二次創作紀行~リリカルなのは~   作:鮪瓜

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黒峰大地

レンが青い宝石を取り込んだカラスを容赦なく殴り、斬りかかったりしていたその裏でもう1人、青い宝石に関わる少年――黒峰大地がいた。

 

ただ、白髪に紅色と空色のオッドアイという日本人離れした姿の大地はレンと違い、偶然ではなく必然、過失ではなく故意に関わり、青い宝石を探している。そのためなら夜中に林に入ることもやぶさかではないくらいだ。

 

「ドラゴン、ここか?」

 

『あぁ、その木の根元だ』

 

カードくらいの大きさの電子機器に話しかける大地。傍から見れば電話をしているように見えなくもないが、そうではない。

 

大地専用電子機器型インテリジェントデバイス――ドラゴン。

 

インテリジェントデバイスの説明は一旦、AIが搭載され、魔導師の補助をしてくれる素敵アイテムという認識で留めておいてもらうとして、そんなデバイスであるドラゴンを使う大地は魔導師だ。ちなみに、ヘラもまたデバイスでレンもこれまた魔導師であるのだが、そこもここではどうでもいいので保留にしておく。

 

そんな専用機器を持っている魔導師、黒峰大地はドラゴンの言った場所にある青い宝石を拾い上げ、ドラゴンに当てる。すると青い宝石は光になってドラゴンに吸収された。

 

『しかし、こんなもん集めてお前は何がしたいんだ?』

 

「ん? 何って、出会いたい、かな?」

 

『何頬赤らめてんだ、気持ち悪い』

 

「お前、俺のこと嫌いか……?」

 

『いやいや、十全に大好きだぜ、友達(ディアフレンド)

 

いくらAIが搭載され、意志を持つと言ってもここまで持ち主に冗談を言えるものは結構珍しいものだ。

 

長い付き合い相棒である大地は慣れているのでため息を吐いて(慣れてもダメージはある)、ドラゴンをポケットにしまう。ここでドラゴンと楽しく喋っていても問題はないけれど、もしもの場合を考えて、行動を起こすことにした。

 

しかし、その判断は遅かった。そのときには既に猛スピードで大地に向かって、何かが近づいてきていたのだ。

 

(え、魔力反応!? しかもかなり早いぞ)

 

本当なら一度撒いて作戦を考えたいところだが、相手さんのスピードから逃げ切る自信も可能性もない、皆無と言っても過言では無い。それほど、相手のスピードは速く、大地はスピードに関して自信がなかった。

 

「ち、ドラゴン、セットアップ!」

 

『あいよ!』

 

大地はドラゴンを上に掲げ、もう一度「セットアップ!」と叫んだ。それと同時に大地の制服は黒を主とした服装にフード付きのローブを羽織ったもの――バリアジャケットに変わり、ドラゴンは黒い魔力刃を伸ばす鎌になった。

 

『距離、5……3……来るぞ!』

 

鎌を構える大地(ダジャレじゃない、断じて)、睨む方向に1人の女性が現れた。オレンジ色の長髪、額に埋め込まれた宝石、動物のような耳、どこからどう見ても変なその女性も警戒心マックスで大地を睨んでいた。その瞳は大地のそれと比べ物にならないくらい、威圧があり、大地はすぐに目を逸らしてしまった。

 

(べ、別に! 怖かったんじゃねえし。ただ、相手が目を見ただけで何かを読み取る能力があった場合を想定しただけだし)

 

(『強がるなよ、相棒。ただ女性と見詰め合えない、奥手なだけだろ』)

 

大地が女性から目を逸らした理由がなんであれ、それはしない方が良かった。敵が来た時点でここは戦場、相手から目を逸らすとことは、死活問題でもある。

 

現に、女性は大地が目を逸らした隙を逃さず、大地の脇腹に蹴りを入れた。バリアジャケットのおかげで少しは和らいだが、身構えずの突然の衝撃は大地に多大なダメージを与える。

 

「ぐっ……」

 

「あんたがジュエルシードを持っているのは分かってんだ。さっさとよこしな」

 

随分なご挨拶である。いきなり蹴りを入れられた上に、自己紹介もなく、ジュエルシードなんぞ、良く分からんことを言われる。

 

「ジュ、ジュエルシード? なんだそれ?」

 

「青い宝石を拾っただろ、それをよこせって言ってるんだよ」

 

レンが斬り、大地が拾ったあの宝石、あれはジュエルシードという名前らしい。新しい情報が手に入った、これは蹴られた甲斐があった……のだろうか。

 

いや、事実を言うと、全く、これっぽっちも、1ミクロンも甲斐なんて、得なんてことはない。大地が殴られて喜びを得る性癖なら話は別なのだが、そんなことはないのでやっぱり得はない。

 

 

青い宝石の名前がジュエルシードということを。

 

 

それを彼女()()が集めていることを。

 

 

オレンジ髪の彼女は使い魔という存在で名前はアルフだということを。

 

 

大地はそれを聞いたことがある。それを見たことがある。それを読んだことがある。何度も、何回も、それこそ記憶するほど、脳に刻み込まれるほど、死んでも忘れないほどだ。

 

そもそも、だ。

 

 

そもそもの目的は彼女たち、いや正確に言うと彼女の主様――フェイト・テスタロッサなのだから。

 

 

 

 

 

さて、彼女たちのことをいくら知っていても、覚えていても、脇腹蹴られて倒れているこの状況は初めて、さすがにこれを打開する方法まで知らない。大地はアドリブに弱いのだ。

 

(まさか、ここまで好戦的だとは……聞く耳持たぬというか、友好的になれる気が全然しない)

 

戦うことになるのは一応予想していた大地だが、シミュレーションと実践は違う。シミュレーションではいきなり脇腹を蹴られることなんてなかった。まだ、痛い。

 

「え、えっと、俺はたまたま拾っただけで」

 

 

「嘘はいけないないよ」

 

 

痛みを抑えながら頭を回してなんとか言葉を出したが、それはアルフとは違う声によって遮られてしまった。

 

少年ながらの男にしては高く幼い声、その声の主は木々の間から姿を現した。

 

木々の葉の間から零れる月明かりを一切通さない暗黒の髪を短めのポニーテールの少年は紫色のジャケットを羽織り、紫色の宝石が埋め込まれた剣と盾を持っていた。

 

(おいおい、誰だよ、あいつ……?)

 

アルフからの蹴りも予想外と言えば予想外だったのだが、大地にとってあの少年はそれのまた1周りも2周りも外だった。

 

オレンジ髪のアルフもその主のフェイトもジュエルシードも全部知っている大地はあの少年のことは一切知らなかった。知識にない、記憶にない、初対面、初登場だ。

 

「ん? どうも初めまして、僕は山々地(さんさんち)闇木(あんもく)。よろしく、同類の介入者くん」

 

「…………黒峰大地だ」

 

挨拶を返したものの、それが正解だったのか、大地には分からない。だた、大地は闇木が言った言葉でようやく合点がいった。

 

普通は知らないはずのことまで知っていて、子供なのに精神年齢が高く、魔法が使えてしまう。そんな存在。この世界には本来存在しないはずの存在。

 

 

転生者。

 

 

一度死に、別の世界に前の記憶を持って誕生する者。蘇えりや生き返りなんかと似ているが決定的に違う者。物語に介入して運命を捻じ曲げる者。

 

「さて、アルフ、すぐに暴力に訴えてはいえないよ。できるだけ話し合いで解決しないと」

 

「そんなことより、闇木、嘘ってどういうことだい?」

 

「スルー、ありがとう。どういうこともないないよ、ただ彼が目的を持ってジュエルシードを拾ったということことだよ」

 

「っ!?」

 

ニタァと笑う闇木。

 

(……ここで、ばらされたら、俺はもう脱落だ。でも変に誤魔化してもいいことがない)

 

もともと頭で考えることはあまり得意ではない大地はここで逆転の一言がないか考えるが、何も、何一つ、出てこない。どうするべきか、ちらりと2人の様子を見る。アルフを怪訝そうに見ている。闇木は先ほどと変わらない笑みで見ている。

 

「……ちっ、そうだよ。俺もジュエルシードを集めてる」

 

「なっ、あんた嘘ついてたのかい!」

 

「まぁまぁ、アルフ落ち着いて。彼にだって事情というものがあるあるんだから、攻めちゃいけないないよ」

 

2人がそんな揉め事を話している間に、大地は打開策や、逃走法を考えなければいけないのだが、そんなこと(少なくとも大地にとっては)に頭を使っている暇はなかった。

 

大地の目的――フェイト・テスタロッサに会い、友好を深めること――はフェイトに最初に出会い、協力関係を結ぶ必要があったのだが、その計画は、山々地闇木なんていう謎めいた変な名前の人物によって崩壊してしまった。

 

(どうする……アルフの様子を見ると、関係は結構親密だ。これは、介入する余地が、ない……)

 

「あれ、あれあれ? どうしたんだい、大地君。まるで人生が終わったような顔をしてして」

 

「わかってんだろ、同類君」

 

「あぁ、そうだね。僕も君も同じ存在だしね。だからこそこそ、僕はここにわざわざ来たんだよ」

 

大地は闇木が言っていることが分からなかった。しかし、闇木はそんなことを気にせず、言葉を続けた。

 

「大地君。僕と一緒に親愛なる彼女のために手を組まないかい?」

 

差し出されたその手は、救いの手なのか、悪魔との契約なのか、暗闇へ引きづり込まれるのか、大地には少なくともこのときは分からなかった。




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