燦々と輝く太陽と、アスファルトを焼くギラギラした熱。夏である。熱中症だ地球温暖化だと叫ばれる昨今、「今日は暑いのでお休みです」というお知らせを出したため、ドタドタと廊下を走り回る子どもたちの声は一切なく、松下村塾では風鈴の音がきらりきらりと瞬く音のみが耳を楽しませてくれる。
松陽は縁側に腰を下ろし、団扇で仰ぎながらぼんやり寂しいなぁと思っていた。
「誰も帰ってきてくれませんし」
一番会いに来てくれる確率の高かった雪子は、最近忙しそうにしているらしく全く顔を見せてくれないのが特に寂しい。
また、我が子のように可愛がっている彼らは今日も元気にテロ活動や仕事に勤しんでいるようで、たまに時間を見つけてやってくるものの、夏に入ってからは声も聞いていない。
塾をお休みにして子どもたちがいないからか、どうにも寂しいという感情に抑えが効かない。私も随分と人間らしくなりましたねぇと冷たい水で喉を潤していると。
ブオンブオン!! なんて片田舎には似つかわしくないエンジン音が響き渡り、キィィィィィ!!! と車に急ブレーキをかける音が松下村塾の目の前で轟いた。
おや? と松陽が顔を上げれば、柵を飛び越えて猛スピードで駆け寄ってくる一人の女が、サングラスを外して太陽のように笑う。
「松陽ただいまっ! バカンスに行こう!」
「おかえりなさい、雪子。バカンスとは?」
(雪子にとって)ウッキウキの夏休みが始まったのである。
「竜宮城」
「そっ。限られたセレブのみが訪れることを許されるという桃源郷! 前から松陽と行きたいなーって思ってて。やっと予約取れたからそれまで秘密にしてたの」
「そんな場所があるなんてしりませんでした……でもいいんですか? 私と二人きりで」
「だからいいの。たまには松陽を独り占めしたいもん」
船舶免許持ちの雪子が小型船を操縦し、大海原を凄まじい速度で走り抜けていく。松陽と二人きり+乗り物を操作しているというワクワクでとんでもない加速を見せていくが、まだ酔いに到達する激しさではなく、ニッコニコで竜宮城での予定を話していく雪子に、松陽も嬉しそうに笑った。
二人ともお互いのことが大好きなのである。
「ほら、昔よく二人で旅行してたじゃん。アレは全部松陽が手配してくれていたけど、私も大人になったわけだし、その、お返し? っていうかさ。親孝行したいの」
「雪子……ありがとう。なら、うんと楽しませてくれますか?」
「もちろん。ホテルも絶景が望めるところ選んでね。露天風呂が部屋にもついてるんだって! あとはね……」
などというやりとりをしていると、ふと視界を何かが掠めた。
「何でしょう、今一瞬……」
「近づいてみる?」
そちらに舵を向けて数秒、目的のものは形を帯びて、とても見覚えのある姿になる。
「雪子!? それに松陽まで!」
「銀時に新八くんに神楽ちゃん。どうしたんですか、こんな海の真ん中で」
「そっちこそ! てか雪子さんそういうのも操縦できるんですね!?」
万事屋一行と亀である。小さなボートの上に四人、狭そうにひしめき合っているが、炎天下に晒されてしんどそうだな、でも早く竜宮城に行きてェなと雪子はすぐに頭を切り替えた。
なんせ今は大好きな松陽とバカンスに行く途中なのだ。
「じゃあなてめーら! なんでこんなところにいるか知らないけど、日が落ちないうちにさっさと陸に戻れよー! 私たちこれから竜宮城でバカンスだから」
「竜宮城!? 俺誘われてないけど!!」
「待ってヨ雪子! 私たちも連れてっ……」
さくっと話を切り上げてエンジンをかけ、何事か叫んでいるボートから颯爽と離れていく。強風に髪を靡かせながら、松陽が後ろに目を向けた。
「いいんですか? 彼ら、何か言いかけていましたが……」
「いーのいーの、それより早く竜宮城へ……」
すると辺り一体が闇に閉ざされた。いや違う、あまりに大きな物体が宙に浮かんでいるから、それで太陽の光が遮られたのである。二人して空を仰げば、そこには大きなスッポンがいた。
「何あの……何?」
「わぁ! 大きなスッポンですねぇ」
「あれヅラじゃない? スッポンの上にいるのヅラじゃない? 何やってんのアイツ。どこに向かってるのアイツ」
「後ろにいるのは桃太郎でしょうか? 不思議なこともあるものですねぇ」
のほほんとしていられたのはそれまでだった。大型戦艦が突撃し、スッポンと戦闘を開始。文字通り火の海と化したそこから遠ざかろうとするも間に合わず、波にさらわれ、二人の意識は深く落ちていった。
「最っ悪」
竜宮城に向かうはずが、無人島に流されてしまった。松陽は大丈夫だろうか……不安で寂しい思いをしていないだろうか……悩みは尽きないが死ぬ心配だけはしなくていいのが不幸中の幸いだ。
雪子はこういった事態に慣れている。子どもの頃、一人旅している間なんか野宿は日常茶飯事だったので、無人島だろうが草木が生えていれば生活には困らない。
それに救援を暫く待って来なかったら、陸地まで泳いでいけばいいし。大丈夫なんとかなる。
そんな感じで己を励ましていくが、独りぼっちはどうにも嫌だ。胸がザワザワして落ち着かない。くそ、万事屋に居たせいだと悪態をついて、生きる為の環境づくりをして気を紛らすが、それでも寂しさは解消されない。
「会いたい……」
本当なら今頃松陽と竜宮城でバカンスだったのに。サプライズしようと思って数ヶ月前から準備をしていた結果が無人島に漂着なんてあんまりだ。
次第に心細い気持ちが膨れ上がって、じっと宙を見つめる雪子は、やがて。
「大丈夫ですよ、雪子。私が必ず見つけますから。───うん、必ず見つけてね。約束だからね。……ええ、約束です。だからいい子にして待っていて……」
セリフの区切りごとに体の向きを反転させ、何やら芝居を始めた。お題は『先生と私』である。頭の中のイマジナリー松陽と二人きりの世界を作り上げているのである。現実ではたった一人なのに。
だんだん熱中していくと芝居も気合のこもったものに変化する。最初は呟き程度のものが、最終的に先生役と自分役とで声色を変え、身振り手振りで感情を表現し、まるでそこに先生がいるかのような錯覚さえ起こすものになった。
「ああ松陽! 今すぐ私に会いに来て! ううん、私から会いに行くよ、世界で一番大好きな人だもの!」
目の前のイマジナリー松陽に抱きついてみると、確かな肉体の感触が胸を押し返す。あれおかしいな? なんで妄想の松陽が実体化してるんだ? 純粋な疑問を抱いて顔を上げると、そこにはキラキラした背景を背負った笑顔の松陽が……ではなく、やや困り顔の松陽がいた。
「えっ、えっと……見つけるのが遅くなってすみません、雪子」
知人女性の黒歴史を目の当たりにして言葉を失う一同の中、絶句する雪子に抱きしめられた松陽は照れ臭そうに声をかけた。二人ともお互いのことが大好きなのである。
銀時、新八、神楽、お妙、九兵衛、長谷川、桂、そして雪子と松陽。
無人島に漂着した以上九名は、円形に向かい合って自己紹介をし、作戦会議を始める。
「食事班、寝床班、探索班、カーテン係の四つの班に分かれるなら……まず雪子が食事班なのは確定としてだ」
「えーヤダ。私この島探索したい。なんで無人島来てまで料理しないといけないの? そこまで興味ないよ」
「うるっせェ従ってろ。オメーが料理しねーと俺たち全員おっ死ぬぜ」
小料理屋の店主である雪子を食事班に、と推挙する声が多数出るも、当の本人は不満げに口を尖らせた。しかし渋々納得し、また松陽を同じ班に連れ込むことで引き下がった。
何故ならとんでもない暗黒物質製造機が同じ班にいるので。
「雪子さん、火を起こしてみたいのだけど、手伝ってくれる?」
「いいよお妙、ちょうど今やろうとしてて……」
二人で作業していると、釣果上々、小ぶりだが活きのいい魚を何匹も釣り上げた長谷川が近づいてくる。
「いやぁ、こんなところで雪子さんの手料理が食べられるなんて、良いことあるもんだな」
「そう? いつも残飯あげてるじゃない」
「ああ、うん、いつもお世話になってます。残飯っつーか、消費期限切れそうな使わない食材もらったりね」
雪子の店の開業日は不定期であり、どうしても腐らせてしまう食材が出てきてしまう。そんな時に役に立つのがマダオだ。彼は何でも口にするので、とりあえずそこら辺に投げれば必ず食らいついた。水面で口をぱくぱくさせる鯉に餌をやる感覚と似ている。
「どうよ、俺が釣った魚は。雪子さんならちゃちゃっと捌けたりできるんじゃない?」
「無理無理、刃物……最低でも細石器がないと」
完全にバカンス気分だったので武器になるものは全て置いてきた。護身用の小刀も海に沈んだので、ナイフ代わりになる道具を見つける、あるいは石を削って生み出す必要がある。
「調理しようにも火がないと……雪子さんと色々やってみたんですが、難しいものね」
「ねー」
「色々やったってコレ完全に遊んでたよね。碁うってたよね」
「お父上が健在の頃はよくオセロや碁盤をかこみ火花を散らせたものだわ〜〜」
「つかねーよそんなんで火!!」
白熱したバトルが繰り広げられていたらしい。砂の上に広がる白黒の碁盤を眺めていると、長谷川と同じく釣りをしてきた松陽が合流する。その手には流れ着いたバケツらしきものが握られていた。
「私も頑張ってはみたのですが……全然釣れませんね」
「大丈夫だって松陽先生。俺は海の男なんだ。アンタの分まで釣ってきてやるから、そう気を落とすなよ」
「ありがとうございます、長谷川さん。まあ、こんなにたくさん魚が……素晴らしい」
「へへっ」
松陽にストレートに褒められて長谷川は鼻の下をこする。素直に嬉しかった。周りの奴らはどうしてか捻くれ者ばかりなので、松陽のような人格者と接する機会なんてほとんどないし。
なんだってこんな善人が銀さんたちの先生なんだろう。逆に真っ直ぐに育たなかったのは銀さんらしいっちゃらしいけど。
長谷川はそんな失礼なことを考えつつ、俺が皆んなの分の魚を釣り上げるんだ! と意気込む。
「それで、松陽の成果は?」
「こんなところです」
ビチッ。勢いよく跳ねたのは長谷川が釣ったものと比べ物にならない大物たちである。
「あらっ! これだけあれば皆んなの分も賄えるわ! スゴイわ松陽先生!」
「普段ならこの数倍はいくんですけど……試しで作った釣竿ではこの程度のものしか釣れなくて」
「十分と言いたいところだけど、神楽の分が足りないかな。私も手伝うよ」
バケツにぎゅうぎゅうに詰められたそれらを見て、長谷川は、なるほどこれは銀さんたちの先生だなと謎の納得をした。
この後長谷川のサングラスは雪子に粉砕され、お妙のマッチによって燃やされるのだった。
「そういえば、小太郎との婚約の話はどうなりましたか?」
「わあ、急だね」
長谷川とお妙に料理を任せ(前者がめちゃくちゃごねた)、雪子と松陽は森を探検する。魚だけでなく食料になる果物や野菜はないか探しているのである。
というのが二人にした説明で、本当は単に松陽と二人きりになりたかっただけだった。まさか速攻で婚約話が出ると思っていなかったけど。
「迷いは消えたよ。二年後にもっかいプロポーズしてもらうって約束したから、……待ってる」
待つのは生来得意でないだろうに、愛おしそうな眼差しを遠くに向ける雪子があまりに優しい表情をしているので、松陽は心の底から安堵した。
「それは重畳。でも、どうして二年後に? 君たち海賊王の財宝探してましたっけ?」
「海賊じゃないから。似たようなモンだけど。……さてね、男の矜持ってヤツ? 私にはどうでもいいけど、待てって言われたから。昔からヅラのことは家族と思ってるけど、改めて結婚するならアイツがいい」
「!!」
すごい。雪子の口からとんでもない台詞が飛び出してきた。後で小太郎に教えてあげようとウキウキしながら、更に話を深掘りしていく。
なんせ十年間動かなかった関係だ。知らないところで面白、間違えた良い関係になっているなら全部知りたい。大切な娘が、大切な教え子たちの誰とくっつくのか、出来ることなら齧り付いて見たいくらいである。
「ほほう。小太郎を選んだ決め手は何ですか?」
「何その質問。んー……お互い好きだし、傷ついて欲しくないって気づかせてくれたし、プロポーズしてきたから?」
「そうですか、そうですか。ちなみに婚約の話は、銀時や晋助にしましたか?」
「わざわざ言ったわけじゃないけど、二人とも知ってるよ。ヅラから話を通したって」
多分それは二人に発破をかける為だと思われるが……まあ雪子と桂、両方が納得し選んだ道なら祝福するのみである。しかし、それでも銀時や高杉は何も行動を起こさなかったのだろうか。幼馴染の二人が結婚するとわかって、何も感じなかったのだろうか。
「二人が結婚するというなら……銀時や晋助がお嫁さんを連れてくるのも、楽しみですね」
「………え?」
「だってそうでしょう? もし好いた人が、一生を添い遂げたい誰かがいたら、紹介して欲しいではないですか」
意地悪だとわかって言葉にしてみると、珍しく雪子は不安そうに視線をウロウロさせる。これは予想外の反応だ。
「や、やだ」
「はい?」
「やだ。……銀時も高杉も、私以外の女と一緒になるのは、やだ」
すごい。さっきのを上回るとんでもない台詞が転がり落ちてきた。
「だって、そうじゃん。私たち家族じゃん。そこに違う誰かが入ってくるのは嫌だ。アイツらは私のもんだもん」
「………。……けど、君の言い方に合わせれば、二年後には雪子は小太郎だけのものになるし、小太郎は雪子だけのものになるんですよね? 結婚するのだから」
慎重に言葉を選んで伝えると、ぱちぱちと大きくまばたきをして、やがて小さな声で尋ねる。
「そうなの……?」
「え……?」
「結婚したら、子ども作るとかそういうのはわかるけど。一人だけのもんになるの?」
「それはそうでしょう。というか、結婚に限らず婚約した男女や、お付き合いをしているカップルは、その他の異性と遊ばないものです」
光の速さで顔と目を逸らした雪子に、嫌な予感がした松陽は恐ろしい笑顔を貼り付けて質問を重ねる。だんだん低くなっていく声色は、彼の心情を如実に表していた。
「まさか、雪子……銀時や晋助とも関係を?」
「いやいや松陽の思ってるヤツよりか軽度だって」
「程度を聞いているのではありません。手を出したかどうかを尋ねているのです」
「…………。……………………」
雪子は沈黙する。彼女の頭を過るのは、関係を持った男たちとの記憶だ。
銀時におまじないと称して、おでこにキスしたこと。抱きたいのかと質問して返答次第ではセックスしたかもしれないこと。恋のABCで言うところのAである。
桂とは車内でいかがわしい行為に耽ったこと。途中で真選組が登場しなければ、恐らく最後までヤっただろう。恋のABCで言うところのBである。
高杉とは完全に肉体関係まで持ったこと。言わずもがな、Cである。
つまるところ雪子はそれぞれ別の男でABCをコンプリートしているのだ。最低である。カスである。とんでもない淫乱阿婆擦れクソビッチだった。
こんなこと、松陽に言えるわけがない。何が何でも沈黙を貫かねば。
「雪子」
「手ェ出しました……」
しかし、松陽の低音に白旗を揚げた。
白状する彼女の答えに、松陽は軽く頭痛がしてくるようで、額を抑える仕草をする。
雪子の貞操観念って……と頭を悩ませながら、なぜそんな事態になっているのか疑問だった。雪子が100%悪いのだけはわかるけど。
「そのことを彼らは互いにしっていますか?」
「しらない……と思います。私からは言ってないけど、アイツらが自分から喋ってたらわかんない……」
「ふむ」
そんなドロドロのぐちゃぐちゃになっているなんてしらなかった。全員幼馴染で男3、女1。かつては一つ屋根の下で暮らした者同士、しかもそのうち一組は婚約済みである。
昼ドラも真っ青だ。軽く地獄ができている。その状況を先生にしられるのも地獄だが。
「小太郎に謝りなさい。誠心誠意を込めて、今すぐに!」
「え! なんで」
「なっ、なんで? なんでと聞き返すまでもないでしょう」
松陽は動揺して口ごもってしまうが、人差し指を立てて教えを解く。教えというか常識というかモラルである。この女にはモラルが足りなかった。
いえ、男だらけの家庭で育ち、多感な時期は旅に出て、十代後半は暗殺任務や戦で人を殺してばかり。壮絶な過去を持つ雪子に正常な倫理観を期待する方がいけないのかもしれない。
それでも自分は彼女の先生で、父親である。正しい道を教えなければならない。
「婚約した男女が違う誰かと遊ぶのはいけません。それは浮気です。不倫です」
「既婚者子持ちの松平のオッサン、キャバクラで遊びまくってるけど」
「仕事上の付き合いなどがあるんでしょう」
「吉原で女を抱く男の人たくさんいるけど」
「雪子。特殊なケースを持ち出して話を逸らそうとしないでください」
どうやら微塵も理解できていないらしい。
だがそんなものでは挫けない。これまで幾多の子どもたちを教え導いてきた大先生は、説明を噛み砕き、根気強く丁寧に言葉を届ける。ちょうど雪子の琴線がわかってきたので。
「では、銀時や晋助、それに小太郎。彼らがキャバクラやスナックで女性と遊んでいたら? 吉原に行ったら?」
「斬り殺す」
「斬り……? まあそういうことです。雪子がしているのは、それと全く同じことなのですよ」
「お互いに大好きなのに?」
「大好きでもです。一人を選んだのだから。自分は良くて周りはダメなんて通るわけがないでしょう」
ここではたと気づいた。
「待って。……小太郎への好意と、他二人への好意は同じなのですか?」
「うん。家族になりたいなー、みたいな」
「………。……なるほど、そういう……」
「もういっそ昔みたいに一緒に住めたらいいのにね。松下村塾でさ、朧や信子も……先生の教え子たちみんなで」
つまり、全員に向ける感情が一緒だから先にプロポーズしてきた桂と結婚するのだと、そういうことらしい。しかも今の発言でわかったが、雪子は好意=家族としての情にカウントしているようだ。それなのに複数の男に手を出すとは。
まるで雪子の気持ちがわからない。思考回路が複雑怪奇で、教えを放棄してしまいそうになる。
「ともかく。現状小太郎の信頼を裏切っていることに変わりありません。一人を選ぶ覚悟もないのに、気安く約束してはいけない」
「ちょ待ってよ、無理に決まってる! たった一人を愛するなんてぐぁッ」
コツン、なんて可愛らしい効果音と共に、ドガシャアアア!! と松陽の拳を食らった雪子の体が地中に埋まる。
「暫く反省なさい。そして一人で自分の気持ちを考えるのです。せっかくの無人島、こんな機会は滅多にない」
そして松陽は頭だけ地上に出ている雪子を置いて、さっさと食事班に戻って行った。お仕置きみたいなものだった。
そんなに時間をかけずに迎えに行くつもりだったが、その後新八らと合流し、敵に囲まれ、ジジイになった教え子たちに驚愕し……竜宮城に捕縛されてしまう。
地上に一人きりにしてしまったが、雪子なので大丈夫でしょうと思っていたのである。
「なんだこの女! 首から下が埋まってんのか!?」
「転んだんだようっせーな」
「どんな転び方ァァ!?」
「まあいい! 地球人は全て玉手箱Gにかけてしまえ!!」
全然大丈夫ではなかった。
世間一般から見れば雪子の行いは最低なものなので先生に叱ってもらいました。
松陽先生に乙姫のことを「お嬢さん」呼びして欲しいが先生が何歳かわからないので悩んでいます。乙姫は齢三千らしいですが、先生はどのくらいなんでしょう……