この素晴らしい世界へ少年を   作:フランシス・アルバート

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数年ぶりの投稿、みなさんお久しぶりですね!

いや、もっと早く書くつもりでしたけども仕事に、あとは大怪我して療養しておりまして
遅くなって申し訳ありません



悪意

色は赤色であった

 

 

 

 

コイツらは間違いない、敵である。

 

『切り抜けてみせよ、ユーリ』

 

仮面から声が聞こえる

それは真剣見を帯び、自分を試しているのだろう

 

ならばやることは決まった

 

三十六計逃げるに如かず

 

次の瞬間ナイフを作り前にいる一人の足を突き刺した

 

「グぁッ!なっ何をする!!」

 

突如刺された事に声を上げ、崩れる男

だが後ろの奴が反応し、剣を抜くがそれよりも早く煙玉を取りだし叩き付ける

煙による視界妨害と足を突然刺したことによる動揺で時間を稼げるはずだ

 

コイツらが何者かはわからない、だが今は逃げることを最優先とし少女を背負い直し走りだした

 

人通りの多い場所に出れればそれが一番安全であるが通りに出るには奴等の横を掻い潜らねばならない

だが今はお嬢様を背負っている、通り抜けることはできない

路地の奥へと逃げ、大きく迂回するしかないだろう

 

「くそっ!逃がすな、追え!」

 

足を刺した奴が声を上げるともう一人の奴以外にその後ろから更に複数人現れる

 

追われる恐怖よりもとてつもないめんどくささを感じる、映画の脱走シーンで逃げる主人公もこんな気持ちだったのだろうか

 

退散退散悪人退散

鬼は外の福は内と後ろに向かって大きさにしてパチンコ玉程の物をメリクリウスで作り出してばら蒔く

 

そして玉を踏んだ追っ手は足を滑らし盛大に転けた

 

ちなみに余談であるが古代ローマでは黒豆を背後の影に投げる節分と似た風習があったそうな、今の現状はそれに似ている

邪を祓う意味では同じだが今は全く関係ない

 

蜘蛛の巣のように入り組んだ路地を先程塔の上で頭に叩き込んだ道筋で駆け抜けた

 

「こっちだ!追え!」

 

「いけ!捕らえろ!」

 

「逃がすか!まて!」

 

背後からは沢山の怒号が聞こえ、さながら外のお祭りのような喧騒になっている。近所迷惑も良いところの騒ぎだろう

 

例えるなら突いた蜂の巣の如くと言ったところか

 

 

 

 

 

 

「居たぞ、こっちだ!」

 

 

暫く路地を走り続けるが追っ手が次々と現れる

それに対して嫌な違和感を覚えた

少しおかしいのだ、足止めしながら蛇のような路地を駆け抜けているのに追っ手を撒けない

 

「待ちやがれ!」

 

うるさい怒鳴り声だこと

 

目を血走らせた追っ手をチラ見しながら走り、際に壁に水銀の突っ張り棒をつけて妨害をする

 

しかし追っ手がもたついたのも束の間、嫌な気配を感じ取って伏せると窓をぶち破って男が飛び出してきた

 

「捕まえたぜ!」

 

飛び出した男が背負う少女の足を掴んだ

だが捕まるわけにはいかない

 

咄嗟に籠手に仕込んだ握り鉄砲を後方に発砲、渇いた音が路地に響く

 

「ぐぁ!」

 

弾は肩に命中したようで少女から手を離した

その隙にまたもや走る

 

順調に進んでいる

このまま行けばもう出口だ、通りに出れば人目があり、助けを呼べる。そうすれば連中も諦めるだろう

 

蜘蛛の巣のような道を走り抜け、出口まで一本道となった路地を走る

 

『まて、後ろに飛べユーリ!』

 

出口寸前に差し迫った瞬間、仮面から声が聞こえて咄嗟に踏ん張り、後ろへと飛び退く

 

ドンッ!

 

するとそこに大きめの石が降ってきた

 

それも一つではなく、二つ、三つと止まる事はなくガラガラと積み重なり、しまいには土砂崩れのように降り積もると出口が塞がった

 

『負傷はどうだ?』

 

大丈夫と返す

多少の擦り傷はできたが捻ったりはしていない

 

少女も怪我はない

 

一体何が起きたのだろう警戒する、しかし考えてる時間はない

少女を背負い直し別の道から逃げようと振り向く

 

「やっと追い付いた…たく、苦労かけさせやがって」

 

後ろを振り向くと8人程の男がじりじりと此方に詰め寄って来ていた

 

 

追い詰められ、チッと自然に自分の口から舌打ちの音が漏れる

 

 

出口が突如として閉じられるとは

 

しかも一本道だったことが災いして後方には追っ手が壁の如くよってきている

 

一人ならば出口の山を無理矢理登ることも、何とか男達の間をすり抜けられただろう

たがしかし少女を背負っているために登っても捕まるだろうし、すり抜ける事はもはや不可能だ

 

「おいガキ、今ならソレを渡せば生かしては返してやる」

 

前世で見たテレビで聞いたような台詞を吐いて追っ手はにじり寄る

 

しかしどうせ渡したところで助かるのは言葉通り命だけだろう

 

骨は折られたりだとか殴られ重傷を負わされたりだのさ顔を見たとかで監禁されるか

はたまた奴隷制度がこの国にあるかはわからないが何処かに売っ払うか

 

考えた限りロクな事にはならないだろう

 

最悪と言える状況に少しでも我に幸あれとエリス様に祈った

 

アーメンハレルヤエリス様

 

どうか私達を御守りください

 

 

「おい、早く渡せ」

 

 

プチ祈祷を捧げて居るところに聞こえてくる不機嫌そうな声

 

見ればゴツく山のような巨漢の男がバトルアックスと呼ばれる大きな両手斧を肩に乗せ自分を見下ろしている

 

男の眼光は鋭く、鈍く光る両手斧が雰囲気と相まってそれが妙な威圧感を放っていた

 

この中では一番強いのだろうか、見ればそいつの後ろにいる連中は信頼があるのかとても余裕そうな表情を浮かべている

 

ここは大人しくお嬢様を渡して逃げるべきなのだろうか

そうすれば怪我することもない

 

しかしそれは正しいのであろうか、いや正しくとも自分自身が許さないだろう

 

 

『ユーリ』

 

 

仮面から声が聞こえる

何であろうかと耳だけを傾ける

 

『汝は危機的な状況である』

 

そんな事はわかっている

 

『そして少女一人を抱えたままこの状況から逃げ切る術を持ってはいない』

 

何が言いたいのですか

 

『少女を助けるならば汝の実力では相手を殺めねばならない…この意味、理解できるな?』

 

その言葉に少し、ほんの少しだけ硬直する

人を殺める…それは言葉としてもとても重いものだとは理解した

 

『故に汝に問う、二度と引き返すことの出来ぬ道を歩むことになるがそれでも良いのか?』

 

その問いは重く深く、そして暗い

だが、何故だろうか

 

立ち向かう

 

それ以外に答えが見つからない

何故?どうして?

 

わからない

 

ただ何となく、やらないといけない気がするんだ

 

『そうか…』

 

 

『ならば我等から言うことはもう何もない、汝の勝利を祈らせてもらおう』

 

『小さき者に勝利を』

 

複数人の声が聞こえ、そして沈黙のみが残った

腹は決まった

 

ここからは自分の選んだ道だ

 

背中に背負った少女をお姫様抱っこへと持ち替え男の前に持ち上げる

 

「やっと渡す気になったか」

 

渡す気

 

そんな物、有るわけが無い

 

少女を持ち上げる事によって出来た相手の死角

それを狙い、足の先に刃を作り男の股間を蹴り抜く

 

声にならない叫びを上げ男は反射的に踞った

 

その瞬間を狙いアサシンブレードを首に滑り込ませ、喉を掻き切る

 

まずは一人

 

河豚が水を吐き出す様に血が飛び出し自分を赤く染める

 

少女も血がかかるが不意を突くためにはこうするのが一番であった。コラテラルダメージと言うものか

 

少女を素早く下ろす、いや落とすに近いが地面に寝かせそのついでナイフを作り出し一人の敵にスキル、投擲を発動して投げつける

 

「かはッッ!!」

 

余裕ぶっていたせいか咄嗟に反応できず、ナイフは綺麗に男の喉に突き刺さった

 

二人目

 

間髪容れずにナイフを作りだし更に隣の男に投げつける

 

「うわッ!」

 

反射的に手を上げたのだろう、手に刺さり致命傷を免れる

 

だがそれは致命的な隙である、一瞬気がそれたその瞬間にスキルの疾走で懐に潜り込み、脇にアサシンブレードを何度も叩き込む

人間の重要な臓器の一つである肺、そこを刺されれば間違いなく致命傷だ

 

三人目

 

刺した男を押し退け、更に後ろの男に飛びかかる

 

「まて!まて!やめろォォォ!グペッッ」

 

男は反応が遅れた故に体幹が崩れたのか押し倒す事に成功し、新たに作り出した喉にナイフを突き刺し、止めを刺すようにナイフを捻った

 

四人目

 

「おらッ!」

 

後ろの男は反応出来たのだろう、押し倒し止めを刺している事により一瞬無防備になった自分に剣を振り下ろす…

 

だが

 

スティールッッ!

 

 

しかし先に自分のスティールが炸裂した

 

盗み取ったのは振り下ろした剣

 

剣が手元から無くなったことにより一瞬硬直した男に剣を刺し返す

 

五人目

 

「な、何なんだよこいつは!?」

 

「聞いてねぇよこんなの!!」

 

男達は怖気づき、前に居た奴は腰が引けている

戦意は損失しているのだろうか、だが容赦はしない

後ろに少し下がり巨漢が持っていた両手斧を拾い上げ、投擲する

 

斧は放物線を描き、一人の頭をその重量を持ってかち割った

 

六人目、残り2人

 

「ヒッ、ヒィィィ!!」

 

「化け物、化け物だ!」

 

踵を返し逃げようとするがそうはさせない

逃げる先頭にいる奴の踵に向かってナイフを投げる

 

着ている装備は軽鎧、すね当てや胸当ては装備しているが後ろの踵までは覆えていない

つまりそこにナイフは刺さり健を断裂、男は転ぶ

 

すると前方が急に転げたためか後ろを走る男を巻き込み二人共に転んだ

 

その隙は逃さない、メイスを作りだし一人の頭を何度も殴り、そして潰す

 

これで7人

 

そして最後の一人となった

 

だがまだ殺さない

 

何故ならば情報を引き出していない、だから最後の一人はまだ殺さない

 

足を引きずり這いずるそいつを踏みつけ動きを止めさせた

 

「ヒッ…ゆ、許して!許してくだざい゛!!」

 

涙と鼻水で顔面はべしゃべしゃ

そのまま命乞いをしてくる姿は中々に痛ましい、だが今は別に殺すつもりはない

 

だが追っ手は他にもいるかも知れないため時間はあまりない

 

簡単な質問をして行く

 

何故襲ったのか

 

「お、襲った理由?ただ俺等は金で雇われただけなんだ。あの娘を誘拐しろって」

 

怯えながらも男は弱々しく話す

怯えた様子に嘘の気配はない、本当のようだ

 

だが金でコイツらならず者を雇ったと言うことは依頼主、つまり黒幕が居る

 

少女を誘拐する理由は何だろうか

人さらいして奴隷の線は…薄いとして身代金目的、はたまた別の目的があるのか、まぁどちらにせよロクな事では無さそうだ

 

しかし今誘拐の理由を考えても仕方がない、理由なぞ依頼主に聞けばわかるだろう

 

安全を考慮するとあまり時間はかけたくはない、次の質問に移る

 

では依頼主は誰なのか

 

「依頼主?依頼主…いやそれはわからない…」

 

依頼主がわからない?

一応確認のために少し大きめの鉈を作り脅しをかける

 

「本当だ!本当にわからない!」

 

依頼を出した奴がわからない?

どういう事なのだろうか

 

「黒いローブを纏った奴だった、声からして男だと思う。気味が悪い奴でそいつが金とこの装備を俺達に渡してやれって言ったんだ」

 

気味の悪いローブの男

 

何と言うか使い降るされたミステリーやホラー作品に出てくるいかにも怪しい奴みたいだ

 

しかしそんな怪しい奴に狙われるとはお嬢様も大変苦労なさっている、と自分の事ではないが多少同情する

 

他には何かないか?

 

「も、もう知らない!知ってることは全部話した!!!」

 

怯える瞳に震える声

これはもう収穫は得られないだろう

 

そうと決まればもう戻る準備をする

 

他に奴等が居ないとも限らないし、それに後ろの石の山も今は何もないが安心はできない

 

捜査等は素人である自分がやるべきよりもその道の人に任せるのが一番だろう

 

最後の男の方も生かして捕らえれば後々何かに役に立つかもしれない

そうならば気絶させるのが今のところベストだ

 

今一度鉄棒を作り出して雷属性を付与し、それを男の首に押し当てる

 

「あがががががが!!!」

 

即席のスタンロッドだ、死にはしない

何か凄い悲鳴を上げながら色々と垂らして倒れたが大丈夫だろう

煙吹いて白目向いているが大丈夫だ、大丈夫大丈夫

 

気絶させた男の武器をひん剥き手足を縛り転がす、一先ずこれで情報を手に入れたため安全な場所に移動することにした。

 

作った武器を水銀へと戻して回収する

 

そして回収が終わり、少女を拾い上げた

可愛らしい寝顔、あれだけの事があったと言うのに起きないとは肝っ玉が太いのかそれとも薬が効きすぎているのか

 

さっさと帰ろうと少女をおんぶし、来た道を引き換えそうとして

 

 

 

直後、腹に鋭く鈍い激痛が走った

 

 

 

 

 

 

氷のような冷たさを腹の周りで感じ、次の瞬間には焼かれるような強烈な痛みが走る

 

一瞬の硬直…後に血が吹き出す

だがその硬直により生じた隙に更にもう一度ナイフが振り下ろされ、腹部を刺された

振るわれた方向を見やればそこには保護対象の少女が笑みを浮かべていた

 

これ以上刺されるわけにはいかない

咄嗟にナイフを持つ手を掴み押さえ込む

だが手を掴んだ瞬間、強い衝撃を背中に受け、バランスを崩したまま転がり、地面へと強めに落ちる。

どうやら手を掴んだ瞬間に背に思いっきり蹴りを入れられたようだ

 

ポタリポタリと血が流れ落ち、止まらない

咳き込むと変色した血が喉の奥から溢れて零れ

そして次には四肢が痺れに力が入らず膝をつく、これはナイフに毒が塗られていたのだろう

 

「ひーかかったひっかかったー!」

 

男の声、それはすぐ近くから聞こえた

いや、少女からその声が聞こえる。どういう事だ

 

「シェイプチェーンジ!」

 

そう少女が口にした瞬間、少女の姿がぶれて黒いローブの男へと姿が変わる

 

変身、とその言葉が頭に過った

 

魔法が平然と存在する世界だ、そんな物があるとは自分が知らないだけであってもおかしくはない

 

「ん〜どうだった?俺のシェイプチェンジ、完璧だったでしょ?」

 

ケタケタと男が笑う

 

「油断大敵だょぉ?」

 

明らかな挑発

腹の痛みと共にふつふつと怒りが沸く

 

落ち着け

 

一旦深呼吸をして頭を冷やす

とりあえず今の状況の確認だ

 

腹部、2箇所の刺傷に出血多量で激痛…内蔵に傷がついているかはわからない…

 

四肢の麻痺、手足には力がほぼ入らない…毒が関係しているのは明白

 

意識、出血と毒で視界はボヤけるし聴力も落ちている…危険な状態と言える

 

目の前の男、170cmくらいだが細く見える…フードのせいで顔はわからないが持っているものはナイフであったからジョブは盗賊又は暗殺者だろうか…いや、擬態に似た技はアサシンにはあるがそれとは別…何より魔法のような物をこの『目』が捉えていた

 

つまり…やつは魔法使いである可能性が高い

 

腹部から血が出るがとりあえず止血しなければと、動き辛い手を傷口にあて、メリクリウスを起動し水銀で無理矢理傷を塞ぐ

 

「ん〜?んん?なにそれ?」

 

滴り落ちる血が突然止まったからだろうか

男は首を傾げながらこちらを直視している

 

「ん〜…そんな魔法は記憶にないし〜…もしかして…転生者?」

 

転生者を知っている?

と言うことはコイツも同じ転生者なのか?

 

「ん〜可哀想に、君もこんな世界に落とされたんだね…」

 

「まだまだ若いように見えるからさ〜、悲しさを知る前に〜」

 

終わらせてあげるね?

 

男は空間に手を突っ込み、剣を一つ取り出す

間違い無い…コイツも転生者で特典を持ってる

 

動こうとしても四肢に力が入らない

毒と無理やり傷を塞いでも失血している

 

振り上げられた刃

 

その切っ先が振り下ろされる様子がやけにゆっくりと見えた

 

走馬燈が見える、あの日、病気で命潰える瞬間すら見えなかった走馬燈

 

そして見えたのは…クリスの顔であった

この世界であった色濃く写るもの、そこに君がいた

 

あぁ…そうか、私は君を…

 

「ユーリッッ!!!」

 

彼女の声が聞こえた気がした…

 

 




on…久しぶりに筆をとっても時間軸が全然進まぬ…

もうちょいスピード上げたかったけども技量が全然足りないなぁ…
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