。真剣に取り組んで欲しい」

 

理解できた。魔法師ができた理由は戦闘兵器として。歴史の授業で習ったことがある。あの時は、魔法なんてと他人事のように感じていたけどまさか当事者になるなんて。

 

「では、魔法とはなんなのかというと」

 

父さんの説明ではこうだ。

魔法とは科学的に解明された超能力のことである、と。

 

超能力とは字の如く超常的な現象を起こせる特異な力のことである。この世界の歴史の中でもそういった力を使うものたちが数多く登場してきた。そういった力を科学の発展とともに解明していった結果、造られたのが魔法だという。

 

魔法の系統は数多くあり、大きく分かれているのが2つ。

 

現代魔法と、古式魔法だ。

 

現代魔法はいまの時代の主流である解明された科学の結晶体。物理法則を基礎として考える世界の理に反しない程度の範囲で起こる事象を主に扱う。

 

対して、古式魔法は違う。よく漫画やアニメでみるようなファンタジーな力。現代の科学ですら解明できない未知の技術がこれにあたる。

さて、僕が勉強するのはいったいどっちなのか。

 

「両方だ」

 

ふう、おかしいな。耳の調子が悪いみたいだ。きっと聞き間違いに違いない。

 

「両方だ」

 

きっと聞き間違いに……。

 

「両方」

 

…………。

 

勘弁してほしい。できるわけないじゃないか。

1京2858兆0519億6763万3865個のスキルを、ただの1つも理解できてない状態で。

ほかに2つも未知の技術を習得しろと?

父さんは僕に死ねといっているのだろうか。

 

「スキルは方はしらん。別にそれを使いこなせとはお前にいっていない筈だ」

 

いや、たしかにその通りだけど。それでもあるなら使いたくなるのが人ってものでしょう? 強欲なのは人間の特権だって誰かが言ってた。しょうがないよね。

 

「俺が現代魔法。母さんが古式魔法をお前に教える。ちなみに爺さんが体術でもどうかと言っていた。久しぶりに孫とのスキンシップでもするかと張り切っていたがどうする?」

 

丁重にお断りさせて頂きます。僕の身体は1つしかありませんので。

 

 

 

 

そうして始まった現代魔法特訓は、やはりというべきか困難を極めた。

どうやら僕はかなり尖ったタイプのようで、ある方向にのみ才能を発揮する。けれどそれ以外は平均以下という、どうにも個性がでる結果を残していた。

 

「お前はとにかく動かない魔法に向いてるな。固定砲台まっしぐらだ」

 

そう言った父さんは何故か呆れたような目をこちらに向けてきた。

ちなみにこの特訓が始まってからすでに半年が経っているが、その間にスキルをためした回数は0である。

もう一度言う、0である。

 

まず、そんな時間がなかった。朝起きて父さんとの訓練。学校から帰宅後に母さんとの訓練。終わったら疲れ果てた体を休める為にゲームと漫画とテレビを見る。

ほら、時間なんてなかったでしょ?

娯楽を抜いたら人生なんてつまらない。だからどうか許してほしい。

閑話休題。

 

父さんの話では俺はまず、体を動かすこと、頭を使うことに向いていないらしい。

4系統8種のうち[加速・加重]が絶望的であり、自己の強化率が驚くほど低い。と、いうより掛かっていることすらわからない程度なのだから呆れるしかない。

[移動・振動]に至ってはまず、まともに発動しない。サイオンの波やら座標やら言われてもイマイチピンとこないのが悪いのかもしれないが、これでは馬鹿と言われているようで誠に遺憾である。プンプンポンである。

 

けれど短所があれば長所も存在する。[収束・発散][吸収・放出]に至っては特に躓くことなく段階を踏むことができている。

これは僕なりの考えだけど、きっとイメージしやすかったからだと思うのだ。苦手な魔法系統と得意なの系統、どちらの魔法もしっかりと魔法式は組めている。なら、問題となってくるのは僕の脳にあるのだろう。

物体の瞬間移動なんて生きてて中々お目にかかれるものじゃない。加えて慣れ親しんできた自分の体がいきなり強くなるとか想像できない。要は、現実との乖離が過ぎているから前者の力を上手く使えないのだと予測している。

対して後者は想像しやすい。テレビ番組でよくやるドッキリや実験には必ずと言っていいほど爆発ネタがあるし。日常生活において、スポンジは水を吸う。そして握ればまた出てくる、みたいなことに魔法との共通点を見つけることができる。

だからもしかしたら[加速・加重]くらいならば僕の意識が変わればそれなりに使えるようになるかもしれない。それこそ、物語の中の主人公みたくなれれば。

 

 

 

 

 

 

さて、次は古式魔法の成果だ。

まず、最初に思った。

 

これは魔法なのか、と。

 

「ううん、正確には違うけど。世間では古式魔法に分類させるらしいから、それでいいんじゃない?」

成る程、流石母さん。適当ここに極まれり。

「さて、籠目の能力はここ半年で結構伸びたわね。蘆屋の本家の倅と比べても大差ないくらいに」

そういいながらどこか嬉しそうに僕をみてくる母さんだが、その瞳に若干の愉悦が混ざってるのを僕は見た。

そんな母さんの一面に恐々としていると、いつのまに正気に戻っていたのか懐から一枚の札を取り出して僕の方へ差し出してきた。

いったいなんだろうか。

 

「式神召喚っ! ってやつよ」

成る程、最近僕がハマっているアプリゲームのガチャ演出に例えて下さってありがとうございます。なんかワクワクしてきました。

あれ、けれど式神……いわゆる精霊とは目に見えにくい情報体の塊ではなかっただろうか。そんな不安定なモノと仲良くできるだろうか。

 

「籠目が言ってるのは精霊術師が使う式神のことね。まぁ、とはいってもいまいる古式魔法師は基本的にそっちだしウチが特殊なだけだけなんだけど、陰陽師だし」

 

え、待って。いま陰陽師って言った?

これ陰陽術だったの?

 

「そうよ。陰陽師や忍びや霊術士なんかは全部古式魔法にあたるの」

 

いや、それは知ってるけども。はじめになにを習わせてるかぐらい言ってほしい。聞かなかった僕も悪いんだけどさ。

 

「で、式のことだけど。一般の古式魔法師は目視がしづらいけど、確かにそこにいるとされるイデアから外れた情報体。孤立情報体とも呼ばれる精霊から力を借りて精霊魔法を使うの。けれど、私達の使う陰陽術とは似たようで異なるものなの」

 

成る程、とりあえず全部聞こう。

 

「陰陽術とは精霊ではなく妖から力を借りて力を使うのよ。妖の体は全てが霊子でできているの、ここまでは精霊と一緒ね。

違うのはここからで。妖は常に活性化状態にあって、現世に顕現することができる力を持っているわ。妖はいずれも強い干渉力を持っていて、そういった存在が起こすのがポルターガイストやアポーツ現象、トランスポーテーション現象だったりするの。このほとんどが妖達のいたずらってわけ」

 

「で、そういった存在を放置しておくわけにはいかないから、対策としてできたのが陰陽師なの。生まれつき妖が見えたと言われる夏目という人が妖の力を借りて妖を退治したのが始まりと言われてるけど、真実はわからないわ。

ま、それからというもの私達は妖をパートナーとして陰陽術ーー魔法を使うってわけなのよ」

 

 

はー、なるほど。ということは今手元にあるこの木札、これを使うと僕のパートナーとなる式が出てくるってわけか。

札をいじっていると難しい話は終わりなのか、いつもの母さんの顔に戻って少し申し訳なさそうな顔をしだす。

 

「本当なら名前と五芒星を書いた式紙に血を垂らして召喚するんだけど。

まぁ、家にその式紙がなくてね。お母さんのお母さん。つまりおばあちゃんから貰ったその木札を使うことにしたの。

なんでもそれには強い妖が封印されて中に入ってるらしいから、別にいいわよね?」

 

いや、いいわよね? とか言われたら嫌だよとしか言いようがない。てか封印なんて解いちゃだめでしょう?

それに妖とか怖いじゃないか。

強い?

そもそも僕より強い時点で詰みじゃないか。間違えなく喰われておしまいだ。魔法を覚えて半年程度の小僧ができることなどたかが知れてるだろ。だからそんな怖いのより、できれば可愛いのがほしい。もしくは従順そうなの。

 

「そんなこと言われてもね。ないものはないの。我慢しなさい」

 

そう言いながら母さんは僕の手を握ると力を入れ始めた。徐々に徐々にひび割れていく木札を見て思わず顔を天井にあげる。

どうして我が家には強引な人ばかりなのだろうか。もう少し他人に心配りができる人になろう、僕はそう思った。

 

 

割れた木札が輝き始める。

 

それはとても綺麗で。

 

いつまでも見ほれていたくなるような優しさで。

 

そんな光の中から。

 

 

ブサイクな猫がでてきた。

 

 

「ん? なんだここは」

 

 

それが僕と生涯に渡り戦い続けるパートナーであるニャンコ先生との出会いだった。

 

 

 

それから2年後。

 

 

 

 

中学生となった僕は、ここで生涯の友を見つけることになる。

 

 

 

 

名を 服部刑部少丞範蔵 という。

 






スキルがメインなのにほとんどでてこないとはこれいかに。

とはいえ次回からはしっかりスキルメインのお話に戻ります。

籠目の実力は今の段階だと高校時の森崎相手に1分たたずに負けるレベルです。しょうがないよね、子供だもの。


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