前話までよりRoarがアクティブになっていて違和感があるかもですがお付き合いください。
----ウラジオストク港 午後二時ごろ
Roarが鎮守府に来て一週間ほどたった。初霜は第十一遠征艦隊の一員に任命され、毎日小規模な遠征の往復を行っていた。
つまらなさそうに思われることもあるが、彼女にとってはやりがいのある仕事だ。
ウラジオストクと鎮守府を往復し燃料を輸送するタンカーの護衛を行うのだが、日本海は既に制圧済みのため、かなり気が楽だ。
向こうの港の人とも仲良くなることが出来た。
一方、Roarの方はそこまで充実した毎日を送っているわけではなかった。
なんでも日々をのんびりと過ごしているだけらしい。
以前の火力測定のデータから彼女が膨大な燃料を消費することが判明したからだった。
積み荷を船に運ぶのを待っている間、初霜はいつも座っている木箱に腰を掛け、そんなことを思い返していた。
強さのせいで
ぼんやりしている内に運び込みは終わったようだ。
自分を呼ぶ声に気付き我に返った初霜は声の聞こえた方にかけて行った。
----同じ頃 舞鶴鎮守府 提督執務室
提督業はそう簡単なものではない。
一日の仕事の8割を書類整理に費やす日々は単調でつまらない。
本当ならば秘書艦をつけて手伝ってもらうのだがまだ提督は秘書官を定めていない。
どの艦娘もどうでもいい話をして全く手を動かさないのだ。
この間まで秘書艦だった加賀は良かったがいまは朝出て夜帰る超規模の作戦に従事しているため業務をこなすのは不可能だ。
今暇な艦娘で真面目に動きそうなやつ・・・。
一人しかいなかった。
----数分後
やはり提督の期待は外れていなかった。
完璧な仕事ぶりだ。
口を一つも動かさない。
全員が全員こんなやつだといいんだが。
----数時間後
しばらくたって完全に仕事が終わった。
「よし、少し休憩だ。」
「はい。」
そういえばRoarには話が出来るんだろうか。
全自動で動く無人の巨大戦艦。どれほどの会話スキルを身に着けているのだろう。
実証してみたくなった。
「お前はどんな目的を持って開発されたんだ?」
「私が開発された理由ですか?わざわざそんなこと聞かなくても。」
「まあリラックスのついでだ、よろしく頼む。」
「まあ行って問題になることはありませんからね。
私が開発される少し前に帝国軍が作った宇宙要塞が破壊されました。
その時に取り残されていた兵士や士官が死にました。
これから先の人員不足を懸念して帝国軍は戦艦を自動操縦化することを決めました。そのためのプロトタイプとして私は開発されました。
ほぼすべての機能を自動化することが出来ましたがただ一つ、ハイパードライブの起動です。ハイパードライブはほぼすべてが自動化されていましたがなぜかこれだけは出来なかったんです。
この機能の実装が出来上がり初めてテストで起動したまでは覚えているのですが・・・ハイパードライブ起動したときから記憶がないんです。」
「そうか、宇宙の様子とか聞いてみたかったんだがな。ところでお前の機能はそのまま受け継がれているのか?その、艦娘になっても。」
「ええ、この間艤装を付けた際にスキャンしましたが全く問題はありませんでした。」
「そうなのか。」
そこまで言ったとき机の上の電話が鳴りだした。
即座に反応したRoarが受話器を取る。
「はい、そうですか、はい、伝えておきます。」
「なんだった。」
「南西諸島方面の偵察を行っていた第六駆逐隊が日本列島方面に移動していた戦艦水鬼を旗艦とする敵艦隊と会敵状態となりました。」
「なっ、付近にいる艦隊は?」
「現在付近にはいません。」
完全に詰みだ。
短時間の内に増援を送ることはできない。
「あの。」
声が聞こえた。
「私ならいつでも行けるんですが。」
「は?」
「私ならいつでも行けるんですが。」
流石に宇宙戦艦と言ってもそれは無理だろう。
戦艦水鬼がいるだけで普通の戦艦でも太刀打ちは難しい。まして単独で出撃するのは危険だ。もし倒せるのだとしても四人が無事である保証はどこにもない。
そのことをRoarに話した。
「いいですから、私を行かせてください。」
「そこまで言うのだったらいいが。」
「ありがとうございます。では」
---- 南西諸島
勝てる気がしない。
当然だ、話で聞いたことがあるだけの深海棲艦がたくさんいる。
弾をよけるのだって精一杯。
自分以外は全員損傷している。
皮肉だ、こんな時まで不死鳥の名を被りたくない。
提督は増援を送ると言っていたがきっと間に合わないだろう。
遠くの空から轟音が聞こえて来た。
空母までいるのか。この世で一番の絶望だ。
音は少しずつ大きくなってくる。
後ろからか、せめて一機ぐらいは撃ち落とそうと振り向いた。
信じられない光景が視界に飛び込んできた。
空を飛ぶ艦娘。見る者に恐怖を感じさせるために作られたかのようなシルエット。
そして何よりその冷徹な瞳。
「危険です。後ろに下がって下さい。後は私が。」
聞く人によっては不快な機械音で話しかけてきた。
「あなたが・・・増援・・・提督が言ってた・・・増援なの?」
暁が驚きに見開いた眼でその声に話しかけた。
馬鹿な、轟沈寸前なのになんて。
声が言った。
「あなた轟沈寸前ですね、なおさら危険です。そこで見ていてください。沈みますよ。」
そういった直後に緑色の光線が彼女の艤装の表面から飛び出した。
かなり離れているはずの水鬼に正確に当たった。
水鬼の艤装を光線が貫通するのを目視できた。続いて爆炎。
それが始まりだった。
艤装から緑や青の光弾が噴き出した。外すことなく着弾し相手を一発で葬り去る。
時折敵の弾が彼女に当たる。しかし彼女はまるで気づいていないかのように砲撃を続ける。いや、よく見ると当たっていないようだ、空中ではじき返しているように見える。
敵はさぞかし慌てているだろう。突如空に艦娘が現れ一発で一体沈めていくのだ。
いや、もしかしたら慌てる暇もなく沈んで行っているのかもしれない。
相手は駆逐艦四隻だと思っていたところにRoarがきた。
慌てるだけの思考力を維持できたのだろうか。
「これで済みました。」
「あ、うん、ありがとう。お礼は、ちゃんと・・・」
暁は最後までいうことが出来なかった。安心して意識が遠のいたのだろうか。倒れ込んでしまったのだ。
「暁!」
雷が暁に駆け寄る。
「これはまずいですね。」
Roarは少し思案していたが口を開いて言った。
「暁さんは私が連れ帰りますので。響さんは電さんをお願いします。
「ああ、わかった。」
お礼を言うべきなんだろうな。
「その、ありがとう。」
「問題ありません。仕事ですから。」
----舞鶴鎮守府 ドック
何とか帰って来れた。
電は比較的損傷が軽微だった雷と響が連れ帰った。
暁はRoarが連れ帰ってくれたのだがなにせ空を飛ぶのが初めてだったから自慢話が止まらない。
「それでね、目を覚ましたら空を飛んでたの。最高の経験じゃない?」
「まあ、暁が眠った原因は回避をミスした挙句直撃弾くらって大破したからだけどね。」
「そういう事には触れたらだめよ雷。」
「はいはい。いい加減に話し変えたら。」
まあこんな会話が出来ているのが幸せなんだろうな。
響はすこし微笑んだ。
戦闘描写は苦手なんです、、
次話は来週くらいになると思います。