Live版 WORKING!!   作:みずしろオルカ

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今年一年お世話になりました。
来年もよろしくお願いします。

年内最後の更新です。
書き溜め分を少しずつ手直ししながら投稿してますが、もう残り少ないです。

徐々にスピードダウンするでしょうが、お待ちいただけたら幸いです。

それではお楽しみください。


第3話 幼馴染と自覚

 不足気味だった夕方帯キッチンのメインメンバーが追加になった。

 まさか同級生の、しかも数少ない男子生徒だとは思わなかった。

 

 東條先輩が連れてきたのだけど、よく見つけたものだと思う。

 

 一応、音ノ木坂の共学化に伴う数少ない男子生徒の一人。

 顔は知ってても交流が無ければ無いモノだ。

 

「佐藤君、キッチンの新しい人って友達?」

 

「いや、顔は知ってるけどクラスも違うし話したことはないかな」

 

 ホールの掃除の為、オレはモップ、ことりはテーブル拭きで掃除をしている。

 一度、女子高の中に男子が入るという特殊な状況を共に乗り越えようという目的で、男子が集まろうとした経緯があったけど、一部男子に彼女ができたことでその集まりもお流れになった。

 

 要は、変に集まると女性陣が近づき辛くなり、自分に彼女ができなくなる可能性を危惧した、っという事だ。

 

「私や穂乃果ちゃん、海未ちゃんと仲がいい男子生徒って佐藤君だけだもんね」

 

「おかげで一部男子から敵視されてるんだけどなぁ」

 

「ん?」

 

「いや、幼馴染で男がオレだけだなってな?」

 

 本当に幼稚園児の頃からの付き合いで、高校まで一緒となると腐れ縁を感じざるを得ない。

 幼馴染フィルタを考慮しても三人ともかなりの美少女だと言える。

 三人ともタイプの違う美少女。

 そりゃ、他の男子から目の敵にもされる。

 

 オレだってことり達の様な幼馴染が居たら嫉妬の一つもするだろうからな。

 

「そういえばそうだね。幼稚園の頃は佐藤君以外にも男の子の友達いたけど、小学生ぐらいで殆どいなくなっちゃったんだよね」

 

 そりゃ、小学生って異性を意識し始めたり、男女で派閥を作ったりするから疎遠になったりするんだよな。

 オレもそうなりそうだったんだけど、ガチでことりと海未に泣かれたのだ。

 それを穂乃果に窘められ、三人で親に怒られるまで遊んだものだ。

 

「まぁ、子供の頃なんてそんなもんだと思うぞ」

 

「佐藤君はずっと一緒だったよね」

 

「お前と海未に泣かれて、穂乃果に窘められたからな」

 

「……」

 

 ことりの視線が半眼でにらむ形になっていた。

 なにかしたかオレ?

 

「穂乃果ちゃんや海未ちゃんは名前で呼んで、ことりの事は名字で呼ぶんだ……」

 

「いや、バイト中はケジメつけて、名字で呼び合うって決めたじゃんか」

 

「だって……」

 

 不満そうに頬を膨らませている。

 コイツたまに狙ってるんじゃないのかってぐらい可愛い時がある。

 不意打ちはひどい。

 

 仕事のけじめはつけましょう。

 同期とは言え、仕事の場ではきちんとするべきだ。

 

「……客がいない時なら普通に名前で呼ぶようにするから」

 

「うん、それで許してあげる」

 

 ……オレ、弱いなぁ。

 

 

********************

 

 

「ことりちゃん、佐藤君。新人君紹介するから、ちょっと来てくれへん?」

 

「「はーい」」

 

 幸いというか、いつもの通りというか、お客様も居ない時間帯に東條先輩から声がかかった。

 ずっとホールに出ずっぱりだったし、新人さんは洗い場に缶詰だったから話ができていない。

 

「波も去ってるけど、洗い場は落ち着いてるんですか?」

 

「さっきまで叫んでたけど、大丈夫だと思うわ」

 

「いや、それ追い詰められてません?」

 

 入って数日だし、波の後の食器は文字通り山積みになる。

 調理についてマッツンがメインで、洗い物が新人君メインだ。

 飲食店で忙しくなった時、最初にホールメンバーが忙しくなり、次にキッチンの調理担当が忙しくなる。

 そして、再びホールメンバーが忙しくなり、最後にキッチンの洗い場が戦場になる。

 

「でも、希ちゃんやにこちゃんがフォローしてるって聞いてましたけど……」

 

 ことりの言う通りだ。

 新人だし、調理の為にマッツンがサポートに入れない時にフォローに入るのが、東條先輩と矢澤先輩だ。

 今日は矢澤先輩とマッツンが休みだから必然的に東條先輩がフォローに入るのだけど……。

 

「いやぁ、原田君って結構優秀でなぁ。割と教えたことすぐにやってくれるから……」

 

「放置してたんっすか!?」

 

「放置はしとらんよ。定期的にちゃんと見て、大丈夫って思ったから……」

 

「放置してたんっすね……」

 

 洗い場に着くと、新人君がものすごいスピードで食器を洗っていた。

 その表情は鬼気迫るものがあった。

 

「小皿は小さいからたまり易い……、ハシやスプーンはラックの隙間を詰める様に……」

 

「必死だな」

 

「必死だね」

 

「必死やなぁ」

 

 おいコラ元凶。

 

「波も過ぎたし、ゆっくりやってもらう方がいいと思うんですが……」

 

「せやね。原田君~、もう落ち着いたからホールの子紹介するよ~」

 

 なんだろう。

 たぶん、思考の余剰を削って行動を最適化しているなあれ。

 今、彼は目の前の食器を洗うための機械として自分の思考を仕事をしながらカスタマイズしていったのだろう。

 

「平皿は数が少ないから優先的に。茶碗は多いから一セットに2・3個……」

 

 だって、東條先輩の声に反応せずに、ずっとぶつぶつ呟きながら洗っている。

 正直言わせてもらえば不気味だ。

 

「原田君? 没頭してて聞こえてないかな?」

 

 そう言った後に東條先輩が何かを思いついたのか、ニヤッと笑うと忍び足で新人君の背後へ忍び寄っていく。

 あの体勢から出るであろう東條先輩の行動は幾つかあるけど、どれも新人君が驚く方向だ。

 南無。

 

「ふぅ~」

 

 完全に集中している新人君の後ろ。

 耳元に優しく息を吹きかける。

 不意打ちでこれは辛い。

 

「のぉわぁ!?」

 

 おお、前傾姿勢で丸まっていた背中がピンッと反り返った。

 東條先輩は予想してたのか、スッと身を引いて避けてたし。

 あと、背骨あたりからゴキッと破滅の音が……。

 

「何スか、東條先輩!? 背骨メキョッていいましたよ!」

 

「ごめんな? 呼んでも気づかなかったからつい……」

 

 ニコニコ笑いながらちょっと舌を出している。

 あ、新人君が固まった。

 なるほどなるほど、新人君の好みはこういうタイプか。

 

「あ、原田君。ホールの子達紹介するな。佐藤君とことりちゃんや」

 

「佐藤優一。音ノ木坂の2年だ。ホール担当だから、よろしくな」

 

「南ことりです。ホール担当で、同じく音ノ木坂学園の2年です」

 

「あ、っと、原田玲央です。音ノ木坂の2年です。キッチン入りたてですが、宜しくお願いします」

 

 背は低いが、横幅が広い。

 太っているんじゃなくて、筋肉質な体型。

 そんな人物が急激に背筋を伸ばしたら……。

 

「どうしたん? プルプルしとるけど」

 

「背中から……! 破滅の音が……!?」

 

 ヘルニアには成ってないと思うけど、ちょっと休ませた方がいいかもしれない。

 あの量の食器を処理してたんだし……。

 

「東條先輩、原田君と一緒に休憩に入ってください。少し休ませてあげないと、辛いと思いますし」

 

「そうやね。ほら、原田君、休憩室行こうか」

 

「う、すいません。でも、洗い物が……」

 

「オレとことりで済ませておくから、原田君は休んでおけって」

 

「そうやで、うちが看病してあげるからな?」

 

 そう言いながら、東條先輩に引きずられるように、原田君は連れていかれた。

 病人を引きずるように連れていく東條先輩。

 連れていかれている当人は、たぶん東條先輩との触れ合いに緊張してガチガチになってるし。

 

「佐藤君、原田君って……」

 

「ことりの考えてる通りだと思うけど、口は出さん方がいいと思うぞ」

 

「そうなの?」

 

「経験上、第三者が恋愛沙汰に口を出すと、碌なことにならん」

 

「じ、実感こもってるね……」

 

 穂乃果と海未にさんざん苦労させられたオレの言葉だからな。

 恋愛レベルが上がらないで、友情レベルばかり上がっていく悲しみが分かるか?

 

「とりあえず、ことりは食器を所定の場所に運んでくれ。オレは洗いに専念するから」

 

「うん、わかった!」

 

 とりあえず、この山の食器を片付けよう。

 

 

********************

 

 

 背骨を庇う形で休憩室に横になっている。

 反射的に背を反ってしまったせいで、ちょっとヤバい音が鳴ってしまったのだ。

 

「ごめんな? ちょっとイタズラが過ぎたわ」

 

 ちょっとシュンッとなっている東條先輩。

 そんの手には救急ボックスが用意されている。

 

「いえ、呼ばれて気付かなかった自分が悪いんで」

 

「ほら、背中出して、湿布貼ってあげるから」

 

「ぬ……、わかりました」

 

 正直恥ずかしいが、背中の丁度手が届き辛い場所が痛むのだ。

 上半身を脱いで、横になる。

 

「おお、何かスポーツやってるん? ガタイ良いけど……」

 

「サバゲーを少し。装備って意外と重いので、それを着て走り回ると自然と筋肉とかつくんですよ」

 

 ペタペタと肩あたりを撫でるように触ってくる。

 恥ずかしいはむず痒いわで、色々一杯一杯だ。

 

「おお、男の子の身体とか直に触ったの初めてやから、不思議な感じや……」

 

 ペタペタと撫でたり、つついたり、ペチペチと叩いたり、楽しんでますよね先輩。

 

「あの、先輩」

 

「あ! ご、ごめんな? この辺か?」

 

「あ、はい。もうちょっと下……はい、そのあたりです」

 

 ヒヤッとしたものが背中に貼られる。

 破滅の音がしたから、しっかりとケアしないとやばいのだ。

 

「落ち着くまで休んででええよ。シフトで明日休みやし、無理せんでな?」

 

「ありがとうございます。たぶん大丈夫です。サバゲーの野外戦とかって、結構生傷絶えませんし」

 

 実際、ステージによっては地面の起伏が激しい場所とか、砂利が多い場所とか、バランスを崩すと痛い場所がある。

 足首を捻るとか、割と多い。

 

 背中は初経験だけど、この程度なら明日には痛みは引くだろうし、東條先輩に湿布を貼ってもらったという事実がきっと回復力に影響を与えるだろう。

 

「そうか? それじゃ、飲み物持ってくるわ。ウチがおごってあげる、何がいい?」

 

「すいません、それじゃコーラお願いします」

 

「了解や、服着て待っててな?」

 

 そういうと、パタパタと休憩室を出ていった。

 ちょっと今のセリフで心が幸せになった俺は、色々とあれなのかもしれない。

 

 あー、ダメだ。

 先輩にどんどん魅かれてる自分がいる。

 ちょっと、がんばるかな。




人によって書きやすいキャラクターはいると思います。

しかし、書きやすいキャラと好きなキャラは必ずしも一致しないのです。

やれやれです。

今年は神田明神へ厄払いのお守り買いに行ってから、徐々にですが悪いことが少なくなってきたので、感謝の意味も込めて、初詣は神田明神へ行こうと思います。

まぁ、今日夜勤で明日は午前中に引き継ぎが終わればマシですが。
人の波がある程度引いていることを願いましょう。

午後に一人でフラフラと初詣をしている人が居たら私の可能性が微レ存。

今年最後の更新でしたが、来年最初の更新も早めに予定してますのでお楽しみに。

長らく更新できていなかったのに、すぐにコメントをいただけて、お気に入りなども登録くださる方が居て、大変うれしいです。

来年もよろしくお願いいたします。
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