チョコボと剣姫の不思議なオラトリア   作:隣乃芝生

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お待たせしました。

1月は仕事が忙しいですね。
皆様体に気を付けて・・・


チョコボとガネーシャ

 ロキ・ファミリア本拠地、黄昏の館前は騒然となっていた。それは、

 

「俺が、ガネーシャだ!」

「「「イエーーーーーッ!」」」

 

・・・と乗り物の上に立ち、周りの盛り上がる群衆達に謎の姿勢(ポーズ)を決めながら自己紹介をし続ける無駄に暑苦しい大男。

 

「俺が、ガネーシャだ!」

 

 都合十七回目の自己紹介をする、引き締まった全身の筋肉と浅黒い肌を持つ象面の神物、象神ガネーシャ率いる大規模派閥、ガネーシャ・ファミリアが集まっているのだから。

 

「相変わらずやることが派手だなガネーシャ様は!」

「ガネーシャ様が乗ってるのは何だ?」

山車(ラタ)・・・じゃねぇよな。」

 

 ガネーシャの足元には、ダンジョン産の希少鉱石をふんだんに使い造り上げられた鋼の塊。

 左右に無限滑走を可能とする履帯を取り付けた車の上部に、象の頭をイメージさせる砲塔。

 

 これぞ、ガネーシャ・ファミリア自慢の逸品。

 

「あ、ありゃ、『ガネーシャタンク』じゃねぇか!?」

「げっ!?ヘファイストス様の所の『狂鍛治屋(マッドスミス)』のか!?」

「前に王国を潰走させたって聞いたぞ!」

「アレ一台で150億ヴァリスするらしいぞ。」

「ひゃくごじゅ・・・!?マジかよ!?」

 

 ヘファイトス・ファミリア一の変わり者の造った『特殊兵器』を前にそれらを睨み付けるのは、本拠地に居た鋭い目をした狼人の青年、『狂狼』ベート・ローガを始めとしたロキ・ファミリアの団員達。

 

 大派閥の主神が、事前連絡も無くファミリアの幹部と群衆を引き連れて本拠地に来るという異常事態に臨戦態勢を敷いていた。

 

 都市最大規模の派閥同士が門を挟み、両陣営が対立すれば周り・・・否、オラリオの被害は只では済まない。

 ギルドの職員が仲裁に入ろうにも野次馬に遮られ近づけない状態である。

 

 緊張感が増す中、黄昏の館の扉が開き、中から現れた神物を見てガネーシャが声を掛ける。

 

「おお、ロキ!久しいな。」

 

 幹部達を左右に控え、ロキは細い目を一段と細めてガネーシャを睨んだ。

 

「久しぶりやなガネーシャ。んで、コレは何の真似や?カチコミか?やるんならとことんまでやったるぞ?」

 

 ロキファミリアの面々が、柄に手を掛けると同時にガネーシャ・ファミリアもまた身構えた。

 

・・・しかし、それらを意に介さずにガネーシャは上機嫌に来訪の目的を告げる。

 

「うむ!其方の所の子供達が新種のモンスターを発見したばかりか、それをテイムして凱旋したと聞いてな!見てみたいと思って来たのだ!」

「・・・は?」

 

 思わず、ポカンと口を開けたロキはガネーシャの足元の戦車を見る。

 

「・・・やったらその物騒なモンはなんや?」

「うむ!折角なので大々的にお披露目すれば良かろうと思ってな!格好良くて目立つから乗って来た『ガネェェェェシャタァァァァンク!!』だ!」

 

 頭痛を堪えるように頭を抑えるロキを横目に、フィンが向こう側に居るガネーシャ・ファミリアの幹部達を見ると、申し訳なさそうな表情で此方を見ていた。

 

「うむ!それでは群衆も集まったことだし早速お披露目といこうではないか!」

「何を勝手に話を進め「クエッ!?」ってコラ!?」

 

 ロキの背後から現れた黄色い鳥型のモンスターを見て、ロキ・ファミリア、ガネーシャ・ファミリア、群衆達から驚きの声が上がった。

 

「んだ?ありゃ。」

「何だ!?あのモンスター!?」

「テイムしたってのはマジだったのかよ!」

「鳥?」

「でも、なんか可愛い!」

「だ、大丈夫なのか?」

「お、おい前に出て来るぞ・・・」

 

 ロキファミリアの面々を抜け出て、ガネーシャ・ファミリアの前に立つチョコボの姿は、まるでファミリアを守ろうとする様にも群衆達には見えた。

 

「クエッ?」

 

・・・彼としてはガネーシャの足元に、見覚えの有る物があったので思わず前に出ただけなのだが。

 

「おお!お前が・・・とぅ!」

「クエッ!?」

 

 掛け声と共に跳び上がったガネーシャが、チョコボの眼前に降り立つのを見てガネーシャ・ファミリアの団員が慌てるが、ガネーシャにより手で制された。

 

 ガネーシャ・ファミリアとロキ・ファミリアの中間点に出来た空間に象面の神ガネーシャとチョコボが1対1で向かい合う。

 両陣営と群衆達が息を呑む中、ガネーシャが大きく息を吸い・・・

 

 

 

「俺が、ガネーシャだ!」

 

 

 

 オラリオ中に響き渡る大音量に思わず全員が耳を塞いだ。

 

 

「クエエッ!」

 

 

 その眼前で衝撃波染みた大声を浴びながらも、怯むこと無く鳴き返すチョコボ。

 

 

 

 

 

「俺が、ガネーシャだ!」

「クエエッ!」

 

 

 

 

 

 

「俺が!ガネーシャだ!」

「クエッ!クエエッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺!が!ガネーシャ!だ!」

「クエッ!クエッ!クエッ!クエッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならば良し!」

 

 

「「「「「何が!?」」」」」

 

 

 群衆総てから同時にツッコミが上がった。

 

「・・・ロキ、因みに彼等は何て言ってたんだい?」

「いや、どっちも自己紹介しかしてへんで?」

 

 何故か満足げに手と翼で握手?する1柱と1羽に周りの神と人々が困惑する中、再びガネーシャが群衆に聞かせるように声を上げる。

 

「うむ!とても善良な心と魂の持ち主で有る事が分かった。・・・では、次はテイムした者だな!」

「・・・私、です。」

 

 アイズがチョコボの横に並ぶと更に驚きの声が上がった。

 

「『剣姫』!?」

「噂はまじかよ!」

「流石はアイズさんです!」

 

 有名人の登場に更に群衆のざわめきが増し、最高潮に達した所でガネーシャが声を上げる。

 

「うむ!ならば折角これだけの群衆が集まったのだ!どの位懐いているのか皆に示してみるが良い!」

 

 そう言われてアイズは困った。いきなり過ぎて何をすれば良いのか・・・

 

(けど何とかしないと、ジャガ丸号が危険だと思われるかもしれないし・・・)

「クエッ?」

 

 此方を向いて首を傾げるチョコボを見て・・・否、モフっとした羽毛を見て閃いた。

 

「えいっ!」

「クエッ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 いきなりモンスターに抱き付いたアイズを見て群衆総てが驚いた。・・・内一柱と二名は驚愕の余り、思考すら飛んでいる。

 

「フカフカ・・・モフモフ・・・」

「クエェェェェ・・・」

 

「何だろうこの気持ち・・・」

「癒される・・・」

「俺もモフられたい。」

「ちょっと羽毛生やしてくる。」

「・・・モフりたい・・・10分10,000ヴァリス出す。」

「う、うちかてモフられた事無いのに・・・」

「アノヤロウ・・・」

「そ、そんな・・・アイズさん・・・」

「お前達・・・」

 

 遠慮なくモフる剣姫に一切抵抗する事無くモフられ続けるモンスターに群衆達は、ちゃんと調教出来ていると認識した。・・・内2名と1柱は射殺さんばかりの嫉妬の視線を向けているが。

 

「うむ!キチンと調教されており、他の子供達に危害を加えることは無いだろう!ガネーシャ歓喜!」

 

 響くような大声を上げてガネーシャが頷いた。

 

「もし不安な事があれば、何時でもガネーシャ・ファミリアに相談に来るが良い!わが眷属の調教師ならば新種とは言えど何かしらのアドバイスが出来よう!」

「・・・ありがとうございます。」

 

 目を丸くして礼を言うアイズにガネーシャ仮面の下で笑みを浮かべた。

 

「礼を言う必要は無い!何故ならば!俺は群衆の神!俺が、ガネーシャだ!」

 

 再び、「とう!」と跳び上がりガネーシャタンクの上に乗ると周りのファミリアの団員と群衆を引き連れ自己紹介とポージングをしながら去って行った。 

 

 群衆達と共にガネーシャ・ファミリアが去った後、残されたロキ・ファミリアはそれを見送り、

 

「取り合えず、入ろか。」

 

 疲れた顔で全員が賛成した。

 

 

 

 

 

 

 

「てな訳でアイズたんがテイムしたモンスター、チョコボ「ジャガ丸号」・・・ジャガ丸号や。皆よろしくしたってや。」

「クエッ!」

 

 片方の翼を挙げて挨拶するジャガ丸号に食堂に集まったロキ・ファミリアの団員達の反応は様々だが、概ね好評のようだ。

 

 アイズ自身への信頼もあるが、やはり先程の騒ぎが大きい。

 

 怪物祭という大規模なモンスターへの調教を行うイベントを開くほどのモンスターへの調教に長けたガネーシャ・ファミリア主神から太鼓判を押されているという安心感。

 

(まぁ、助かったが・・・何が狙いや?)

 

 食堂で主に女性団員達に囲まれて、撫でられたり、モフられたり、餌付けされたりしているチョコボを見ながら、ロキは酒を口にしながら思考を巡らせる。

 

 明らかに、チョコボを見定めに・・・そしてオラリオの住人に周知させる動き。ただの親切や気紛れ・・・そんなわけは無い。

 

(そうなると、怪物祭にも何か裏の理由が有るんか?アレだけ神々やギルド、関係各所に大金ばらまいてまでモンスターへの印象を変えなきゃならん理由が。・・・何を知っとんのやガネーシャ?)

 

 慎重に調べなくてはならない。今のままでは情報が足りなすぎる。

 

(この子についてもやな。)

 

 アイズの料理の皿から次々とニンジンを譲って(?)貰い、喜びながら器用に翼でスプーンとお皿を持って食べるチョコボ(食器を使って食事する姿に周りは目を疑っている)を再び見る。

 

「クエッ!クエー!」

「喜んでくれて嬉しい。」

「ア、ア、ア、アイズさんからニンジンを譲って貰うなんて!?」

「いや、アイズが嫌いなニンジンを全部チョコボに押し付けただけじゃん。」

「ティオナ、チョコボじゃなくてジャガ丸号。」

「・・・何がアイズをそこまで動かすのさ?」

 

(平和やな~。)

 

 ほっこりとしながら杯を傾けていると、隣にフィンがやって来た。

 

「ロキ、取り合えず男子寮の一部屋開けておいたよ。あの様子ならベッドも使えそうだしね。」

「おーーありがとなー。」

「・・・暫くは彼の両隣の部屋に誰かしら詰めて貰うつもりだけど・・・心配は要らなそうだね。」

「せやな。ホンマに暢気な子やで。」

 

 暫くは監視付きで生活する事になるだろうが、それも直ぐに終わるだろうとロキは団員達に囲まれるチョコボを見て思う。

 

「ところでさ、チョ・・・ジャガ丸号?食べる時くらいそのカバン外したら?」

「クエッ。」

「本当器用に外したわね。」

「ねぇ!中見ても良い?」

「クエッ。」

 

 チョコボが頷くや否や、ティオナは手早くテーブルの上を片付けると、カバンをひっくり返して中身を広げた。

 

「あははは!宝物がいっぱいだねジャガ丸号。」

「クエッ!」

 

 中から溢れ出てきたのは、様々な形の石ころやカード。色んな色の本や、栞、ホイッスルといった小さな子供達がよくやる冒険者ごっこで宝物として使われそうなものが沢山出て来た為、周りの団員達もどこか胸を張るチョコボに和んでいた。

 他には青色や赤色の液体の入ったビンを始め、ツメとクラや首輪、何かの力を感じる奇麗な魔石といったもの等があった。

 

「・・・見た目以上にアイテムが入ってる。」

「あのカバン、欲しいわね・・・」

 

 半分以上ガラクタにしか見えない物が、明らかにカバンの見た目以上に入っていたのを見てアイズは目を丸くした。

 冒険者のダンジョン攻略をサポートするサポーターなる職業があるほどに持ち物の問題は冒険者に付きまとう。予備の武器や回復薬、倒したモンスターから得られた魔石やドロップアイテムの持ち運び等の問題があのカバンで解決しそうだ。

 

(あんなカバンが有ればもっとダンジョンに潜っていられるのに・・・)

 

 生産系の大手ファミリアに行けば似たような物は有るだろうが、凄まじい金額が必要になるだろう。

 

「クエッ?」

 

・・・ならば、そんなカバンを持つ彼は何者なのか?そんな事を考えていると

 

「おいバカ女!さっさとそのガラクタ片付けろよ。」

 

 先程からチョコボを不機嫌な顔で睨んでいたベートが、はしゃいでいたティオナに食って掛かった。

 

「何よベート!それにガラクタじゃないよ!凄いのあるかもしれないじゃん!」

「ハッ!殆どが石ころとかじゃねえか。」

「ふん!チョコボがアイズに抱き付かれたからってさ、当たらなくて良いじゃん!?や~い残念狼~!」

「バッ!?てめえクソ女ァ!?」

「ティオナ、ジャガ丸号。」

「クエッ?」

「そうやー!羨ましいわジャガ丸号ー!」

「飲み過ぎだロキ。」

「なんじゃケンカか?」

「見せ物じゃねぇぞてめえらァ!?」

 

 何故か慌てるベートとティオナのケンカを酒の肴とばかりに楽しみ始めたロキや団員達にベートは舌打ちをする。

 

「ちっ!精々、ガキみてぇな性格のモンスターとガキみてえな体型のガキ同士で仲良くしてやがれ。」

「ンだとコラァ!?」

 

 ベートの発言に激昂したティオナは、テーブルの上にあった液体の入ったビンを掴みベートに向かい投げ付けた。

 

 筋力に優れるアマゾネスのティオナが投げる物ともなれば、並みのモンスターを仕留める事も可能な剛速球であるが、対する狼人のベートもまた俊敏性に優れた種族の第一線級の冒険者である。容易く自身に向かい来るビンを躱し、ビンは食堂の壁にぶつかり割れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────と同時に、大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?」

 

 投げたティオナは言うに及ばず、全員がポカンとした顔をした後ベートの背後とチョコボに視線を向ける。

 

「・・・・・・」

 

 顔を引き攣らせてベートが自身の背後を見れば、先程まであった食堂の壁が大穴を開けて消し飛んでいた。

 

 

「てんめえぇぇぇ!?殺す気か馬鹿女ァ!?」

「し、知らなかったんだもん!?てかそっちが要らんこと言うからでしょうがぁ!?」

 

 

 唖然とする団員達をよそに、ティオナとベートが再び喧嘩を始める中、

 

 

「・・・フィン。絶対に監視付けといてな。」

「うん。厳重な警戒態勢にしておくよ・・・」

「クエッ?」

 

 ロキとフィンが決意を固くしたという。

 

 

 

 

貴方が好きなモンスターは?

  • トンベリ種
  • プリン種
  • ベヒーモス種
  • モルボル種
  • 命の番人
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