本当は簡単な依頼だった。
俺が駄々をこねなければおやっさんが凶弾に倒れることもなかったかも知れない。
高校生になったお祝いとして自分の
けれど、そんな
過ぎ去った
「おやっさん!!」
目の前で光の槍に貫かれた育ての親に駆け寄る。
「大丈……夫か……、逸識?」
心配してくれるおやっさんの血を止めようと、必死に傷口を圧迫するがあまり効果は見られず出血は増すばかりだ。
「もうしゃべんないでくれッ!!くっそ、血が止まらねぇよッ!!」
「に……、逃げろ……、奴は…、聖書に載っている……敵だ。いくら…お前でも……、敵う奴と…敵わない奴位は解るだろ……」
「駄目だッ!!おやっさんを置いてなんかいけるわけないだろっ!!おぶってでも……」
おぶろうとして手を差し伸べるが、無情にもその手は一番助けたい人に振り払われる、叱責とともに。
「いい加減にしろッ!!最後位は……、俺の言うことを……、素直に聞いて……くれ……」
「最後なんかじゃねぇ!!おやっさんが死んだら店はどうすんだよっ!!それに……、それにおやっさんには返しても返しきれない位の借りがあるんだから……、それを返す前に死なれたちゃ困るんだよ……」
ポロポロと零れる水滴を隠すように頭の上に帽子を託される。
「お前に教えられることは……、全て教えたつもりだ……。もうお前は……、一人前の……立派な
「一人前なんかじゃねぇよ……。俺は……、俺はまだ
「どうした……?あんなに…、嫌がってた
「……ああ、嬉しくなんかないよ……」
「それと……、これは餞別だ……。お前が使え……」
血濡れの手に託されたのは、おやっさんのロストドライバーに一本のガイアメモリだった。
「そうそう……。お前の借りは……、もう十分に返してもらってるさ……。お前と過ごした十六年間……、悪くなかったぞ……」
きつい程握り締めていた手から力が抜け、パタリと地面に墜ちてゆく。
「おやっさん……??」
おやっさんの身体を揺するが、ピクリとも反応を返してくれない。
「おやっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
物言わぬ亡骸を抱き締めながら叫ぶ俺に、光の槍が降ってくる。
「クハハハッ!!そうか、ようやく死んだか。たかが人間風情がこの俺の計画を破綻なぞさせようとするからだッっ!!」
「なんだと……?」
「ほう……。まだ生きていたか、人間?」
「お前今たかが人間風情って言ったか?」
「ああ、それが何か?」
「…………けせ」
「何?」
「取り消せって言ったんだよっ!!このカラス野郎っ!!」
「はっ!!なぜ下等生物である人間の呼び名を訂正しなければならない?」
「コカビエルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
左手に握り締めていた血で紅く染まったロストドライバーを、腰に装着する。
「見ててくれよ……、おやっさん。俺の……、俺の変身っ!!」
おやっさんが遺したガイアメモリの銀色に塗装されたスタートアップスイッチを押すと、崩壊を始めた建物の中にガイアウェスパーが鳴り響く。
『Skull』
「……変身」
スカルメモリをソウルスロットに差し込み、ドライバーを展開する。
ドライバーに【S】の文字が浮かび上がり、足元から竜巻が巻き起こる。
「…………」
帽子を左手で外し、額に【S】の文字が刻まれるのを待ってから今一度深く帽子を被り、右手でピストルの形を作りあの決め台詞を投げかける。
「さあ……、お前の罪を数えろ」
「はっ!!はあ……はあ……」
悪夢で目を覚ましつつ、ベッドから飛び起きる。
「またこの夢か………」
あれから三年たった。
俺は未だにあの時の夢を見る。
あの時の
「お~い、黒歌、白音どこだ?って、ああ……、アイツラは依頼で京都か……」
猫又の姉妹を拾ったのは、俺が同じように孤児院で拾われたように小学生の時に拾って来たのだ。
若気の至りって奴でさ、色々やっておやっさんに拳骨貰ったりしてさ……。
まあ、その時の話は追々話すとしようか……。
パパっと身仕度を整え、朝食をアイスコーヒーで流し込みお気にのシューズを履いて玄関を出る。
扉の文字を眺めながら、鍵を閉める。
「行って来ますっと」
その扉にはこう刻まれている………。
『Bar LazyLife』
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