色々構想は練ってあるので、後は文字に起こすだけでございます。他の作品もございますのであまり更新速度は速くならないですけど、今回ほど遅くならないように気を付けます!
自分としても書きたい場面はいっぱいあるので、それを皆様にいち早くお見せできればと思います!
それでは、どうぞ!!
「ふぅ......」
人工芝のコートの上で目の前に存在するゴールを見据える。そして集中力を高めるべく、息を深く吸い込んでゆっくりと吐き出す。
ゴールには16枚のパネルがはめ込まれており、これを全部打ち抜けば成功である。
そんな俺の横では、千聖さんとイヴさんが場を盛り上げるためのトークをしており、コートの外では別々の場所で蘭とリサさんが見ている。
中々の緊張感がある場ではあるが、これ以上の修羅場を潜り抜けてきた俺には差ほど問題は無い。
準備ができたため千聖さんに合図を送ると、「それでは始めてください」という言葉とともに開始のホイッスルが鳴る。
「千聖サン、彼はサッカー経験者のようですけど、何かセンリャクみたいなものはあるのでしょうか?」
「そうね。先程聞いた話によると、左のパネルから狙っていくと言っていたわ」
「左......先程パーフェクトを出した経験者の方が左から狙っていましたが、何か関係はあるのでしょうか?」
「彼らに共通していることは、お互いに右利き、ということね。おそらく、左を狙った方がやりやすいのかもしれないわね」
横からそんな会話が聞こえてくるが、実際には千聖さんの言うとおりである。
俺と誠さんは共に右利き。右利きのプレイヤーにとって、足を振りぬく方向と逆の方向へ正確なボールを蹴ることは難しい。
なので最初は狙いやすい所を狙うことで、心に余裕を持たせることができる。
作戦の詳細としては、16枚のパネルは均等に敷き詰められているため、まずは左側に配置されている縦4枚×横2列、計8枚をノーミスで抜く。
その後は中央で1回、右側で2回のミスを想定している。
イメージトレーニングはしっかり行っていたため、迷うことは無い。
先にパーフェクトを出した誠さんに一泡吹かせるためにも、財布の中身を守るためにも、負けられない戦いが始まった。
「うっそ~......」
事態は最悪だった。なんと、本来はノーミスで終える予定だった左側で既に3回ミスをしてしまったのだ。
久しぶりにボールを蹴ったせいか、それとも別の要因なのか、思い通りの場所に中々ボールが飛んでいかない。なんどもパネルの間にあるフレームに阻まれてしまったのだ。
「千聖サン......」
「これは...想定外ね......」
実況解説を行っている二人の声がなんとも心に突き刺さる。最初はフォローに回っていた二人だったが、ミスが3回になった瞬間に急に口数が少なくなってしまった。
さらには、コート外で見守っていたリサさんは苦笑い、蘭に至っては目つきが鋭くなっており、心なしか不機嫌そうだった。
「はぁ~...イチかバチか、かけてみるしかないかな......?」
「お疲れ」
「ありがと、蘭」
キックターゲットが終わり、簡単な取材を終えた俺は、蘭とともにデパートの中のフードコートで軽い食事をしていた。
ちなみに最初俺と一緒にいたリサさんは何やら用事があるらしく、先に帰るという連絡を貰っており、千聖さんとイヴさんはまだ収録を続けている。
「あとちょっとでパフェだったのに」
「確かに危なかったよ。しかも千聖さんが大げさに紹介するもんだから、危うく恥さらしになる所だったし」
「......。」
苦笑いしながら、注文していたざるそばを啜る。
目の前に座る蘭も俺と同じものを食べているが、先程から度々視線は下の方を向いていた。
「どうしたの蘭?」
そんな蘭の視線が気になり、ふと尋ねてみる。
「雅人、何で途中から左足に変えたの?」
「あ、えーと......ほら、蘭だって俺が左でも蹴れるってこと知ってるでしょ?」
「それはそうだけど...」
もっともらしいことを言って聞かせるが、蘭はまだ納得していない様子だった。
「もしかして、まだ怪我が...」
「蘭っ!」
「...っ!」
蘭の心配そう声を聴き、すぐさま声を被せた。
「前にも言ったけど、怪我はもう治ってるし、後遺症もないよ」
「それなら、いいけど......」
何とか分かってもらえたらしいが、まだ顔は下を向いたままだった。
蘭が心配するのも分からなくはないが、いつもの蘭らしくない行動に、こちらとしては調子を狂わされてしまう。
話を変えるため、先程貰った景品を取り出して蘭に見せる。
「これ、さっきの景品なんだけどさ、『京都で二人旅』だってさ。もしよかったら、一緒にどう?」
「え...私と?ほんとに?」
「蘭には昔っからお世話になってたし、最近はバンド活動も忙しそうだから。お礼と労いの意味も込めて、どうかな?」
「あ、ありがとう.../// あ、ちょっと待って。その前にちゃんと日にちを確認しないと、確かそれ、決まってるんでしょ?」
蘭に言われ改めてチケットを確認する。それには5月5日と書いてあった。そのチケットを蘭に渡すと、彼女はそれをまじまじと見つめ、あることを思い出したかのような顔をし、深くため息をついた。
「最っ悪。この日、華道の集まりと被ってる。はぁ...」
「あー...うん、華道の集まりがあるんならしょうがないよ。それにしても困ったな。姉さんを連れ出すわけにはいかないし、美結はその日練習試合があるから...」
「しょうがないから、巴たちにも声を掛けてみるよ。まあモカは来なさそうだけど」
「モカには蓮がいるし、そもそもあいつは外に出なさそうだしな」
ひとまず蘭がアフグロのメンバーに声を掛けることで話はまとまり、俺たちはデパートを後にした。
そして蘭を家まで送り、自分の家に帰る道中、見慣れた人物を発見した。
「千聖さん?」
「あら、雅人じゃない。どうしたの?」
「俺、今帰りなんですよ。千聖さんもですか?」
「えぇ。さっき収録が終わって、事務所に戻ってから解散したのよ......あ、雅人、今から貴方の家に行ってもいいかしら?久しぶりに美結ちゃんにも会いたいし、ついでに彩ちゃんとも話すことがあるから」
千聖さんにそう言われて、ふと時間を確認する。
17時30分。今から家へ向かうとすると、大体家に着くのが18時ごろ。
そこから話し込んだとすると19時を軽く超えるだろう。そうなれば夕食の時間になってしまう。もしや......。
「帰りは遅くなるかもしれないから、夕飯は頂くわね」
「飯係である俺の意思を問う必要は無いと......まぁいいですけど。なら、スーパーによってもいいですか? 念のため買っておきたいものがあるので」
「急ぎでもないし大丈夫よ。ところで、何を買うの?」
「魔除けのために大量の納豆でも...あ、いえ、何でもないです、すみません。そのまま真っ直ぐ帰ります、ハイ」
ほんの冗談を言ったつもりだったのだが、目の前にいる魔物から発せられる圧力に脅され、素直に帰宅を決める。
芸能人であるならば、このくらいは乗ってくれてもいい気がするのだが。
「雅人? 私を怒らせない方がいいってこと、分かってるわよね?」
「ハイ、そのことは身に染みて分かっております......」
俺が千聖さんと出会ってまだ日が浅いときに、一度だけ彼女をからかいまくったことがある。
具体的に言うと、千聖さんがまだ幼いころに出演していたドラマに出てくる小さい女の子、役は彼女が演じているのだが、その物まねを本人の目の前でやったのだ。
最初は笑ってくれていた千聖さんだったが、あまりに俺が長く物まねをするため堪忍袋の緒が切れた彼女に、それはもう恐ろしいお説教をされたのだ。
その体験は今でも忘れられず、思い出すだけでも全身から血の気が引き、体が震え始めるほどである。
「まったく、嫌いな食べ物の話をするだけならまだしも、人を魔物みたいに言うなんて......これはまたお説教が必要かしら?」
「すみませんでしたって! お願いですから勘弁してください!!」
千聖さんにすがりつくようにして謝罪をする。こうでもしないと本当にお説教が始まってしまうのだ。呪文のように謝罪文を述べること十数秒、彼女の呆れたようなため息とともに、発せられていた圧力が消えていくのが感じられた。
「あんまりここで無駄話をしてたら遅くなってしまうわ。早く帰るわよ」
「はい...」
気を取り直して歩き始めるのだが、ちゃっかりと荷物を持たせられていた。
これではまるで使用人である。力関係で言えば間違ってはいないし、女性の荷物を持つのは男性の役目と感じている自分もいるため、文句は言わずに千聖さんの隣を歩く。
しばらくして家に着くと、鍵を取り出してドアを開ける。
「ただいまー」と家の中に声を掛けると、リビングの方から「おかえり!」という元気な声とともにバタバタと足音を響かせながら妹の美結が出迎えてくれた。
「お兄ちゃんお腹空い......あれ、千聖さん!?」
「お久しぶりね、美結ちゃん。相変わらず元気そうで何よりだわ」
思いもよらぬ来客に戸惑ったのか、すぐさま自分の身なりを確認する美結。
あまり年上の女性と接することが少ない妹にとって、姉とは違い完璧人な千聖さんは憧れの存在でもあったりするのだ。
「ふふふ...美結ちゃん、そんなに気にしなくてもおかしなところは無いわよ?」
「あ、ありがとうございます!」
「実は、いつもは下着姿で...ぶふっ!」
「お兄ちゃんのバカ! 千聖さんの前で変なこと言わないでよね!!」
妹の醜態をさらしてやろうかと思ったが、言い終わる前に妹が手に持っていたクッションが顔面に直撃した。
すぐさま投げ返してやろうと思いクッションを掴んで振りかぶるが、千聖さんに「やめなさい」と言われてしまい、やむなく振り上げていた腕を降ろした。
反撃が来ないことをいい事に、俺に向かってあっかんべをしてくる妹にさらにイラつくが、千聖さんがいるため何も出来ないでいた。
「美結、お前後で覚えとけよ......」
「彩ちゃんは部屋にいるかしら?」
「はい、お姉ちゃんなら今部屋でエゴサしてると思います!」
「はぁ、エゴサはやめなさいって言ってるのに......美結ちゃん、ありがとうね」
そう言うと、千聖さんは二階にある姉さんの部屋へと向かった。
それを横目で見てから、自分の作業に集中する。
今は夕飯を作っている。今日のメニューはハンバーグ。と言っても、普通のハンバーグではない。
アイドルである姉さんや千聖さんのためになるべくヘルシーなものを作ろうと考えている。種には肉ではなく豆腐を使い、他にも繋ぎとしてキャベツやレンコンなどの野菜を混ぜている。
「美優、ちょっと手伝ってくれ」
「はーい」
「よし、後は盛りテーブルに運ぶだけだ。美優、姉さんたちを呼んできてくれ」
「はーい......って、お姉ちゃん?」
「雅人、千聖ちゃんを何とかして~!」
美優がソファから腰を上げようとした瞬間、姉さんがリビングへと飛び込んできた。
そのままキッチンで調理をしていた俺の所へと駆け寄り、怯えるように俺の背後に隠れた。
「ど、どうしたの姉さん?」
「千聖ちゃんが~......」
俺の両肩に手を乗せ、そのままリビングの扉を見つめる姉さん。
すると、「キィ~」という音とともにドアが少しずつ開かれ、悪魔(千聖さん)が姿を現した。
「彩ちゃん、もう一度聞かせてくれる?最近は何時に寝てるのかしら?」
「そ、それは......」
「姉さん、大人しく白状した方がいいと思う」
「見捨てないでよ!」
隣で大声を出す姉さんの頭に手を置き、そのまま自分の体から引きはがす。
そして料理を手にしてテーブルへと運んでいく。美優も傍にいた千聖さんに怯えながらも手伝ってくれる。姉さんと千聖さんはと言うと、キッチンにて逃げ場を塞がれた姉さんが、魔物(千聖さん)の餌食となっていた。
『ご馳走様でした!』
晩飯を食べ終えた姉さんたちは、俺が食器を洗っている最中に食後の談話に花を咲かせていた。
「ん?」
すると、突然ポケットに入っているスマホが鳴り始めた。
洗い流しを中断して、スマホを取り出すと画面には意外な人物の名前が表示されていた。
はい、やっとキックターゲット回が終了しました!
次回からはまた別の話が始まりますので、お楽しみに!!