「おい!見ろよ!」
「凄え美人じゃねぇか・・・」
「バカヤロウ!ありゃロキファミリアの『剣姫』だ!」
「てこたぁ横のアマゾネス達は『
「すっげえな。」
「んで・・・ありゃあ何だ?」
「さあ?」
ザワザワと聞こえる群衆の声。
「目立ってるね・・・」
「そりゃあ目立つわよ・・・」
ダンジョンの出口に向かう三人と一羽を襲う、すれ違う冒険者達からの大量な好奇の視線。
もともと、オラリオ最大規模のファミリアの片割れであるロキファミリアの第一級冒険者であり、容姿に優れた三人は非常に有名で街を歩くだけで噂になる。ましてやそれが・・・
「モンスターに乗ってれば。」
「クェ?」
「うう・・・」
モンスターのクラに跨がる少女、アイズ・ヴァレンシュタインは顔を真っ赤にして俯いた。
“折角クラが着いてるんだから乗って帰ろー”
とティオナの提案により、最初は階層を一つ上がる毎に交代して背中に乗っていた三人。
モンスターを見つければ彼に騎乗したまま突撃して攻撃するという、普段出来ない戦闘を楽しみながら出口に向かった・・・アイズを背中に乗せたままで。
流石に人目が恥ずかしくなり、降りようと思ったアイズだが、ここで問題に気付く。
実は、彼女のスカート丈は非常に(主神の趣味により)短い。いくらスパッツを履いているとは言え、戦闘中ならまだしも衆目監視の中、彼から降りればどうなるか・・・
(今度から服を変えよう。)
主神が舌をかみ切ると騒ぎそうだが、少女は決意した。
そんな人混みを抜けて外に出ると広がる街並み。世界の中心の名に恥じぬ賑わいと文明である。
「クェッ!?」
「どうしたのジャガ丸号?」
彼は明らかにダンジョンに入った時とは違う景色に困惑していた。
モンスター村とは比較にならない街並みと賑わい。
何より見渡す限り、人、人、人・・・モンスターが誰も居ない。
騒がしいボムの母子も。
彫刻家のベヒーモスの一家も。
道具屋のデブチョコボも。
大木を世話するゴーレム種も。
鍛冶屋のトータス種も。
黒魔導師達も、白い少女も、誰も。
「クエッ?・・・クエッ!?」
そして何かを感じて後ろを振り向けば、
「クェェ・・・」
「バベルが、どうかしたの?」
天に向けて聳え立つ白亜の巨塔『バベル』
その余りに巨大な建造物に、自分の居た場所と完全に別な場所・・・否、完全に別な世界に着いてしまった事を理解した彼は、
「それじゃあ行こう?」
「うん!お腹空いたし帰ってごはんだー!」
「クェッ!」
ごはんと聞いて一先ず思考を放棄。三人の言うロキ・ファミリアとやらに向かう事にした。
「・・・クェ?」
「ほら、余所見しないで行くよ?」
「クェ。」
・・・聳え立つ白亜の巨塔の上からの視線も放って。
広大な面積を誇る迷宮都市オラリオは、巨塔バベルを中心にした円形状の都市であり、その周りを堅牢な市壁に囲まれている。
そんな都市の北部、北の目抜き通りから外れた場所にそれは有る。
高層の塔を幾つも重ねて出来ている、周囲の建物から比べても長大な赤銅色の燃える焔のような色合いの豪華な邸宅。
中央の最も高い塔に立つのは道化師の旗。
「着いた。ここが、私達ロキ・ファミリアの本拠地の『黄昏の館』だよ。」
「クェ~。」
「ほら、ジャガ丸号行くよ~。」
聳え立つ槍の様にも見える外見の建物を見上げていた彼がおかしかったのか、アマゾネスの姉妹は苦笑しながら館へと招く。
「お帰りなさいませ・・・ってモンスター!?」
「えっと・・・ただいま?」
「クエッ。」
「あー後で説明するよ。」
「いや、ちょっと!?ティオナさん!」
「困りますって!?」
慌てる門番達に一声かけて扉を潜ると、建物の奥から足音が響いてきた。それと同時にティオネ・ティオナがチョコボの傍から離れる。
「おっかえり~~~~!!」
そんな大声を上げながら、どこからともなく赤い髪の女性が突撃してきた。
「えい。」
「クエッ!?」
アイズはチョコボから降り立った勢いを使い、チョコボを自身の代わりにする。女性は突撃の勢いのままチョコボの胸に飛び込み頬擦りを始めた。
「ああ~~アイズたん~・・・グヘヘヘヘ・・・フカフカでモフモフで鳥っぽい匂い・・・・・・鳥?」
ようやっと違和感を覚えてチョコボの胸元から顔を上げ、至近距離で眼を合わせた。
「クエッ。」
「ホワァアアアアアアアアアア!?」
黄昏の館の近所中に赤髪の女性の声が響き渡った。
「って訳でテイムに成功したと判断して連れて来ました。」
「クエッ。」
近隣住民に騒ぎの謝罪をした後、三人と一匹は、ロキの部屋にて主神ロキと三人の幹部達にダンジョンでの出来事を報告する。
「ダンジョン上層で新種のモンスターに遭遇・・・お腹を空かせて倒れたから携帯食糧を渡したら懐かれた、かぁ・・・」
一人は苦笑いを浮かべる小人族。
ロキ・ファミリア団長『
「全く、三人ともダンジョンで気を抜きすぎだ。いくら上層とはいえ・・・」
一人は呆れ顔で三人を嗜めるハイ・エルフ
副団長『
「ガハハ!新種のモンスターをテイムしてくるとはやるのう!」
一人は豪快に笑うドワーフの老兵。
最古参『
何れもが都市上位の冒険者にして、ロキファミリア結成からの古参にして大幹部だ。
「いや~流石はアイズたん!」
そして、彼等・彼女等を眷属とし束ねる先程の赤髪の女。
権能の全てを封じて尚、都市最大派閥の片翼を創り上げる頭脳と手腕を持つトリックスター。そして、不老不死の『
ロキ・ファミリア主神。ロキ。
そんな彼らに囲まれながら彼は、チョコンと用意された椅子に座りながらそわそわと部屋の調度品を眺めていた。
「本当に普通のモンスターでは無いな。人を前に襲わないばかりか、『椅子に座る』という知識が有る。」
試しにロキがつまみとして用意していたナッツ類を、リヴェリアがそっと差し出せば、
「クエッ!クエ~♪」
翼でナッツ類を取り、御礼を言うように一鳴きし一つ一つ食べ始めた。
因みに干し肉や干し烏賊の類より、ナッツ類やドライフルーツを好むようだ。
「ちゃんと手?を使って食べる事が出来る。」
「器用だね・・・翼が手の代わりに使えるのか・・・」
「普通の子供の様じゃのう。」
その様子を感心しながら観察していた団長の顔を見て「ステキです!」とクネクネしているティオネを放ってアイズはロキ達を見遣る。
「ふむ。これなら大丈夫じゃろ?」
「とは言え新種で情報の全く無いモンスターだ。気を抜くべきでは無いだろう。」
「暫くは男子棟の空き部屋に入って貰おうか。」
「んーウチはアイズたんが責任持って飼うんやったら構わんけど・・・ええんかアイズたん?一応こんなんやけどそれでもモンスターやで?」
「・・・うん。」
正直な所、モンスターを仲間にするという行為をアイズ自身は良しとはしていない。
オラリオ所か世界中にモンスターによる被害を受けた人々は数多く居る。モンスターへの復讐目的にダンジョンに潜る人も居るし、ロキ・ファミリアもまたダンジョンで団員が死んだケースは有る。それにアイズ自身も冒険者になったのは・・・
「クエッ?」
心配そうに此方を見る彼の頭を撫でた。
「それでも、偶然とはいえテイムして連れて来ちゃったから。なら責任は持たないと。」
「・・・分かった。ならウチからは何も言わんよ。神々との交渉はまかしとき。」
「・・・ありがとうロキ。」
「クエッ!」
自身の愛する眷属が、また一つ成長したのを感じたロキは彼を招き入れる事を承認した。
「よかったー!これからもよろしくねー!」
「よかったわね。」
「クエッ!」
「とはいえ、先ずは他の団員達への説明からだな。」
「少なからず、モンスターを受け入れる事への疑問や反対意見は出るからね。」
「私が黙らせましょうか!?」
「・・・気持ちだけ受け取っておくよ・・・」
「ふむ。ならば・・・」
眷属達が熱く議論を交わし始めたのをロキは更に目を細めながら眺める。
(ホンマに子供達はええなぁ・・・)
新たな出来事を積み重ねる度に成長する姿を見るのは本当に退屈しない。
同時に、今回の件でちょっかいを掛けてきそうな邪魔者やメリット・デメリットを素早く計算し始める。
多くの暇を持て余した神々にロキファミリアを敵視する派閥・ギルド・子供達・・・等々をどう丸め込むか考えながら、その原因を見れば。
「クエ~。」
「自分暢気やな~。確かに面白いもん集めとるけど。」
話し合いを他所に乱雑に様々な物を集めたロキの自室を眺めていた彼にロキが話しかける。
「クエー。」
「モーグリみたい?誰やねんそれ?」
「クエッ?」
「レアアイテム好きの友達?って何で疑問系?」
「クエッ?」
「いや、ウチに聞かれても。」
「クエー。」
「お腹空いた・・・って話し合い終わるまで我慢・・・」
「・・・ちょっと待てロキ。」
ポカンとした6人を代表してリヴェリアが尋ねる。
「どしたんママ?」
「誰がママだ。いやそれよりも・・・」
全員が彼を見て、それからロキを見た。
「・・・言葉が解るのか?というか言葉を喋っているのか彼は?」
「んー?怪物祭とかの普通のモンスターのは判らんけど、この子なら片言やけど何となくわかるでー?」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「「「「「何ぃ!?」」」」」
「クエェッ!?」
「いや!?今まで普通に喋っとったやろ!?」
やっと普通に話していたことに気づいた彼にツッコミを入れるロキを見ながらティオナは首を傾げる。
「ええ・・・?私には全部『クエッ』って聞こえるんだけど、何か喋ってたんだ。」
「私もよ。どんだけイレギュラーなモンスターなのよ?」
「頭が良いとは思っておったが・・・」
「ばかな・・・『クエッ』の一言にどれだけの意味を?」
「だけど、コレで彼から話を聞けるね。えっと君の名前・・・有るのかな?とりあえず種族を教えてくれるかい?」
「クエッ、クエッ。」
「『チョコボ』が種族名で名前やて。」
「さっぱり違いが解らんな。・・・ふむ、チョコボ・・・と」
とりあえずチョコボに対するメモを取り始めたリヴェリアを尻目に、フィンが話を続ける。
「ふむ、じゃあ先ずはチョ・・・」
「・・・名前はジャガ丸号。」
しかし、フィンの言葉を遮って珍しくアイズが主張した。
「いや、今彼が名前・・・」
「ジャガ丸号。」
「ちょっとアイズ!?団長が話・・・」
「ジャガ丸号。」
「いや、アイズ・・・」
「ジャガ丸号。」
「うむ・・・しかしのうアイズ・・・」
「ジャガ丸号。」
「アイズ、我が儘を・・・」
「ジャガ丸号」
「アイズたんジャガ丸君好きやからって、無理強いしたらあかんよ?」
「クエッ?」
「ああ、ジャガ丸君っていうじゃが芋使った屋台の料理の事やで。色んな味があるアイズたんの好物やな。」
「クエェェェ・・・」
思わず想像して涎を垂れそうになるチョコボにアイズが攻勢に出る。
「・・・明日沢山食べさせる。だからジャガ丸号。」
「クエッ!」
「・・・それでええんか自分・・・?」
勢い良く首を縦に振るチョコ・・・ジャガ丸号に全員が何とも言えない表情を浮かべた。
「えっと彼を呼ぶときはチョコボかジャガ丸号?」
「間をとってジャガボ?」
「ジャガ丸号・・・ジャガ丸・・・ジャガボール・・・ジャガボ・・・チョコボ・・・チョコボー・・・ ん?何か天界でそんな名前の菓子があったような?んん?そういや・・・」
「どうしたロキ?」
「んー昔な?クエッ、クエッ、クエッ♪って歌いながら生物造っとった別世界担当の神が1柱おったなーって。」
「よく分からんな。」
「クエッ?」
「せやなー何で思い出したんやろ?」
あのキャラはキョ○ちゃんやったしなーと呟きながら、此方を向いて首を傾げるジャガ丸号を眺めるロキであった。
さて、思わぬ出来事に時間を取ってしまい、時刻は結構いい時間。とりあえず会議を終わらせるべくロキが動き出した頃、それは起こった。
「まあ、ええわ。とりあえず三人はジャガ丸号連れてお風呂入って来や。その後食堂で皆に説明・・・」
「む?何だ?ヤケに館が騒がしいな。」
リヴェリアが館の異変に気付いた瞬間、扉を慌ただしくノックして、一人の団員が入って来た。その只ならぬ表情に全員が腰を上げる。
「何事だいラウル。」
「ヤバいっすよ!もう剣姫が新種のモンスターをテイムしたって情報が街中に出回ってガネーシャ・ファミリアの・・・」
『俺が、ガネーシャだ!』
「・・・主神、ガネーシャ様が直接来てるっす。ファミリアの団員達引き連れて。」
その報告と館の外から此処まで響く大声に思わず全員天井を仰いだ。
貴方が好きなモンスターは?
-
トンベリ種
-
プリン種
-
ベヒーモス種
-
モルボル種
-
命の番人