ちょっと家庭で葬式とかあって書くのが遅れましたがまぁ何とかできました
お楽しみください。
赤く可憐に噴き出す血液
血で真っ赤に汚れた服
手に握られた未だ脈打つ活きの良い心臓
眼前には自分の倍以上ある蛙が色々な液体を巻き散らしながら倒れる
その光景は端から見れば猟奇的とも言えるくらいのグロテスクである。
同じパーティーのクリスとダクネスは自分の腕を滴る血とは真逆に顔を真っ青にしており、呆然とこちらを見ていた。
正直に言おう。
やらかした……
◇
始まりはクリスの初心者講習、もといクエストを受ける事になったのだがそのクエストの内容がジャイアントトード、つまり蛙狩りであった。
蛙狩りと聞くとあまりピンとは来ないがエリスから聞くにはとても大きな蛙であり、この時期は産卵のため体力をつけるために人里に降りては家畜を丸飲みにしてしまうらしい
その為、毎年人知れずに農家の子供や家畜などが行方不明になるとか
私的にゴライアスカエルくらいだと思っていた為にこの話を聞いて少々驚いた
家畜を丸飲みと聞くには相当な大きさと考えられるがそれ以前にこのクエストが初心者の物と聞き、改めて異世界の規格に驚かされる。
またクリスによるとジャイアントトードは、子供にも人気な食材になると言う事で食用としてもギルドが買い取ってくれるらしい。
食用と言うことはヨーロッパトノサマカエル、または日本のウシガエルの巨大化した物だろうと思いその姿を思い浮かべ少しだけぞっとした。
「ジャイアントトードは肉質が淡白で唐揚げとかにすると美味しいんだ」
唐揚げとな、病院食でもたまに出る唐揚げは量は少なかったが自分の好物の一つでもあるためよく覚えている。
そんな美味しい唐揚げになると聞いて少し気持ち悪いと思っていたカエルが瞬く間に輝かしい物に思えてきた。
食欲一つで変わるなど我ながら現金なものだ
◇
「じゃあ、私は偵察に言ってくるから、ダクネスはユーリ君と一緒にちょっと待っててね」
ジャイアントトードの生息地へと踏み入れる前にクリスが安全のための偵察として草原へと駆けて言った。流石盗賊、足が早い
しかしここでダクネスと一緒に残されるのは若干気まずく感じた。
「えっと、ユーリでよかったな?」
何か話を切り出した方が良いと思っていた矢先に向こうから先に話を切り出してくれた。
「君は初心者と聞いている。まだ不安は残るだろうが私達がついているからそう怯えなくていいぞ」
凛とした表情で告げるダクネスは上級職のクルセイダー、防御においても頼りになるだろう
「ただ初心者向けとは言え、油断はしないように気をつけろ。油断するとあの大きな口で頭からパクリと食べられてしまうからな」
ダクネスがジャイアントトードについて油断しないように注意してくるが何やら嬉々としている。
騎士と言うことだけあって戦う事が好きなのだろうか?言っていることは正しいがいかんせん段々と恍惚とした表情になり、秒刻みで説得力がマイナスとなっている。
ただ丸飲みと言うことならば、死ぬ可能性は頭からかじられるより低いと思える。飲まれたならば口の中ないし腹の中にて大暴れしてやれば良い
だがメリクリウスがあるからと言う前提ではあるためやはり食べられないよう注意するべきであろう。
「そうだ、丸飲みには注意しろ、丸飲みされたならばヌルヌルした粘液であんなことやこんなことに……む、武者震いがとまらん!」
やはり上級職のダクネスとて怖いものは怖いのだろう。ましてやカエル、女性にとっては生理的に受け付けない人が多いのではないだろうか、
今もダクネスは自分の体をギュっと抱きしめ息を荒くしている。昔丸飲みにされた経験でもあるのだろうか?
「いや、飲まれた事はないが、正直飲まれて見たいとは思っている」
飲まれて見たいとは恐れ入った。騎士として敵を知り、己を知ると言うことなのだろう。
ただされて見たいとは些か体を張り過ぎではないだろうか?もしそれが騎士道ならば日本の根性論も素足で逃げ出すレベルである。
「あの大きな口に飲み込まれたら私は一体どうなってしまうのだろうか?」
ハァハァと息を荒くするダクネスは端から見れば先ず間違いなく不審者だろう。
息を荒くする女騎士とショタ、まずいですよ!と何処からともなく獣の叫びが聞こえる気がする。
「ダクネス……」
いつの間にか戻ってきていたクリスがダクネス肩に手を置く。
クリスの声はとても低く慈愛に満ちた笑顔とは真逆に怒りが含まれ、淡々とした調子で言葉を発していた。
「それ以上はユーリ君に悪影響が出るから止めようね」
その後、クリスによる女神のような慈愛に満ちた地獄の説教が響いたのかばつの悪そうな顔をしたダクネスがいた
◇
「ほら、見えた。あれがジャイアントトードだよ」
クリスが指を指す先に視線を向けるととても大きなカエルが二匹いた。
しかしその姿は予想していた数倍の大きさであり、家畜や人を丸飲みにしてしまうと言うのも納得できるくらいには大きい
「どう?始めて見るジャイアントトードは?」
すごく…大きいです…
とクリスには返しておいた
想像以上、の一言では表すことすら難しい程の衝撃を受けた。流石は異世界
しかし腹は決めないとならない、どちらにせよ明日の糧を得るためには倒す必要がある。
「それじゃ戦う前にスキルの習得しようか、ちょっとカード見せてね」
クリスはそう言うと自分が手元に出した冒険者カードを横から覗いてきた。
自然と近くなった体からふわりと良い香りがして少しドキドキするが嫌な感じはしない、むしろ得である。
「ユーリ君のジョブは主に奇襲とかがメインだからオススメのスキルはこれとかだね」
クリスはそう言うとスキルを指差す
確かに奇襲にはとても向いているが正面切って戦うのは控えた方が良いと思えるスキルが多い
最初から保持していたポイントがそこそこあったのでオススメされたスキルを習得することにした。
カードに書かれているスキル名に触れ、右上の肖像に触れる。
体から発せられる高揚感
遺伝子の一つ一つ、螺旋が組み替えられ更新されている感触
これがスキル習得、この世界に置いての対抗手段
脳で理解出来なくとも体が動く事が既にわかり、年相応に使いたくなる衝動が強くなった。
「よし!準備もできたみたいだし早速行ってみよー!」
クリスの掛け声にオー!と返し気合いを入れ直す。もうすでに飛び出したいが一人で突っ込むのは愚の骨頂だ。戦いのたの字を知らない自分ならば眼前のカエル二匹は驚異である。
「右は私が殺るから左はユーリ君とダクネ…」
「いってくりゅ!!!」
クリスが作戦を伝える前にダクネスが飛び出した。完璧なるフライングである。清々しい
「あぁ!もう!ユーリ君、ダクネスと一緒に戦って!片方は私が押さえるから!後ジャイアントトードは打撃が効かないから注意して!」
合点承知之助とクリスに返し、先に交戦しているダクネスの元へ駆け出した
「後、無理はしないでね!」
◇
スキル、疾走を使いカエルへグングンと近づく
景色は流れて線になり、遠くに見えていた物が接近するにつれ急激に巨大化する。
カエルまで後数十メートルに近づいた所でメリクリウスで柄の長いダガーナイフを作り、投擲する。
ダガーは慣性に従いカエルの横腹に突き刺さった。
しかしカエルは此方を見向きもせずにダクネスに夢中である。多分クルセイダーのスキルである囮を発動しているのだろう
ならば好機と更に疾走したまま飛び上がり体を水平にした。
ドロップキック
十分にスピードの乗った体はそれだけで数十キロの重りになり、かなりの衝撃になることを予測し思い切り両足に力を入れた。
ドスンと強い感触が足に流れカエルの皮が波打つ、しかし体はトランポリンの様に弾かれ自分は後ろへと転がった
「ジャイアントトードには打撃は効かない!逃げろユーリ!」
後ろに受け身を取り立ち上がるとカエルは此方を睨み付けるように向いていた
ダクネスが必死になり囮を発動するが気にする様子も出さずに此方を向いたままだ。
「ええい!こっちを向け!」
ダクネスがカエルを切りつけようと剣を振りかざした瞬間、カエルは地に伏せた。
突如倒れたカエルに目を白黒とさせるダクネス
無理もない、打撃が効かない筈のカエルが蹴りを入れた後に倒れたのだから
「何をしたんだ?ユーリ」
何やらダクネスが困惑した表情をしているが簡単な事であると伝える。
ただ投げたダガーナイフに蹴りを入れた、それだけだ
カエルもといジャイアントトードは打撃が効かないのは知っている。
そのために押し込みやすいように柄を長めにしたダガーを投げ、押し込むために蹴りをかました。
押し込まれたダガーは内蔵等の重要な器官を切り裂き、致命傷を与えたと言うことだ
自分の説明を聞いたダクネスがポカンとした表情を浮かべているがまだクリスが戦っているために無視をして加勢にあたる。
加勢に加わった時にはカエルはずいぶんとクリスに切られた様で無数の傷が走っていた
しかしカエルもやられてばかりではない。その大きな口でクリスを丸飲みにしようと舌を伸ばし反撃をしている。
「ユーリ君!」
クリスが回避をし、隙を作ったその瞬間に自分はカエルの背中へと飛び乗り、ナイフを突き立てる。
ナイフは深く刺さり血が噴き出すがまだ倒れる気配はなく、振り落とそうと体を揺さぶるが振り落とされないように自分は刺したナイフを右手で掴み、左手を貫手にし傷口へと突っ込んだ
ヌルリとした感触と共にプチプチと肉が切れて行くのがわかる。
そうして手を突っ込んだ事により伸ばした手の先に脈打つ何かがあるのがわかった。
生物に取っての重要な器官、心臓だ。
自分は更に腕を深く突っ込み脈打つそれを引っ掴み無理矢理引き抜く
赤く可憐に噴き出す血液
血で真っ赤に汚れる服
手に握られた未だ脈打つ活きの良い心臓
眼前には自分の倍以上ある蛙が色々な液体を巻き散らしながら倒れる
その光景は端から見れば猟奇的とも言えるくらいのグロテスクである。
同じパーティーのクリスとダクネスは自分の腕を滴る血とは真逆に顔を真っ青にしており、呆然とこちらを見ていた。
正直に言おう。
やらかした……
◇
あの後、若干パニックになりかけていた二人をなだめ更にクエストの規定数までカエルを狩り続けた。
途中食べられかけ、メリクリウスで針ネズミになり大暴れをすると言うアクシデント以外は普通に終わった。
その後、風呂に行くことになったのだがエリス様に貰った服は気がつけば汚れが無くなり臭いも消えるらしく勝手に綺麗になっていたため、念のため水洗いをし、風呂に入る。
風呂にゆっくりと浸かり疲れを落としたらクリスとダクネスに連れられギルドへと向かった。
「それじゃ無事クエストクリアと言うことで、乾杯!」
景気の良い音が自分を合わせて3つなり響きそれぞれ杯に口をつける。
シュワシュワしたジュースは疲れた体に心地よくグイグイと飲める。と言うよりグイグイと飲んでしまう。生まれてからほとんどこういった物を飲んだ事がなかった故にあっという間に飲み干してしまい、お代わりをした。
続いて唐揚げ、これは今日狩ってきたジャイアントトードの肉を使った唐揚げであり、噛みつけば油が口にじゅわりと広がる。
しかしその割りには身があっさりとしており、揚げ物特有のしつこさがほとんどない。
自分は夢中になって食べていたがふと、クリスとダクネスの微笑ましい視線に気がつき少々恥ずかしくなる。
この光景を見ていたダクネスが「年相応な姿もあるんだな」と笑っていた。
それに対しツンとしてみるが効果なし、クリスも笑いながら宥めてくる。
そんな賑やかな食事は自分にとってとても幸せを感じられた。
こんなに賑やかな食事はいつ以来だっただろうか、少なくとも掠れ、朧気な記憶が断片的にあるくらいである。
周りを見渡せば酒盛りをする男性達、女性に唐揚げを奪われる男性、一心不乱に食べる自分と同い年くらいの女の子
どれもが眩しく、どれもが輝いて見えた。
ここには自由がある。そして幸せがある。
この世界に来てまだ1日立ってはいないがこの先、自由にそして幸せに生きて行けるだろう。
アーメンハレルヤエリス様と自分は祈った
いつもより少し短いかな?
しかしまだ書くネタはあるので亀更新ではありますが頑張って書いて行きます。