チョコボと剣姫の不思議なオラトリア   作:隣乃芝生

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本業が忙しくコメント・メール等返せず申し訳ございません!

*2/25御指摘により修正しました。
×エアロストーム
○エアロオール


チョコボとオラリオ

 人と魔物は分かり合えない。

 

 これはオラリオに住まう冒険者のみならず、この世界に住まう様々な人種の常識だ。

 

 オラリオの外に現れる最弱のゴブリンですら、神の恩恵無くば斃すことは難しく、三大モンスターの一角たる隻眼の黒龍に至っては最早災厄である。

 

 しかし、魔物とは恐ろしきこの世界の人々の敵であると同時に、その身に有用な魔石や素材を持った資源でもある。

 

 互いに狩り狩られる存在であるが故に分かり合う事は無いのである。

 

故に・・・

 

 

「きゃーっ!かわいーっ!」

「クエッ!?」

「モフモフしてる~。」

「クエェェェェ・・・」

「とりさんふかふか~!」

「クエ~・・・」

「ジャガ丸号大人気。」

「・・・そうだな。」

 

 目の前で子供達に集られて、怖がられることも無く思うままにモフられているチョコボは凄まじく希少な存在だよなぁと、ロキ・ファミリア副団長リヴェリアは遠い目をしながら思うのである。

 

「私も触っていいですか!?」

「・・・いいよ。」

「クエッ!?」

「ジャガ丸号も良いって言ってる。」

「クエ!?クエッ・・・!」

「「「わーい!」」」

「クエーーー!?」

「・・・いや、明らかに困ってないか?」

 

 何とか無事?にチョコボの担当者も決まり、(担当者の体調不良により講習は延期)一行は昼食を取るべく広場に向かったところで近所で遊んでいた子供達に囲まれ・・・今に至る。

 元の世界と違い、何故か皆が身体を撫でたりモフモフしてくるので困惑するチョコボであったが、何だか子供扱いされているような気がしてきたので一言物申そうと口を開いた。

 

「クエー!クエ・・・」

「鳥さんクッキーあげるー。」

「あ、わたしもわたしも~!」

「・・・クエッ!」

 

 数秒前の決意を忘却の彼方に置き、子供達におやつを分けて貰っている鳥を何とも言えない顔でリヴェリアが眺めていると近くの屋台から紙袋を抱えてアイズが戻ってきた。

 

「じゃが丸君か。買いすぎじゃ無いか?」

「違う。買おうとしたら『祝エブリバディ発売』って言って渡された。」

「・・・エブリバディ?」

「ジャガ丸号、じゃが丸君あげる。」

「クエッ!!」

「皆も。」

「「「わ~い!」」」

 

 近くの屋台で買って来たらしい沢山のじゃが丸君をチョコボやおやつを分けてくれた子供達に配るアイズを眺めながらリヴェリアは首を捻る。

 

「『エブリバディ』とは何だ?」

「さあ?」

 

 『エブリバディ』という言葉に一体何の意味があるのかさっぱり判らないが、2019年3月辺りに何か不思議な事が起こるのかもしれない。

 

「・・・色んな世界にジャガ丸号が現れ(クロスオーバー作品が増え)そう。」

「よく判らんが色んな人が困りそうだな。」

「クエ?」

 

 揚げたてのじゃが丸君をパクパクと食べていたチョコボが振り返って首を傾げ、再び食べる事に戻った。

 

「美味しい?」

「クエッ!!」

 

 三つ目のじゃが丸君を食べていたチョコボがコクコクと頷いた。どうやらかなり気に入ったらしい。

 

「クエ~・・・クエックエッ!」

 

 すると、自分の身体を弄ったジャガ丸号が緑色に発光するハネを取り出してアイズに差し出した。

 

「くれるの?」

「クエッ。」

 

 どうやらじゃが丸君のお礼のつもりらしい。

 

「綺麗なハネだね。」

「ハネだと?私には植物の葉に見えるが・・・」

「え?」

 

 思わず聞き返した瞬間、アイズの手のハネは吸い込まれるように消え、

 

──『エアロオールのハネ』を手に入れた。

──異世界のプログラムを変換し適応します。

──『エアリアル』が強化されました。

──『エアロ』系統の魔法が解放されました。

──『エアロオール』が解放されました。

 

 そんな言葉が頭に浮かんだ。

 

「何だったんだ今のは?」

 

 狐に化かされたかのような顔をするリヴェリアに、アイズは先程頭に浮かんだアナウンスを伝える。

 

「何で魔法が増えるんだ・・・?」

「よく判らないけど・・・良い物?みたい。」

「・・・彼にはまだまだ謎が多いな。」

「・・・ロキが帰って来たら聞いてみる。」

「クエッ?」

 

 頭を抱えるリヴェリアを心配そうに見上げるチョコボに、アイズはじゃが丸君をもう一つ渡した。

 

「もう一つあげる。」

「クエッ!クエクエ~。」

「沢山食べた?」

「クエッ!!」

「・・・これで正式にジャガ丸号。」

「クエッ?」

「気にしなくていい。もう一つあげる。これは小豆クリーム味。」

「クエッ!」

 

 アイズが呟いた台詞は聞き取れなかったらしいが、差し出された五つ目を吞気に食べるのであった。

 

 そんなやり取りを行う一人と一羽を呆れたような目で見ながらリヴェリアは通りを行き交う人々を眺める。

 道行く冒険者が網を抱えていたり、鉄製の檻を運ぶ集団が居たりと何時もよりオラリオは騒がしい。

 

「網や檻を持った冒険者がいっぱい。」

「恐らくチョコボ種の捕獲が目的だろうな。」

「クエ?」

「何故かモフモフモコモコした装備をしてる男の人もいっぱい。」

「・・・それも間違いなくジャガ丸号が原因だな。」

「クエッ?」

 

 この世界で『モンスター』と言えば、ゴブリンやオーク、ミノタウロスと言ったような『恐ろしい姿』だったりする訳であり、とても愛でたい様な見た目ではない。

 そんな世界に『人に懐く可能性が有る可愛いくてモフモフなモンスター』が発見されればどうなるか・・・

 

「・・・多分捕まらないよ?」

「まぁ彼らは知らないだろうからな。」

 

 ロキ・ファミリアの面々はチョコボが異世界から来た事は知っているが、そんなことは知らない冒険者達は新種で一獲千金とばかりにダンジョンへと繰り出していった。

 仮にこの鳥がもう一羽居たとしても、第一線級の冒険者が認める強さを持つこのモンスターを並の冒険者に彼等を捕まえる事が出来るとはリヴェリアは思えない。

 

「とは言え何が起こっているのかは判らないから、一概には言えんがな。フィン達がダンジョンの調査に当たってはいるが・・・」

 

 他にも此方の世界に来ているモンスターが居るのか?居たとしても彼の様に友好的なモンスターなのか?

 

「少なくとも今後のダンジョンは一筋縄ではいかないだろう。」

 

 そう言うとリヴェリアは白亜の塔を見上げた。

 

 

 

「──可愛いっ!!」

「クエ・・・クエーッ!?」

「あ、捕まった。」

 

 

──決して通りすがりの豊穣の女神の双丘に、野菜に釣られて捕まった彼の助けを求める目から逸らしているわけでは無い。・・・多分。

 

 

 

 そんな風に地上でアイズ達が過ごす一方、ギルドからの依頼を受けロキ・ファミリアのメンバーはダンジョンに潜っていた。

 

「ふむ・・・特に異常は観られないね。」

「何時ものダンジョンじゃのう。」

 

 何時もの様に壁から現れるいつも通りの姿のモンスター達を屠りながら一階層ずつ見て回っているが、ダンジョンの構造が変化することも無く至って順調であった。

 

「うーん。ジャガ丸号みたいなチョコボ種が他にも居たら良いのになー。」

「・・・ロキが今度こそ(ストレスで)送還されかねないから止めなさいよ。」

「そうですよ!あんな何処の馬の骨とも知れない鳥がこれ以上増えるなんて!?」

「レフィーヤ・・・」

 

 憤慨するエルフの少女に対してティオネは呆れた顔を向けた。

 

「今朝だってアイズさんとティオナさん直々にお風呂に入れて貰ったばかりか、洗って貰うなんて!」 

「それは仕方ないじゃ無い。二人ともジャガ丸号と寝た所為で匂いが付いちゃったんだし。」

「あははは・・・何か変な匂いがしてたからね~。」

「それだけでも羨ましいのにアイズさんのシャンプーとリンスとトリートメントにボディーソープと洗顔料を使って・・・!!」

「あ~しかも使い切っちゃったもんね。」

「え、待って?ジャガ丸号のどこから何処までシャンプーでボディーソープで洗顔料なのよ?」

「おい!うるせえから静かにしやがれ!」

「何さー!ジャガ丸号が羨ましいからってさー!」

「ああ!?」

「ちょっと!?気になるんだけど!?」

 

「君達・・・もう少し緊張感を持てないのかい?」

 

 団長の眼だけが笑っていない笑顔に全員が一斉に黙る。

 

(ちょっと!?私まで団長に怒られたじゃない!)

(ティオネだって騒いだじゃん!)

(あわわわわ・・・スミマセン!)

「チッ・・・あん?」

 

 目線だけで会話する姉妹とエルフに付き合ってられないとばかりに前を行くベートは足を止めた。

 

「どうしたベート?」

「何々?ジャガ丸号でもいた?」

「居ねーよ馬鹿。アレ見ろよ。」

 

 ベートの指し示す先で、黄色い花を咲かせた丸っこくてトゲトゲした緑色の植物が揺れていた。

 

「・・・花でしょうか?」

「あれは・・・サボテン・・・かな?」

「こんな階層に在ったかのう?」

「何でこんな階層にサボテンなんかが在るのよ?」

「本当だ、サボテンだー!」

 

 フィン達が首を傾げる中で無邪気にティオナが声を上げた瞬間、左右に揺れていたサボテンがピクリと止まるとクルリと回る。

 

「うわ!?ナニアレー!?」

「モンスター!?」

 

 花が咲いた丸っこいサボテンの胴体に点で記したような顔が付いていた。胴体に短い手足のような物が付いた奇妙なモンスターはロキファミリアの面々を見て、

 

『∑(∵)!?』

「何か喋った!?」

 

 人には意味不明な鳴き声を発する奇妙なモンスターは、特に襲い掛かる事も無くロキ・ファミリアの面々をじーっと見詰めていた。

 若干首・・・というか身体を傾けているので『何か用?』と聞いているようにも見える。

 

『・・・(∵)?』

「何だこいつ?」

「明らかに新種だね。」

「でも・・・何か弱そうですね?」

 

 レフィーヤが何となく見た感じの感想を呟けば、モンスターはレフィーヤの方を見てタシタシと短い足で地団駄を踏みながら鳴き声を発する。

 

『(∵)!!!!』

「・・・怒ってない?」

「もしかして聞こえてたんじゃ・・・キャア!?」

 

 顔面に何か金色に輝く物が凄まじい速さで投擲され眉間に直撃したレフィーヤはそのまま涙目で蹲った。

 

「レフィーヤ大丈夫!?・・・ふぎゃっ!?」

「だらしねぇな、それぐらい躱し・・・ガッ!?」

「アンタだって躱せてな・・・痛っ!?」

「これは・・・ジャガ丸号が持ってた硬貨?」

 

 同じように硬貨─ギルをぶつけられた姉妹とベートは怒りを込めた目で謎の緑色のモンスターを睨み付けた。

 どこか虚ろに見える目と口をしたモンスターは彼等を見渡し・・・

 

『(∵)www』

 

 明らかに馬鹿にするように笑った。

 

「「「ぶっ殺す!」」」

 

 斯くして、ダンジョン内部にて冒険者達をおちょくりながら逃げる謎のモンスターと、本気で追う第一線級冒険者達の永きに渡る追走劇が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・クエッ!クエー!クエッ!」

 

 一方その頃、ボサボサになった毛並みを整えてもらいつつチョコボが抗議の声を二人にあげていた。

 

「ゴメンねジャガ丸号。」

「すまない。何というかあの方・・・デメテル様には意見し辛くてな。」

「クエ~・・・」

 

 通りすがりの男共から大量の嫉妬の視線を浴びながら豊穣の女神が堪能するまでモフられたチョコボは、頬を膨らませ女神に貰った大量の野菜をバリバリとヤケ食いする。

 

「・・・館で私に出された分の人参あげるから。」

「クエッ!」

「それで良いのかジャガ丸号・・・あとアイズは人参をサラッと押し付けるな。」

「・・・誰も不幸に成らないロキが言う『WinWinな関係』だと思う。」

 

 そんな話をしながら一行は、ここオラリオの中心的存在である白亜の塔『バベル』へとたどり着く。

 昼過ぎとは言え沢山の人々で賑わう広場で遠巻きに眺められながらバベルを眺めた。

 

「クエ~。」

 

 巨大な建造物は元の世界でも見てきたチョコボであるが、改めて見上げる神々の造り上げた白亜の巨塔の持つ威容と美しさに感嘆の声を上げる。

 

「・・・クエッ?」

 

 だからこそ、その白亜の巨塔の一部に貼り付く様に造られた人工物に違和感を覚えた。

 

 バベルの四階から八階に至る一部に矢鱈と金属的で無骨な建造物が内部から突き出るように存在していた。

 その違和感たるや明らかに世界観が違うとチョコボでも思うレベルである。

 

──具体的には似た物を元の世界で見たような。

 

「・・・クエークエッ?」

「ん?・・・ああ、アレか。」

 

 翼で指す先を見たリヴェリアが苦い顔を浮かべ、代わりにアイズが答える。

 

「今から行く『ヘファイストス・ファミリア』の拠点だよ。」

 

 

『ヘファイストス・ファミリア』

 

 地上に降りた隻眼の鍛冶神、ヘファイストスが率いる武器や防具の製造業大手である。

 ヘファイストス自身と在籍する鍛冶師達の造り上げる逸品を求め、毎日沢山の冒険者達で賑わう。

 その実力と実績は、オラリオの中心的存在であるバベルの四階から八階をテナントとして占有するという事からしても伺えるだろう。

 

「クエッ?」

「ジャガ丸号のツメとクラに使われてる素材を観てみたいって依頼があったんだって。」

「まあ君の調査研究の一環だな。ヘファイストス様自身はかなり常識的な方だから安心して良い。・・・非常識な団員の件でかなり苦労をされているからな。『狂鍛冶師(マッドスミス)』め・・・」

「・・・クエ?」

 

 溜息と共に米神を抑えるリヴェリアにアイズとチョコボが揃って首を傾げる。

 

「・・・おじさん変わってるけどいい人だよ?」

「現在進行形でギルドと外壁の件で揉めているんだがな。・・・造り上げた物が多くの実力有るファミリアで評価・支持されているから質が悪い。」

 

 そうリヴェリアが口にした時である。

 

「・・・相変わらず失礼なエルフじゃのう。」

 

 雑踏から此方に向けて歩いてきた一人のドワーフがリヴェリアに声を掛けてきた。

 ドワーフにしては大変珍しくヒゲを整え、ヘファイストス・ファミリアの紋章の入った革のジャケットを着てゴーグルを頭に着けた・・・

 

「クエエッ!?」

「どうしたのジャガ丸号?」

「ん?何じゃいお前さん・・・いや、待てよ。」

 

 とある技師と瓜二つな外見を持つドワーフに驚くチョコボを見て、暫く何かを思い出す様に顎に手をやったドワーフの男はポンと手を打った。

 

「ああ!お前さん確か『別な世界の儂』と会っておったチョコボ種じゃな?」

「クエ!?」

 

 ドワーフの言葉に更に驚くチョコボとアイズ。

 

「おじさんジャガ丸号を知ってるの?」

「ジャガ・・・何じゃいそのけったいな名前は?」

「・・・変じゃないモン。」

「相変わらず変わっとるのう。まぁ、別な儂から此奴を見付けたら助けてやってくれと頼まれとるでな。」

「クエ?」

「『誰に?』じゃと?そりゃ勿論お前さんの所の儂にじゃよ。」

「・・・翻訳まで・・・」

「どういう事だ?」

「儂のレアスキルの関係じゃ。後でお前さん達にも教えてやるわい。じゃが先ずは改めて名乗ろうかの。」

 

 ドワーフは頬を膨らませたアイズと目を丸くしているリヴェリアから改めてチョコボに向き直る。

 

 

 

「儂の名前はシド。シド・ランドロックじゃ。」

 

 

ヘファイストス・ファミリア所属の「()()()

level.5『狂鍛冶師(マッドスミス)』シド・ランドロック

 

 別な世界の自分()と繋がるレアスキルを持つ、ヘファイストス・ファミリア一の問題児である。

 

 

 

 

 

 

 

貴方が好きなモンスターは?

  • トンベリ種
  • プリン種
  • ベヒーモス種
  • モルボル種
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