戦士の魂は君と共に   作:影のビツケンヌ

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新たな血 ~Hot shot~

 「怖~い!! 逃げよう!!」

「総員、撤退!!」

 

浅い森の中を、AチームのIV号とα分隊の兵員輸送車が疾駆する。試合開始直後、Bチームとβ分隊、即ち女子バレーボール部駆る八九式と野球部による急襲を受け、くじ引きで車長となった沙織が、砲弾と弾丸の嵐に恐慌して撤退もとい逃走を指示したのだ。

 

「武部さん、今のはいい判断だった」

「ほ、ホント?」

「戦場では僅かな時間が勝敗を大きく左右する。決断を躊躇うな、行動が遅れれば遅れる程勝算は低くなるものと思え」

「わかった!」

「ただし! 恐怖と立ち向かい恐怖を克服するには、恐怖から逃げていてはいけない。自ら進んで恐怖に身を投じることだ」

「ぜ、善処します…」

 

ガイはキューポラを開き、沙織に話しかけた。彼女の行動を褒め、問題点を指摘する。その危険性故一般に甘えを許さず厳しく指導することの多い歩兵に――この場合沙織は戦車兵だが――このようなやり方で教導するガイは、常々教官よりも教師の方が向いていると言われてきた。西住流に於いても彼のやり方は“手緩い”とさえ評されたが、それにより挫折しかけた時に立ち直った者も多く、彼らからは慕われていた。

 無論、彼の言葉は本心からくるものだった。みほとガイの提案した、最大火力たる歴女のCチーム駆るIII突を最初に叩く案を蹴り、真っ先に生徒会、及びそのEチーム駆る38tを潰そうと言い出した(杏の言っていた“かっこいい教官”が想像と違ったことに対する私怨である)時にはどうかとは思っていたが、指示を出しても練度不足で歩兵が十分に展開しないまま攻撃されてしまった為、あの場で反撃しても無駄な犠牲が出るばかりだっただろうことは想像に難くない。既にα分隊の隊員数は半分を割っている。兵員輸送車が攻撃されず、中にいた残月が無事だったのが不幸中の幸いだろう。

 今もまだ、追撃を試みる八九式の砲撃音に混じって、ガンガンという音が後方から聞こえてくる。残月は周りのことなど眼中にないかのように、ひたすらIEDの作成に打ち込んでいるようだ。

 それは、きっと信頼。情けを知らぬ必殺の牙を研ぎ澄ます残月は、α分隊を率いるガイに自らの命運を預けたのだ。

 

――期待には、応えないとな。

 

 「! 前方に敵! III突と歩兵!!」

 

志朗が喘いだ。IV号正面のY字路の内向かって左に、γ分隊ことどらごんばすたーを侍らせIII突が待ち構えている。

 

「獲物を捉えた!」

「南無八幡大菩薩!!」

「不肖三段バラ、Cチームをお守りしますぞ!!」

「いきますよーいくいく」

 

ガイがIII突を早期に撃破しようと考えていたのは、何もその火力ばかりが理由ではない。男が歩兵、女が戦車兵というのが主流の戦車道に於いては、随伴歩兵をその役割上女性を守る騎士になぞらえることが多く、それが双方の男女比の差に拍車をかけている。‘女性を守る’という使命感に燃えるサークルリーダー、ハンドルネーム『三段バラ』こと東国原(ひがしこくばる)将人(まさと)に絆され、オタク集団γ分隊は不可思議な力でその連携を強めていた。そんな彼らに守られながら、歴女達はどっしりとIII突を構え、虎視眈々と敵に照準を合わせんとしている。

 練度自体は未熟そのもの。だがそのやる気と、互いを補い合う姿勢は、まさしく理想的。

 

「…歩兵だけでも潰しておくか」

 

故に、容赦は要らない。

 

「蒼莱、そのM2は使えるのか?」

「思ってたより軽い位さ。楽勝だぜ先輩」

 

ガイが問いかけた蒼莱は、自分のショルダーバッグの紐を括り付け、一挺の重機関銃を無理矢理背負っていた。

 ブローニングM2重機関銃。ジョン・ブローニングが第一次世界大戦末期に開発し、現在でも各国の軍隊で使用されている著名な重機関銃である。軍隊というものが一見日進月歩のようで枯れた技術に頼っていることの好例ともいえるが、その伝説的な完成度の高さは、高威力、高精度、長期のメンテナンスフリー、良好な信頼性と整備性故、現在でもこれを凌駕する重機関銃が存在しないことからも窺える。

 軽装甲車両等に有効な12.7mm×99弾を使用するその銃の重量は、本体だけで約三十八キロ、三脚架(トライポッド)も合わせると五十八キロにもなる。本来は三名のチームで運用する武器で、これでも重機関銃の中では軽量な部類だ。

 それを、蒼莱は一人で背負い、扱う気でいた。

 

「…いいだろう。()()()()()()()()()()()!!」

「よっしゃ来た!! 見とけよ優花里ィッ!!」

 

言うが早いが、蒼莱はIV号の上に膝立ちになる。小脇に抱えていた弾倉を開け、長さ九ヤード――およそ八メートルのベルトリンク(弾帯)を引き出し、腰溜めに構えたM2に装填、コッキング。

 

「うおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」

「そ、そんなっ!?」

「てわるよーーーーーーーーん!!」

 

銃後部のボタンを右手で押し込み、フルオートで薙ぎ払い連続発射。断末魔の叫びを上げてγ分隊は物の見事に戦死判定を受け全滅する。“腹部に着弾した人間の身体が上下に分断され千切れ飛んだ”とさえ報告される、音速の三倍の速度で飛翔する12.7mm弾の威力は完全なオーバーキルだ。どらごんばすたーが特殊戦闘服に身を包んでいなければ、また戦車道用の弾丸を使用していなければ、III突の周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していただろう。

 

「…ふうっ、流石にIII突の正面装甲は抜けないか」

「十分だ、いい掃射だったぞ。五十鈴さん、右に進路を取れ!」

「は、はい!」

 

その火力であわよくばIII突をも撃破しようと考えていた蒼莱を称え、ガイはすぐに次の行動に移した。防御を失い慄くCチーム(と、「ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!! 」と大興奮している優花里)を尻目に、操縦手用ハッチを開け華に指示を出す。IV号は右折し、α分隊の兵員輸送車もこれに追従する。

 しかしそこで、一同は予想外の事態に出くわした。

 

「ワウッワウヴッ、ワウッ!」

「…ん? こりゃ犬の鳴き声か?」

「この鳴き方…」

 

IV号の進行方向には、右目に眼帯を着けた一匹の犬が勇ましく仁王立ちし、地の底から来るような野太く低い声でしきりに吠え立てていた。

 

「DD!」

「知ってるの沙織さん?!」

「友達の家の犬だよ! どうしてここに…ああ?!」

 

そしてその背後の切り株には、本を顔に被せて寝転がる麻子。更にその奥の森から、背の高い金髪の女子生徒が慌てた様子で駆けてくる。生徒会副会長小山柚子は大人しそうな顔に見合わぬ大洗学園一グラマラスな体型で有名だが、明らかにモンゴロイドではない彼女は柚子に匹敵する身体を持ち、色気という点に於いてはむしろ勝っていた。

 

「麻子、八枝まで!!」

「危ない!!」

「ブレーキを――」

「駄目だガイ、間に合わん! お二人さん逃げろ!!」

 

ガイは華に停止を指示するが、志朗がそれを遮らん勢いで警告した。このままでは衝突どころの話では済まない。一般的な乗用車の十倍以上、二十五トンの重量を持つIV号に撥ねられ轢かれようものなら目も当てられないことになる。

 だが、ここでも予想外があった。

 

「麻子、起きて! DD、跳ぶわよっ!」

「ん…」

「ワウッ」

 

八枝の一声で麻子は起き上がり、DDも吠えるのを止めて戦車を正面に見据える。そして走ってきた八枝と、麻子、DDが横向きに一直線に並んだ瞬間、

 

「とうッ!」

 

二人と一匹が揃って跳躍、ひらりとIV号の上に飛び乗ったのである。

 

「!」

 

 二人の運動能力についてもそうだが、ガイはDDと呼ばれた犬に驚きを隠せなかった。ハンドラーに厳しく鍛えられた軍用犬でも、銃声や砲声のような大きな音は大変なストレスになる。ましてやペットとして飼われているような犬では竦みあがってしまうだろう。戦車道で軍用犬を運用すること自体は特に禁止されてはいないが、訓練に要する時間や犬への負担、何より犬を養育する為の費用を考慮した場合コストがかさむことが多く、ガイの知る限り公式大会に出場する学校では軍用犬は使われていない。

 しかしDDは、砲声轟く演習場に無遠慮に入り込み、迫り来るIV号を前にしても逃げるどころか立ちはだかる気勢すら見せ、あろうことか飼い主と思しき八枝の指示でIV号に飛び乗りさえしたのだ。

 ――この犬は、実は相当に訓練された軍用犬なのではないか。ガイがそう邪推してしまう程に、DDは‘よくできた’犬だった。

 

 「二人とも何してんの、こんなとこで? 授業中だよ?」

「知ってる」

「DDがお弁当を届けにきてくれたんだけど、何故かこっちに走っていっちゃって…あれ、DDお弁当は?」

 

沙織の問いに、麻子は平然と、八枝は困ったように答えた。そこで、八枝はDDが持っていた筈の弁当箱が入った巾着袋が見当たらないことに気付く。彼女が周囲を見回していると、追いかけてきた八九式からの砲弾が、後方を行く兵員輸送車のすぐ脇に着弾した。

 

「うわっ!?」

「冷泉、大上、危ないから取り敢えず中に入っとけ!! 犬も一緒だ!」

「分かった…」

「何だか窮屈そう…ん?」

 

蒼莱に促され、戦車に乗り込む麻子とDDに渋々続く八枝だったが、ふと目を遣った後方にあるものを見つけた。

 

「…あ!?」

「どうしたの八枝?」

 

それは、丁度麻子がいた切り株のすぐ近く、八九式の砲弾が着弾し抉れた地面。赤と白のチェック柄の布の切れ端が、プラスチックの欠片や米粒などと共に散乱していた。…彼女の昼食は、無残にも八九式の凶弾によって粉々にされてしまっていたのだった。

 

「…私の…お弁当…」

「あー…うん、ドンマイ」

 

――…武部さんの言葉で代弁としよう。

 

生気の抜けた声で落胆する八枝には、流石のガイも何も言えなかった。

 そうこうするうちに、IV号は谷川の川岸に辿り着き、兵員輸送車と共に停車した。周囲は木々に囲まれ逃げ場はなく、対岸に渡るにはIV号がぎりぎり通れるかどうかの吊り橋を使うより他はない。それは同時に、逃げ道が限定され、的になりやすくなることと紙一重だった。それでも、Bチームとβ分隊はまだずっと後ろにいるとはいえ、ここで立ち往生する訳にはいかない。

 

「…少々危険だが、渡河するしかないな」

「私が前見てこようか?」

「いいや西住さん、偵察は俺に任せてくれ。少しはカッコつけたいんだ。いいかガイ?」

「許可する。俺と蒼莱で援護しよう。気をつけろよ」

「ありがとう。武器は幾つか置いていく、使ってくれ」

 

ガイの判断にみほが偵察を申し出る。戦車道では斥候に出せる歩兵がいない時、戦車兵も車外に出て斥候を行なう場合があるが、その際の安全は保障されていない。ガイは代わりに自薦した志朗に橋の様子見を任せることにした。ショットガンや狙撃銃、対戦車火器など、背負っていた沢山の武器を残し、志朗は僅かな自衛用の銃だけを手に橋へと駆け寄っていく。

 

「これより吊り橋で川を渡る。α分隊、()()()()()周囲に散開しろ。Aチームを援護し、IV号渡河後に続いて渡河するんだ」

『『『了解!!』』』

「蒼莱、対岸の森に注意しろ。恐らく生徒会と一年生が待ち伏せている」

「OK先輩、護衛は得意だ」

 

 蒼莱と共にIV号から降りたガイは、無線でα分隊に指示を出し、続けて蒼莱にも注意を呼びかける。分隊員への指示は“落ち着いて”の部分を強調した。彼らが訓練もなしの初の実戦で緊張し、冷静さを欠くのも当然のこと。だからこそ、彼らには努めて冷静であるよう言いつけたのだ。

 また、本来であれば煙幕などを使って視界を遮りつつ、橋の前に防御陣地を形成してから援護するのがセオリーなのだが、訓練を受けていない為にどの分隊も火砲やスコップを持っておらず、故にその時間も取れなかった。地雷のような設置型の武器も、残月が加工しているものを除いて殆ど倉庫に置き去りにされている。今回は各々が匍匐したり、物陰に身を隠すだけで精一杯だ。何もできずに半数が戦死判定を受けた時と比べれば、まだましといえよう。

 

 「何とかなりそうだ。俺が誘導するから、焦らずに進入してくれ」

「はい!」

 

やがて志朗の誘導を受け、IV号は華の操縦でゆっくりと吊り橋を渡っていく。ガイはそれを見守りながら、志朗の置いていった武器の中から選んだ一つを肩口に構えた。それは彼が黒森峰にいた時から愛用していた対戦車火器だ。

 

「志朗も気が利くな」

 

 パンツァーシュレック。第二次世界大戦中にドイツ国防軍が使用した対戦車ロケット擲弾発射器である。構造が簡便で民兵にも使用可能な使い捨て対戦車擲弾発射器『パンツァーファウスト』と並んで、ドイツの代表的な歩兵用対戦車火器といえる。その開発の上で鹵獲して手本とされた、アメリカ合衆国が当時使用していた対戦車ロケット弾発射器『M1バズーカ』の口径が六十ミリで装甲貫徹力が百ミリであるのに対し、パンツァーシュレックは口径八十八ミリで装甲貫徹力が命中角九十度で二三〇ミリ、六十度で一六〇ミリと、当時のほぼ全ての戦車の正面装甲を貫徹する威力を誇っていた。

 その破壊力は、開発から七十年以上経った現在の戦車道でも猛威を振るい、ほぼ同等の装甲貫徹力を持つパンツァーファウストと共に、戦車兵から恐れられている。

 

「さて、そろそろか」

 

ロケット弾を砲の後ろから装填し、発射筒と弾を電気的に接続。砲口を向けた先には、既にBチームとβ分隊が迫ってきていた。八九式の装甲など、パンツァーシュレックを前にすれば粘土同然。八九式には誰もタンクデサントしていないので、こちらの有効射程一五〇メートル程に入るまで、十分に引き付けて確実に撃破できる。

 その考えは、ガイの右手側からの砲声によって打ち破られた。

 

「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

「っ?! 蒼莱、少し外すぞ!」

「わかった!」

 

沙織の悲鳴。放たれた砲弾は八九式のものではなく、態勢を立て直し、森の木々の中を強引に追ってきたIII突からのものだった。着弾したIV号は撃破判定を示す白旗こそ揚がっていないものの、橋の上で動きが止まっている。状況を確認しようと、ガイはその場を蒼莱に任せてIV号に走った。

 

「どうしたっ!」

「まずいぞガイ、五十鈴さんが!」

「操縦者失神!! 行動不能!!」

 

そこで見たのは、前方確認の為操縦手用ハッチから顔を出していた華が、額から血を流し気絶している姿だった。

 ガイの脳裏に、かつての泥沼の戦場――昨年度戦車道全国大会決勝戦の光景が去来する。

 正面からかち合ったプラウダ高校の歩兵部隊と互いに退路を断たれたまま突入した消耗戦。敵も味方もハエのように戦死判定を受け、助けを呼ぶこともできず、進退窮まった状況下で仲間が徐々に傷付いていく。最後の一人になろうとも、仲間の屍を越え、ただひたすらに戦い続けて――

 

「ッ――!!」

 

形容し難い鬱血した激情が、猛烈な勢いで噴き上がる。ガイはそれに任せて、八九式に使うつもりだったパンツァーシュレックをIII突に向け発射した。着弾、激震。大洗の戦車中最大といえるIII突の八十ミリの正面装甲も、パンツァーシュレックが相手では防ぎようがなく、無様にも白旗を揚げた。すぐに次弾を装填し、八九式に狙いを定め、

 

「ちょっとこれ借りるわよ」

「!!」

 

 唐突に、志朗の残した武器の一つを掴み、八枝が駆け出していった。

 

「お、おい大上さん!」

「八枝、危ないよ!! 戦闘服だって着てないじゃん!」

 

志朗と沙織の制止も聞かず、八枝は蒼莱の近くに膝立ちで銃を構える。ピープサイトを覗き込み、僅かな時間狙いをつけたかと思えば、すぐに発砲。パンツァーファウストを持って展開しようとしていたβ分隊の歩兵を一撃で仕留め、迷いのない動作でコッキングする。

 

「…狙撃の才があるのか、彼女は」

 

八枝の突飛な行動でかえって冷静さを取り戻したガイは、先の自分の行動を胸中で恥じつつも、八枝の潜在能力を見抜いていた。恐らく特に考えもなく彼女が選んだと見える銃は、狙撃銃だったのである。

 モシン・ナガンM1891/30狙撃銃。ソビエト連邦が開発したボルトアクション式小銃M1891/30小銃の中から特に高い精度を持つものを選び出した狙撃銃型モデルである。オリジナルとは垂れ下がったボルトハンドルと追加されたピープサイトが異なっている程度だが、その射撃精度は高く、ドイツ東部戦線の兵士は自国の狙撃銃よりも鹵獲したM1891/30狙撃銃を使うことも多かったとされている。

 全長一二三センチもあるこの銃は取り回しが悪く、背の低い者には扱い難い――フィンランドの伝説的な狙撃手シモ・ヘイヘのような例外はあるにせよ――が、女子高生としては背の高い八枝にはあまり問題になっていないようだった。

 

「何してんだあんた?」

「戦車の中は狭苦しいのよ。また撃たれるのも御免だし、それに私はこっちの方が性に合ってる」

「なるほど、じゃあ期待させて貰うぜ!」

 

蒼莱の弾幕と八枝の狙撃で、βチームの隊員数がみるみるうちに減っていく。それに勇気付けられたのか、α分隊の隊員達も攻勢に出始め、形勢逆転。β分隊は全滅し、八九式が丸裸となった。そこへM2の弾丸が雨あられと叩き込まれ、更に分隊員の一人が投げた収束手榴弾に誘爆する形で、逃走を図った八九式もあえなく撃破されたのだった。

 

「なるほど…想像以上にやれているな」

 

ガイの驚きはそればかりでは済まない。乗っていたIV号がいきなり対岸へと動き出し、同時に川の水面に対岸からの――森から躍り出てきた生徒会の38t(Eチーム)の砲弾が飛び込んだ。操縦はいつの間にか麻子に代わっていたらしく、彼女は巧みな操縦でIV号を38tに横付けする。

 

「発射用意! ――撃てぇっ!!」

 

みほの合図と共に、砲手を担当していた優花里によりIV号は発砲。側面装甲に至近距離で砲弾を食らった38tは当然の如く沈黙する。歩兵を無視して突出し過ぎたらしく、38tの護衛役だったε分隊は何もできずにお役御免となった。

 これで残るはDチーム、一年生のM3のみ。どこかに隠れているであろう戦車を探して、ガイが視線を横切らせた時、

 

「――逃がさんっ」

 

IV号の脇を、残月が風のように駆け抜けていった。その手には、加工を終えたらしき対戦車地雷が一つ抱えられている。森の中では、落ち葉を被せてアンブッシュしていたM3が、彼から逃げようとして化けの皮を自ら剥がしてしまっていた。

 

「ふんッ」

 

開けた場所に出てきてしまったM3、その上方に残月は地雷を投げた。無論そのままでは、地雷は戦車にぶつかることもなく、そもそも地雷は踏まれなければ意味がない。

 しかし、それは既製品での話。

 

「「「わあああああぁぁぁぁぁーーーーー!?」」」

 

フリスビーのように飛んでいった地雷は、M3の直上二メートル程度で爆発。ほぼ同時にM3は白旗を揚げる。M3の上面装甲は、()()()()()()()()()()()大きく凹んでいた。それだけの衝撃、一年生の悲鳴も無理はない。

 

 『そこまで! B、C、D、Eチーム行動不能』

『よって勝者、Aチームとα分隊!』

 

亜美とミラーの無線で、試合終了が告げられた。

 

「…終わったか」

 

…練度はともかく、久し振りに‘濃い’試合だった。それが、ガイの感想であった。




書かなきゃいけないことが多すぎて8000文字近い文字数になってます。
本当はもっと短いはずなのに…

歴女チームが「てわるよん」と叫んでいますが、オタク達の一人のハンドルネームです。ビツケンヌが幼き頃スマブラで使っていた名前の一つを流用しました。
オタクだって女の子とお近づきになれないとは限らない!!
尚ビツケンヌはコミケ未経験の模様。いつか行ってみたい…
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