とても励みになります。
「ねぇ、ゼクト。いま暇?」
「エプロン姿で朝食を作ってくれてるユフィを眺めるので忙しい。後にしてくれ。」
「暇なのね。ちょっとこれ見て欲しいんだけど。」
ドラクリフ島で迎える初めての朝、ユフィを眺めながらのんびりしているとカレアが二段ベッドの下の段から声をかけてくる。
「なんだよ、朝っぱらから男をベッドに呼ぶとか、誘ってんのか? 」
「誘ってないから⁉︎ 幻獣召喚教典の解読が終わったのよ‼︎ 」
『幻獣召喚教典』失われた古代の召喚魔法についての方法が書いてあるという本で国宝である。カレアは侵攻の褒美としてその写本を王様から貰っていた。
「で、なんて書いてあったの? 」
「どうやら大量の魔獣魔物の核、魔石を100個単位で使って幻獣を召喚できるみたいね。使った魔石が強力なら強力であるほど高位の幻獣が来るみたいよ。」
「ほぉ、それでカレアは魔石何個持ってるの? 」
「ザコを取り除いたら20個あるかないかね。ゼクトは? 」
「一応100個くらいは持ってるよ。けどなぁ……… 」
上位の魔石って一個売るだけで普通の家庭が1ヶ月は暮らせるくらいの値がつくんだよなぁ。
「なに? 魔石出すのしぶってるの?この危険な島に無条件でついて来てあげたのは誰だっけ?」
いや、それを言われると言い返せない。なんだかんだ1人だけでこの島を開拓するのは大変だったろうし、今はカレアとユフィのお陰で寂しくもない。本当に2人には感謝してる。
まぁあれだ。この島は魔獣だらけだからすぐに魔石も沢山集められるだろう。
「わかったよ。とっておきのをプレゼントするよ。」
「それでいいわ。ありがと。」
「2人とも〜 ご飯ですよ。」
「「はーい」」
◇
「それで?カレアはどの幻獣と契約したいんだ? 」
朝食をとってから召喚のために砂浜に出た。流石に家の中で召喚するのは怖い。カレアに貸してもらった召喚教典をパラパラとめくっていると、最後の方のページにイラスト付きで沢山の幻獣の資料が載っていた。
「そうね、時空竜とかすごい良いわね。強力なドラゴンだし転移魔法使えるし。それに時空竜と契約したらその眷属のディメンションウルフのことを使役出来るようになるって。」
どうやら幻獣の上位種と契約できたらその系統の魔獣は自由に使役することが出来るようになるらしい。普通は使役術師しか出来ない魔獣との契約ができるようになるなんて超お得だ。
「じゃあ始めるわよ。まずは……えっと、魔術師が召喚魔法陣を刻む。このページにある通りにお願いね。」
「はいはい。ってデカっ‼︎ これ半径50mって書いてあるぞ、しかもめちゃくちゃ複雑じゃねぇかよ。」
「やばいわよねそれ。島唯一の魔術師さん、頑張って‼︎ 」
◇
「できた……俺超頑張った…… 」
30分以上掛かってしまった。正120角形の描き方とか知らねぇよ。
「おっけー。次に魔導師が時空神と太陽神にお伺いをたてる。はいやって。」
「お前人使い荒いな⁉︎ えーっと、なになに。『時空と太陽を司る神よ、異界から獣を召喚することを、ここに許し助けたまえ。』かな。おおっ‼︎ 」
いきなり魔法陣から光の柱が立ち昇って天へと伸びる。
「よし。いいわ、じゃあ次は契約者が魔石1つ1つに自分の血をつけて魔法陣に投げ入れる。ゼクト、頂戴。」
「はいよ。グリフォンにサイクロプス、ミノタウロス、スノラスルフにヘルガロータス、ピポグリフに爆炎猿…… 」
これは殆どが俺がソロの冒険者の時に手に入れたもので、どれもこれも超強力な魔獣の魔石だ。これより強力な竜とか鬼とかは流石にパーティを組まなきゃ無理。
カレアは自分の指を噛んで一個一個に血をつけていく。そしてそれを魔法陣から伸びる光の柱へと投げ込むと、魔石は光の粒になって消えていき、逆に光の柱は輝きがが強くなっていっている。
いつのまにか俺たちの後ろでユフィとワンダーベア達がギャラリーとしてわいわい言いながら見物してる。危ないかもしれないんだからもっと遠くに行っとけよ。
最後の一個を投げ入れた時もう光は柱というより天へと伸びる奔流になっていた。準備完了みたいだ。
「よし、ゼクトやっちゃって‼︎ 」
「そらきた‼︎ 【幻獣召喚】‼︎ 」
叫んだ瞬間に光は一層強くなり、そしてどんどん魔法陣の中心へと集まって密度を上げていく。最初は魔法陣いっぱいに広がっていた光の柱は数十秒経った頃にはもう半径1mくらいにまで収斂していた。そうして何かが割れる音が大きく響き渡り、…………
「ヒャッハーーーー ‼︎‼︎ 」
光の柱から全裸の少女が奇声をあげながら飛び出してきた。
「呼ばれて飛び出す、幻獣界のダークホース、エリスちゃん参上‼︎ 」
金髪碧眼の美少女が右手でこちらをビシッと指差しながら左手を腰に当ててポージングしてくる。全裸で。太陽に輝くツルペタな裸体が眩しいです。
「召喚………成功したのよね? 」
「うん、たぶん。」
とりあえず俺とカレアの混乱が止まらない。てっきり魔獣みたいな「いかにも」な幻獣が現れると思ったんだけど………
目の前の子はどう見ても人間、だと思う。
「なぁ、君は幻獣……なんだよな?種族はダークホースではないよな? 」
「何言ってんのダークホースってのは実力者って意味の言葉だよ。もうちょっと勉強しろ。」
んなぁ⁉︎ こいつ可愛い見た目に反して口悪いな。意味くらい知ってたから‼︎
「わたしは幻獣の中でも高位の幻獣、グロウキマイラさまだ。」
エリスは威張るようにふふんと薄い胸を張る。
「キマイラは知ってるけど、グロウってなんだ?育つの? 」
そのお胸もまだまだグロウするの?
「そうだ。美味しいもの食べると私は強くなるぞー 」
キマイラといえば竜に並ぶような超強力な魔獣だ。決まった姿はないが大体は3つの生き物が融合したような姿をしている。
デルフィナ戦団が侵攻中に戦った個体は、頭が獅子、体が馬で尻尾が火炎トカゲだった。その時は俺の魔術とカレアとジキルでひたすら足止めをして、完成したインによる風の大規模魔導で肉片になるまですり潰した。その時手に入れたキマイラの核はもちろん今回の召喚で使った。
「ゼクトさんゼクトさん、この子凄いですよ。食べた物の能力を得ることができるみたいです。、」
後ろからユフィが話しかけてくる。
「ほう、それはすごい。っていうかわかるのか?」
「はい。私の今日の魔眼は【鑑定】ですから。」
見ると確かにユフィの左目が緑色に輝いている。
「えっとじゃあそのまま読み上げますね。『グロウキマイラ。キマイラの上位種の幻獣。食べた物の能力を少しずつ得ることができる。また、一度食べた魔獣や魔物の言語能力を得ることができる。』らしいです。」
倒した相手を食べてさらに自分が強くなるってか。『少しずつ』得るというのがどれくらいかわからないけど強力な能力であることに変わりはない。
食べた魔獣や魔物の言語能力を得られるというのもめちゃくちゃいい。ワンダーベアみたいな魔物との意思の疎通がはかれるようになった。
「貴方もしかして進化や成長に上限がないってこと?流石は幻獣、めちゃくちゃね。」
カレアは少し呆れるように、しかしとても嬉しそうにため息をつく。
「それで? どうやったら契約できるのかしら? 」
「簡単だよ、養ってくれればいい。」
美しい少女はまるでヒモ男みたいなセリフを眩しい笑顔で言い放つ。
「お腹が空かないように美味しいものを作って。あとまだ弱いから魔獣の肉を取ってきてね。最初は雷系がいいな。」
屈託無い笑顔を浮かべながらカレアへと手を伸ばす。
「ええ、わかった了解したわ。これからよろしくね。」
カレアがその手を取りエリスと握手をする。握り合った手の上に小さな魔法陣が現れて契約が完了する。
島での生活2日目、こうしてグロウキマイラのエリスが新しく仲間になった。
マンゴーの国からレゲエの国へと行ってきます。
飛行機で書けるといいな。
『鵺』はグロウキマイラの下位種からは外しました。(2018 1/7)
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