機動戦士ローガンダム   作:J・バウアー

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アステロイドベルト・エリアベータ駐在日記(3、ベータコロニー群1バンチ“ランパス”)

4月23日(1)

 ほぼ1日かけて減速を完了。ベータコロニー群1バンチ“ランパス”の管制官と交信、完成した軍港への入港を果たす。工事用のフネだけでなく、モビルスーツまで動員されての大工事の真っ最中で、そういうフネなどと何回もすれ違ったのだが、安全で効率のいいルートを選定して誘導してくれた管制官の腕に感心した。大昔に作られた骨董品のようなオンボロコロニーと聞いていて、軍港自体もかなり古いのだが、設備は近代化が施されていて、不便は全く感じなかった。内戦終結間もない中で金もないだろうに、これだけの予算を惜しみなくつぎ込むとは、政府はかなり本気だ。気を引き締めないと。

 接舷を完了させたので、航海日誌のとりまとめに入ろうとしたのだが、艦長から要人との面会に同行するよう命じられる。いくらオートメーション化されているとはいえ入港までの操舵の重要な部分は全て手動。かなり気を遣って疲れたので、航海日誌のとりまとめという名目で休憩するつもりだったから、同行を命じられてたときは正直ありがたくなかった。だが、今にして思えば貴重な体験をすることができたから、とても感謝している。

 艦長に随伴するのは、副長と砲雷長そして私。

 我々を出迎えてくれたのは、何と枢密顧問官のオイエ・ムバ工部卿。工部卿自らが現場に乗り込んで陣頭指揮しているなんて、驚き以外の何ものでもない。このムバ顧問官は枢密顧問官らしからぬ人の一人だ。もう一人は、退任したロニー・ファルコーネ元枢密顧問官。仮面と兜で完全に素顔を隠し、赤を基調にした軍服なんて、異様以外の何ものでもない。ムバ枢密顧問官は、いつも上下使い込まれた作業着で、上着の下にYシャツとネクタイをしている。

「政府の枢要におられるのだから、ネクタイくらいしましょう」

とナイツェル顧問官にたしなめられてから、こういう服装をしているらしい。普通、こう言われたらスーツを着るものなのに、それでも作業着は止められないみたいだ。

 歩きながらムバ顧問官は、我々に話をしてくれた。

 こんな壮大なプロジェクトは、連邦政府の宇宙開発省にいなければ総指揮をとるどころか、関わることすらできなかっただろう。建白したロニー顧問官自らが工事の総指揮を執ると思っていたのに、まさか自分に指揮を打診されるなんて思いもよらなかった。こんなやりがいのある仕事を任せてもらえて光栄だ。ロニー顧問官には感謝しかないと。

 なるほど、現場に乗り込んでくる訳だ。確かムバ顧問官は地球の最高学府出身で、宇宙開発省でキャリアを積んだ、バリバリの技術畑エリートだったはず。ヨレヨレの作業着姿からは、全く想像できないけど。これから、ムバ顧問官と一緒にスーリヤ市長という方の招きに応じて会食。ムバ顧問官は会食後、遅れ気味の現場に行って作業員たちと一緒に汗を流すらしい。ロニー元顧問官もそうだが、共和国の最高幹部は、自ら最前線の現場に立って働くことを厭わない。スゴいの一言。

 スーリヤ市長との会食は市庁舎の一室で行われる。市庁舎と言えば聞こえはいいけど、くたびれいてひび割れも多い粗末な建物だ。市長の話だと、軍港とインフラ、市街地を含めた居住空間の工事が優先、市庁舎の整備は一番最後だという。改築の着手前に建物がダメになったら、プレハブの仮設庁舎でも構わないという。ベータコロニー群と共和国政府の思想と行動原理の一致が、強い推進力となってこの熱気を生んでいるのだろう。辺境の何もないところで重労働を強いられているのに、出会う人たちの皆が生き生きとしている。人を笑顔にするのは、設備ではなく人なのだと改めて感じた。

 とにかく今日は濃密な1日だった。長くなってしまったので、スーリヤ市長が語ったアステロイドベルト・エリアベータの過去については、明日書こう。疲れた。

 

4月23日(2)4月24日

 広く知られていないアステロイドベルトの歴史。世間では、木星船団の中継地として栄えたとしか知られていない。スーリヤ市長の話によれば、一年戦争が起こった頃のアステロイドベルトは、良く言って猥雑、普通に言えば風紀が乱れていて、治安は悪くても活気があり、いろんなギャンブルもはやっていて、カネの巡りが良かったようだ。その頃のアステロイドベルト・エリアベータで一番はやっていたギャンブルが、モビルスーツによるバトル・ロワイアル。複数のモビルスーツを戦わせて、最後に勝つのは誰かを当てるものだ。三次元的な動き、ビーム兵器が放つ光の輝き、モビルスーツの機体の多様性、武器の爆発的進化。そして、パイロットの個性と命を賭けていることによる緊張感。それらが人々を魅了する。人命がかかっているので、モビルスーツ同士の戦闘を賭けの対象にするのは禁止行為なのだが、地球圏から遠く離れて政府の目が行き届きにくかったこともあり、非公然に繰り広げられていたそうだ。

 これに途中から加わったのが、旧ジオン軍の敗残兵たち。近くの小惑星アクシズに集結し、エリアベータ市庁と協定を結んで市の管轄下に入ると、表立っては治安警察の下請け警備員や建設作業現場の作業員として働き、裏ではモビルスーツのバトル・ロワイアルに参加した。一年戦争で経験を積んだパイロットに整備兵、技術者がいたので、瞬く間に数多くのスターパイロットをアクシズは輩出した。多額の賞金を獲得したスターパイロットは、アクシズで幹部として迎えられた。未だにアステロイドベルト・エリアベータでは、「薔薇の騎士」はスターパイロットとして名が残っているようだ。

 こうして資金をじっくりと集めたアクシズは、無謀にも地球圏への侵略を開始する。外交の専門家も内政の専門家もおらず、目的も侵略の方針もない中での侵略行為が成功するはずがない。ものの見事に失敗して、一部はアステロイドベルトに帰還したが、有力な指導者がいなかったので、完全にアステロイドベルトに溶け込んで消滅してしまった。

 結局、補給ポイントとしての飲食、娯楽産業で得られる収入に満足して、殖産興業をおざなりにしてしまったため、熱核クローム航法の確立とともに訪れる者が減ると、とたんにアステロイドベルトはさびれていった。

 もはや万事休すの状態になった時に、ロニー元顧問官が現れて、鎮守府設置というカンフル剤が打たれることになった。ホントにありがたいことだとスーリヤ市長は何度もおっしゃった。ロニー元顧問官のように政治の枢要にいる人は、凡人には及びもつかないことをやるものなのだなと感心した。

 本日24日は、昨日とうって変わって特に変わったことはなし。前日やろうと思っていた航海日誌の取りまとめと反省点の抜粋など艦内での事務仕事中心。

 

つづく…といいな




思い付かない…
モビルスーツのバトル・ロワイアル
の名称とか愛称か…
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