新年初投稿ですね!
今回から新しいタグが追加されます!
「って言う事があってさー...」
ここはとある喫茶店。その中で俺はカウンター席に座り、知り合いである2人の女の子と話をしていた。
俺の右隣の座っているのがその女の子の1人で、黒髪に赤いメッシュが入っており、目つきが少しキツめの女の子。
もう1人は左隣に座っており、茶髪でセミロング、そして笑顔は天使の様な女の子。
話の内容は、昨日起こったパスパレメンバー達と取った夕食。
やれ栄養バランスだの、やれ食べきれないだの、やれドリンクバー奢れだの、あの時言えなかったこれらに対する愚痴が殆どだが...。
それらを全て言い終わり、溜息とともに両腕を組んで机に突っ伏す。
「それは災難?だったね」
「バカバカしい」
2人からそれぞれ異なる反応が返ってくる。1人は同情はしてくれているのか、それでも少し困った様な反応。
もう1人は、まるで話を途中から聞いていなかったかのような反応で、1度たりとも俺に視線を向ける事は無かった。
「なあ蘭。もしかして俺のこと嫌い?」
「人を呼び出しといて、話す事が惚気話とかありえないから」
「まあまあ蘭ちゃん、少しは聞いてあげようよ」
「つぐみは雅人に甘すぎ。もっと突き放さないと」
結構辛辣な事を言われたが、これがいつも通りなため問題は無い。
まあ俺のメンタルにとっては問題しかないけど...。
そんな心を落ち着かせるように水を飲む。
「てか2人とも、今日は練習無いの?」
「うん、今日は休みだよ」
「じゃなかったらアンタの話なんか頼まれても聞きに来ない」
「えぐっ...ぐすっ...」
先程から優しい口調で話をしてくれるのが、'つぐ'こと'羽沢 つぐみ'。
そして俺に対して棘しか吐かないのが、'美竹 蘭'。
2人は高校1年で、'After grow'(アフグロ)という幼馴染みで組んだバンドのメンバーである。
「もうっ、蘭ちゃん!」
「うっ...」
つぐが少し怒ったような顔で蘭を咎める。蘭はバツが悪いのか、俺らから顔を背けると珈琲を煽る。
が、傾けたはずのカップの中には何も残っていなかったらしく、「あっ...」という声と共に蘭の動きが止まった。
「蘭ちゃん、おかわりする?」
「う、うん...」
蘭がそう答えると、つぐは彼女からカップを受け取って奥へと入って行く。
どうやら蘭にとっては恥ずかしかったらしく、少し俯いてしまう。
そんな様子が面白く、笑いをこらえ切れなくなってしまう俺。
「痛っ!」
プライドの高い彼女がそんな事を許す訳もなく、彼女の左つま先が俺の右ふくらはぎを捉えた。
不意の鈍痛が俺を襲う。痛みに耐えながらも抗議の視線を蘭に向けるが、彼女は素知らぬ顔である。
「お待たせ蘭ちゃん」
「つぐみ、ありがと」
カップを受け取った蘭は、先程の続きと言わんばかりに一口煽る。
俺の方は、まだ痛むふくらはぎをさすりながらスマホを取り出してLINEを開くと...。
「げっ...」
そこにはある人からのLINEが来ていた。しかもおよそ100件。俺の知り合いの中でここまで遠慮なくLINEを送ってくるのはただ1人。
「美結ちゃんから?」
「まあそうなんだけどさ...」
妹とのトーク画面を開くと、そこには可愛らしい動物スタンプが沢山並んでいた。
具体的に言うと、可愛らしくデフォルメされた猫の顔の上に「はやく!」と文字が書かれている。
さらに遡ること数10件、ようやく要件と思われる文章が見えてきた。
「えーっと、『先生が練習試合に来れなくなったらしいから、お兄ちゃんに代理できて欲しいって』...え?」
「へぇ。雅人、監督でもやるの?」
いつの間にか俺の画面を覗いていた蘭が、興味深そうに聞いてくる。
つぐも気になるのか同じように覗いており、左右から女子のいい香りが...。
「でもそういう場合って、代わりの先生がやるものじゃ無かったっけ?」
つぐの声で現実に引き戻される。そう、急な話でもない限り、本来ならば代理の先生が居るはずなのだ。
「あそこは結構な強豪の割に教えられる教師が一人しかいないからなぁ」
「それでもなんで雅人くんが呼ばれたんだろ?」
「うーん...。顧問の先生とは今でも連絡取り合ってるし、そのせいかも」
確証は無いが、おそらくはそれが理由だろう。
しかも俺はその道では結構な有名人(多分)。先生が俺を頼るのも仕方ない気が...。
「どうせ暇だからでしょ?」
「ははは...」
「......。」
流石のつぐもこれはフォロー出来なかったらしく、苦笑いをされる。
「サッカー辞めなきゃ良かったのに。勿体無い」
「うっ!」
「私もそう思う」
「うっ!!」
2人の本音が俺の心にグサグサと刺さる。スマホをしまい、力無く項垂れる俺。
「だってさぁ...」という呟きを始め、今の俺の現状に至るまでの愚痴が零れ始める。
「と、取り敢えず!早く美結ちゃんの所に行ったほうがいいよ雅人くん!急ぎの頼みなんでしょ?」
そんな俺の状態を重く感じたつぐが、話題を逸らすように声を掛けてくれる。
「うん...行ってくる...」
つぐと蘭に別れを告げると、俺は1人トボトボと美結から伝えられた場所へと向かうのだった。
「遅い!遅いよお兄ちゃん!何時だと思ってるの!?もう試合始まっちゃうよ!!」
「あ・の・なぁ!急な用事なら電話かけろっていつも言ってるだろ!?」
「もし出なかったが時折り返し待つの面倒じゃん!」
「伝言を残せ伝言を!」
「お兄ちゃんの番号知らないからLINEじゃないと電話出来ないんですー!」
試合会場に到着すると同時に、口論を始める兄妹。
周りには後輩がいるにもかかわらず、2人はどんどんヒートアップしていく。
試合がもうすぐなのだが、止めようにも中々止められないこの雰囲気は延々続くようにも思われた。
「は~い、'まーゆー'と'まーさー'ストップ~」
その声と共に俺と美結の間を割って入るように入ってきたのは...。
「モカ?なんでここにお前が...うおっ!」
彼女の名は'青葉 モカ'。つぐや蘭と同じくアフグロのメンバーである。
そんな幼馴染の突然の登場に驚きつつも疑問をぶつけようとすると、何者かに背後から首の後ろに腕を回され、そのまま屈む感じに引き寄せられる。
「よっ、雅人!相変わらずちっさいなお前。ちゃんと飯食ってんのか?」
「余計なお世話だ!」
俺は腕の拘束から逃れると、男の後ろに回り、今度は彼の右腕を背中側に固定して身動きを封じる。
「会って早々ずいぶんな挨拶だな'蓮'」
この男の名は'渡辺 蓮'。俺と同い年であり同じ中学。さらには部活動も同じ。付き合いは結構長く、お互いに気の許せる関係である。
「とーう」
「ぐふっ」
そんな友人とのやり取りをしている最中に、右脇腹に謎の衝撃が襲い掛かってきた。
攻撃が来たと思われる方を向くと、先程の少女、モカがハンドバッグを手に何故かドヤ顔をしていた。
「人の男に手を出すとはいい度胸ですな~」
「...。」
モカの発言は置いておくとして、ハンドバッグをぶつけられた事に若干イラッとした俺は、顔を引きつらせながらモカへと歩み寄る。
が、モカの前に蓮が立ち塞がった。
「おっと雅人、まさか人の女に手を出すつもりか?」
「お前らめんどくせぇよ」
「あの、雅人先輩。もう時間が...」
モカと蓮の登場により兄妹喧嘩は収まり、部活の後輩達とともに急いでグラウンドへと向かう。
「雅人先輩、これがいつものスターティングメンバーなんですけど、今回はどうしますか?」
「正直お前ら3年生と美結以外はよく分からんからなぁ...。前半はそれで行こう」
3年生に渡された紙にはフォーメーションと、そのポジションに該当する選手の名前が。
いつもスタメンの選手には赤ペンか何かで印が付けられていた。
「まさかお前が監督をやろうとはな...」
「今日だけの代理だ」
「代理ねぇ...」
「なんだよ」
妙に考えた素振りを見せる蓮に視線を向けると、「何でもねぇよ」と返される。
グラウンドの方では選手達が整列しており、練習試合だと言うのにお互いにはピリピリとした緊張感が漂っていた。
「相手が相手だからこれはしょうがねぇか。ところで蓮。モカはどうした?」
「因縁っちゃ因縁だからな。モカは俺のサイフを持って山吹ベーカリーへ行った」
「負けるとまたTwitterで何か言われるぞ...。貸しでもあったのか?」
「勝てば問題ないだろ。3回ぐらい約束すっぽかした」
こいつはその内モカに見捨てられるんじゃないだろうか?因みにモカと蓮は恋人同士では無い。家が近所で、小学校の頃からの付き合いらしい。
俗に言う幼馴染である。今でも2人は一緒に出かける約束をすることが多いのだが、口約束が多い蓮はすぐにその事を忘れてしまう。
モカは時間にルーズだが、蓮は論外なのである。
そんな無駄話をしながら、後輩達の試合を見守る。
試合開始直後にゴール前まで攻め込まれるというピンチに陥ったものの、ディフェンスの要である3年生がなんとか凌ぐ。
だが、最初の流れは完全に相手が持っていってしまった。
「耐え時だな。ここで急いで攻め返そうとすればミスが増える。折角取ったボールをすぐ取られるほどキツイものは無い」
「全くだ」
「雅人先輩、頼まれていたものを準備してきました!」
「おっ、サンキュ」
ベンチに座っていた2年生が、あるノートを渡してくる。
試合が始まる前、俺は控えの選手達にある事を頼んでいた。
それは...。
「なになに?2年 '風間 歩' 得意なプレーはドリブル、苦手なプレーはポストプレー。おい雅人。もしかしてこれ全員分あるのか?」
「スタメン以外のな。得意不得意を把握しないと、何処で使えばいいか分からんからな」
「やりたいポジション聞けばよかったんじゃないか?」
「希望が被ったとき面倒臭いだろ?折角の練習試合なんだからよ、自分がやった事ないポジションを経験しとかないとな」
ノートに一通り目を通した後、試合の状況を確認する。
相手の猛攻を何とか凌ぎ、今度はこちらの攻撃へと移っていた。
だが、相手の戻りが早く、数的有利だった状況はすぐさまひっくり返されてしまう。
結果シュートまで行けず、混戦した状態でパスをカットされてしまう。
その後何度か相手陣地に攻め入るが、シュートまでは辿り着けず、前半は「0ー0」で終了した。
「前半お疲れ様。聖中相手に失点0はよくやってると思う。昔の俺たちじゃ、乱打戦になってるところだ」
ベンチには試合に出ていた11人を座らせ、それぞれ給水をしてもらう。
聖中とは俺達がいた頃は何度も対戦しており、互いに互いの攻撃が止められず、どちらが先制するかで勝敗が決まるような試合だった。
だが今日の結果を見ると失点は無い。相手のフォワード陣は3年生が抜けた分を補えているが、こちらもディフェンス陣に関しては去年以上だと感じた。
4月にこれが分かったのは、予想以上に大きな収穫ではないだろうか?
問題はフォワード陣とミッドフィルダー陣だ。どちらも去年まで3年生がほとんどだったため、聖中のような強豪校との試合経験の少なさがもろに出ている。
その証拠に...。
「なんでお前らセンタリングに拘るんだよ。見た感じセッターはいい所に上げてるけど、1回もボールに触れてねぇじゃねぇか。そういう攻め方をするなとは言わねぇけど、もっと相手を見ろ」
両サイドを任されている4人に向けて厳しい口調で助言をする。実際、ゴール前でボールを待つフォワード陣を含め、センタリング攻撃に参加している選手達は決して背が高いわけでもなく、ジャンプ力があるわけでもなく、体が強いわけでもなかった。
「次にボランチ2枚、ボールを裁くのが遅い。特に美結。お前はキープ出来るほど体強くないだろ?何をそんなにムキになってんだ」
美結にそう言うが、言われた本人はムクれた表情でソッポを向いてる。
日常生活は基本的に素直だが、サッカーが絡むと何故か反抗的になるのが美結である。
「ま、こんなもんかな。後半は調子が悪いやつからバンバン変えてくからな」
そう言って選手達を後半へと送り出す。控えの選手達にはいつでも行けるようにアップをしておけと指示をし、出場している選手達の危機感を煽る。
「じゃあ雅人、俺そろそろ行くわ」
「なんだもう帰るのか?」
「モカに呼び出されたからな。早く行かないと俺の財布の中身が消える」
「もう手遅れだと思うけどな。ありがと蓮、また今度な」
急遽帰ることになった蓮。こいつはなんで残っていたんだろうか?正直、試合中に全く関係ない事を俺に話し掛けてくるので、邪魔でしかなかった...。
後半が始まって5分が経った頃、試合が動く。
美結が前線に送ったロングパスがカットされ、すぐさま聖中の攻撃に移った。
それを見たディフェンス陣は、攻めるために上げていた最終ラインを下げ、中に攻め込まれても対応出来るような形を取る。
聖中はドリブル中心の個人技で攻めてくるチーム。センタリングは無く、サイドチェンジも行わない。
去年まではそれに足の速さがあったため、中々止めることが出来なかった。
だが、中をしっかりと閉めればそれ以外怖いことは無い。
それでも強引に中へ入ろうとするため、ゴール付近でのファウルには気をつける必要がある。
筈だった。
1人を揺さぶって進行方向からずらし、スピードを上げて抜き去るかと思ったその瞬間。
足が振り抜かれていた。
そして気づいた時には、ボールがゴールネットを揺らしていた。
意外と5000文字行けるもんですね(キャラ紹介のお陰)。
サッカー好きなので、オリ主には一時的に監督やらせてみました!
試合を書いたことは無いので、気になったところがあれば是非ご指摘お願いします!
評価・感想・お気に入りお待ちしております!