チョコボと剣姫の不思議なオラトリア   作:隣乃芝生

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転職、引っ越しときてやっと投稿。

もう一つの方も書かないとなぁ・・・




チョコボとヘファイストス・ファミリア

 

 

 ファミリアを運営する神々にとって自身の眷族達にレアスキルが宿ることは歓迎すべき事である。

 

 自分の眷族が更なる高みを目指して邁進する姿、そしてその想いや努力の結晶に神それぞれ思惑は違えど喜ばない者は居ない。

 

 

 

 

 

・・・あくまでも常識の範囲内(胃が耐えられる間)ならば。

 

 

 

 

 神々が地上に降り立ち、神血を地上の子供達の背中に刻む『神の恩恵』を与える事によりこの世界、特にオラリオには英雄と呼ばれる神々の領域にその存在を近付けた人間達が数多く存在する。

 

 しかしながら、世の中には他の人外魔境な世界(ルビスやバハムート達の管轄)や、かつて地上に神々が降りる以前のように『神の恩恵』が無くても『英雄』の頂に上がれるだけの素質や才覚を持つ『規格外』な者も極々少数ながら存在するのである。

 

 

 そんな規格外な存在に『神の恩恵』を与え、魂の位階を上げさせて、素質や才覚をブーストし、経験値を積み上げ、あまつさえレアスキルに目覚めれば一体何が起こるのか。

 

 

 

 

──どうにもならない事になるのである。

 

 

 

 

 

 主神に神々、ファミリアの幹部やギルドの職員達の頭を悩ませ、胃を散々に痛め付けるようなとんでもないスキルを持ち、その力を存分に振るいし者達・・・

 

・・・一例を挙げるならば、

 

かつてのオラリオで『ドロップ品が見たことも無いような武器や防具やアイテムに変わる』スキルを得てオラリオ中の鍛冶屋を大不況に陥れた恵比寿・ファミリアの『大武器商人(太っちょ武器屋)』(現在は引退)。

 

上記と似たスキルに加え『旅先で大事件(試練)に出会う』スキルを得てオラリオの外で大事件の中心となりながら旅をし続けるヘルメス・ファミリアの『風来人(フリーダム)』。

 

 

 そして、ヘファイストス・ファミリア所属、『狂鍛冶師(マッドスミス)』シド・ランドロック。

 

 『ランドロック』の姓から判る通りロキ・ファミリア幹部の『重搩(エルガレム)』ガレス・ランドロックの弟に当たる。

 

 ヘファイストス・ファミリアに入団した当初は、見た目も極々普通のドワーフであった。

 

 そんな彼の背に『恩恵』が刻まれた時。発現したレアスキル。

 

 

英雄の隣人達(シド・ネットワーク)

・他世界の自分達と経験や技術を共有出来る。

・他世界の自分達と夢の中で会話できる。

・偉業達成難易度上昇。

 

 

 このスキルが発現し、世界の広さを知った日から、普通のドワーフと同じであった髭を剃り髪を整えた彼の大躍進が始まる。

 

 

──世界初の魔石を使わないエンジンの発明

 

──戦車・潜水艇・飛行艇を独自に建造。

 

──現在確認されている全階層主の単独最速撃破。

 

 

 王国との戦争においては持てる技術の限りを尽くした発明品とアイテムを携え、そしてとある世界のシドばりの戦い振りを行い・・・オラリオ・王国両方から「出禁」を喰らった初の冒険者でもある。

 

 

 

 

「つまり、そのスキルを通じて異世界中のシドに『もし見付けたら』と、ジャガ丸号の保護要請があったという事ですか?」

「・・・ジャガ丸号実は凄い鳥?」

「クエ?クエークエークエッ?」

 

 ヘファイストス・ファミリアの応接室のソファにてシドのスキルの説明を受けたリヴェリアは眉間を押さえ、取り敢えず世界を越えて保護要請されるチョコボは、どうやら自分が思うより凄い鳥らしいと思うアイズに対して『自分は鳥じゃなくて普通のチョコボだよ?』と返している吞気なチョコボ。

 

「そうじゃ。流石向こうの儂じゃよ。向こうに出現したダンジョンが他世界に通じとると見抜くとはのう。」

「クエ~。」

「じゃが、お前さんを帰す手段までは見付かっとらん。それに何でもお嬢ちゃんが一人でお前さんを探してダンジョンに入っとるらしいでな。」

「クエー・・・?」

「お前さんを探しとるらしい。」

「クエ・・・クエー?」

「わかっとるわかっとる。ちゃんと向こうの儂に見つかったと伝えて貰っておくでな。」

「クエッ。」

 

 何やら向こうの世界の様子を普通にチョコボと会話するシドの様子には嘘が見られない。どうやら異世界と繋がっているという話は本当らしい。

 

「信じられないかも知れないけど本当に発現してるスキルなのよ・・・」

 

 余りのスケールに頭を抱えるリヴェリアの対面に座る隻眼の女性、鍛冶神ヘファイストスは慣れた手つきで懐から取り出した瓶から錠剤を二つ取り出すと白湯で飲み込んだ。

 

「クエックエ?」

「心配してくれてありがとう。・・・気持ちだけで嬉しいからその万能薬とやらは仕舞ってくれるかしら?」

「クエッ。」

 

 カバンにビンを仕舞うチョコボの隣で、リヴェリアはヘファイストスからそっと分けて貰った錠剤を白湯で飲み込む。

 

「クエックエ?」

「・・・私も要らないから仕舞っててくれないか?」

「クエッ。」

 

 再びカバンにビンを仕舞うチョコボにヘファイストスは溜息をついた。

 

「いいかしら、えっと・・・ジャガ丸号君?そんな簡単に他の世界のアイテムを渡そうとしちゃ駄目よ?」

「クエ?」

「はあ・・・君にとっては普通のアイテムでも、物や技術によってはこの世界に対して余りにも危険な物だってあるのよ。・・・場合によってはソレを巡って争いが起きる位に。例えば・・・『かまど合成』とか。」

「クエッ?」

「『かまど合成』?」

 

 コテンと首を傾げたアイズにチョコボが身振り手・・・翼振りで説明する。

 

「クエ~クエックエークエー・・・」

「『丸くて?大きな・・・かまどに・・・?』ごめんジャガ丸号。さっぱり判らない。」

「クエー・・・クエー?」

「すまないジャガ丸号私も判らない。」

「クエー・・・」

 

 何かしら表現しているのは判ったが、まだ二人には細かい説明が判らない。

 

「かまど合成って言うのは二つの武器を一つのより強力な武器にする画期的な技術さ!」

「・・・基にした武具に素材とする武具の力や特性を加え引き継がせる『この世界』には無い技術ね。」

 

 そんな二人と一羽に女神が説明をする。

 

「但し、使うには専用の竈と薬剤、それと特殊な術式の用意が必要なのよ。それに基にした武器は消滅するし・・・術式に問題があって場合によっては大変な事になるんだけど・・・それは置いといて」

 

 そう言ってヘファイストスはテーブルの上に置かれたツメとクラを指でなぞった。

 

「これはかまど合成で変化させて出来たチタンをメインに・・・ミスリルと幾つかの金属を使った物ね。このツメとクラはかまど合成で手を加えたり・・・かなり腕の良い鍛冶師が鍛え上げたりしたみたいね。付与されているのは『吸血』・・・良い物を見せて貰ったわ。」

「クエッ!」

「だけどね?この世界でコレと同じ物(+99相当)を作ろうとしたら、ウチの椿達上位鍛冶師達が不眠不休で打ち続けても作り上げれは・・・いや。作り上げれるかもと言った物なのよ。」

 

 その言葉にチョコボの両隣に座っていたアイズとリヴェリアが息を呑み、チョコボのツメとクラを見た。

 

「だ、誰でも強い武器が手に入るんだぜ!」

「素材と道具さえ有れば誰でも同じ物が手軽に作れる・・・その技術を否定するわけでは無いのだけれどね。だけど、武器の価値と鍛冶師達の技術を暴落させかねない『かまど合成』はこの世界だと鍛冶師達の多くが廃業になりかねないわ。・・・そんな訳だから鍛冶の神としては。」

 

 そう言うとヘファイストスは自身の隣に座る、見事な黒髪をツインテールに束ねた小柄な女性の方を向いた。

 

「ヘスティア。この世界でかまど合成屋さんをやるなら私達鍛冶系ファミリアの全てが敵に回るわよ?」

「酷いよヘファイストス!?僕の計画が・・・」

「そもそも『かまど合成』は、問題の改善出来なくて天界で禁止になったでしょ?」

「あんまりだぁ!?」

「・・・クエェ・・・?」

 

 先日地上に降り、ここヘファイストス・ファミリアに居候中の神。『かまど』を司る女神ヘスティアがテーブルに突っ伏した。

 

 

 

「君ぃ!酷いじゃ無いかぁ、僕のファミリア計画が台無しになっちゃったじゃないか!」

「・・・クエ~・・・クエックエ?」

「し、失礼な!?さっき初めて挨拶した時は目を輝かせて信仰みたいな気持ちを送ってくれたのに『本当にかまどの女神様ですか?』だって!?」

 

 憤慨する小柄な女神を見て、暫定飼い主であるアイズはチョコボを窘める。

 

「ジャガ丸号。それは失礼。」

「クエークエー?」

「ちょっと格好が変だけど本当に女神様。」

「クエッ!」

「揃って失礼だな君たちは!?しかも悪気が無い分質が悪いよ!」

 

 やはり天敵の所の子供達とは相性が悪いのか、とヘスティアは頭を抱えた。

 

「全く、ファミリア運営に楽な道なんて無いわよ。貴女は先ず地道に働いてウチを出て拠点を作りなさいな。」

「ううっ・・・使われなくなった武器や防具を安く買い取って、所属する冒険者の武器や防具を自前で強化したり販売したりして最強の探索系ファミリアになる計画が・・・」

「・・・本当に今すぐ叩き出してやろうかしら?」

 

 堂々と居候先の迷惑になりそうな計画を口から漏らす居候に家主は青筋を立てる。

 

「そんな訳だからかまど合成は無いけど、君の武器は私かシドに言ってくれれば鍛えてあげるわよ。勿論お代は頂くけど。」

「クエッ!」

「ヘファイストス様も打たれるのですか!?」

「・・・ジャガ丸号ズルい。」

「・・・クエ~・・・?」

 

 ヘファイストスの言葉にリヴェリアは驚愕しアイズは拗ねてチョコボの頬をモフった。

 

「私か上位鍛冶師達じゃないと君に耐えられる武具は作れないでしょうし。・・・それにモンスター用の武器って言うのも面白そうだしね。」

「クエッ!」

「あら、早速依頼してくれるの?」

 

 チョコボは頷くとカバンからヴァリス─ロキが買い取ったアイテムの代金─の詰まった袋を取り出してヘファイストスへと渡した。

 

「あら、一括即金なんて。君は随分お金持ちさんね。」

「クエ」

「だけどさっき言ったばかりでしょ?」

「クエッ?」

 

 首を傾げたチョコボは周りを見渡した。

 

 気楽に大金を支払うチョコボに頭を抱え込んだリヴェリア。チョコボに頬を膨らませて嫉妬するアイズ。

 

「モ、モンスターに所持金で負けるなんて・・・」

 

 そして床に膝から崩れ落ちた女神。

 

 それを見たチョコボはヘスティアに近づいてナッツを差し出した。

 

「・・・クエー?」

 

 ポンポンと・・・もといモフモフと肩を叩いてナッツを差し出すチョコボに、肩を震わせて崩れ落ちていたヘスティアは徐に立ち上がる。

 

「ど、同情されてたまるもんかぁ!?見てろよ!今にお金持ちになって君の目の前で山ほどじゃが丸君を食べて見返してやるんだからなぁ!!」

「何よその安い報復は?」

「うわあああん!こんなとこ出てってやるぅ!」

 

 勢いよく立ち上がったヘスティアは部屋から飛び出て行った。

 

「山ほどのじゃが丸君・・・羨ましい。」

「クエ。」

「・・・あなた達本当に似た者同士ね。」

「「?」」

 

 ヘファイストスの言葉に揃って首を傾げる一人と一羽であった。

 




次ぐらいにはダンジョンに突入させたいなぁ・・・

・・・リヴェリア様の胃が痛むけど。

貴方が好きなモンスターは?

  • トンベリ種
  • プリン種
  • ベヒーモス種
  • モルボル種
  • 命の番人

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