村田兄妹は破壊された穴を覗き込むようにして、雪子と岡田の戦いを……一方的な虐殺を、固唾を飲んで見ていた。
「もっと! もっともっともっと!! 強くなれ紅桜!!」
「グ……ゥオオオオオ!!」
雪子が叫んで流れ星のように駆け抜けていく。その顔には心底愉しそうな色が滲んでいて、どちらかの集中が切れてしまえば一瞬で事切れる、そんな刹那のやりとりに喜びを見出しているのは明らかだった。
驚異的なスピードとパワーで触手を伸ばす紅桜に対する恐れを一切抱いていないようで、こんな人……人? だったのかと村田は雪子の認識を変えていく。
鬼兵隊の船に出入りする時点で一般人でないことはわかっていたし、トップの高杉と浅からぬ関係なのは理解していたが、戦闘面での彼女は圧倒的な存在感を放っていた。
「……フッ。あーっはっはっはっ!!」
「あ、兄者……?」
突然大口を開けて笑う兄に戸惑った視線を向ける鉄子。その笑い方は、いつしか見なくなっていた心の底からの喜びの色に溢れていた。
───これだ。私が求めていたものは。
戦いに没頭する雪子の姿は、強くしなやかでどうしようもなく美しかった。艶やかな髪を靡かせて、白く長い手足を自由に動かして空を舞う。そこに美を見出したのは、雪子自身の見目麗しさもあるが、それ以上に滲み出る不遜なまでの自信に強く惹かれたからだった。
「ギ……がッ、ぅ、ぉオオオオッ!!」
「アァ!? そんなもんかよ!!」
雪子の暴走的な猛撃に紅桜が悲鳴を上げていく。
いよいよ背中から突き出た丸太のように太い管が、束となって彼女に襲いかかる。しかしそれでも、その顔に陰りは一切現れない。鞭の如く振るわれた管を、雪子との戦闘データを蓄積し強化された紅桜を、嘲笑うように蹴り壊した。ドガンッ!!! 凄まじい轟音が風圧と共に放たれる。
紅桜が学習を重ねて強くなる兵器ならば、こちらはそれ以上の力を出すまでだ。調子上がりに本気を見せる雪子もまた、白夜叉同様に、かの有名な獅子喰いそのものに姿を変えていた。
「ぅ、ア………やめろ、消えろ、光、ウウゥ………何も見えん……!!」
攘夷戦争時代の傑物にして英雄。猛者揃いの終末期で、頭ひとつ抜けた強さを持つそれに、対抗する手段を紅桜は持ち合わせていなかった。
バギャッ!! ズドンッ!! 破壊音が鳴り響き、見る間に不細工に歪曲した刀へと変貌していく。
雪子のギラついた目が獲物を見定める。紅桜の再生速度が落ちていき、防御が間に合わなくなっていた。かといって攻撃に転じる暇さえ猛獣は与えてくれない。敵と認識された時点で岡田の末路は決められている。
「紅桜も終わりか。なら用済みだ。とっととくたばれ!!」
巨大化した肉体を鋭く穿つ脚がついに顔面にめり込んだ。ぐちゅりと潰れた頭部から血が噴き出し、そのまま地面に倒れ伏した岡田の肉体が元の大きさへと戻っていく。大量の血液を浴びた片脚を一振りして少しでも血を落とす雪子が、肉塊となった人間の頭だったものを踏みつける。
これで終わりか……と警戒を解いた新八だったが、雪子の横顔から好戦的な色が消えていないことに気づく。そのぷるりとした唇がうっそりと動いた。
「来たぁ」
エネルギーが尽きたように思われた紅桜が、最期の力を振り絞って一矢報いようとしたのだ。
ギュルン!! 狂気的な笑みを浮かべる雪子を避けるようにして、紅桜が突如三手に分かれて最後の攻撃を仕掛けた。一方は新八と神楽の方へ、もう一方はまた子と武市の方へ。そして一番太い管が、光の差す二人の人影……村田と鉄子へと伸ばされる。
「きゃっ!?」
悲鳴を上げて鉄子は目を瞑る。しかし予想していた痛みは訪れず、恐る恐る瞼を持ち上げると、広がる光景に驚愕した。
「あ、兄者……! それに銀さん……!」
鉄子を庇うように目の前で両手を広げる村田の背。そして二人に伸びる触手を一刀両断した銀時の姿が、そこにはあった。人を護るようにと祈りを込めて打った刃は折れ、キィ───ンと静かに震えている。とぐろを巻いた黄金の龍が輝き、村田の目に光を灯した。
「心配させやがって」
文句を言う雪子は、新八と神楽を守るように構えていた警戒態勢を解いた。銀時の一撃が紅桜に決定打を与えたようで、雪子の鼻の先直前まで迫っていた刃は、パラパラと音を立てて崩壊していく。
元々銀時との戦いで限界を迎えていた紅桜。そこへ本気となった雪子が暴れ回り、ついに無尽蔵にも思えたそのエネルギーに終止符が打たれたのだ。
塵となって風に舞う紅桜だったものを摘み上げて、フッと息を吹きかける。そうやって空中に舞っていく様をつまらなさそうに眺める、細く小柄な背中を、新八と神楽は息を呑んで見上げた。長身だが女性らしい曲線は失わない、しかし力強さと頼もしさを兼ね備えた背中を。
「つ、強い……圧倒的に……!」
銀さんを追い詰めた強敵相手に、あんな一方的に攻め立てるなんて。新八の思わず漏れた声に反応し、雪子は半身を振り返らせるとニッと強気に笑った。
「な、なぜ私は……。剣以外の余計なものは捨ててきたというのに……どうして……」
村田が自分の掌を見つめて震えていた。紅桜の矛先がこちらに向かっているとわかって、咄嗟に動いたのは、どうでもいいはずの妹を護るため。刀に全てを捧げ、テロリストに手を貸した男の行動ではない。
己の全てが瓦解していく感覚に、心の芯にあったはずの刀が跡形もなく消えていく。眩暈がしてしまうほどの衝撃に、ふらりと村田は体を傾けた。
トサッ。誰かが体を支えてくれた。つ、とそちらを見れば、鉄子が村田の体を支えて微笑んでいる。今にも泣き出してしまいそうな、幼い頃の妹の顔だった。
「それがお前の答えだろ」
静かな声に意識を引き寄せられて二人は銀時の方を見る。
「見てみろよ。何にも背負わずに打ったテメーの刀の末路を。テメーの妹が魂込めて打った刀が護ったもんを」
村田は全てを投げ出して紅桜を生み出した。しかし今や紅桜は絶え、残ったのは塵の山だ。
鉄子が打った刀がきらりと光る。リフレインする先ほどの光景。答えなんぞ聞かなくてもわかっていた。鉄子の刀と村田の行動。それが全てだった。
「今度はちゃんと向き合え。逃げんじゃねェぞ。テメェの妹が出来たんだ。兄貴が情け無ェ姿晒したら世も末だろ」
「………あぁ。あぁ、そうだな……鉄子……」
随分と成長した妹の顔を正面から見つめて、村田は口を開いた。
「新八、神楽。後方に脱出用の船が来るから、それに乗りな」
「雪子さんはどうするんですか」
「別ルートで逃げる。元々潜入捜査でここに居たんだよ?」
目立った外傷は一切なし。さっきの一連の攻防で汚れてしまったが、それでも遥かに綺麗な身なりをした雪子たちに銀時は近づいた。
「なんで俺じゃなくてコイツらに言うんだよ」
「オメー今にも倒れそうじゃん。久しぶりにツラ見たと思ったら、そんな血みどろになっちゃって。何なの趣味? やめた方がいいよ」
「違げーわイメチェンだバカヤロー。雪子、テメェだって……」
言いながら、身体をふらつかせる銀時を正面から抱き合うようにして支え、雪子は嘆息する。
「元気になるおまじないでもかけてあげよっか」
「……いいわ。それより、テメェも、……一緒に帰んぞ」
「銀時……」
銀時が体重をかけてその肩口に顔をうずめる。久しぶりに見る彼女からは知らない匂いがした。物騒な硝煙や血、そして銀時の記憶にある雪子自身の匂いに、知らない匂いが混じっている。それが堪らなく嫌だと思った。
ほっそりした背中に回った銀時の手がぎゅっと着物を掴む。目を閉じてほんの少しだけその体温を堪能した雪子は、銀時の首根っこを掴むと万事屋の二人に向かってぶん投げた。
「ぐえっ」
「銀ちゃん!」
鬼兵隊の二人が姿を消している。理由はわかっていた。天人の軍勢が銀時と桂の首を取りにやって来るのだ。私のもんに手ェ出すとはいい度胸してんなァと思わなくもないが、その協定を取り付けたのは高杉自身だ。なら、放っておいてもいいだろう。それよりも雪子にはやらなければならないことがある。
「私は任務を果たさねーと。万事屋、上にいる一般人二人の保護もよろしくぅ」
敢えて屋号を呼んで言うと、雪子の意思は固いと見た銀時がくるりと背を向けてフラフラと歩き出す。雪子のことも気になるが満身創痍の銀時も支えなければ。視線が揺らぐ二人に、安心させるように笑いかけた。
「そんな顔しなくても、ちゃんと後で万事屋に顔出すからさ。松陽に剣教わったっつー話も聞かなきゃなんねーし」
「えっ何それ初耳なんだけど」
「私や銀時にも秘密って……こりゃ松陽も一枚噛んでんな」
ますます疑惑を深めていく雪子。至って平素の様子に二人も踏ん切りがついたようだ。
「……約束ですからね」
「破ったら承知しないからナ!」
「はいはい、約束約束」
手を振って三人を見送ってから、カツカツとヒールを響かせて塵の山の中央に歩み寄る。そこには今にも息絶えてしまいそうな男が横たわっていた。
「まだ生きてるの。へぇー」
髪でも掴んで持ち上げてやろうかと思ったが、そもそも頭部は潰してしまったのだったと、グロテスクな肉塊を見下ろして思い返す。故に首根っこを掴んで通路をズルズルと進んだ。その道のりは赤く濡れ、酷く惨たらしかった。
「安心しな。私はお前を殺さない。つーか死なせない。生きて地獄を味わってもらう。死んでおしまいなんてつまらないでしょ」
「ァ………ぁ、ぁ……」
「
「ぁ……、っ……」
「目も見えない、口も開けない、音も拾えない……息もできてるかわからないのに、痛みは感じる。恐れも消えない。……どう? 面白そうじゃない?」
目的地に辿り着いた。岡田を乱暴に転がして血が飛び散っていない箇所に触れると、一呼吸入れて雪子は作業を開始する。
「そもそも殺すつもりだったら最初に毒で肉体腐らせてやってたわ。そうしなかったのは紅桜が魅力的だったから。村田に感謝したら?」
作業の難易度はこれまでよりも遥かに高い。異端にならないよう、岡田自身の治癒力でなんとか生命を保つことができる、そのラインを狙う。しかもこの肉体は紅桜に侵されきっており、雪子が蹴り抜いた頭にチカチカと明滅する光を見つけた。脳味噌の代わりでも気取っているのだろうか。到底不可能だろうに。
「……あと、これ以上私の手で
十年以上も前のこと。獅子喰いは鬼兵隊総督のみを残して、鬼兵隊員を皆殺しにした事実がある。それに関してどうこう言うつもりはない。あの時はああするしかなかった。それだけのこと。
しかし今は違う。彼女のものに手を出されてもなお、踏み留まる理由がある。本当に、ギリギリ、岡田はそのラインを越えなかったのだ。
だから雪子はこの男を殺さない。自ら死を選びたくなるほどの痛みを注ぎ、後遺症に苦しみながら生きる道を強いるのである。
「もう目見えないんだから目玉いらないよね? ……叫ぶなようるせェな。喉潰しとくか」
「そうだ、高杉にも伝えたことなんだが、雪子は俺がもらうからな」
「は?」
仕込んでいたパラシュートで落下しながら、桂は銀時にそう告げる。先に高杉に話を通したからか、つい省略してしまったが、意味は変わらないのでいいだろう。そのように勝手に自己解決する桂に向けられた銀時の叫びは、天人が打った砲撃の雨に掻き消された。
銀時と桂の首を差し出し、代わりに宇宙海賊春雨と手を組んだ鬼兵隊。彼らは砲撃の雨を食らう船を捨て、ご立派に武装された天人の船の甲板にいた。
二人の侍に「その厨二臭い格好のこと先生に言っといてやるわ!!」と叫ばれた高杉は、手すりにもたれかかるようにしてエリザベスマークのパラシュートを見つめている。
「晋助、そろそろ中に入らないか」
「いや。あのバカどもが海に落ちるのを見逃すわけにはいかねェだろ」
春雨相手に協定を取り付けた河上万斉とそのようなやりとりをして結局そこから離れない高杉。総督が甲板にいるなら、と結局鬼兵隊の面々も同じところにいるのだった。
「あれは……あの雪子とかいう女は、人じゃないっス」
「ええ。ええ。もし十数年若ければ人ならざる美貌を輝かせていたでしょうね」
「先輩そういう話じゃないっス」
武市をシラッと冷たい目で見るまた子は、雪子と岡田の戦いを思い出していた。
元々武術にはかなりの覚えがあるのだろうなとは思っていた。普段船の中を闊歩する様子からは見た目にそぐわず不遜な女と認識していたが、神楽を助ける際にいとも簡単にまた子を拘束して銃を撃ったのだ。この時点で一般人ではなくなった。
そして先ほどの一方的な攻撃では、脚を主軸に鋼鉄の紅桜を砕き岡田の肉体を穿ったのだ。あんなの普通の人間が真似したらこちらの肉体が弾け飛んで終わりだろう。というか、正直あの段階の紅桜の攻撃が二人にはまるで見えなかった。なのにあの女には見えていた。もし雪子がいなければ武市もまた子も無事ではいられなかったはずだ。
そんなことを思えば気分が悪くなってくる。舌打ちをこぼすまた子に、武市は同意を示した。
「また子さんの言う通りです。私ね、少し思い当たることがあるんですよ」
「何スか」
「初めはどこかの暗殺組織の人間かと思っていたんです。あの方は体術に慣れ親しんでいらっしゃいました。それに普段は敢えて足音を出しているようでしたが、船を詮索する間はまるで気配がしなかったので」
「え……そうでしたっけ」
「私はまた子さんと違って頭を使うタイプですからね。マァ気づかれないのも無理はないでしょう、うん」
「腹立つっス!」
ガミガミ噛み付くいつもの漫才をして、武市はコホンと咳払いをする。
「しかし、先の戦いは人間にできることではありません。尋常ならざる剛力、そしてあの白い肌……まるでどこかの傭兵部族ではないですか?」
「まさか……あの女、夜兎だっていうんスか。なんでそんなのと、晋助様に繋がりが……」
その時、風がうねった。
「あっ!?」
目の前を何かが通り過ぎて、次に視界いっぱいに真っ赤に染まった何かがこちらに向かって飛んできた。あまりに一瞬のことで何が起こったのかわからなかったが、それは見るに耐えない苦痛を全身に施された、しかし辛うじて胸が上下していることから息をしているとわかる、岡田の肉体だった。
「ヒッ」
「な、なんでこれで生きてるんだ……?」
鬼兵隊員が恐ろしいと顔を歪めているが無理もない。岡田の肉体にはクナイと鋭い針が幾本も突き刺さっており、関節と思われる(なんせほとんど折られているか腫れていて判別がつかない)部分は紫色に変色している。刺し傷も至る所に見受けられ、拷問を受けたかのようであった。何より酷いのは頭だ。盲目だった彼の目玉が抜き取られている。
死んでしまった方が楽だろうに、彼は生きていた。気絶もしていない。ただただ痛みに苦しんで、薄く息をしている。ひたすら可哀想だった。
これはどこをどう傷つければ意識を失わずに痛みを与えられるか、よく知っている人間の犯行だ。うっかり死んでしまわないように工夫を施して、文字通り地獄を味わうよう、存分に痛めつけたのだ。
「早く治療を。救護班をここに!」
驚きつつ冷静に対処する武市の隣で、また子が呆然としていた。何故なら、岡田は死んだものと思っていたからだ。銀時を傷つけられたと知った雪子の怒りは壮絶なもので、実際岡田の頭を蹴り抜いていた。しかしちらりと見えた奴の肉体は、血に濡れていたが、それでも確かに頭と思われるものは存在した。
「何なんだよ……怖ェよあの女……」
「また子、気づいていないのか?」
いつの間にか万斉が近くにいて、空のある一点を指差している。
「晋助がバイクに乗った女に攫われていったぞ。どうやら岡田を船に投げ入れたのも奴の仕業らしい。……『ちょっと借りるわ!』だそうだ」
「あっ……あの女ァァアアアア!!」
また子の雄叫びは、既に遥か遠くに駆け抜けていく二人に届くはずがない。ホバーバイク……要するに岡田も使っていた宙を自在に加速する乗り物に乗った雪子は、血みどろの岡田を甲板に投げ捨て、高杉を掻っ攫っていったのだった。
なんともご丁寧に攫われやすい位置に居てくれたので、片手で高杉を持ち上げて後ろに乗せるとアクセルを踏む。本来一人乗り用のそれに二人乗せるとどうなるか。答えは簡単、めっちゃ狭い。
「おい前詰めろ、落ちる!」
「あ!? なんだって聞こえなーい!!」
「だから!! もっと前にっ……」
「もっと前に行きたいの!!? おっけスピードアップするわ!!!」
「んなこと言ってねェェエエエエ!!!」
などというやり取りがあって、速度を跳ね上げて走っていったことを鬼兵隊の彼らが知る由もない。
余談だが雪子はわりとハイテク好きである。宇宙の技術が取り入れられるようになってから、戦艦や武器の知識を深め、自ら操作できるようになっていた。バイクもそのうちの一つである。仮に今乗っているのが初めて操縦する空間移動式のものだとしても。
さらに余談になるがこういう乗り物を動かしていると雪子はハイになりやすい。早い話、スピード狂になるのである。進路はめちゃくちゃ、車体は傾き、一回転や二回転は当たり前、アクセルが壊れるほど加速し、ジェットコースターさながらの空の旅を楽しむことができる。もちろん同乗者には堪らない悪魔のような所業だ。
そんなわけで無茶苦茶な運転に付き合わされた高杉は雪子の背中にもたれかかるようにして、わざと攫われてやったことを少し、いやかなり後悔した。
「……最悪の気分だ」
「あーはっはっはっ!! はははっ!! あー気持ち良かった!! 最っ高の気分!! ははははは!! ねっ、もっかいやっていい!? 船からの距離を稼ぎたい!!」
高らかに笑う雪子は、きっと高杉が求めるものに等しい。その顔を見ることができないのは勿体ない気がしたが、笑い声を上げて震える温もりが伝わってきて、まあいいかと思い直す。
が、それとこれとは話が別だ。
「やめろ! 命がいくつあっても足りねェよ!!」
「あはははは大丈夫だって! ちゃんと私が支えてあげる───!!」
尻をずらし身体を傾けて高杉の腰を掴む。ぐいっと力強く引き寄せられて、片手でハンドルを捌くつもりか、と嫌な予感しかしない高杉。とりあえず雪子の体に腕を回しておく。抗ったところでここは海の真上。逃げ道もない。というか逃げるのは性に合わない。
「絶対離すんじゃねーぞ」
「今更じゃん」
流星が更に加速する。
岡田生存ルートおめでとう()