この素晴らしい世界へ少年を   作:フランシス・アルバート

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こちら作者の初投稿、初作品となります。
まだまだ拙い文章でありますがお手に取り楽しんで頂けたならこちらとしても嬉しい限りであり、本望でございます。

それではお楽しみくださいませ


棚から牡丹餅

ぼんやりとした意識

動かない体

 

弱々しくなる心電図を尻目に自分は布団で横になっている。

 

体に走る痛みと息苦しさは徐々に強くなり、それと入れ替わるように足の指先からじわじわと冷たくなるのがわかる。

 

生まれつき自分は病弱だった。

いつも車椅子に乗り自分で歩くこともできない

外で遊ぶなんてもっての他、できる訳がなかった。

 

学校も行けず病室で本を読むか寝たきりの日々

 

季節が変わり世間を騒がすニュースが流れようとも変わることのない日常

 

外の木が生い茂り、葉が落ち季節が巡ると共に削られていく余命幾ばくもない寿命

 

病院内で出来る話相手はほとんどが自分より後に入院し先に退院して関係は終わる。

 

思い返せば、もとい思い返すほど長くもない人生

 

産まれてから親に苦労をかけさせ親孝行すら出来ない親不孝者の自分

 

両親に迷惑ばかりかけた悔いを残し意識が薄れる

 

風前の灯火となり消える寸前に後悔故に一つわがままを願った

 

『もっと自由に生きたかった』と

 

 

 

 

 

 

 

 

「梔 悠里(クチナシ ユウリ)さん」

 

柔らかく慈愛に満ちた声が聞こえる。

 

 

声に反応し恐る恐る目を開くとそこは先程まで居た筈の無機質な病室ではなく、何もないそれでいて神聖さを感じさせる空間

 

静寂さを孕むその空間は透き通る様に綺麗であったがそんな空間に目を引く者がいた。

いやそんな空間だったから目が引かれたと言った方が正しいだろう。

 

一口に言って天使、いや女神と言えるだろう。

 

産まれてこの方テレビなどで美人美女と言われるのは見たことがあるが目の前にいる人はそれらが有象無象と言えるほどに桁が違う麗人

 

明らかに異常と言える現象に早くも頭が混乱した。

 

「貴方は不幸にもそのとても短い人生が終わってしまいました」

 

混乱している自分を他所に目の前の麗人は話を続ける。

 

 

「貴方には漏れなく生まれ変わるか天国に行くか……大丈夫ですか?かなり混乱しているようですが……」

 

 

仕方あるまい、産まれて凡そ12年の自分には理解すら到底及ばない現象が起きているのだから

 

しかし死んだと言うのは明白のようだ、証拠として病気の痛みや怠さが消え、生前ほとんどなかった調子が良い日以上に何倍も活力が漲っている。

 

病気が治ったと言うと語弊があるため死んで無くなったと言った所か

 

もしここが平原であれば子犬のようにはしゃいでしまったかも知れない、誠に嬉しい限りである。

 

ふと視界を戻すと目の前の麗人が優しい眼差しで微笑んでいた。

 

 

「とても嬉しそうですね」

 

 

感極まっている姿を微笑ましく思い見つめていたようである。いやはやお恥ずかしい

 

 

「確かにユーリさんの生涯は不幸であったと言えるでしょう」

 

「そのためここで天国に行くか生まれ変わるかが選ぶことができますが……」

 

 

ふむ、生まれ変わると言うのは言葉の通りわかるのだが、しかして天国とはいかな場所だろうか

 

私的な妄想ではあるが、事案的な格好の天使に犬共々誘拐された後、犬にそりを引かせるあのフランスをモチーフにした作品のイメージが強い

 

余談であるが初めてあの作品を見たとき『最初は感動』、『その後、畜生』と感じてしまった私はいつか罰せられそうである。

 

 

「違いますよ!?感動的な作品ですし普通に幸せそうな終わり方じゃなかったですか!?」

 

 

ブラック的な思考になるのは今の日本の背景が悪い、ニュースでも結構取り上げられている

 

つまりこう言った思考になるのは環境のせいである、先ほど罰せられそうと言ったが訂正する

俺は悪くねぇっ!俺は悪くねぇっ!!

 

「さっきからキャラぶれ過ぎてません!?プロフィールでは病弱でもっとおとなしい性格と書いてあるんですけども?」

 

確かに床に伏せているときは体は痛いし怠いし病人食しか食べられないとテンションは上がる事がなかった

 

しかし!今はそれもない!自分のテンションはうなぎ登りである!自由に動けるって素晴らしい!

 

それで天国ってどんな場所?

 

「普通ここで話を戻しますか!?流石に貴方のテンションついていけませんよ!?」

 

ノリとテンションが高ければ大体自分のペースが保てるってばっちゃが言ってた、あったことないけど

 

「貴方の場合それはペースを保つんじゃなくて振り回してるだけです!」

 

ハァハァと息を乱す麗人はこほんっと一つ咳をし、息を整えると説明を始める

 

「天国とはのんびりとした所ですよ、日向ぼっこしてのんびりして先人の老人の方達と日がな1日のんびり出来るところです」

 

のんびりしか言ってない気がするのは気のせいだろうか、のんびりする以外には他に何かあるのだろうか?

 

「えっと……先人の方達と喋ったり」

 

それは聞いた、他に何かこう刺激的なことは無いのだろうか?

 

「……」

 

無いのかよ!と自分は頭を抱える、体が動けるようになったから色々遊べると思ったのにこれでは落胆する一方だ

 

もし新しく生まれ変わるとしても折角親から貰った大事なこの体、動かしたいと思うのは性だろう、どうにかならないだろうか

 

「……本当は生まれ変わらせるつもりでしたけど、そこまで言うならわかりました」

 

 

 

「異世界に行って貰いましょう」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、頭に電流めいた物が流れ全身を駆け巡り、衝動のまま目の前の麗人に抱きついてしまった

 

文面だけ見ると犯罪のように見えるが自分はまだ子供だ、許されるだろう、ノーカン!ノーカン!

 

 

「いや、その、まだそういった事は早いです!じゃなくて落ち着いて!」

 

 

頬を赤らめながら慌てた様子で剥がされる、確かに抱きついてしまったのは少々やり過ぎた

 

追記として凄く良い匂いがしたのと胸の感触が変だったことは口に出さないようにしよう

 

 

「と、とにかく異世界に行くなら特典を選んで貰わないといけません!」

 

 

ふむ、時代が変化してしまうアレか

 

 

「それは特異点です!特典です!強力な武器や能力を一つ選んで貰うことができるやつです!」

 

 

なるほどチートか

つまり生き残るために必要な処置と言う訳か、その異世界とやらは中々物騒な臭いがする

 

そこの所はどうなのだろうか?例えば戦争が起きていて片側の勢力の為に兵器として運用されるならば自分が求めた自由とはほど遠くなるだろう、それでは本末転倒である

 

 

「えっとですね……その世界には魔王軍と人類が対立していまして、その世界で魔王軍にやられた人達が生まれ変わりを拒否してしまいまして異世界自体がピンチになっているわけです」

 

 

一息でそう言い切ったのはもう事務的に同じ事を何度も言ってきたからであろう

 

大体は話が掴めた。つまりはその世界を救って貰うために死んだ人に特典と言う餌で釣り上げ世界を救って貰おうと言う魂胆か。

 

まぁ、木の棒と吹けば飛ぶような泡銭持たせられて特効するよりはマシな気はするが。

 

 

「あの~言い方が悪意を含んでますけどまぁいいでしょう……ツッコミも疲れましたし話を戻しますか」

 

是非も無し、話を戻したまへ。

 

 

「何か偉そうな態度になりましたがまぁ良いです、

こちらが特典のカタログになりますが特典はあくまで特典、戦いは強制ではないので特に貴方の場合は任意で行って貰って結構です。」

 

 

そう言って沢山の紙の束を渡されたがそれら一つ一つにやれ全てを断ち切る剣や、やれ山を吹き飛ばすほどの弓やらが書いてあるがあまり興味は引かれない、どうせ振り回すのではなく振り回されるのがオチだ。また戦いは強制ではないと言われたので護身用としては度が過ぎるような気がする。

 

一つだけなら目の前の麗人を連れていった方が良いのではないだろうか?ガイドに美人にツッコミ持ちとならばこれほど優秀な人物は居ないだろう。

 

「ちなみに私はダメですからね」

 

 

ジーザス!いや目の前に天使の麗人が居るからボーシェット!何で?どうして?whyだよ?

 

 

「元の担当、私の先輩がそれで連れてかれちゃいまして、もしこのままどんどん連れてかれちゃうと担当が居なくなってしまいますから天界規定で制限されたんです」

 

先にやった人が居るとは、世界は広いようで狭い、そう常々思う。

 

 

「本当は先輩の引き継ぎとして日本を担当している子も今忙しくて急遽代理として私がいるくらいですから」

 

仕事も倍にと遠い目と哀愁を漂わせながら渇いた笑顔を浮かべる。

天界ですらブラック並みに忙しいとは思わなんだ。仕方ないとばかりに自分は渋々と特典のカタログから選ぶことにした。

 

 

カタログに一枚一枚目を通していく

 

グラム、デュランダル、ゲイボルク、ロンギヌス、ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん

 

いあいあ はすたぁー

 

 

何かおかしいページがあった気がするが無視する。所詮は細事は捨て置いても大丈夫。自分は何も見ていないしラヴなんとかなんて知らない。

 

何枚かめくる内に束ねていた金具が緩んだのだろうか。一枚ページが外れ、足下に落ちた。

 

ふと、それを拾い上げ目を通してみる。

 

 

 

特典の名前は『メリクリウス』

この特典は使用者本人の魔力により水銀を操り色々な事ができる能力。ただデメリットとして使用者の魔力以上の物は作れない。逆に魔力量が上がる、つまり使用者の成長に応じて強くなると言う特典

 

 

これならば自分を最初から過信して破滅する可能性は少ないだろう。魔力と言うものが多くなければの話だが

 

一応他のページをめくり、他にピンと来たものに目を通す。

 

えーとナイアルラ……

 

 

「それはダメです」

 

 

ページを取られてしまった。何かとても不味い物だったのだろうか?宇宙の神秘がわかる気がしたのに、とてもとてもきょうみをひかれてうちゅうがふんぐるいむぐるうなふ

 

 

「ほらほら現実に戻ってくださ~い」

 

 

意識が宇宙にぶっ飛んだがノープロブレム、頭を麗人に撫でられ正気を取り戻した!いあ!いあ!

 

 

「今のページは本来なら禁止された特典何ですけど混じってしまったようですね」

 

 

なるほど、禁止された物だったとは……しかしあの特典は力に溺れると言うより飲み込まれそうな気がしたから選びはしなかっただろう。多分……

 

やはりここはこの特典にするとしよう。ナイアルラ……

 

 

「……」

 

 

メリクリウスでお願いします。

 

 

「素直でよろしい」

 

 

良い子良い子と優しく頭を撫でて来るが目が笑っていない。本気で肝が冷えた。

 

 

 

 

 

 

「それでは特典も決まった事ですしそろそろ異世界に転送しましょうか」

 

 

ふと、棚からぼた餅な異世界転生についワクワクして忘れていた事がある。言葉と服装だ。

 

異世界、全く現代と異なるなら別の文化が発展していてもおかしくはない。それ故に言葉や文字が違う可能性はとても高いだろう。

 

それと自分の服装についてだ。当たり前だが自分は病気で死んだ故に病衣しか来ていない。非常に目立つし安全な所であろうと食べられる、もとい頂かれる可能性すらある。

 

目の前の麗人のようなお姉さんならまだしもそうでない獣に食べられれば心と体から文字通り喪う事になりそして二つの意味で死ぬだろう。

 

なので服を下さい。服を。

 

 

「言葉や文字はこちらで出来るように手配するので問題ありませんが服装は、そうですね……」

 

 

う~ん、と悩みながらそして嬉しそうに麗人はいつの間にかあったタンスから服を引っ張り出している。

 

「これかな?いや、こっちも良さそう」

 

 

てっきり自分で選ぶと思っていたのだが勝手に向こうで見繕ってくれるらしい。向こうの世界の服装などわかる訳がない故に任せた方が良いだろう。

 

しかし服を選ぶ横顔は随分と嬉しそうにそして楽しそうに選んでいる。微笑みながら服を選ぶその横顔は写真にすればフォトコンテスト優勝間違いなし、目の保養である。good!!!

 

 

「はい、こちらをどうぞ」

 

 

麗人はにこやかに服とその他諸々をを渡しその場でクルリと後ろを向いた。若干気恥ずかしいが来ていた病衣を脱ぎ、渡された服に袖を通して行く。

 

アイボリーのシャツ、グローブ、ズボン、皮のブーツ、フード付きの外套、腰布とどれも丈夫な作りであり、ちょっとやそっとでは壊れないだろう。しかもサイズもぴったりである。

 

良い服を貰った事により少し気分が良くなるが感謝だけは忘れずに伝えた。

 

 

「いえいえ、こちらこそ久し振りにファッションを楽しめたので」

 

 

満足気に語る顔を見て、こちらもほっこりとした気分になる。しかしサイズぴったりのかなり良い服だがこれは特典扱いにはならないのだろうか?

 

「いえ、私のタンスにあった私物ですから特典にはなりません」

 

 

なるほど、と思うが少し違和感を覚える。私物と言った筈なのに多少撫で肩だが男の自分にぴったりなのだ。

 

男の自分にぴったり、つまり胸の所が残念と言うレベルでない。

 

パッドか、

 

先程の抱きついてしまった時の感触といい確信が得られた。パッドの麗人、胸が無いことを必死に隠そうとしているのだろう。何と涙ぐましい事なのだろうか……世界は残酷だ。

 

「何かとても優しい目になりましたが、ひょっとして何か哀れんでます?」

 

 

大丈夫、ちょっと泣きそうになっただけ、貴方の努力はいつか報われますよ。多分……

 

 

「ええと、何かとても励まされてる気がしますがまぁ準備も出来ましたし異世界にお送りしましょう」

 

 

麗人が手を翳したその瞬間、自分の足下に魔方陣が神々しく輝き始める。

 

 

「貴方は子供ですから、もし何かわからない事があったら教会で祈って見てください。もしかしたら私と繋がるかも知れません」

 

 

何から何まで至れり尽くせり、感謝感激雨あられ、としていたがとても重要な事を事を思い出す。

 

まだ麗人の名前を聞いてない!バカ!ウカツ!ショギョムッジョ!綺麗な人の名前は聞いておけばっちゃがと言ってた筈だろう!ばっちゃにあったことないけど

 

 

「あぁ、そう言えば忘れてましたね。私の名前はエリスです。女神のエリスです。」

 

 

なるほど女神でござったか!この世の者ではない美しさを持っていた辺りから薄々感じてはいたがやはり女神であるとは。

 

体が徐々に浮き上がり女神エリスとの距離が離れて行く。

 

「貴方の旅路に幸多からん事を」

 

転送されるまで秒読みとなった所で最後に手を振りながら自分も言葉を返す。

 

 

 

行ってきますと、そしてなるべく胸の事は黙って起きますからと言葉を添えて視界は光に包まれた




次回の投稿はまだ未定、されどいつかは書きたい今日この頃、指折れ膝挫こうとも徐々に書き上げて行こうと思います。

(訂正、指は既に折れてます。物理的に)
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