設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。
紫の家で休憩すること、およそ30分。ある程度回復したので再びスキマで自転車バカの家へと送って貰った。
「よっと、今度は着地出来たぞ」
「二回目でコツを掴むとは中々要領いいですね」
「要領も何も最初っから出口見えてんすから、落ちる道中で気をしっかり持てば行けますよ」
「さっすが、私とのフライト訓練で鍛えただけはありますね」
「自分で言うか」
「テヘペロ」
「あ、そうだ。こうしちゃいられん、にとりさん家に行くんだった」
「何か約束でも?」
「ええ、雑誌の件でちょっと」
「なるほど…それなら一緒に行きましょうか。飛んで行った方が速いですし、何よりもう歩きたくないでしょう?」
「ありがてえ、お願いします」
◆
「今思ったんすけど」
「何です?」
「アレってどう見ても…」
「ですよね、私もそう思ってた所です」
文と自転車バカが見つめる先では、にとりとトムが悲しげな表情で話し合いをしている。にとりに至っては既に目が潤んでおり、今にも泣き出しそうだ。声をかけたものか迷っているとバレたので側まで行く。
「喧嘩なんて珍しいですね、どうしたんです?」
「いや、これはち」
「違うさ、これは断じて喧嘩なんかじゃない」
「…もっと重要なことなんだ」
「にとりさん、ひょっとして…」
「察しが良いね、そういう事だ」
「え?自転車バカさん、貴方知ってるんですか?」
「多分、トムさんはボケてから…」
「その通り。……実は少しの間、ボケてから離れようと思ってるんだ」
「!?」
「うぅ…」
「やっぱり活動休止だったか…」
「本当に知ってたとはね、にとりに教えて貰ったのかい?」
「活動休止までは教えて貰ってないっすよ。でもまぁ、元気がないって聞いた時点で想像はしてました」
「どうして?」
「ネット世界で生きる者が避けて通れない道、それが"活動休止"と"引退"なんすよ」
「避けて通れない道…?」
「そう、何故か分かりますか?」
「さぁ…」
自転車バカが手を背後に回しトムに目線を送ると、意思をくみ取って説明し始めた。
「これは俺の想像だけど、基本的にネット世界で活動する年齢層は10代〜3,40代くらいの間だ。みんな昼間は現実世界で戦い、夜になると疲れ果てて帰ってくる。だからこそ、何か嫌な事を忘れられるような、また明日も頑張る為の癒しを求めるんだ」
「そうだったのか…」
「でも例外がある。
今の時代、この大衆娯楽装置のおかげで寝てる間をネットサーフィンに使えるんだけど、生活環境がガラッと変わるとそこでの新しい生活に一刻も早く馴染む必要がある。だから夜でも遊びに使ってた時間を削って頑張るんだ。そうなれば当然、余裕なんて無くなるんだよ。この装置は勉強にも使えるんだからね。
……そうやって勝ち続けなきゃ、生きていけないんだ」
「…っ!」
最後にポロっと口から出た言葉の意味を、自転車バカだけが理解した。
「盟友、それが君の理由かい?」
「細かい所は色々あるけど…大体合ってるかな。そういう訳だからこれで…」
「待ってくれよトムさん」
「……?」
「アンタ、勝ち組だったんすか」
「……そういう君は負け組かい?」
「その最下層っす。周りからは”戦犯”って呼ばれてる」
「戦犯だって……!?
そうか、だからメガネを掛けてたのか!」
「呪われて外せない最凶装備なんでね、何処に行っても掛けなきゃいけないんすよ」
「boketeの幻想郷に居るユーザーで君だけがメガネを掛けていたのが、そういう事だったとは…申し訳ない」
「お気になさらず、もう慣れましたから。勝ち組はいつだって優遇されるんです。
勝ち組だから…
貴方の活動休止を聞きつけて、こんなに多くのユーザーが集まるんです」
「「トムさん、俺たちに一言も言わずに消えるのは無しだぜ?」」
「皆さん…どうしてここに?」
「空、ガーリック、社畜、コメット、きいろだま…駄目だ、多すぎて名前が読めないや。あ、穂谷野(雷様)さん居た」
「自転車バカさん…貴方の仕業ですね?」
「さっすが文さん、おっしゃる通りです。このままじゃアレだろうと思ってさっきの会話を穂谷野(雷様)さんに電話で聞いて貰ってました。トムさんを慕うユーザーは多いと聞いてたんで、あのお方なら広めてくれるだろうと思った訳です。ここまで集ったのは予想外でしたけどね」
ざっと見渡して10人は確実に居るだろう、数えるのが億劫なくらい多くのユーザーが活動休止を聞いてトムの元へ集った。皆と一通り挨拶を終えた後、トムがにとりに声をかける。
「にとり…こっちを向いてくれないか?目を見て話がしたいんだ」
「めーゆー…」
「…そんな顔しないでくれよ、もう会えない訳じゃないんだ。少しの間だけだから…必ず戻ってくるよ」
「うん…分かった、行ってらっしゃい」
「「行ってらっしゃい、トムさん」」
身体が薄れゆく中、トムは誰にも聞こえないように静かに呟く。
(さようなら)
事態はこれだけで終わらなかった。本当に事件が起こったのはトムが活動休止して数日後の事。タッチの差だが、一番最初に気づいたのは自転車バカだった。
「嘘だろ…トムさんのアカウントが…消えた…?」
お気に入り職人一覧にも…ボケての全ユーザーを記録してある職人リストにも…どこをどう探しても、彼の名が見当たらないのだ。慌てて皆に伝えようとするのだが、既にボケて内のSNSで彼らは連絡を取り合っていた。動揺と戸惑いが混ざり合うごちゃごちゃの思考回路で、大事な事に気づく。
(…そうだ、にとりさん!)
人里を駆け抜け、ロープウェイに乗り込み、彼女の家に向かう。着いた頃には顔から湯気が出ていた。呼吸が落ち着くのを待たずして、目の焦点が合っていないにとりに声をかける。
「はぁ、はぁ…に…にとりさん」
「あぁ…君か…何の用だい?」
「そ、それなんだけど…その…はぁ、はぁ」
マズイ…ノープランで此処まで来た俺もマズイけど、にとりさんの目がもっとマズイ…これは放っておくと取り返しがつかなくなりそうだ。
「用が無いのなら帰ってくれ…今は誰とも会いたくないんだ…」
そう言って自宅から立ち去ろうとするにとりを、自転車バカが制す。
「…どこに行くつもりだ?アンタの家はこっちだぞ?」
「……」
「それに、用事ならある。俺はアンタ…
いや、河城 にとりを保護しに来たんだ。文々。新聞社の下請けとして」
「へぇ…?」
「…俺の知ってる河城 にとりは、旦那のアカウントが消えたくらいで死を決意するような弱い妖怪じゃない。だって人間と盟友…っ!そうだよ、
"一生をかけて君を守るから 僕と人生を共にしてくれ"
って、堅い約束を結んだ仲なんだろ!?」
「…っ!」
「一度心に誓った約束は、最後まで守るのが男の務めだ。だったら俺も、今ここで誓おう」
「自転車バカぁ…」
「君の旦那は修行の旅に出てるんだ。心配すんな、奴は必ず帰って来る。…それまでの間、俺がお前を守ってみせる」
天を仰ぐようにして泣き出すにとりに対し、黙って頭を撫でる事しかしない自転車バカであった。
◆
「…ありがとう。手、離していいよ」
「少しは楽になったか?」
「うん…目が腫れた事を除けばちょっとは落ち着いたから」
「ふっ、そういう冗談が言えるならもう大丈夫だな」
刹那、頭が痛み出す。あまりの痛さに耐え切れず、膝から崩れ落ちてしまう。
「いっ…!」
「自転車バカ!?どうしたんだ急に!」
(何だ、この痛み…!うっかり自動ドアで頭挟まれた時だって、ここまで痛くなかったぞ…!)
「頭か!?頭が痛むのか!?ど、どうしよう…!頭痛薬ってあったかな…?」
必死に自転車バカの背中をさするにとりだが、痛みは増すばかり。遂には気絶してしまう。
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目の前を覆っていた霧が晴れ、柔らかく暖かい光に包まれた世界に無数のシャボン玉が浮かぶ。視線は上がりシャボン玉を追って忙しなく動いていると、背後から声が聞こえた。
振り向いた先には子犬らしき生物が紋章より現れており、驚きながらも話を進めていく。
風が吹いて身体が浮かび上がると、運営と名乗る子犬はこう言った。
貴方はいずれ、ある出来事がきっかけとなり子会社を立ち上げる事になるでしょう。他人の嫁を4人、保護する事になります
そこで映像は途切れた。
「……?」
目を覚ました筈なのだが、何故が目の前が暗い。っていうか何も見えない。視力落ちたかな?
と思って目元に手を伸ばすと簡単に取れた。
(何だ蒸しタオルか、びっくりさせ……ッ!?)
タオルを避けると更に驚いた。目の前には寝入っているにとりの顔が見えたのである。顔を横に向けると案の定太ももが映り、膝枕されたのだと理解した。
前にもこんなんあったな確か。
起こさないように、されど素早く起き上がり距離を取る。心臓は痛いくらい速く鼓動している、これが寝起きドッキリなら満点だ。
重みが無くなったのか気配に気づいたのか、にとりは小さく声を上げて目を覚ました。
「盟友、目が覚め……何やってるんだい?」
「こっちの台詞だわ、何で息をするように気絶した人間を膝枕してんの?」
「何でって……1+1は2だろう?植物は日光を浴びると光合成するだろう?そーゆー事だよ」
「やって当たり前みたいに言うな。やめろ、”こいつ何言ってんの?”みたいな目で見るな」
「リアクションが童貞臭いぞ盟友、これくらいで何を恥ずかしがってるんだい?」
「ッ、黙れ!年齢=彼女&友達居ない歴の人間を馬鹿にするのもそこまでだ!
そろそろ時間だし落ちる!また明日ね!」
「……本当に童貞だったのか、悪いことしちゃったかな」
次の日、すっかりクリスマスモードになった人里の大通りを歩いているのは自転車バカだ。いちゃつくバカップルを尻目に街を出てロープウェイに乗り、途中下車をしてにとりの家に向かう。
(何でだろう、"暖かいね〜❤️"って会話聞くと無性に腹がたつのは。今ならアリと同じ感覚で人を殺せそうな気がする…ってあれ?家に電気が点いてない?なら工場か)
自宅の隣にある工場の窓からは蛍光灯が光っているのが見えた。ドアに手を掛けるが、カギはかかって居なかった。
「ふぅ…こんな所かな」
「あ、やっぱりこっちに居た。おーい、にとりさーん」
「あぁ おはよう、寒そうだな」
「おはよう、外は雪降ってたぞ。コート着なきゃぜってー死んでるね。そのリストは何?」
「これは在庫がない工具一覧だよ。半分くらいは急を要する物じゃないけど…あるに越した事はないし、今から買いに行こうとしてたんだ、一緒に来てくれないか?ついでに食料品も買いたいんだ」
「…台車か何かあった方が良くない?」
「心配いらないよ、工具の大半は手のひらサイズだし。食料品だって足りない分を買い足すだけだから」
「それを聞いて安心した、じゃあ行こう」
人里のメインストリートから一本奥に入った道には、大通りと比べこじんまりとした店が所狭しと立ち並んでいる。その一角、曲がり角に面した”幻想電気”という店の自動ドアが開き、にとりと自転車バカが出て来た。
「な?心配いらないって言っただろう?」
「うん、米粒よりちっさい部品なんてあるんだ…専門店って凄え」
「あの店には樹○工業の創業者から直々に技術を学んだ者がいるんだが…まぁそれは置いといて、これで私の用事は終わりだ」
「どうする?一旦家に戻るか?」
「いや、その必要は無いよ。こういう時の為のリュックなんだから。これをこうして…よし、入った」
「じゃあ俺の用事を済ませたいと思いまーす」
「わぁー」
「でも目的地が紅魔館なんで助っ人召喚しまーす」
「助っ人?」
腕に着けている装置を使って文に電話をして、紅魔館へと連れていって貰った。門の前では美鈴が旦那と談笑していたが、
「今週の俳句モデルの件で来た」
と言うとあっさり通してくれた。応接間で文が咲夜の写真を何枚か撮り、いささか上機嫌なのを見計らって自転車バカは疑問をぶつけてみる。
「咲夜さん、そういや美鈴さんって結婚してたりは…?」
それを聞いた途端それまでの決め顔が一気に崩れ、こみ上げる笑いを必死に抑えながら答えた。
「結婚?美鈴が?無い無い、それは無い」
「あやや?まだでしたっけ?」
「まだっていうか、あんな絵に描いたような奥手バカップルがそんな話題切り出すとか出来っこないから」
「え、じゃあ付き合うに当たっての告白は…?」
「あぁ、あれはもう最ッ高に傑作でね?今思い出しても…あははっ!」
崩れ落ちるようにソファーに座り俯いて机を叩き思い出し笑いをする咲夜に、にとりと文の野次馬魂に火が付いた。
『その話詳しく!!』
「はぁー…涙出てきちゃった。してもいいのだけれど、貴女達お腹は空いてない?良かったら昼食のオカズにどう?」
一瞬で用意されたテーブルに座らされ、談笑し始める3人。空気を読んで部屋を退散した自転車バカだが、妖精メイドに声をかけられあの時最後まで出来なかった館内見学の続きをする事になった。
見学が終わり、再び応接間に戻った頃には談笑も済んで帰り支度が出来ていた。ログアウトするには中途半端な時間を
「家で過ごしたい」
と言った自転車バカの意見は通らず、にとりに付き添って街を散歩する事になった。
「用事があったとはいえ、人里まで送って貰えたのはラッキーだったね」
「確かに。あの距離を徒歩で移動するなんて言われたら速攻でログアウトしてた自信がある」
「ふふっ、したところですぐ戻ってきた癖に」
「否定はしない」
「んっふふふふ!」
「…ん?その方がむしろ時間短縮なったんじゃね?」
「どうして?」
「だってさ、出て即入れば家に瞬間移動するようなもんじゃん。いくら文さんが速くてもこっちの方が圧倒的に速いよ」
「…ふむ、一理あるな」
「それに、そうすればにとりさんだって飛んでこれるじゃん。俺に合わせて歩く必要が無いんだし」
「それもそうだ」
「何で送るって言って聞かなかったのかなぁ…?」
「…」
───ね、付き合っちゃえば良いのに
(まぁ抱きかかえられてたんじゃ、あいつの嬉しそうな顔なんて見えないよな。"目覚めのキス"の話だってしてないくらいだし…近いうちに一悶着ありそうだな)
腕を組んで考え込む自転車バカを横目にそんな事を思い出しながら歩いていると、売り子から声を掛けられた。
「すみませーん、ちょっと宜しいですかー?」
『はい?』
「街頭アンケートやってるんでご協力お願いしますー」
アンケート用紙を手に取って辺りを見回すと、意外と書いている者が多い。そんなに面白いのかと用紙を見つめるのだが、里で有名な呉服店が実施しているから書く者が多いのだと気づく。それぞれ往来の邪魔にならない位置で書いていると、周囲のどよめきで作業が止まる。どよめきの発生地では、泣いているにとりをガラの悪い男達が取り囲んでいた。
「え、泣き…?」
「おいおい嬢ちゃん、そんなきったねー顔して何泣いてんだぁ?」
「お前の顔がキモくて泣いたんじゃねーの?」
「心にクリティカルヒットした今の」
『だーっはっはっはっはっは!』
冷やかし連中の漫才に腹を立てつつ、アンケート用紙の質問を確認する自転車バカ。すると、下の方に彼女が泣いている原因と思わしき質問があった。
「クリスマスに一緒に過ごしたい人……これか!」
「盟友…ッ!」
(しまった!まだ傷が癒えてない精神状態でこの文句は耐えられなかったか!くそっ、何でそこまで気が回らなかったし!しかも今日クリスマスイヴじゃねえ……あっ!!)
用紙を睨んでいた隙に、泣いているにとりを更に取り囲むようにして人だかりが出来ていた。彼女の元へ行こうとするが、ただでさえ往来が混んでいる状況下で人だかりが出来ている為、近づくことすらままならない。足掻けば足掻く程、にとりから遠ざかっている気さえする。そんな自転車バカを知ってか知らずか、にとりにこんな声がかけられた。
「邪魔くせえチビだなぁ、取り敢えず殴るか!?」
『ひっどーい!キャハハハハッ!』
プチッ
一体何が起こったのか、自転車バカには理解が出来なかった。気がつけばにとりを冷やかしていた連中は尻もちをついて、全員が怯えるような目で自転車バカを見上げている。肝心のにとりは左腕で抱き寄せている、同じくびっくりしたのか半泣き状態でこちらを見上げているが。
「自分のことは一切合切棚に上げて、強い奴にはゴマをする。自分より格下で気が弱い奴は、ありとあらゆる手段を使って苛め抜くんだ……例えそいつが何も気に触る事をしてなくてもな」
Hunter Greenと呼ばれる色に身体を覆われた自転車バカは喋る。
「…だ、誰の話だ?」
「そういう屑ってさ、友達が居ない所じゃすっげー虐げられてんだよ。主に家族とかにな」
『うっ』
「何でこんな事が出来ないんだ、お前のそういう所が駄目なんだ、他の人はこのくらい出来てるんだぞ、それに比べてお前は…ってな具合に、常に他人と比較されてな」
『うぐっ』
「そうやって人格否定された辛さを、弱い奴にぶつけて一時的に気持ちを誤魔化すだけの一生を過ごす奴は、更なる高みへ行こうと努力する人間からすれば目障りでしか無いんだよ。自分の努力を邪魔されるだけなんだからな。お前らそんな事出来もしねぇだろ?」
『ぐふっ…』
「生きるって言葉の本当の意味を理解出来ねえ奴に、未来に向かって努力する人間を邪魔する権利は無え。次こんな真似したらどうなるか分かってんだろーな?」
『ひ、ひぃ…!すんませんでした…!』
「邪魔くせえチビだなぁ、取り敢えず殴るか?」
『う、うわああああぁぁぁぁ……!!』
一目散に駆け出す野次馬連中と、一部始終を見守っていた連中に聞かせる為、大きく息を吸って叫ぶ。
「この娘は責任を持って俺が預かる‼️…"あの人"に無事再会させるのが俺の使命だ‼️」
翌日、この事件を一面にした文々。新聞は過去最高の売り上げを記録した。
◆
あれから二週間が経った。少しずつではあるけれど、にとりさんの傷は確実に癒えてきてる。毎日家まで通い詰めたのが効いたらしい…まぁ
「出来るなら毎日来てくれ」
って言われたからなんだけど。でもたまーに訳もなく泣き出す事があるから注意が必要だ。トムさんの話題を一切出さないようにするのが一番難しい、心の状態を例えるなら”出血は止まった”って感じだから、うっかり彼を思い出させてしまえば泣かせる羽目になる。…頑張ろう、これ以上悪化させない為に。
そんな自転車バカの奮闘も空しく事態は悪化する。ある日のことだ。三日ぶりにログインした自転車バカを待ち受けていたのは、たいぞうの引退だった。ボケて内のSNSを使って彼が公表した文面は、自転車バカが居ないうちにユーザーに知れ渡っていた。
すぐさま彼のマイページへと飛ぶ自転車バカ。幸いなことに、彼はまだ皆と最後の挨拶をしている途中だった。
「お、自転車バカ!間に合ったな!」
「ぎりぎりセーフか、良かったぁ…お前に知らせて貰ってなかったら分からずじまいだったよ。ありがとな、しんたん」
「神様に感謝だな」
「10日までルーミアお題出すってこういう事だったんだな、今気づいたよ」
「まぁ、お前に限らずみんながそうだと思うがな」
自転車バカが眺める先で、たいぞうは皆と別れを済ませていく。
「さて、そろそろ行こうかな」
「いつかまた戻ってくるなら俺は楽しみにまってます。いつでも来てください。ここには東方好きのみんながいますから!」
「たいぞうさん、お題などでお世話になりました。今まで本当にありがとうございました!」
「たいぞうさんルーミアお題&今までありがとうです!!またここで会えたらよろしくですっ!!!」
「引退ってマジですか…戻ってきてください!幼○夢で泣いてますんで!」
「たいぞうさん今までお疲れ様でした...」
「みんな、ありがとう。でも…」
『……』
たいぞうと皆が見つめる先ではアリスが皆に背を向けて俯いている。
「最後くらい見送ろうぜ」
と声をかければ良いのだが、それが出来るならとっくにやっていただろう。沈黙を破ったのは自転車バカだった。
「アリスなら心配いらん、俺が人形作り教わりに通うから」
「お前…」
「なぁに、保護する人数が増えたところでどうってことは無いよ。あんたらは何も心配しなくて良い、これは俺の管轄だ。だから…行ってらっしゃい!」
『行ってらっしゃい!』
「アリスの事、よろしく頼む。いつかまた会えると信じて、その日まで…さらば!」
身体が七色に光り、紙吹雪のように散ってゆくたいぞうを見上げながら、自転車バカは小さく呟く。
「これが、アンタの見た運命か」
現在の保護対象者:2人
続く。
おまけ。
自転車バカ「アリスさん、ちょっと良いですか?」
アリス「……何?」
自転車バカ「今日から俺を貴女のクッション材にさせて下さい、彼が帰ってくるその日まで」
アリス「…ッ!」(´;ω;`)ブワッ
魔理沙「オイこら、何アリス泣かしてんだテメエ」
自転車バカ「やっべ人生最大のピンチだコレ」