チョコボと剣姫の不思議なオラトリア   作:隣乃芝生

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話を思いついたので書いてみました。

よろしければどうぞ。


チョコボと剣姫

 薄暗く、地下に広がる洞窟。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 等間隔に付けられた篝火。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 複雑に入り組んだ洞窟の中に足音が響く。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 足音の主は二本の足でまっすぐに洞窟の中を歩く。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 洞窟の向こうに感じる気配は牙を持つ獣か、はたまた武器を持つ人か魔物か。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 それらの放つ気配を感じながらも歩みを止めぬ彼は、恐れを知らぬ勇者か、はたまた無謀な愚者か。

 

 

──ピョコ、ピョコ、ピョコ

 

 

 ・・・とはいえ、彼は人では無かった。

 

 

「クェッ。」

 

 

 大きな瞳に全身を覆う黄色い柔らかな羽毛。飛ぶのには適さない翼。その分走行に適した強靱な脚と丈夫な身体。

 

 

 この世界において『チョコボ』と呼ばれる鳥型のモンスターである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『村の近くに新しくダンジョンが出来た。』

 

 

 彼がモンスター村でその話を聞いたのは昨日のこと。

 

 本来ならばレアアイテムに目を輝かせて突撃するであろう友人は先日、『もうけ話』が出来たと言い彼を置いて村を飛び出したばかりである。

 

 そこで今回は一人(一羽?)でこの入る度にその構造を変える『不思議なダンジョン』に入って行ったのだった。

 

 

 

───ぐう。

 

「クェッ。」

 

 唐突に迷宮に気の抜ける音がした。言うまでも無く彼のお腹の音である。

 

 ダンジョンに潜って早数時間後。襲って来るダンジョンのモンスターを文字通り蹴散らし、階段を何度も降り、拾ったアイテムで一杯の鞄を抱えてスッカリおなかはペコペコであった。

 

 器用に翼で鞄を開けてお弁当──友人の白い少女が持たしてくれたナッツ──を食べようとして───既に食べていたことを思い出す。

 

───ぐぐう。

 

「クエ~~…」

 

 再び空腹を訴えるお腹に、途方に暮れた彼が視線を前に向けると・・・

 

「クエッ!?」

 

 

 

 今居る通路を抜けた先の小部屋のど真ん中、

 

 

 

 

 

 これ見よがしに置かれたソレを見つけた。

 

 

 

 

 

 大きくて張りのある艶々と輝くその名は

 

 

 

 

 

 

 彼の好きなナッツ!しかもごちそうの実!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クエェェ♪」

 

 

 喜び駆け出した彼がナッツに飛び付き

 

 

 

 

───カチリ

 

 

 

 

「…クェ?」

 

 足元からそんな音がした瞬間、彼はナッツ共々姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて、世界に災いをもたらす魔物を生み出す大穴があった。

 

 ソレを塞ぐように立てられた天に聳え立つ巨塔『バベル』と地上に(暇を持て余して)降りた神々とその眷属となり、バベルの地下の迷宮に挑む人々の棲まう大陸きっての大都市。

 

 世界の中心にして最前線『迷宮都市オラリオ』。

 

 その日も何時ものように人々が迷宮に挑み、鋼を打ち、薬を作り、パンを焼き、芋を揚げ、書類を書き、怒り、泣き、笑い、楽しむ──何時もと変わらぬ日々を過ごす。

 

 

 そんな人々の中の一人である彼女もまた、他の多くの冒険者達と同じく迷宮に挑んでいた。

 

 

──コツ、コツ、コツ

 

 

 薄暗い通路に少し早足気味の足音が響く。

 

 

──コツ、コツ、コツ

 

 

 足音の主は見事な金髪を肩を越えるほどに伸ばした、美しい少女。

 

 

──コツ、コツ、コツ

 

 

 彼方此方に返り血を付け、剣を持ちながら歩く。

 

 

──コツ、コツ、コツ

 

 

 その顔にはどこか焦りを含んでいて、

 

 

──ピシリ

 

 

 

 と音が近くの壁からしたのをその耳が捉えた。

 

 

 

「!?」

 

 

 音がした方へと素早く身体と剣を向けた少女の目先には、ひび割れた壁。

 

 この迷宮が魔物を生み出す兆候である。

 

 彼女にとって、最早相手にならぬ上層とはいえ油断はしない。生まれ落ちるモンスターに先手を打つべく体を構え、何が生み出されるのか見極めようとし・・・思わず眼を丸くした。

 

 ひび割れた壁の中から見えるのはモコッとした黄色い羽毛。

 

(羽毛?)

 

 そんなモンスターがこの迷宮上層に居ただろうかと、思っていると大きくなったひび割れから黄色い塊が現れ…

 

「クェッ!?」

 

 べしゃりと音を立てて床に落ちたのは大きな(とは言え少女一人が乗れるくらいだが)黄色い鳥。

 

 大きな鞄を持ち、背中にクラを載せ、足にはツメを取り付けており、首元にはペンダントを取り付けていた。

 

「……えっと」

 

 床に落ちたまま動かない鳥に対し、少女は剣を構えたまま観察するが、間違いなく見たことも聞いたことも無い姿のモンスター?である。

 

 迷宮には武器を持ったモンスターが現れたり、特異なモンスターが現れたりするが、・・・少なくとも壁から生まれて床に落ちて気絶した、というモンスターの話は聞いたことが無い。そんなことを考えていると、

 

「…クェ?」

 

 パチリと目を開いたモンスターと少女の眼が合った。

 

「……」

「……?」

 

 困惑する少女の顔を見ながら二・三瞬きをした後、少女が手に持つ剣に目を向け、

 

「クェェェッ!?」

 

 自分に切っ先が向いていることに気付き、慌てて起き上がり少女から離れた。

 

 少女も困惑していたが、自分から離れて此方を観察しながらも身構えるモンスターに対して改めて剣を油断なく構える。しかし・・・

 

(このモンスター…強い!?)

 

 何故か殺意のような物は向けられていないが、隙の様な物が無く、感じられる強さは第一線級冒険者のそれ以上──

 

(さっきの様子で少し気が抜けたけど、気を引き締めないと…アレはモンスター…私が倒すべき敵!)

 

…何とか様子を伺い、倒そうと魔力を集め…

 

 

───ぐぐぐう。

 

 

「…クェッ…」

 

 

───パタリ。

 

 

「テンペス――あれっ…?」

 

 

 お腹の音を鳴らして倒れたモンスターにとうとう最後まで残っていた緊張感が集まりかけた風と共に霧散する。

 

「…えっと…?」

 

 暫く待ってみたが倒れたままである。幼い頃から迷宮に潜ってきた少女をして、初めての出来事に少し頭が呆然とした。

 

「…えい。」

 

 一応念の為にソッと油断なく近づいて、切っ先でつついてみるが、時折「クェ」と鳴き「ぐう」と音がするぐらいで起き上がる気配が無い。

 

「…」

 

 本来ならば、この隙を見逃さず倒すべきである。

 

 しかし、少女は徐にポーチを漁ると中から携帯食料─木の実やドライフルーツを使った固いクッキーの様な物─を哀れなモンスターの前に差し出した。

 

「…クェ?」

「食べる?」

 

 暫く匂いを嗅ぐ仕草をしていたモンスターは飛び跳ねるように起き上がると、少女の手から翼で携帯食料を受け取り一心不乱に食べ始め、あっという間に食べ終わる。

 

「大丈夫?」

「クェッ!」

「そう…あれ?」

 

 ようやく元気いっぱいとなったらしいモンスターは、お礼をするようにコクコクと頷いた。そのことに少女は驚く。

 

「…もしかして、言葉が解る?」

「?クェッ。」

 

 彼にとっては、今一少女が何故そんな当たり前のことを聞いてきたのか分からなかったが、とりあえず頷いておく。それよりも何故こんな小さな少女が一人で剣を持って不思議なダンジョンに居るのだろうか?そう思い聞いてみる。

 

「クェックェクェ~クェ?」

「…えっと?もう一つ欲しいのかな?」

「クェ?」

 

 不思議なことに彼女には自分の言葉が通じないらしい。とりあえず差し出されたクッキーは食べる。

 一方少女はモンスターが携帯食料を食べたことで、この鳥のモンスターと意思疎通ができることに驚いていた。

 

「モンスターなのに…?もしかして新種?」

「クェ?」

 

 食べる姿を眺めながら少女は改めてモンスターを観察する。

 

(…本当にモンスター?)

 

 どう考えても普通のモンスターではない。

 

 意思疎通できる知能。

 

 装備するクラとツメはよく手入れされた一級品。

 

 不思議な力を感じるペンダント。

 

 何より、ダンジョンのモンスターやすれ違う他の冒険者・・・どころか一般人より敵意が無い。寧ろ子供より純真かもしれないと思うぐらい眼が澄んでいる。

 

 暫く顔を見合わせ合う少女と鳥。そこへ、

 

「アイズー!どうしたのー?」

「ティオナ、ティオネ。」

「クェ?」

「先行し過ぎよアイズ…何ソレ?」

 

 二人の小麦色の肌をした同じ顔つきの少女が、後ろから近付いてきた。

 

「ん?何そのモンスター?初めて見たよ。」

「そうね。私も見覚えないわ…っていうか大人しいわね。」

「クエ?」

 

 恐らく金髪の女の子の仲間だろう少女二人の言葉に更に謎が深まる。チョコボ種は割とポピュラーなはずだが・・・そう考えて首を傾げた彼にティオナと呼ばれた髪が短い方の少女が目を輝かせた。

 

「…おお、何か可愛い…」

「気を抜かないの。で、アイズ?何してたの?」

「えっと、お腹空かせて倒れたからクッキーあげたら懐かれた?」

「クェッ。」

「何してるのよアイズ…大人しくてもモンスターでしょ?」

「うん。だけど…」

「…おおぅ、すっごいモフモフしてる…」

「クエェェェェ…」

「アンタ達は色んな意味で何してんのよ?」

 

 話す二人をよそにチョコボに近づいて、敵意が無いことを確認し、抱き着きながら羽毛をモフモフしていたティオナにティオネが呆れたような声を上げた。

 

「だってすっごい大人しいじゃん!此処まで大人しいモンスターなんて怪物祭でも…あ!もしかしてテイムしたってことなんじゃない?」

「この新種のモンスターを、いきなりアイズがテイムしたってこと?どうなのアイズ?」

「そうなる…のかな?よくわからないけど。」

「クェッ?」

 

 暫くティオナがモフっても抵抗しない(困った顔はしている)ので、アイズとティオネも手を伸ばす。

 

「これだけ触られても攻撃してこないし…本当にテイムできたみたいね。」

「うん…。やわらかい。」

「いーなー!アイズいーなー!モフモフし放題じゃん!」

「手触り良いわね…」

「クエー…」

 

 一人は大胆に、一人はおずおずと、一人は確かめるように羽毛をモフる。

 

「柔らかくて…鳥っぽい匂い。」

「うん…独特な匂い?」

「洗って団長のダウンジャケットか布団に…」

「クエ?」

 

 割と失礼な話をしながら、三人掛かりでモフモフしたが、攻撃してこない(困ったような顔をしているが)どころかされるがままになっていることから無害と判断された。暫くモフモフを堪能した三人は改めて話し合う。

 

「でさ。これからどうする?このまま進む?」

 

 いつの間にかチョコボの背のクラに跨がり背中から抱き締めていたティオナが二人に尋ねた。

 

「そんなわけ無いでしょ。今日は潜るの辞めて戻って団長に報告するわよ。新種のモンスターを見付けたこともテイムしたこともギルドに報告しなきゃならないだろうし。」

「クエ?」

 

 『団長』や『ギルド』といった聞き覚えの無い単語に首を傾げる彼にアイズが説明する。

 

「えっと、今からダンジョンを出て私達『ロキファミリア』の拠点に戻るから着いてきて?」

「クェッ。」

 

 勿論とばかりに頷く。どういう訳か解らないが、不思議なダンジョンで倒れていたところを助けてもらった恩があるのだから。

 

「じゃあ、行こ?」

「クェッ」

 

 金髪の少女と並んで歩き出す。

 

 

 

 

 

 誰よりも強さを目指す第一級冒険者

『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインと

 

 

 此処とは別な世界で仲間達と共に

『不思議なダンジョン』を攻略したチョコボ種。

 

 

 

 

 

 

 

 これは、一人と一羽の迷宮冒険譚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所でさ、名前どうするの?」

「…ジャガ丸号で。」

「クェ?」

 

 

 

───前途は多難なようだ。

 

 

 

 

 

貴方が好きなモンスターは?

  • トンベリ種
  • プリン種
  • ベヒーモス種
  • モルボル種
  • 命の番人
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