この素晴らしい世界へ少年を   作:フランシス・アルバート

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最近は何故かこちらで書くよりLINEで一旦下書きした方が筆が進むフランシス・アルバートです。
久しぶりの投稿でございますが隙間の時間等に読んでいただけたなら幸いです。


犬も歩けば棒にぶち当たる

風が頬を撫でつけている。

 

とても幼い頃の記憶に微かに残る懐かしい感触だ。

 

次に感じたのは重力と光、体の重さがはっきりとわかり、そして目蓋越しに柔い光を感じた。

 

恐る恐る自分は目を開ける。

 

一瞬光に目が眩むがすぐに慣れ、目を見開くとそこには壮大な草原が広がっていた。

 

 

いつも窓から見えていた光景より広く何処まででも続く光景に言葉を失う。

 

草原は青々とし、晴れた青空の下にあり、いつかそこを駆け抜ける事を夢見ていた。

 

しかし頬を軽くつねり夢などではない事を自覚する。これは現実だ。腕も足も健康な体と役者が揃い自分の新たな人生が始まる。

 

あぁ、これが異世界、全てが眩しく愛しく、そして儚い

 

自分はやっと自由を手に入れたのだ。

 

その事にとてつもない喜びを感じる。

自由な体に自由な世界、風の向くまま気の向くまま。

 

棒を転がしても行き先を決めるのも悪くはない。

 

 

腕を上げ一つ伸びをした後、特典であるメリクリウスを起動し、水銀を棒状に伸ばす。

 

 

体から何か気力のような物が少量抜けるのと同時に水飴のように粘り気のある銀色の液体が小さく棒状に形を作り一本の千歳飴のような棒が形成される。

 

昔からあるとてもポプュラーな行き先の決め方、棒倒しをやる為に先ほど作った棒を地面に軽く立たせた。

 

アーメン、ハレルヤ、エリス様、異世界の幸多き旅路をお教えください。

 

良く言えば簡易的、悪く言えば適当に祈りを捧げ地面に棒を立て、ゆっくりと手を離すと棒は少し揺れながら倒れ、次の行き先を指し示す。

 

城門、棒は自分の背後にあった城門を指し示していた。

 

目的地は決まった。後はこの足で行けば良い。

メリクリウスを解除し、液体となった水銀を吸収した後に始まりの一歩を踏み出した。

 

 

草を踏む感触と音がとても心地よい。生前はついぞ味わうことのなかった感覚に少し興奮する。

 

一歩、また一歩と踏み出した足は徐々にスピードがあがり草原の上を疾走していた。

 

手足が思い通りに動く、当たり前の様であっても自分に取っては憧れであり、抑制されてきた物だ。我慢など出来るわけがない。

 

全身全霊で草原を駆け抜ける。

風を切る感覚、変わる景色、どれもが素晴らしい

 

 

他人に取っては小さな、しかし自分に取っては大きな幸せを噛み締めながら走り、気が付けば自分は棒が指し示した場所に着いていた。

 

 

「おや、初めて見る顔だな。もしかして旅人か?若いのに立派だな」

 

 

息を整え城門にたどり着くや否や門番が話しかけてくる。

異世界初のコンタクトだがベタな展開とすら言えるが私的にはとても嬉しい事である。

 

 

「ようこそ駆け出しの町アクセルへ、こんな所まで来るなんてよっぽど物好きだが歓迎するよ」

 

 

平和な町なのだろう、見事に門番が門番してない。そんなので良いのだろうか。

 

まぁ良い、突然訳もわからず捕まるよりウン億倍マシである。自分は歓迎の言葉をかけてくれた門番に礼を言い、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗な小川、子供達の無邪気な声、おばさん達の井戸端会議を尻目に綺麗な町並みを堪能しつつも歩いて行く。

 

こう言った平和な光景は見ていても飽きないが一つ重要な事を忘れていた。

 

一体自分は何処に行けば良いのだろう……

四肢が動くからといって少々はしゃぎ過ぎたようだ。

 

絶賛迷子中の自分はまさか人生すらも迷子になるとは思っていなかったのだがこのままでは途方に暮れてしまう。それだけは避けなくては行けない。

 

そう悩んでいる内に進んだせいなのか、ますます道に迷い人通りの少ない場所に出てしまう。

 

今は比較的に明るい時間なので安全と言えるが夜は安全とは言い切れないだろう。

 

日本でさえ、夜道の一人歩きは危険と言われている。異世界の駆け出しの町としても例外ではない筈だ。

 

早急に何とかしなければと焦りそうになるが一旦深呼吸をし冷静になる。

 

日はまだ高い、まだ慌てるような時間じゃない。あわ、あわわわ

 

落ち着け落ち着け、ふんぐるいふんぐるい、いあいあエリスー

 

とても都合が良いがつい神に祈りながら歩く、少しでも良い方向に向かうために

 

 

しかし祈りを捧げる内にふと、あることを思い出した。

それは転送される瞬間に言われたあの言葉だ。

 

 

 

ほわんほわんほわんくちなし~

 

 

 

『もし何かわからない事があったら教会で祈って見てください』

 

 

 

確かにそう言われた。つまり自分に取っての次の目標は教会と言うことで良いのだろう。

思い立ったが吉日、教会に行くための道を知る必要がある。さあ電話屋はどこだ?

 

 

しかしここで更なる失敗に気がついた。

 

迷子でも適当に進んだせいか人通りがない道に出てしまい周りを見渡しても誰もいない。

 

これでは道を訪ねる事も目的地にたどり着くことも不可能になるだろう。

 

絶体絶命(大袈裟ではあるが)

 

そう思い道の角を曲がった時、そこを見つけた

 

 

『ウィズの魔法店』

 

 

人通りの少ない、それこそ静かな場所にそれはポツンと建つその店は看板に書かれた営業時間にも関わらず人が少ない。

 

しかし今の自分に取っては関係なし、店の扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ!ウィズの魔法店へようこそ!」

 

直後、ウェーブがかかった栗色の髪のナイスバディな店主がいた。

寂しい所なので店主も氷のようなクールかつ静かなイメージがあったのだがその真逆、目が眩むくらいの営業スマイルで出迎えられる。

 

 

「何かお探しでしょうか?オススメならこの空気に触れると爆発するポーションです。」

 

 

営業スマイルを輝かせながらある意味、爆弾発言をしてくる店主に称賛を捧げたい。ブリリアント!

 

だが自分は道を聞きに来ただけである。ソーリー

 

 

「あ、はい」

 

 

自分の言葉により少しシュンとしてしまう店主さん、確かに道を聞くだけと言うのは店側に取って冷やかし行為に他ならない、店主の顔が曇るのは仕方ないだろう。

 

むしろ曇らせてしまった自分に否はある。すまない本当にすまないと、どこぞの竜騎士の様に謝罪をする。

 

 

「いえ、確かにちょっとは寂しいですが……困っている人は放って置けませんから」

 

 

何とお優しい事か、自分はとてつもない罪悪感に刈られるが今度お金が貯まった時に何か買おうと割り切り、当初の目的である教会への道を訪ねた。

 

 

「教会の場所ですか……」

 

 

この町は初めてなので地理にとても疎い、それ故に迷ってしまったと言うわけだ。

 

 

「成る程、少し待って貰って良いですか?」

 

 

そう言いながら店主さんは紙とペンを用意しサラサラとそれらを使いながら地図らしきものを書いて行く。

 

多分地理に疎い故に地図を書いてくれているのだろう、ありがたや

 

しかし店主さんはある一定の場所まで書き終えた所で唐突に書く手をピタリと止めた。

 

 

「ええと、どちらの教会に行くのか聞いていませんでした」

 

 

どちらのと聞かれ少し戸惑うが女神エリスの名前を出して置けば問題ないだろう。

 

 

「エリス教会ですね。」

 

 

わかりましたと呟き、更に地図を書き込んでいく。

そして待つこと数分、出来上がったのであろう。地図を手渡してきた。

 

 

「ここに行けばエリス教会がありますよ。ただエリス教徒ならわかるかも知れませんが、教会の近くにアクシズ教の教会もありまして……」

 

 

アクシズ教?何やら小惑星の様な名前ではあるが何かあるのだろうか?残念な事にこちらの宗教、政治等にはまだまだ疎い

 

 

「えっ?アクシズ教を知らない?」

 

 

何か驚いた顔をされたが知らない物は知らない、ある意味、箱入り息子なのだから

しかしてそのアクシズ教とやらはなんぞ?

 

 

「アクシズ教はですね、そのちょっと過激な人が多い宗教でして、特にエリス教徒の人には容赦がないと言うか……」

 

 

おつむが月までぶっ飛んでる連中と言う認識で構わないだろうか。

 

 

「言葉は悪いですが、過激な人はそんな感じですね。」

 

 

否定しないあたり相当ヤバい連中なのだろう、触らぬ神に祟り無し、もしアクシズ教に鉢合わせても浄土宗とでも言って誤魔化すようにするとしよう。

 

 

「はい、手書きで申し訳ありませんが教会までの地図です。」

 

 

そうこうしている内に地図を書き終え店主さんははい、と渡してくる。

 

愛嬌のある手書きの地図を受け取り、お礼を伝えて扉を開く。

 

 

「またいつでもいらっしゃってくださいね。」

 

 

入口まで見送ってくれた店主さんにまたいつか必ず買い物にくると言い最後に握手を交わそうとした。

 

 

「んっ!?」

 

 

パチンとした音と共に店主さんは手を引っ込めてしまった。

手袋をしたままだったので静電気でも起きたのだろうか、これは失礼な事をしたと手袋を外し、再度握手を交わす。

 

 

そして地図を片手に自分は店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっとごめん」

 

 

教会への地図を見ながら歩いていたせいか、前を良く見ていなかったため他の人とぶつかってしまった。

前を見ずに歩き、ぶつかってしまったのは自分のためすぐに謝る。

 

 

「良いよ良いよ、だけど地図を見ながら歩くのは危険だから気をつけてね」

 

 

今しがた、ぶつかってしまった銀髪で頬に傷がある人は人差し指を立て自分に注意を促してきた。

 

全くその通りだ。現代でも社会的問題となっている歩きスマホ的な事をやらかしたのは反省せねばならない。

 

歩きながらのながら歩きと言うのは通常の視界より20分の1程に狭まると言う。どれだけ危険かは言わなくても良いのだろう。

 

つまりスマホだけではなく二宮金次郎も危険と言うものだ。

 

 

「君、地図を読んでたと言うことはこの町は初めてかな?」

 

 

手に握る地図を見てそう判断したのだろう、この町にはついたばかりである。とだけ言っておく

 

 

 

「へぇ、なら差し詰小さな旅人君って所かな?」

 

 

小さなと言われムッとしかけるがまだ自分はまだ成長期、焦る必要はない

しかし旅人と言うのはある意味あっている。花丸を送りたい。

 

 

「じゃあさ旅人君、もしよかったらアタシが色々と案内しようか?」

 

 

見ず知らずの人を助けるとは、人が良いのかそれとも何か企みがあるのかと少し警戒してしまう。

詐欺には気を付けろってばっちゃがいってた。あったことないけど

 

 

「もしかして……警戒してる?大丈夫、大丈夫、取って食べようなんて思ってないしお金を取ろうだなんて思ってないよ、ただ君くらいの子が迷子になっていたのが心配だったからさ」

 

 

ただの親切心だよ、と付け加えられる。まぁそこは言いとしよう。しかし何か引っかかる気がするが心配してくれていることは確かなようだ。

お言葉に甘え、案内をしてもらうとしよう。もし何かあったとしても貰った地図で大雑把ではあるが町の地形がわかる。

 

 

「それじゃ、お目当ての教会に行こうか、こっちだよ」

 

 

そう言って気がつけば手を繋がれ道を歩き始める。

繋がれた手はとても柔らかく暖かい、そして安らぎがあり、何故か安心できる手であった。

 

手を繋ぐ

 

産まれてからほんの数える程しか記憶になく、久しく忘れていた他人の温もりが自分には尊く感じられた。

 

周りを見渡せば人々がこちらを見て微笑んでいる。多分仲の良い姉弟に見えるのだろう。少し恥ずかしさがあるがすぐに消えた。

 

ただそっと自分の手を引くその手が不思議と安心でき、抗う事すら忘れ去っていた。

 

心ここにあらずと言った感覚で、されどしっかりとした歩みで教会へと進んで行く。

 

 

 

手を引かれながら、ふと思った。

 

 

 

 

 

 

教会に行きたいと言っただろうか?




びっくりするほど話が進んでないだと……と思った人、挙手を……

本当は今回でギルドに行ってジョブ決めて色々と原作と絡ませる予定立ったのにどうしてこうなった!?

と自分でも思っていますが実はウィズとの絡みが当初にはなく、進めた結果何か私的にとても浅い駄文となったので一旦書き直した結果、何故か膨らみすぎてこうなった所であります。(投稿が遅れたのもそのせい)

次回はギルドからクエストまでを書いて行こうとは思っています。

お楽しみに
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