お家に帰ろう   作:睡眠人間

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ドッキリってバラすタイミング難しいよね

 夜中に輸送コンテナだらけの倉庫で息を潜め、雪子は気配を探る。ここまでは、バラバラに散った監視役の攘夷浪士たちを睡眠針で眠らせ拘束することで近づけたが、この先はそう上手くもいかないだろう。

 普段の女性ものの着物ではなく天鴉の制服(といっても御徒衆の格好だが)に身を包んだ彼女は、露出した顔や手首だけが白く浮かび上がっているようである。

 

「呼んだら貸し借りチャラにしたげるっつったのに」

 

 たった一人で攘夷浪士のねぐらに殴り込みに来た土方を、雪子は見物しにやって来たのだった。

 

 ミツバと秘密の取引をした後、彼女は緩やかに体調が悪化して、今は危篤状態にある。言葉を選ばなければ、死にかけているのだ。

 本当なら、ミツバの友人だという土方も雪子もこんな場所にいるはずがない。沖田や近藤、銀時のように、彼女のそばに居てやるのが優しさというものであり、当然のことである。

 しかしそれでも、二人は武器を手にして戦いに赴く。己の信念に沿って真っ直ぐ道を貫くのだった。

 

 土方は、大切な身内である沖田を護る為に戦闘に……と雪子は睨んでいる。

 親類縁者に攘夷浪士と関係のある者がいる事が隊内に知れれば、沖田は真選組での立場を失う。故に誰にも知られずカタをつけるつもりなのだと。

 

「さァて、土方は……あそこか」

 

 獣のような気配を敏感に感じ取り、暗闇のある一点に意識を定める。雪子は音もなく行動を再開した。

 

 

 

 土方は頭に入れた順路で暗闇を進み、屋根を伝って標的のもとに辿り着く。闇商人にして沖田ミツバの婚約者、蔵場当馬のもとへ。

 音もなく抜刀し、切れ味抜群の刃を男の背中に突きつけた。

 

「転海屋、蔵場当馬だな。御用改めである。神妙にしてもらおうか」

「……あなたはいつぞやの」

 

 蔵場は特別驚いた顔をせず、じっとりと沼のように変化のない顔で土方を見、くつりと笑う。

 

「武器密輸及び不逞浪士との違法取引の容疑でお前を逮捕する」

「……フフ。友人の婚約者をためらいなく捕まえますか。なかなか太い神経をお持ちのようで」

「犯罪に手ェ染めながら真選組の縁者に手ェ出すたァ、てめーも太てェ野郎じゃねーか」

 

 背後数メートル先、マシンガンの銃口が闇に光る。殺気を感じ取った土方がそちらに身構え───直後、爆発音と共に夜が瞬間的に輝いた。

 チカッと赤く視界を照らし、耳をつんざくような轟音がやがて止む。

 暴発したのか攻撃されたのか、それさえわからないが、とにかく銃火器が壊れたと理解した蔵場は叫んだ。

 

「お前たち! この男を殺せ!!」

 

 有象無象の攘夷浪士たちが、土方を標的にして一斉に動いた。逃げ出す蔵場を追って地上に降りたターゲットを包囲し、我先にと襲い掛かる。

 一対一なら土方の敵ではなかっただろう。しかし、何十と繰り返し攻撃してくる浪士共に足止めを食らい、鬼の副長は焦りを覚えた。その精神的乱れが一進一退の攻防を歪曲させ、ついに脹脛を撃たれた土方は追い詰められることとなる。

 

 足を引きずり、壁伝いに進む土方の頭に、懐かしい思い出が蘇った。

 

『私も連れて行って。……十四郎さんの側にいたい』

 

 天女も裸足で逃げ出すほどの美貌をぽっと赤く染め、恥ずかしそうに照れている。震える拳を握りしめて、白い肌はますます血の気が引くようだった。

 そんなミツバの決死の告白を、しかし土方は冷たく突っぱねた。

 

『しらねーよ。しったこっちゃねーんだよ、お前のことなんざ』

 

 そう言い残して、まるで何もなかったみたいに、後ろなんて振り返らないでその場を去った。

 振り返ってしまえば、きっと後悔していただろうと、今でも思うのだ。だから、土方はあの時のことを悔いていない。

 血に濡れた人殺しの自分では、あの真っ白な女を不幸にしていただろうから。

 

「残念です。ミツバも悲しむでしょう。古い友人を亡くす事になるとは」

 

 蔵場が高みから土方を見下ろした。

 勝利を確信しているのである。土方が暴れ回っていた時間は相当なもので、真選組の加勢が来るはずなのに一向に来ないことから、男が一人で襲撃したのだと判断したのだ。

 すぐ近くに涎を垂らした獣がいることにも気づかないで。

 

「あの真選組の後ろ楯を得られれば自由に商いができるというもの。そのために縁者に近づき縁談まで設けたというのに、医者の話ではもう長くないとのこと。非常に残念な話だ」

 

 土方が一人で来たならば、彼を始末すれば事は済む。後は、婚約者だった死体に悲しむフリをして、それで終わりだ。

 

「……ハナから俺達抱き込むためにアイツを利用するつもりだったのかよ」

「愛していましたよ。ただし……道具としてですが。あのような欠陥品に人並みの幸せを与えてやったんだ。感謝してほしい位です」

 

 本性を表し、ミツバを侮辱する言葉を平然と吐く。

 タバコに火をつけて煙を吸い、土方は、それでも怒りという感情が遠くで喚いているのを感じた。

 

『……せめてよォ、死ぬ前に一時でも人並みの幸せ、味わわせてやりてーんですよ』

 

 諦観を含んだ大人びた声色が再生される。

 手のかかる弟の世話と病弱な体に振り回されて、自分のことほったらかしで、ようやく掴んだ幸せの裏側は、ドブに塗れたクソ野郎に利用される未来しかなかった。

 同情する程に悲しい人生だ。

 しかし、土方はそんな感情を抱く権利が己にないことを痛感していた。

 

「……クク、外道とはいわねェよ。俺も似たようなもんだ。……ひでー事腐る程やってきた。挙句死にかけてる時にその旦那叩き斬ろうってんだ。……ひでー話だ」

「同じ穴のムジナという奴ですかな。鬼の副長とはよくいったものです。あなたとは気が合いそうだ」

「……そんな大層なもんじゃねーよ。俺ァただ……」

 

 夕陽に溶ける微笑みと、くすぐったくなるくらい淡い恋心。あの頃の自分は、そして現在もなお自分は、同じ気持ちを抱えて生きている。

 心の臓に染みついた感情はいつだって鮮烈で、胸の奥を温かくした。

 だが土方はそれが許せなかった。彼女を幸せにする事ができない奴が、勝手に彼女から力をもらってはならないと。

 本気でこの男は思っているのである。

 

「惚れた女にゃ、幸せになってほしいだけだ」

 

 カッ! 雪子の目が開かれた。

 

「こんな所で刀振り回してる俺にゃ無理な話だが……どっかで普通の野郎と所帯もって、普通にガキ産んで……普通に生きてってほしいだけだ」

 

 いつ死ぬともしれない身で、彼女を受け入れることなんてできるわけがなかった。彼女に幸せであって欲しいからこそ、土方はミツバを拒絶し、背を向け、突き進んだ。

 心の底から満たされて生きて欲しいミツバも、彼女の、そして自身にとっても大切な身内である総悟も、どちらも土方にとっては失ってはならない者だ。

 だから、土方は独りで戦う。

 

「ただ、そんだけだ」

「はァァァアアアアア!!?」

「ッ!?」

 

 なので、こんなところで知り合いの女の声がするはずがないのである。

 

「何者っ!?」

「女がなぜここに!」

 

 攘夷浪士共の間にも動揺が走る。しかし蔵場の真後ろにいた雪子は、何もかもを無視して土方の方へ接近した。

 今にも破裂しそうな激昂を無理やり押し込めているのが見て取れて、力の入らない足で後退りしそうになる。

 

 しかし、それは叶わなかった。

 容赦ない力で胸倉を掴まれ、唐突に至近距離で怒鳴られたからだ。

 

「ふざけんな!! 他人に投げんなクソ野郎がッ!」

 

 眉を吊り上げ、怒りの形相で睨み付けられ、土方は言葉を失った。いつも飄々としてムカつく笑顔を浮かべている女と、今ぶつけられている剥き出しの感情が結びつかなかったからだ。

 

「いーか! 耳の穴かっぽじってよォくきけ! 守りてェもんがあんならてめェでやれ!! 四肢を失っても、心臓を貫かれても、両目が潰されても、くたばるまで戦え!! そんな覚悟もない奴が幸せだの何だの抜かすんじゃねェ!! つーか腹立つ! マジムカつくくたばれ!!」

 

 フーッ、フーッ、と威嚇する獣のように髪を逆立て吐き出されたその言葉には、万感の思いが込められている。

 雪子は本気で腹が立ったし、くたばれとも思った。どうしてここまで怒りを爆発させているのかというと、至極簡単、土方が雪子の地雷を見事に踏み抜いたからである。

 

 そも、この二人は似ているが性質が正反対だ。

 惚れた女の幸せを願っておきながら、互いに惹かれ合いながら、いつ死ぬかわからない身だからと、女を幸せにできないという土方。

 大切な人は何があっても守ろうとするが、当人の意思よりも自分自身の意志の方を優先しがちで、共に生きることを望む雪子。

 こんなのが分かり合えるはずがないのである。

 

 掴まれた力が徐々に抜けて、怒りに歪んだ声色は段々尖りを無くしていく。

 

「自己満足で戦えば、テメーはイイ気持ちになれんだろうよ。けど、された側はクソみてーな気持ちになんのがわかんねェか?」

「……それでも、俺ァアイツらに普通に生きて欲しいんだ。その為には何だってすると……そう決めている」

「私と同じになるなっつってんだよ。まだ間に合う。やり直せ」

「同じだと?」

 

 その問いには答えず、ついには土方に背を向けて、敵陣に向かって雪子が歩み出した。

 

「ミツバが最期にお前と話したいと言っていた」

「………」

「約束通り伝言したからな、私に恥かかせんなよ」

 

 言ったっきり、雪子はコンクリートで舗装された道を踏み砕き、攘夷浪士に襲い掛かった。

 口を出す間も無く突っ込んでいく光景を眺め、土方は壁にもたれかかって紫煙を燻らせる。手を出す必要がないと判断し、大人しく静観することにした。半端に手を出せばこちらが喰い殺されそうだったので。

 

「やっぱ夜兎じゃねェか。どうなってんだ万事屋んとこは」

 

 伝説の傭兵部族とかいう天人だったはずだが、あの男の周りに二人もいるなんて。

 それに思うのは、将軍護衛の任を戴く暗殺組織の副局長が天人であるという事実についてだ。しかも天導衆と深い繋がりを持っているのは確定である。

 国の中枢はとうに天人の独壇場であり、そこに今更疑問を抱くほど土方は幻想を見ていない。だが……。

 

「となれば、局長の朧とかいう男も天人か? それともあの女だけ……。表が料理人、裏が暗殺者とすりゃ、他の天鴉の連中も市中に潜んでいそうだな」

「朧は人間だよ」

「聞こえんのかよ……」

「朧って聞こえたから」

 

 銃火器で狙われているが、攘夷浪士を身代わりにし、冷静に場を制圧していく手腕は流石の一言だった。隊を率いるにはあまりに気ままで不適任だが、単体では言葉が出ないほどに強い。

 

「お前がか」

「ヒッ」

 

 蔵場は顎を掴まれ、口も開けずただ女が放つ死の気配にじくじくと心臓を貫かれることしかできない。足がガクガク震え、股ぐらが濡れ、小便の臭いに不快感を示した雪子が軽く蹴ると、面白いくらい怯えるのだった。

 

 そこへサイレン音が耳に届いて、主犯格を拘束し終えた雪子は、返り血で汚れた面をにっこりさせる。

 

「お迎えが来たよ土方くん。私をがっかりさせないでね」

 

 

 

 

「独りで行くんじゃねェ! 俺達は仲間だろうが!!」

「近藤さん……」

「次に同じことをしてみろ、許さんからな! 具体的にはえーとあの……許さんからな!!」

「……ああ。ああ、わかったよ。ありがとう」

 

 病院に辿り着き、近藤にこってり叱られた土方は、次に沖田からは形容し難い眼差しを向けられる。

 

「最期に姉上に全てを話してください。……せめて、最期だけは」

「総悟、俺ァ」

「言い訳なんて聞きたくねェ! 姉上が、……死ぬ前に、幸せにしてやりてーんです」

 

 頼んます、と力のない声と共に僅かに頭が下げられる。一言では片付けられない複雑な心境なのは確かだったが、男の真っ直ぐな気持ちを受け止め、土方は案内された病室へと向かった。

 

 深呼吸をして、扉を開く。真っ白な空間だった。危篤状態にあると聞かされていたが点滴や機械には繋がれておらず、設置されたたった一つのベッドに横たわり、ミツバは目を閉じている。

 悲しいくらい嘘のように美しい光景だった。

 

 土方は何度か口を開閉し……結局、何も言葉を選ぶことさえ出来なくて沈黙した。

 いつもそうだ。この女のことを想うと、デタラメなことはいくらでも言えるのに、本当のことは一つたりとも言えやしない。

 それでも、話をしたいと聞かされたのだから、一方的だったとしても、約束を果たしたい。

 

「……貴女のことが、好きでした。……本当に」

 

 ミツバの瞳は固く閉じられたまま。薄く呼吸し胸が上下しているのがわかるけれど、声が届いているのかさえ不明瞭だ。

 

 心の底から幸せになって欲しいと願っていた。

 心の底から普通の生活を送り、笑って暮らして欲しいと願っていた。

 

 けれど、自分は彼女から平穏や幸せを奪うことしかできなかった。

 そんな己にこんなことを言う資格はないのだけれど。

 それでも、あの時、言えなかったことを伝えることができるなら。

 俺の隣で笑うお前が望めるなら。

 

「俺と一緒に来て欲しい。……側に、いてくれないか」

「……はい。もちろん」

 

 独り言に返事があり、ぱちりと大きく瞬きをした。その拍子に一筋の涙が流れてベッドにシミを作る。

 その一方でミツバは「あ」という顔をしていた。バッチリ目が開いている。

 

「いけない。雪子ちゃんに黙っているように言われたのに、つい。十四郎さんの泣いてる姿、初めて見たんだもの」

 

 上半身を起こし、オホホと誤魔化すように微笑む。その姿には確かな活力が見て取れた。

 

「ミツバっ!? 身体は大丈夫なのか!?」

「ええ。お医者様のお話では、すっかり全回復したそうなの。肺も何もかもが常人のそれと一緒なんですって。……そんなことより」

 

 気になる部分をそんなことよりで流されてしまい、土方はぐっと奥歯を噛み締めた。これが現実なのかどうかもわからない。先程の告白まがいの独り言を聞かれている状況では、混乱するのも当然である。

 

「騙してしまってごめんなさい。けど、こうでもしないと本当のことを言ってくれなかったでしょう?」

 

 か細い指が精悍な頬に添えられ、目尻を優しく拭う。驚きで涙は引っ込んだが、見えない何かを掬うような仕草だった。

 

「もう一度言って欲しいわ。だって、ずぅっと長く待っていたんですもの。お願い、十四郎さん」

 

 可憐な声色と共にこてんと首を傾げておねだりされ、土方は白旗を上げる。

 負けた。完膚なきまでに負けた。こんなカワイイお願いの仕方をされたらどんな堅物も骨抜きにされてしまうだろう。

 

 ……ここまでか。

 血に濡れた俺でも、いやそんな俺だからこそ、ミツバを守ると決めたんだ。

 今度は誰かの手に任せるのではなく、自分の手で。

 

「………ミツバ」

「はい。十四郎さん」

「俺と───」

 

 ドッシャアアア!!! 病室の扉がいきなり開かれ、大量の隊士たちが倒れ込んだ。体勢を見るに、扉に張り付いて聞き耳を立てていたら扉が総重量に耐えられなかったようだ。

 

「あー! めっちゃいいところだったのに!!」

「重いんだよ! さっさと退けお前ら!」

「生告白が台無しじゃねーか!!」

 

 ぎゃいぎゃい騒立つ男たちの中には銀時の姿もあり、脱出不可能な真っ黒い山の中に一点の白が混じっている。

 そこへゆらりと鬼が現れた。その手には刀が握り締められていて、怒りでカタカタ震えている。

 

「てめーら……よほど局中法度に反したいと見える」

「あっヤバ、副長……」

「多串クーン、ちょっと一回落ち着こっか……」

「ト、トシ……これはだな……」

「士道不覚悟で切腹だァァァァ!!」

「ぎゃあああああああ!!」

 

 大の男たちが鬼の副長に逃げ惑い、病院内を駆けずり回る。とても愉快で賑やかな人たちだこと、なんてミツバはくすくす微笑んだ。

 

 二人の会話に勿論耳をそば立てていたが、土方には見つからず病室近くの通路にて身を隠していた雪子と沖田は、『ドッキリ大成功!』と書かれた看板を手に座って話を交わす。

 

「これいらんかったな」

「俺にください。後で土方のヤローをぶっ叩く」

「おいおい将来の義兄じゃねーの? 仲良しだなァ」

「仲良くねーし!」

 

 沖田が受け取った看板を地面に叩きつけると、真っ二つに折ってしまった。

 

「これにて一件落着ってか。よかったな沖田、お姉ちゃんが生きて。………沖田?」

「……あり得ない事態だと医師から聞かされました。姉上や近藤さんには伏せてますが、回復した原因も理由もわからないと。……俺ァ奇跡や神なんて信じてません。だから、……恐いです。急に姉上が死んじまうんじゃないかって」

 

 一度は覚悟を決めた身だ。しかし、もう一度あの喪失の痛みを負うのは御免蒙る。白いベッドの上で眠る姉を見るのは、彼女を想ってあの男に癪なことをされるのは、腹の底から嫌だった。

 

「あー……その心配はいらないんじゃね。や、寿命でポックリいくだろうけど、そんなのウン十年先のことだし」

「そーゆーもんですか」

「そーゆーもんだよ、お前にはわからんことだろうけど」

「姉上が回復したのはアンタと話をしてからです。姉上に何をしたんですか」

「………」

「本当のことを教えて下さい。俺は、姉上の弟です」

 

 唯一の肉親を失うかもしれない。普段のクソガキっぷりが鳴りを潜めているのは、その恐怖があるからなのだろう。

 雪子には血の繋がりのある家族はいない。本当に小さい頃は母と共に暮らしていたらしいが、その記憶を持たない彼女にとっては、あまりわからない感覚だ。

 それでも家族らしい身内がいた女には、その恐れがよくわかった。

 

「宇宙ってのは広くてね。江戸よりずっと栄えてる星や、科学で解明されない謎や神秘に満ちた星が未だにある。不治の病に侵されてるわけでもない弱いだけの肉体を回復させるのは、実はそう難しい話じゃねーの」

「……。……姉上に、危害が及ぶようなことですか」

「うんにゃ。痛みを伴ったり後遺症が出るものじゃない。けど病に強くなっただけで、怪我をしたら普通に血は出るし」

「急におっ死んじまうことはねェんですね」

「ああ。怪我……つまり外的な攻撃に気をつけていれば、寿命を全うしていけるだろうよ。あ、コレ限られた生物しかしらない情報だから、オフレコでよろしく」

 

 何度も質問を重ね、ミツバの身の安全を確信に至るまで話をした後(といっても真実……つまり雪子の能力のことは沈黙した)、沖田は暫く黙り込んだ。

 隣に座る少年がどんな顔をしているのか気になって見ると、全身から力を抜いて脱力し、それはそれは大きな吐息をついた。

 

「よかったぁ……姉上はもう大丈夫なんだ」

 

 ぽろっとこぼれ落ちた独り言が非常に幼い響きを持ち、その顔にもいとけない安堵の色が色濃く滲んでいる。椅子に深く腰掛け、否、だらんと四肢を投げ出した体勢は近所の悪ガキのようだ。

 何だかそれが雪子にはとてもかわゆく見えて、新八や神楽にするみたいに、頭をポンポンするのだった。

 

「唯一の肉親なんだから、今まで以上に大事にしてやれよ」

「……、ぃ、言われるまでもねェや。アンタも姉上の友達なんですから、これからもお付き合いよろしく頼んます」

 

 驚いて言葉に詰まったみたいだが、意地でなんでもないフリをする沖田の髪をぐちゃぐちゃにするように乱暴に撫でた。

 

「雪子さんと呼べ小憎」

「総悟です、雪子さん」




沖田姉弟の恩人になった雪子。
これは次の真選組動乱篇が捗りますね。
この二人には斬り合って欲しいので。
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