この素晴らしい世界へ少年を   作:フランシス・アルバート

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大幅に書き直したら文字数が増え、気がついたら1万文字超えるとは……


今回も暇潰し程度にお読みいただければこれ幸いです。

感想と評価、お待ちしております!


一日千秋、濃い一日

一斉に飛び掛かる鎧骸骨

 

閉められた扉

 

降りかかる拘束具(雑巾)

 

一体でも上に乗られたらそこで終わりだろう

 

だからこそ素早く、そして自分を見失わせ、ここから抜け出すしかない

 

三十六計逃げるに如かず

 

ポケットから煙玉を取りだし、地面に叩きつける。

 

ボンと言う音と共に煙が吹き出し、瞬く間に室内が真っ白に埋め尽くされた。

 

それと同時に気配遮断、音消しなどのスキルを発動

 

煙玉により、虚を突かれたせいかアンデット達は少しの間、硬直する。

 

その隙に敵感知を発動すると扉の後ろから反応が幾つも現れた。扉から逃げようとしてもすぐに取り押さえられるだろう、故に別のルートを探す必要がある。

 

そして逃げられる場所がないかと辺りを見渡すと掃除するときに開けたであろう開きっぱなしの幾つもの窓が見えた

あれからなら予想が正しければ脱出できるだろう

 

身長の低さを利用しアンデット達の股の下をすり抜け、またはアンデットを踏み台にし、群れの間を通り抜ける。

 

しかしアンデットとは元々生者の生命力を感知し生者へと襲い掛かるモンスターである。その為すぐに復帰した幾ばくかのアンデットが視界探知から生命探知へと切り替え、煙の中を自分目掛け走り込んできた。

 

だが捕まるわけにはいかない、メリクリウスでメイスを作り、走り込んで来る奴等の足を殴り転倒させる。

 

頭を狙わなかったのは単純に上向きでは殴り辛いのと確実に倒せる保証が無いため機動力を奪う名目で足を狙っただけである。

 

スイングで足をひしゃげさせ、その隙に掴んできた奴はその腕の間接を極め、上体を崩した所で顎を掴み、そのまま地面へと後頭部から叩きつけ、タックルをしてくる者には身長を利用し更に低いタックルでカウンター、双手刈で転ばせ、倒れたところを踵で喉を踏み抜き砕く

 

一体一体はそこまで強くはない、むしろ捕まえようと加減をしているようで一体ずつなら捌けるが数が問題だった。埒が開かないほど多い、何か逆転させる手はないかと模索する。

 

取り敢えず足先に転がるメイスを拾い上げた。

 

しかし拾い上げた時に一瞬だけアンデットが下がるのが見えた。

 

先程メイスを作り出した時には気が付かなかった些細な変化、武器に怯んだと言うよりも武器その物に恐れを抱いた様だ。

 

アンデットが苦手な物、神聖魔法、聖水等の清いものを含め聖なる物が苦手

 

つまり銀が苦手なのはどのRPGでも有名な話だ。今握っているメイスもメリクリウス、つまり水銀で作った銀故に怯んだのであろう

 

何と無しに作った武器が思わぬ嬉しい誤算を生み出し、自然と悪い笑みが溢れる。

 

それ逃げろ、とメイスを投げつけ、また新たに武器を作り放り投げる。

 

気分はちょっとした悪役、一度はやってみたかった事であり、逃げ惑うアンデットを見て愉悦と、かの金ぴか古代王の真似をする様に高らかに笑いを上げながら投げまくる。

 

クハハハハ!強化解除

嘘です、すいません

 

水銀で鎖も作れ、投げて絡ませ転ばせるがそろそろ色々と怒られそうなので普通に武器を作り投げつける。

 

しかし一番効果的だったのは水銀のままでぶっかける事だったが、胸にかけて!胸に!とか叫びながら嬉々として突っ込んできたアンデットがいたのでやめた。

ちなみにそいつは穴と言う穴から水銀を流し込み昇天させたので蘇ることはないだろう

 

そして武器を投げつけつつ窓へとついた時には煙がちょうど晴れた時であった。

 

 

「煙玉にスキル、そして機転の聞かせ方に中々の観察力……良いセンスだ」

 

 

ベルディアが目の前に現れた。

 

多分この首なし騎士だけは煙玉を使おうともスキルを発動しようとも何かしらの方法で自分を見ていたのだろう

 

もし窓から逃げると予想するとしても幾つもある窓からピンポイントで自分が向かった場所にたどり着くのはほぼ不可能な筈だ

 

 

「それで窓から脱出しようとしているようだから教えてやろう、その先はこの城の玄関前、飛び降りよう物ならひとたまりもないぞ」

 

 

ベルディアは多分気遣いでそう言ったのだろう、しかし玄関前だからこそ、この窓を自分は選んだのだ

 

 

「おい、まさか飛び降りる気か!?」

 

 

ベルディアが少し驚愕しているがそのまさかだ

 

窓際の縁に飛び乗り、体を反転させる。

 

 

「良いか!お前はまだ若い、自暴自棄になるな!」

 

 

やはり魔王軍とは言え元騎士なのだろう、その心遣いに思わず微笑する。

 

しかしそれらを無視し、窓の縁から手を離して立ち上がる。

 

 

サラダバー!そう、大声で叫び、羽の様に手を広げて後ろへと跳ぶ

 

空中に浮遊する感覚を一瞬だけ感じた瞬間に自分は落下を始めた。

 

慌てる様子のアンデット達が窓から顔を出し、ベルディアに関してはデュラハンだけに二つの意味で頭を抱えている。

 

落下して行く自分の体

 

普通ならばこのまま地面と激突すれば自分はザクロの様に赤い染みになるだろう

 

しかし絶対に助かる確信があった故に飛び降りた。

 

落下のスピードを上げた自分の体は重力に従い高速で落下

 

数秒もしない内に地上へと迫る

 

 

そして古い藁の山へと体を着地させた。

 

 

 

 

 

 

時は変わってギルド

 

「えぇっ!?首なしのデュラハンが居た!?しかも名前はベルディア!?」

 

ヒモ無しバンジーで命からがら逃げ仰せた自分の報告に受付嬢のルナが素っ頓狂な声を上げ、勢い良く椅子から立ち上がる。

 

そんなに驚く事だったのだろうか、

 

「驚かない訳無いですよ!そのデュラハンは魔王軍の幹部何ですから」

 

まさかの魔王軍幹部だとは思わなかったが意外と大物だったことに驚く

しかし同時にラッキーであるとも思えた。

原因の解明と共に今回の調査の料金は結構期待できるからだ。これで当分の間は依頼を受けなくても食べて行けるしクラフトブックに書かれている物作りもできる。

 

「それにしても女子供に手を出さないと噂のベルディアですが良く御無事でしたね」

 

あのデュラハンが殺す気で来てならば自分は生きてはいなかっただろう、しかしベルディアは拘束しようとしていたのに加えそこまてやる気は無かった

 

ある意味運が良かっただけである。

 

「無事に帰って来て貰えて何よりです」

 

受付嬢のルナが慈しむ様な顔で儚く微笑む

ルナ自身が出した依頼で危険な目に会うのはルナに取ってあまり寝覚めの良い物ではなかったのだろう

根本的にはゴリ押しで無理矢理依頼を受けた自分が悪いのだが早い段階でこうした失敗を踏めた事はとても有益であった。

 

それにしても調査の依頼を受けたらまさか魔王軍との逃走劇を繰り出すことになるとは今日は色々と濃い1日の様な気がする。

 

しかしあれほどの強者から偶然助かると言った奇跡だよりで逃げるのは止した方が良いだろう

 

逃走に必要なのは偶然ではなく必然だ

 

その為の道具や自分をなるべく有利にできる隠し玉を作る必要もある。

 

幸い報酬はたんまりと貰った。後はクラフトブックにて道具の制作方法、それと必要な素材を購入し、今日中に一つは道具を制作すると言うスケジュールを組み立てる。

 

ルナとの会話をそこそこに報酬を受け取った自分はギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

草木も眠ると言う使い古された言葉がしっくり来るような時間帯

 

我が儘な、お嬢様なら大人はもう寝る時間だと逆に説教をしそうなくらいに外は暗く、とても静かである。

 

ギルドからの報酬で買った材料、火薬を慎重に小分けにし、メリクリウスの水銀で形作ったケースに一つずつ詰めて行く

 

科学の歴史が産んだ兵器、鉄砲の制作中である。

 

鉄砲と言うよりは銃弾の精製と言った所だが銃本体に関してはクラフトブックにご丁寧に書かれており、パーツ各種をメリクリウスにて制作、プラモデルの様に一つずつ組み立て、試作品として横に置いてある。

 

また銃弾に必要なプライマーは雷酸水銀と言う水銀の一種であるためメリクリウスでイメージすると作れた。

 

本来なら一つ一つパーツを削ったり、調整したり、精密に計算しなければならない銃であってもメリクリウスと言うチート特典のおかげでそんなパーツも水銀からホイホイと作れ、あっという間に一つ完成した。

 

ちなみに制作したのは俗に言う握り鉄砲と呼ばれる拳銃をである。

 

そして銃弾の火薬に関してだがこの世界は以外にも火薬は売っている。煙玉に使用した物がその一つだ。

 

しかしこの世界で銃が発達しないのは一重にスキルと職業の存在があるからであろう。

 

遠距離は確かに強いがスキルによる攻撃が普通にそれを上回る力を発揮し、魔法と言う殲滅型の遠距離攻撃もある。

 

そうとなると複雑なパーツを一つずつ作り、専用の弾を作り、出来たのが音が物凄い出る遠距離武器、しかも制作に結構お金が結構かかるとなると誰も作ろうとは思わない

 

むしろスキルの恩恵や職業補正が乗る弓や魔法を先に使うだろう、ましてやこの世界は地球と比べて巨大生物が多数生息している為に大口径のライフルで吹き飛ばすか急所を狙う技術がなければただの豆鉄砲、人を殺すことには長けていても巨大生物を即座に殺すには至らない

 

かつてノイズと言う国では銃らしき物があった様だが今現在、ノイズはとある理由で滅んでしまい使用していた武器が銃かどうかは推測の行を出ず、デストロイヤーと言う兵器に乗った開発者が最後の技術者らしいが十中八九死んでいる筈なので知ることはほぼ不可能だろう

 

また魔法やスキルが発達しているが故に科学があまり進んでいないとも見受けられる。

 

しかし指先一つで強力な攻撃を繰り出す事ができる銃はそれこそ力が非力な子供や女性であっても使うことができるのが強みだ。

 

スキルに関しては狙撃や属性付与は乗るだろう、効果はそこまで期待できないと思うが……

 

そもそもこの世界のスキルは武器を触媒にしている節が幾つものある。例えるなら弓矢なら狙撃、魔法なら杖と言った様に武器はスキルの増幅機と言える。

 

スキルの力が乗るのは攻撃する面積が多い物ばかりであり、矢、剣、杖とRPGお馴染みの武器達が主である。銃は弾頭の部分が弓矢で言う矢に当たるならスキルの力が乗る面積がとても少なく、その分スキルの恩恵を受け辛いと思える。

 

しかし不意をつける道具としては最適な小型拳銃ならばスペツナズナイフより携帯性は高い、また暗器としては優秀だ。

 

ただ咄嗟に使うには腕に仕込んだ方が良いだろう、取り出して使うよりは高い確率で不意をつける。

 

その為、仕込む土台が必要だ。

 

と言うわけで籠手を制作しました!いや~本当に便利ですねメリクリウス、とどこぞの実況者の様な口調になるが本当に便利である。

 

また耐久性に関して銀は鉄の半分の硬さしかないとされているが、メリクリウスの銀は其処らの物より頑丈になるらしく簡単には壊れない。壊れても作り直せるのもまた魅力だ。

 

力に溺れないようにと選んだ特典ではあるが特典は特典、この世界の基準に置いてもチートだと改めて再認識した。

 

隠しナイフに隠し鉄砲を籠手に付け、動作を確認する。

 

銀色の刃が冷たい輝き放ちながら飛び出し手首を軽く振ると銃へと切り替わる仕組みが作動し、

 

武器が新しく増えた事により気分が少し高揚する。しかし気持ちとは反対に体は正直な為、大きな欠伸が出てしまい、瞼が重くなった。

 

危険物を作る悪い子だとしてもまだ子供、やはり深夜はお眠な時間帯で睡魔がドロリと体にまとわりつく

 

今夜は此処等で切り上げるが吉だろう、幸い雨は降っていない為にウィズさんもこの小屋を使うことはないだろう。

 

勝手に持ち込んだ布でハンモックを作り、意気揚々と飛び乗り横になる。

 

誰もいない空間に向け、お休みと言い意識を手放そうと目を閉じ……

 

 

「あ━━━━━━━━っ!」

 

 

どっかで聞いた事のある大声で意識が覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

突如謎の大声が聞こえ覚醒した意識は警戒よりも驚きの方が勝ってしまい、しばしの間ハンモックの上で呆けてしまった。

 

 

「やめてえええええええ!!!」

 

 

しかし呆けるのもつかの間、ウィズさんの声も聞こえて来たので慌てて武器を装備しハンモックから飛び降りる。

 

あの声は巻き込まれたか襲われたのかも知れない。この町を知った気になり、無法者はいないと思い混んでいたがここは異世界、いることにはいたのだろう

 

だが恩がある知り合いが襲われているならば助けざるを得ない

 

扉を少々乱暴に突き退け、外に飛び出る。

 

外には今はもう見慣れた人魂がふよふよと一定の方向に進み流れていく。その方向に進むとウィズさんの魔方陣が鈍く光を放っているのを発見し駆け付ける。

 

 

「ターンアンデット!」

 

 

一際強い光が見えた時、自分の周りにいた人魂が全て消え去った。

 

 

「きゃー!」

 

 

ウィズさんが悲鳴を上げ、たたら踏む様子が見えた。これは襲われているのに間違いはないと確信を得、犯人であろう影に向かい割り込むようにドロップキックをした。

 

 

「ぐぇっ」

 

 

「えっ??ちょ!?アクアー!」

 

 

人影がカエルの様な声を出し吹き飛ぶ、しかし別の声が聞こえたと言うことは仲間が少なくとももう一人いるのだろう。

 

あまり見えてない中、作り出したワイヤーを声の方向へと投げつけ、巻き付いた瞬間に引き寄せる。

 

 

「うぉぉぉ!!!」

 

 

どうやら声的に男の様だ。うっすらと見える人影もそんな感じである。

 

そして足元まで引きずり終わった瞬間に飛び乗り、手足を拘束したまま首もとにナイフを押し当て、悪人の決め台詞、動くなこいつがどうなっても良いのかを発した。

 

まだ仲間がいるかもしれない、それ故の警戒

 

後ろにはウィズさんもいる。人道的ではないと言えるが実際に人質はとても有効な手段だ。

 

 

「カズマ!カズマ大丈夫ですか!今助けます!」

 

「大丈夫か、カズマ!」

 

小柄な人影と少々背の高い人影が近づこうとしたので首を持ち上げ、更にナイフを押し当て牽制する。

 

卑怯に見えるだろうが確認できただけでも相手は四人、自分達は二人と数では倍の差があるため正々堂々としていては確実に不利であり、勝ち目も薄くなる。

 

また相手のレベルも未知数となるとどんな手であろうとも使わなければ自分のみならずウィズさんも危険になる可能性がある。

 

卑怯言うなかれ、これは戦い、生死がかかっているのだ。

 

 

「うう頭痛い……ちょっと何するのよ!頭打ち付けたじゃない!慰謝料払いなさいよ!慰謝料!」

 

 

「おい!ちょっとまて空気読めよお前!刺激すんなよ!」

 

 

「あらやだカズマさんったらどうしたの?そんな惨めな格好しちゃってププッ!」

 

 

「お前マジでふざけんな!?」

 

ギャーギャーと言い合う二人は状況がわかっているのだろうか、気が抜けそうになるが改めて威嚇するように斜め方向に発砲する。

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!私の、私のチャームポイントに掠ったぁぁぁぁぁ!」

 

「ほら見ろ!言わんこっちゃない!」

 

 

更に激しく騒ぐ二人に少し呆れる。本当に仲間なのだろうか

 

しかしそれよりも重要な事を聞いた気がする。先程人質に取ったこの青年は仲間からカズマと呼ばれていた。

カズマと言えば自分と同じ転生者でキャベツ狩りの時に少し面識を持った日本人

 

しかもドロップキックをかました相手に対してこのカズマはアクアと呼んでいたため暗くてわからなかったがこの人質は十中八九、日本人のカズマだろう

 

ならば他の二人は自分ごと爆裂魔法で吹き飛ばしためぐみんと硬さに定評のあるお世話になったクルセイダーのダクネスと言うことがわかる

 

無法者ならばこの無縁墓地で処分して埋めるつもりであったが一応お世話になった人もいる

触れてわかった人柄からして何か間違いがあったのかも知れない、話は聞いた方が良いだろう

自分は空いている片方の手で初級魔法のライトを唱えた

 

 

「ッ!?ユーリ!?どうしてここに!?」

 

 

魔法の光によって顔が見えた事によりこちらを認識し、皆が動きを止める。

 

 

「えっ?俺取り押さえてるのユーリなの?」

 

 

こちらを困惑した様子で見ているカズマの拘束を解き、何があったのか訪ねる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達はこの共同墓地に沸くゾンビメーカーの討伐に来たわけだがいたのはまさかのリッチーだったと言うことでアクアが突っ走ったのが今までの経緯だ」

 

カズマが簡潔にわかりやすく説明したおかげで大体理解できた。

しかしまさかウィズさんがアンデットの王であるリッチーだとは思わなかった故に少し驚いている。

ただウィズさんの優しさや気遣い、滲み出る人情から悪い人には見えない

 

「そいつはリッチーよ!リッチー!そんな腐ったみかんのようなアンデットが墓地でやることなんて良くない事に決まってるわ!」

 

 

アクアが犬歯剥き出しでガルルと唸りながら自分の後ろにいるウィズさんを威嚇する。

しかしウィズさんは確かこの墓地にて迷える魂を天に返していた筈だ。目の前で見ているので間違いはない

 

アクアの威嚇にウィズさんは若干たじろぐがカズマが話ができないとアクアのそれを抑えた事により、ウィズさんは話を始めた。

 

 

「はい、その……私はリッチー、見ての通りアンデット王なのでこの墓地に来る迷える魂の声が聞こえまして」

 

 

そこからウィズさんはポツリポツリと溢すように一つ一つ語った。

この墓地の事、迷える魂が天に還りたがっていること、この町のプリーストは見向きもしないこと

自分は概ね前に聞かせて貰った物なので理解はしているが改めて聞いてみてもやはり悪人とは思えないし見えない

 

何故リッチーなどやっているのだろうかと思ったが人間をやめる事になった理由などそう易々と聞いてはいけない気がして、聞かない事にした。

 

 

「なるほどな、ここにウィズがいる理由はわかった」

 

 

カズマが話を聞き、理解したようで話が進んでいる。今回は初対面と言うこともあり、偶然が重なった不幸な事故だったのだろう

大事に至る前に和解出来たのは幸運であった。

若干1名はまだ納得言ってない顔をしているが敵意は感じられない、もう大丈夫だろう。

 

 

そう思っていた時期が私にもありました

 

 

「そいつはリッチーよ、私達にとっての敵なのよわかってる?」

 

 

アクアがぷんすかと騒ぎ始めた、どうやら納得していないようだ

 

 

「しかもこんな時間にユーリがここにいるのもおかしいわ!はっ!もしかして操られてる?おのれリッチー!子供を操るとは女神の名において許せないわ!滅してやる!」

 

 

突然アクアの周りに青い魔方陣が出現し光輝く

どう見てもウィズさんごと浄化する気満々であり、このまま魔法を発動させたならばウィズさんは良くて大ダメージ、悪くて消滅するだろう

 

咄嗟にワイヤーを作り出し、アクアの首、そして腕を巻き取って拘束する。

 

 

「ちょっと外しなさいよ!」

 

 

しかしステータスが高いのか、もがいて無理矢理ワイヤーを外そうとしていた。

 

だからこそワイヤーの量を増やしアクアを更に締め付け雷属性付与を発動させる。

 

即席のテイザー銃、出力を少し低めにしているので死ぬことはないだろうと思い電気を流した。

 

するとどうだろうか、バリバリと音が出ながら電気が流れ某アニメ風に一瞬白骨化した幻影が見えるがそのまま続ける。

 

 

「あばばばばばばば!」

 

 

続けること数十秒、アクアはプスプスと煙を上げ黒くなり、頭をアフロにしながら突っ伏している。

 

流石にやり過ぎただろうか、と心配するが女神と言うだけ耐久力はかなりあるらしい

 

 

「おーいアクア、頭冷えたか?」

 

 

カズマが心配する素振りを見せずにアクアに話かけている。

パーティーメンバーを攻撃したのだからてっきり何か言ってくるのかと思ったのだが、カズマは先に手を出そうとしたのはアクアと言うこともあり、何も言ってはこなかった

 

 

「私、だずげようとしただけなのにー!わぁぁぁぁぁぁー!!!」

 

 

アクアがわんわんそのままの状態で泣き始めた。アクア本人はアークプリースト、つまり神敵であるリッチーを目の敵にしているが今回の行動はある意味自分を心配して取った行動なのだろう

 

少し罪悪感があるが最悪のケース、つまり敵対してしまうのは回避できただけマシだと思い、開き直ることにした。

 

 

「ほらアクア、最後まで話を聞かないからそうなるんだぞ、今度から早とちりはするなよ」

 

 

カズマが諭すようにアクアをあやし、慰める。

 

 

「アクア、同情はしますが今度から気をつけましょう、ほら泣き止んでください」

 

 

爆裂娘こと、めぐみんは少し同情をしながらアクアを泣き止まそうと励ましている。しかし思うところがあるのか自分には何も言ってはこなかった

 

 

「いいなぁアクア、あんなに拘束されてビリビリされるなんて、とても羨ましい……」

 

 

ダクネスに関しては斜め上なのか下なのかよく分からない反応をしていた。

ダクネスに関しては多分肩でも凝っているのだろう、後で解す事ぐらいならやって上げても良いかもしれない。

 

 

「あの、その、何と言うか私のせいでごめんなさい」

 

 

「いやいやウィズは悪く無いぞ、どっちかって言うと早とちりしたアクアの方が悪いからな」

 

 

何が何やらわからぬ様子でウィズさんは謝っているがカズマがそっとフォローするようにウィズさんを訂正する。

 

確かに先に手を出そうとしたのはアクアだ、しかし手を出してしまったのは自分のためウィズさんが謝罪するのはお門違いであり、謝罪するのは自分の役目だろう

 

アクアに近づき謝罪する。

 

 

「今度ご飯奢って、お酒買ってくれたら許すわ……それと入信」

 

 

最後にナチュラルに宗教勧誘されたがやんわりと断り、変わりにご飯は必ず奢ると約束する。

酒に関しては自分は飲めない+知らないので本人が飲みたいものを一つだけ選ばせて買ってあげることを約束した。

 

 

「そうでなくっちゃ!」

 

 

目に見えてアクアは元気を取り戻し語尾に音符付くくらいご機嫌になった。一先ずこれにて蟠りは解消できたのだろう

 

色々と濃い一日の終わりに思わずため息を空にこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

 

隣を歩くウィズさんがそう感謝の意を表し、お礼を伝えてくる。

その声色は何処か安心した様子であり、また深い慈愛を感じさせていた。

 

成り行きで助ける形になったとは言え、助ける事ができて良かったと言っておく。

 

 

「本当にありがとうございますね、ユーリさん」

 

「ユーリさんが居なかったら最悪本当に召されていてもおかしくはありませんでした」

 

何度も何度もウィズさんは感謝と共に頭を下げてきた。

 

 

「何かお礼ができたら……」

 

 

ウィズさんがそこまで言いかけた所で制止させる。

実際、今回の事に関しては自分は好きでやったことであり、むしろ家に止めてもらった時の恩返しである。

 

そのためにお礼等はいらないと伝える。

逆に一宿一飯の一飯を返したに過ぎないのでまた何か困った事があるならできる範囲なら手伝いをすることを申し出た。

 

 

「ふふ、ユーリさんって義理固いですね」

 

 

ウィズさんはにこやかに微笑み一つはにかんだ

 

 

「でしたら一つだけお願いがあるのですが良いですか?」

 

 

できる範囲ならばやると言った手前、申し出を断る事はない

ショタに二言はないのだ

 

 

「ありがとうございます。それではですね、一つだけ」

 

 

「私の事はウィズって呼んでもらえませんか?」

 

 

それはささやかな願いだがとても大きな願い事に聞こえた。

 

 

「さん付けですと少し距離を感じるので呼び捨てにしてくださいね」

 

 

ショタに二言はない、その願いを了承し、頷く

 

するとウィズさん、いやウィズはありがとうございますと更に微笑み、自分の頭を優しく撫でる。

 

その手は前よりもずっと暖かく、そして優しく感じる。

 

 

前よりもずっと絆、もとい心の距離は近づいたと感じられた。

 

 

 

 

◇オマケ

 

 

 

一件が収まり解散の雰囲気が出始める中で最後にダクネスを呼んだ。

 

 

「どうしたユーリ?」

 

 

ダクネスはいつもの鎧を着けておらず、とてもラフな姿であったためとても都合が良かった。

 

とりあえず少し姿勢を低くさせ後ろを向かせる。

 

 

「何かするのか?」

 

 

頭に疑問符を浮かべながら後ろを向いたダクネスの背中にメリクリウスを付着させる。

そして電気を流した。

 

 

「んにゃあああああ!?」

 

 

微弱な電気を突然流したからかダクネスが変な声を上げ、体をびくりびくりと跳ねさせる。

 

少しくすぐったかっただろうか、もう少し電力を弱める。

 

 

「ユ、ユーリ!?一体にゃにお!?」

 

 

体を震わせながらダクネスは声を上げているので説明する。

 

ただの電気マッサージであると

 

 

「……」

 

 

……

 

なんだろうこの沈黙は

 

少し前、アクアにやった時にとても羨ましそうにしていたため背中が凝っていると思いやったのだが違ったのだろうか?

 

昔本で読んだ胸が大きな人は肩が凝りやすいと言う話があり、ダクネスも凝りやすいと思いやってみたのだが……

 

 

「あぁ、成る程そう言う事ね……」

 

 

カズマがダクネスの方を見て納得したかのように頷く、多少にやけ面、いや鼻の下を伸ばしながら納得している様はあまり格好がついていない

 

そうこうしているうちに時間がたった為に一旦メリクリウスを解除し、電気を止める。

 

 

「ハァハァ……しゅごかったぁ~……」

 

 

ダクネスは腰が抜けたようにそこに座るが効果は出ている様子で肩を動かしていた

 

 

「今度はもっと!もっと強めにやってくれ!!」

 

 

流石に試運転の為に威力をあげることは許可できないと断る

またあまり連続でやっても逆に揉み返しが起きて体に負担がかかってしまうだろう

 

そう言うとダクネスは残念そうにしていたがこれは仕方あるまい、今度はもっと上手くなったらしてあげるのも良いだろう

 

 

「あれよりもっとしゅごいのが……」

 

 

「おーい発情すんな、言っとくが年齢的に手出したら犯罪だからな、リアルおねしょたはアウトだから絶対やめろよ」

 

 

「そ、それくらいわかっている!手なんぞ出すわけないだろう!」

 

 

顔を真っ赤にしながら否定するダクネス

 

ダクネスに関してはクリスの友人と言うこともあり、全面的に信頼はしているので何か間違いを犯すことはないだろう

 

ましてや騎士だ、信頼はしている。

 

その事を伝えるとダクネスは少し照れ臭そうに頬をかいていた。

 

 

「ねぇカズマさん、私ショタの恐ろしさ初めて知ったわ」

 

 

「奇遇だなアクア、俺もだ、あそこまで純粋だとむしろ恐ろしいよな」

 

 

「純粋過ぎるのって怖いですね」

 

 

カズマ達は何やらひそひそと話をしているがあまり聞こえなかった。

だが重要ではないだろう

 

寒空の下で時間も遅い、早目に切り上げて寝ることにした。

 




ここまでお読み頂きありがとうございました。

次の投稿に関しては作者がかなり忙しくなるので少し遅れてしまいます。ご了承下さい

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