チョコボと剣姫の不思議なオラトリア   作:隣乃芝生

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お待たせしました。

何回か書き直し、ギルド登録編とオラリオ案内編を分ける事に。

毎日すらすらと書ける作者様方って本当に尊敬します。




チョコボとギルド

 

 

 

 

ギルド職員、エイナ・チュールは困惑していた。

 

 ロキ・ファミリアがダンジョンの上層で新種のモンスターを発見し、あろう事かテイムしたとの情報が入ったのが一昨日の事。

 

 それから各ファミリアからの問い合わせ対応に加え、ダンジョン攻略に向かう冒険者への注意喚起、ロキ・ファミリアへの協議連絡等々・・・ギルド職員の多くが多忙極める日々となった。

 

 日付けが変わり、ロキ・ファミリアの団長『勇者』フィン・ディムナを始めとする幹部達(主神ロキは何故か不在だった)が早朝から訪れ、ギルド幹部達と別室でテイムモンスターの地上での飼育に関する協議(誓約書の作成と納税額の加算等々)を始めたのを見届け、エイナは自分の担当する冒険者へのマネジメントや日常業務を行っていた。

 

 そんな彼女に、ギルド長の太ったエルフ、ロイマンとロキ・ファミリア担当者であるミイシャがとある頼み事をした。

 

 曰く、『ロキ・ファミリアの新人冒険者の担当を任せたい。』

 

 都市の二大勢力の片割れの担当という大きな仕事を任され、不安を覚えながらもそれだけ実力を認められた事をうれしく思いエイナは仕事を受けた。

 そして本日。まだ見ぬ新人冒険者用に、ダンジョンについて分かり易く纏めた資料を作り、決してダンジョンで不覚を取らせないように初心者用の講習の準備も整えてまだ見ぬロキ・ファミリアの新人冒険者を待っていた。

 

 

 

 

「・・・えっと・・・?」

 

 そんな自分の対応する窓口の反対側に、ちょこんと座る新しい冒険者希望者がいる。

 

 これから挑む冒険への期待に輝く瞳。

 

 ピカピカに磨いた武器と防具。

 

 どこか期待にソワソワする体。

 

 両脇を固める経験豊富なファミリアの先輩。

 

 そして、首に巻かれた真新しい赤いスカーフに白抜きで描かれた滑稽な道化師の紋章は彼が件のロキ・ファミリアの新人冒険者で有ることを示していた。

 

「・・・あの失礼ですが、冒険者希望者・・・ですか?」

 

 しかし、このままならば確実に目の前の『彼』の担当になるであろうエイナは、念の為に確認の意味を込めて尋ねた。

 

 すると目の前の『彼』は、元気良く首を縦にコクコクと振り、しっかりと大きな声で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クエッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

「・・・クエッ?」

 

 首を傾げる目の前の黄色い鳥型モンスターが、間違って座ってないことを理解し、引き攣った笑顔のまま両脇を固める冒険者を見る。目の前のモンスターもエイナの顔に合わせて其方を見た。

 

 一人はその手で頭を押さえている、エルフ種の敬意を集めるハイエルフの王族。

 

「あの、リヴェリア様?」

「・・・済まないエイナ。面倒を掛ける。」

「クエ?」

 

 一人は反対側に座る、現在モンスター共々オラリオで話題の飼い主である美しい少女。

 

「冒険者登録、お願いします。」

「クエッ。」

 

 振り返って此方を眺めているロイマンとミイシャ、ギルドの先輩や後輩を見る。

 

 

 全員がサムズアップを返してきた。

 

 

(は、謀られたぁ!?)

「クエッ?」

 

 よく判らないまま翼を使って、サムズアップをギルドスタッフに返している鳥と職員達に挟まれ、エイナは自分がとんでもない事態に巻き込まれている事を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、余りにもイレギュラーな事態とは言え、エイナもギルド職員の一人である。上がこのモンスターの登録を認めている以上はキチンと仕事をこなさなければならない(勿論後で抗議するが)。

 

(モンスターとは言え可愛らしい見た目だし・・・大丈夫。頑張るのよ、エイナ!)

 

 少なくともゴブリンやオークやミノタウロスよりはマシだ。場所を個室へと変え、エイナは気を取り直してモンスターに向き合った。

 

 

 

「そ、それでは、これから貴方の担当になるエイナ・チュールです。」

「クエッ、クエッ!」

「えっと・・・」

「クエックエックエ!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・クエ~・・・」

「ご、ゴメンね・・・」

 

 素直に元気よく応えてくれるのは良いのだが、言葉が通じないという現実に早速心が折れかける。

 

「・・・今の『よろしくお願いします。』かな?」

「クエッ。」

「合ってるようだな。」

 

 そんなチョコボの言葉を何故か翻訳をするアイズに目を丸くすれば、

 

「彼との意志疎通の練習だと思ってくれ。」

「は、はぁ・・・鳥君との・・・ですか?」

 

 そう言ったエイナに対して、何やらチョコボが翼を振りながらアピールするのを見てアイズが何とか身振り手振りから翻訳する。

 

「クエッ。」

「えっと『自分は』」

「クエークエー。」

「『鳥じゃない』・・・かな?」

「クエッ!」

「・・・自己紹介?『ジャガ丸号だ。』」

「はい?ジャ・・・ジャガ丸号?」

 

 あんまりにもアレな名前に思わず聞き返すと、モンスターは若干涎を垂らしながらアイズに何やら話しかけた。

 

「・・・クエー、クエ?」

(後で約束通り、沢山じゃが丸君食べさせる。)

「クエッ!」

「ジャガ丸号も認めてる。」

「・・・それでいいんですか・・・?」

 

 明らかに食べ物に釣られているモンスターに思わずと言った感じで口にすれば。

 

「・・・いいんじゃないか。」

「リヴェリア様!?」

 

 エルフの王族の諦めの入った投げやりな姿に、思わずエルフとして声が上がった。奇天烈な名前を付けられた問題のモンスターを見れば、ジーっと興味深そうにエイナの顔を見ている。

 

「冒険者になりたいモンスターなんて前代未聞ですが、大丈夫なんですか?」

「確かに他のモンスターに比べて知性が高いが、見ての通りの暢気なモンスターでな。何というか・・・悪い事を考える程賢く無い。」

「まあ・・・確かに。」

「クエ?」

 

 とある技師にも「悪事を働く程賢くない。」と言われる彼に悪い感じがしないのは、言葉が通じなくても判る。

 

「昨日今日と見た限りはダンジョンのモンスターの様に人を襲うことは無かったが、一応当分は一人にしないように必ず団員が付く事になっている。」

「・・・判りました。ですが万が一に何か有れば、責任はロキ・ファミリア、並びに飼い主であるアイズさんが取ることになります。」

「はい。」

「だから、君も悪い事とかしちゃ駄目だよ?」

「クエッ!」

 

 エイナが嗜めれば分かったといわんばかりにコクコクとチョコボが頷く。

 

「・・・本当に言葉を理解してますね。」

「ああ、共通語の読み書きは出来ないようだが此方の指示はキチンと理解出来ているようだ。」

「ジャガ丸号えらい。」

「クエッ。」

 

 褒められ、ちょっと嬉しそうな様子のチョコボに少しほっこりしながらも話を進める。

 

「それでは、アイズさんは此方の書類に記入をお願いします。」

「はい。」

「それじゃあジャガ丸君には「号までが名前」・・・ジャガ丸号君には私からギルドについて説明するね。」

「クエッ!」

 

 アイズが書類を書く間に、チョコボはエイナから簡単にギルドの説明を受ける。

 

「・・・こんな所かな?後でまた改めてダンジョンについて初心者用の講習をするけど、一つだけ覚えておいてね。『冒険者は冒険をしてはいけない』」

「クエ?」

 

 矛盾した言葉を投げかけられ、チョコボは首を傾げた。

 

「つまり、無茶や無謀な事をしないで生きて、安全に帰ってくる事が冒険者には一番大事だよ・・・って事なんだけど。」

「・・・!クエッ!」

 

 それはチョコボにも理解できた。

 テレポの栞も持たずに無謀にもダンジョンへと挑み、途中で力尽きた場合、鍛え上げたツメにクラ、手に入れたアイテムとギル、それより何より後で食べようと思って大事に取って置いたナッツが無くなってしまうのはとてもとても悲しいことだと理解しているのだから。

 

「何だか理解してくれたみたいですね?」

「命が大切・・・と言うよりも何か別な理由で、理解したような気がするのだがな?」

 

・・・最も此方のダンジョンで力尽きた場合に待っているのは死なので、剥ぎ取ったら表に叩き出されるだけの不思議なダンジョンは、ある意味親切かも知れない。

 

 とは言え無茶をすれば友人に叱られてしまうので、『無茶を為べき時』以外は彼はしっかりと準備して潜るタイプだ。だからそれを証明すべくエイナにカバンの中を見せた。

 

・テレポの栞

・記録の栞

・マップカード

・エリクサー

・万能薬

・魔法の本各種

・カラのボトル

・クラッシュストーン

・ナッツ

・シーフのカギ

 

「えっと、栞とカラのビンは要らないし、本は持って行っても読んでる場合じゃないよ?」

「クエッ!?」

 

 アイテムの効果を知らないエイナに窘められ、

 

「・・・しっかりと準備してても、君は今日はダンジョンには潜らせんぞ?」

「クエエッ!?」

 

 リヴェリアに、こっそりとロキファミリアの冒険者達に紛れ込んで(この時点で大分無理がある)探検しようと思っていた事までバレた。

 

「昨日も言っただろう?キチンと私達が君の言葉を理解できるようになるまでは駄目だと。」

「クエークエー!」

「駄目だ。ダンジョンは危険に満ちているのだから。私の授業も終わっていないし、エイナの冒険者講習も君は受けるべきだ。」

「クエークエックエー!」

「皆楽しそうなのにズルいではない。ロキ・ファミリアの冒険者全員がやって来た事だ。」

「クエー・・・」

「いや、あの、リヴェリア様?十分言葉を理解してませんか?」

「私は彼のジェスチャーから判断しているだけだ。それに加えて、新人の言いそうな事は判る。」

「むう・・・ズルい。エイナさん、出来ました。」

 

 自分よりスムーズに翻訳するリヴェリアに、若干拗ねるアイズは書き終えた書類をエイナに提出した。

 

「はい、それでは確認しま・・・」

 

──────────────────────

 

調教モンスター登録申請書兼冒険者登録書

 

種族:チョコボ種

 

名前:ジャガ丸号

 

特徴:黄色い鳥型・もふもふ・独特な臭い

 

レベル:推定6以上?

 

所属:ロキ・ファミリア

 

責任者:アイズ・ヴァレンシュタイン

 

 

──────────────────────

 

「・・・」

「・・・クエッ?」

 

 エイナが書類から目を上げれば、チョコボが大きな目をパチクリとしながら此方を見ていた。

 

「・・・上層で見つけたモンスターなんですよね?」

「はい。」

「クエッ。」

 

 揃って頷く天然な飼い主とモンスターに思わず頭を抱えそうになる。

 

「色々と突っ込みたい所ですが・・・この子、ミノタウロスとか以上なんですか?この見た目で?」

「クエ?」

 

 どこから見ても筋骨隆々なミノタウロス所か、ゴブリン辺りにも負けそうだ。とても強そうにはエイナには見えない。

 

「少なくとも上層のモンスターは一瞬でした。」

「えぇ・・・君、新種の階層主か何か?」

「クエークエー」

 

 首を振られたが、ダンジョン上層にそんな高レベルモンスターが出現したことは一大事である。目の前のチョコボというらしい種族の見た目に騙されて、初心者から第一級線の冒険者達が次々と同種のモンスターに屠られる光景をイメージし・・・エイナはふと気が付いた。

 

「というかチョコボ種って何ですか?」

 

 新種のモンスターに何故、そんな種族名が既に付けられているのかという事に。

 

「ああ、それはロキが彼に聞き取った際に判った異世界での種族名だ。」

「き、聞き取っ・・・異世界?えっ?」

「神々には言葉が判るらしい。・・・そう言えば言ってなかったな。」

「リヴェリア、エイナさんにも知っておいてもらった方が良い。」

「えっ?」

「そうだな。これからエイナも彼にアドバイザーや、ギルドと共同の生態調査で関わるから先に伝えておくべきか。」

「・・・えっ?せ、生態調査?」

「ジャガ丸号もいいかな?」

「クエッ。」

 

 そこはかとなく嫌な予感を感じながらエイナは、こういった時には、必ずアイズに着いてくるはずの神物が不在であることに気が付いた。

 

「えっと、そう言えば今日、神ロキは・・・?」

「入院しました。」

「何があったのですか!?」

「それで入院したロキが聞いた所によると・・・」

「聞いてリヴェリア様!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でも彼は、人とモンスターが共存する世界から来たらしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リヴェリアの言葉に思わず天井を仰いだエイナは、暫くしてチョコボに尋ねた。

 

 

 

 

 

 

「・・・担当、別な人に変わって貰って良いかな?」

「クエッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハーフエルフのギルド職員エイナ・チュール

 

 

 

 

 

 

 後にプロアドバイザー(とんでも連中担当)と呼ばれる女である。

 

 

 

 

 

 

 

貴方が好きなモンスターは?

  • トンベリ種
  • プリン種
  • ベヒーモス種
  • モルボル種
  • 命の番人
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