機動戦士ローガンダム   作:J・バウアー

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PHASE 1(1)発足

 第二任務部隊が発足した。第二任務部隊の陣容は、宇宙戦闘母艦“ヴィーザル”と宇宙正規航宙母艦“アプカル”を加えた第七艦隊第一分艦隊第三戦隊、通称G13部隊と、ウラノス=シティを遠巻きに包囲している8個師団、総員12万4千人の大部隊である。司令長官は、ロニー=ファルコーネ中将。ルーデンドルフ軍務卿から辞令を受け取ったロニーは、ダイモスの第七艦隊司令部でいくつかの雑用を済ませたのち、旗艦“ヴィーザル”に乗り込んだ。司令部エリアの提督の席にロニーは座ると、目前で直立する軍人たちに目を遣った。一人目は、第三戦隊司令官セネル准将。二人目は、宇宙空母“アプカル”艦長ルッカ大佐。三人目は、ロニーの司令長官就任で空席となった“ヴィーザル”の艦長に昇格したラモン大佐。四人目は、第二任務部隊司令部の参謀長に転じたカタリナ中佐。そして最後の五人目は、第二任務部隊作戦参謀に転じたハムザ少佐である。ロニーは、五人を前にして訓示した。

「これより我々は、ルーデンドルフ軍務卿の指揮下から外れ、独自の行動を開始する。第二任務部隊の作戦行動は四段階あるが、連邦政府が火星への軍事行動を発表する前に全てを完了させなければならない。各員には、迅速かつ徹底した作戦行動を要求する。まずは、第一段階。クーデター側に付いている第八艦隊第三分艦隊に所属する2個戦隊を、捕捉撃滅する。ハムザ作戦参謀、説明を」

「はっ」

 ハムザは、当面の敵となる2個戦隊について説明を始めた。1つ目は、第八艦隊第三分艦隊第四戦隊。通称H34部隊。軽巡洋艦1隻、駆逐艦4隻を主力とした大小艦艇16隻で構成される。第八艦隊が演習のために宇宙に上がった際、アキレウスに残留した戦隊である。クーデターの際に接収され、司令官以下司令部のメンバーはクーデター派に総入れ替えとなっている。そしてもう1つが、第三分艦隊第二戦隊。通称H32部隊。クーデター後にクーデター派に寝返った戦隊である。司令官はプラト少将。H34部隊の司令官を兼ねている。重巡2隻、軽巡2隻、駆逐艦3隻を主力とした大小艦艇22隻で構成される。戦艦や空母クラスはいないものの、敵二個戦隊は第二任務部隊の艦艇戦力とほぼ拮抗する。

「H32、H34部隊の本拠地は、クロノス宇宙ステーション。ウラノス=シティから伸びる軌道エレベータの終着点です。クロノスに連結されている第二港湾を接収して母港にしています。そこを急襲して破壊したのち、両部隊を撃滅する。それが今回の任務となります」

「クロノスを破壊する?そんなことをして大丈夫なのですか?」

 宇宙空母“アプカル”艦長のルッカ大佐が尋ねた。“アプカル”は、第七艦隊第一分艦隊第一戦隊、通称G11部隊の所属である。今回の作戦でロニーは空母一隻をルーデンドルフに要求した。それにルーデンドルフが応じた結論が“アプカル”であった。“アプカル”はルーデンドルフ直率のG11部隊に所属しているだけあって、火星で最大の正規空母である。前方に上中下3段カタパルトをそれぞれ3本、後方に2本の合計11本のモビルスーツ発着カタパルトを有し、収容できるモビルスーツは150機に上る。全長は593mと“ヴィーザル”にはやや及ばないものの、その存在感は周囲の目をひきつける。その艦長を務めるルッカ大佐は、モビルスーツパイロット上がりの女性士官である。年齢は47歳。すらりとした肢体、肩の下まで伸ばした艶のある直毛の金髪、そして張りのあるきめ細かい肌が、年齢以上の若々しさを放っている。民間企業に勤める夫と、大学生の息子と、高校生の娘を持つ。そんな彼女が、クロノスの破壊に疑問を持つのは当然といえた。軌道エレベータは、地球圏と物資をやり取りする流通の心臓部ともいえる存在である。それを破壊したら、火星経済に大打撃を与えてしまう。その疑問に、司令長官のロニーが答えた。

「我が部隊が破壊するのは、クロノスの第二港湾だけだ。それだけなら、クロノスに対する影響も限定的なものに止まる。ナイツェル財務卿の了承も頂いているので、問題ない」

「閣下がそうおっしゃられるのであれば、小官が口を挟むことではありません。被害を第二港湾だけに止めるということは、攻撃の主体はモビルスーツということですか」

「そのつもりだ。クーデター艦隊が威力偵察から帰投するところを急襲する」

 H32とH34のクーデター艦隊は、火星地上に展開するクーデター軍に対して衛星軌道上から攻撃を加えるルーデンドルフの艦隊に、攻撃を加えてはすぐに撤退する威力偵察を続けている。深く斬り込まずに撤退するので、クーデター艦隊のダメージは皆無に近い。一方のルーデンドルフ艦隊は、沈没したのは数隻の哨戒艇に止まるが、中、小破した艦艇が相当数ある。共和国軍にとってクーデター艦隊は大した脅威ではないが、無視できない存在ではあった。そのクーデター艦隊が、威力偵察から帰投するところを狙い撃ちにする。そのロニーの案に対し、ルッカは一つの懸念を持った。

「あえて出すぎたことを申し上げますが、敵の帰投を待ち伏せにするには、“ヴィーザル”も“アプカル”も目立ちすぎるのではありませんか」

 ルッカ大佐の懸念は当然だった。待ち伏せするということは、何かに身を潜めなければならない。モビルスーツ1機程度であれば、その辺に浮いている岩石に身を隠すことができる。だが、全長が500mを超える巨艦を隠せるものは、それ自体が不自然で目立ってしまう。デブリで身を隠すには、全長が100m程度の駆逐艦が限界だ。だが、ロニーはルッカの懸念を意に介していなかった。

「“ヴィーザル”と“アプカル”の2艦は脇役に回る。主役はG13部隊だ」

 ロニーは、作戦の詳細について説明を始めた。

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