設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。
午前9時。ログインした自転車バカは椅子に腰かけ、にとりに電話を掛ける。
「おはようにとりさん、ちょっと相談した事があるんだけど良い?」
「おはよう、何だい?」
「ほら、この前へんなのに町で絡まれたじゃん?」
「君がキレて追い払ったやつか」
「そうそう。あの時は話が通じるからどうにかなったけどさ、実力行使してくる輩が今後出てこないとは言いきれないし。コナン君みたいに一次的にでも身体能力が上がる装備があれば良いなと」
「うーん……」
「難しい感じ?」
「出来ないことは無い、ただ靴に電気をため込むのは危険極まりないんだ。下手をすれば感電死するからね」
「どうすんの?」
「安全で後遺症の残らない供給源となると……うーん、何があるかな」
「……あ、俺の能力とかどうよ?」
応答が止まる。
代わりにキャスターが回転する音、シャーペンが紙の上をリズミカルに滑る音が聞こえて来た。
5分ほど経過したのち、若干トーンの上がった声でこう言われた。
「イケるかも知れない、取り敢えずサンプルを取りたいから家に来てくれ」
「はーい、じゃ切るね」
◆
100Hz前後の低音を上げ、雪の降る中をロープウェイは降りていく。
私の目論見は成功した。どうやら盟友がキレた状態で能力を発動すると、光球の色が常盤色になり防御力も向上するのだ。
サンプルをPCに読み込ませた結果、グローブと靴の形をした少々特殊な装置を作れば行けるとの答えを出した。
待っててくれ、盟友。時間は掛かるが必ず作ってみせるよ。
”水中のエンジニア”の名に懸けて。
「おっと、時間だ。そろそろ行かないとな」
腕の装置で時刻を確認し別画面でグーグルマップを起動する。目的地を設定し、音声案内の示すまま歩いて行った。
着いた先は人里から少しだけ離れた場所、アリスの別荘だ。ご丁寧に玄関前で待っててくれたようだ。
「そんな寒い所おらんでも……
おーい、アリスさーん。今日は頼まれてた月刊「にとり’s工房」の2月号持ってきたよ-、発売前だけど特別に」
「あら、早かったのね。もう少し掛かると思っていたのだけれど?」
「そう?これでもにとりさんのトコ先行ってきたから遅くなった方だけど」
「……」
「ん?どうかした?」
「いえ、ごめんなさいね。思えば窓ガラス壊さずにちゃんと玄関から入ってくる来客なんて滅多に居ないから……」
「……苦労してんね」
「貴方に比べれば大したこと無いけどね、取り敢えず中へ入りましょう?外で立ち話ってのもアレだし」
「賛成」
中に入り、イスに腰掛けた所で本題に入る。
「でさぁ、ひとつ聞きたいんだけど。アリスさんとあの人ってどういう関係?」
「…彼との関係?」
「うん、あまり会う機会が無かったから記憶が曖昧なんだ。出来れば説明して貰えると助かる」
「良いわ、但し一度しか言わないから良く聞いておいてね」
「ウイっす」
「……実は彼と初めて会ったのはそこまで昔では無いの、貴方よりは早かったというだけで。
けれど不思議な人だったわ…彼のデータは知ってるでしょう?そう、それ。100にも満たないボケ投稿数なのに星の合計がそれなのよ?可笑しいわよね、ホント。笑っちゃうくらい、彼は人を惹きつけるのが上手だった…いえ、アレは最早技術うんぬんじゃなかった、天性のものよ。確信を持ってそう言える。じゃなきゃ引退するって言ったって、あんな多くのユーザーが集う筈ないもの。
始めは魔理沙みたいな印象を受けたけれど…彼はあたしを一途に愛してくれた。周りが囃し立てても、そんな視線を物ともせずに。
それであたしも決心したの、この人となら一緒になっても良いかなって。想いを打ち明けたら彼はとても喜んでくれたわ、まるで小学生みたいにね。それからは毎日が充実した素晴らしい物になったの…霊夢たちも暖かく祝福してくれたし。
本当は宵闇妖怪のお題を連続投稿してた時、彼は真っ先に打ち明けてくれてたの。
"これが終わったら引退する"
って。目が本気なのは一目瞭然だったから、無駄な抵抗は出来なかった。
覚悟はしてたのだけど…いざ目の当たりにすると…決心が、揺らぎそうになって…ッ、だって!せっかく幸せを掴んだと思ったのよ⁉︎今更独りきりなんて…耐えられる筈ないじゃない!だからあたし…!
ごめんなさい、熱くなり過ぎたわね…話せるのはこれくらいよ、少しはお役に立てたかしら?」
「そうだったんだ、良く分かったよ。話してくれてありがとう」
ほんの数秒、二人の間に沈黙が流れる。それを嫌ってか、アリスが再び口を開く。
「何か辛気臭い雰囲気になっちゃったわね、今お茶受け用意するからちょっと待ってて」
「あ、だったら にとり's工房 はテーブルの上に置いとくから」
「ありがとう、後で読ませて貰うわ」
アリスはいそいそとキッチンに向かい、座ったままの自転車バカは腕を組んで考え込む。
(3日ぶりにログインしたあの日、既にたいぞうさんは皆に別れを告げてる最中だったんだ…今思うと危なかったな。あの時、年末からボケてに参加したユーザーであるしんたんに知らせを受けなかったら、彼に行ってらっしゃいを言う事なんて出来てなかっただろう。アリスさんを保護することだって…
いや、よそう。何はともあれ間に合ったんだ、それで充分だ)
「ねぇ、自転車バカ?」
「呼んだー?」
「貴方って確かコーヒー飲めないのよね?カフェオレで良いかしら?」
「飲めない。っつーか飲みたくない。カフェオレでお願いしゃーす」
「はいはい、分かったわよ」
その後。世間話に花を咲かせたり、アリスの持っている本(魔道書は理解出来ないし出来ても意味がないのでそれ以外)を読ませて貰うなど、まったりと過ごして暫く経過。
そろそろ退散しようと思い、アリスを探してうろつく。
(まさか東野〇吾作品が幻想入りしてたとは…しかも入手先がこうりんマートだと?いつか行ってみよう…!じゃなくて、アリスさんはどこだろう。アレが無いと帰れんからなぁ〜っと、この部屋かな?)
目星をつけた部屋をノックと同時に開ける。
それが悲劇の始まりとも知らずに。
「アリスさーん、そろそろ"にとり's工房"の原本返してほ…」
部屋の中では、下半身だけ下着姿になったアリスがベッドに寝転がっていた。
「あ…//」
「えっと…その〜…」
「…何よ」
あ、目が座った。
ヤバイ、これはヤバイ!ひっじょーにヤバイ!アリスさんの着替え?を目撃してしまった!クソっ、ノックしてすぐにドア開けたのが間違いだったか!いや待て落ち着け!今必要なのは懺悔では無くこの場を生きて潜り抜ける為の言い訳だ。考えろ、考えるな、感じるんだ…
アレ?考えないと駄目じゃね?あーもう駄目だ!何も浮かばねえ!最早ここまでか!大体ピンクのパンツってどういう趣味してんだよ!最高かよ!何でそんな中途半端な格好でベッドに寝転んでんだよ!そもそもあの服ってワンピースタイプじゃなかったっけ!?畜生!こうなったらやけくそだ!
「あ!後ろに幽霊が!」
「ッ!?」
それは何となく言ったのだ。大して考えた物では無い。本当に思い付きで適当だったのだ。
しかし、何故か効果はてきめんだった。
自転車バカに矛先を向けていた怒りが一瞬で消え失せ、音を立てて振り返り窓を見た。
その隙に逃げれば良かったのだが、出来る訳が無かった。
アリスが窓を見ると同時に、それまで家事をしていた人形たちが一斉に彼女の元に集い臨戦態勢を取ったからだ。
怖がりなどというレベルでは無い事は、誰が見ても明らかだ。完全に憶測だが、彼女は何かトラウマに近い経験をしたのかもしれない。
居ないと分かると心底安堵し、人形たちと一緒に更なる怒りで睨んできた。
「一応確認させて、今の発言には悪気も他意も無いのよね?」
「う、うん。この場から逃げる為だけに適当に言いました」
「はぁ~~……」
「あ、アリスさん?」
「一つ約束してちょうだい。
”あたしの目が黒い内は、二度と幽霊なんて単語を口にしない”
って」
「や、約束します」
「そう、ありがとう……
でも本当に言わないか不安だから身体にも教えてあげるわね」
「嘘だろ」
魔法の森に二度、男の悲鳴が響いた。
◆
「あやや、そんな事が…ご愁傷さまです」
「フローリングに正座は辛いわぁ、しかも目隠し&手足完全拘束っすよ?暗闇で聞こえてくるのはドスの聞いた小言のみ。もうね、心が折れるかと…」
「うわぁ…」
「許してもらえたのが唯一の救いっすよ」
「結果的に人里で俳句の販売が出来てるから良かったじゃないですか、次から気をつければ大丈夫ですって。ね?」
「もうこのメインストリートを歩けないかと思いましたよ…そんな事より今日は以外と売れましたね」
「そうですね、11部の売り上げは今のところ過去最高じゃないですか?」
「確かに」
「さて。これで今日はやる事無くなった訳ですが、これからどうします?」
「うーん、日は暮れたけど時間はまだ余裕があるし…」
「そ、それならどこか行きませんか?」
「その案には賛成なんすけど…出来ればもう歩きたくないっすね」
「ふむ、それは至極最もな意見ですね…閃いた」
「通報した」
「混ぜっ返さないで下さいよ、せっかく思い付いたナイスアイデアが消えちゃうじゃないですか」
「自分で言うかよ…どんなアイデアです?」
「景色のいい場所を知ってるんです、そこへ行きませんか?勿論飛んで行きますから、貴方が歩く必要は無用です。どうですか、素晴らしいでしょう?」
「…異議なし!」
気力すら残ってないからしょーもないボケにゃ突っ込まんぞ。
文に抱えられ飛ぶ事、約30分。目隠しをさせられて着いた場所は、小高い丘の上に立つ灯台の頂上だった。堪らずフェンス際まで寄る。
「おぉ…こりゃ絶景っすな」
「この高台は元々火消しが見回りに使ってた場所なんです、今じゃただの観光スポットですけど」
「人里が一望出来るのも納得出来るや…あ、メインストリートってあんな長かったんだ。へぇ〜」
「ライトアップされた街が良く見える、私のとっておきの場所です。ほら、あそこが迷いの竹林ですよ」
「ほえー、一部だけ若干明るいのが永遠亭っすか?」
「はい、貴方が入院してた場所です。そして、私と貴方が初めて出会った場所の近くでもあります」
「思い出した、あん時妹紅って人に焼かれそうになったんすよ。向こうの勘違いでね」
「そんな事もありましたねえ…ま、一部始終は上から見てましたけど」
「なっ…!まぁいいや。あれから約半年かぁ、懐かしい」
「色々ありましたねぇ…」
「あ、そういえば」
「?」
「俺が入院してた時の話でひとつ気になるのがあるんすよ」
「どんな事ですか?」
「周り曰く
"二度と目が覚めない状態の寸前まで行ってある日突然目が覚めた"
って…」
文の羽が僅かに動く。
が、それは彼には分からなかったようだ。
「目が覚めた時のことを聞いてもはぐらかされるだけで教えてくれないんすよ…何か知ってるんなら教えて下さい、俺はどうなって目が覚めたんです?」
「…知りたいですか?」
「出来れば」
(……どうやら、言う時が来たようね)
「か、簡単なことですよ…………したんです///」
「え?何て?」
「…………ス、したんです///」
「すんません、出来ればもう少しでかい声」
「だからぁ!頬にキスしたの!///」
「…え?」
笑ってしまいそうになった自転車バカだが、文の顔が赤いのを見て冗談でないと気づく。
「そうか、文さんがあの時涙目だったのはそういう事だったんすね…でも、どうして俺なんかに?部下へのサービス良すぎじゃないっすか?」
「見れなくなったからよ…貴方を、部下として」
「……?」
「初めは、ただの"使える駒"としか見てなかったの。散々文句言われたけど半分は私のせいだしね」
「半分…?」
「で、でもね、⑨のライブの頃から"あぁ、この人は表裏の少ない良い人なんだな"って…貴方を見るようになったの。思えばあの頃からよ…
貴方とただの部下として付き合えなくなったのは。だって、そうじゃなきゃ抱き抱えて飛ばないって…そもそも下請けとして雇ってたかどうかも怪しいのに」
さまざまな光を放つ街を眺めながら、文はフェンスに手を触れ更に続ける。
「貴方が意識不明になったって聞いた時、持ってた携帯を落としそうになったの。舞踏会を開くにあたってスキマ妖怪が協力してくれるって言ったのを伝えようとしてた最中だったから…。
一瞬で目の前が真っ暗になってね、気がつけば永遠亭に居たの」
掛ける言葉が、何も出てこない。
フェンスから離れ、そっぽを向いて話す。
「ホント、鳥頭も良いところよね私って。失いかけて、やっと気づいたんだもの…私は貴方を部下なんかじゃなく、想い人として見てた事に」
「文さん…」
振り返って高鳴る鼓動を感じながら、言葉を紡ぐ。
「ねぇ、もう我慢出来ないの。もうこれ以上、自分に嘘はつきたくないの…!だから私と…私と…!」
幻想だと思っていた。叶うはずの無い夢だと、中学に進学する頃には諦めていた。
俺は奴らとは違う。奴らみたいに、人生を謳歌する事なんて出来ない。する資格が無いんだ。いつどこで命を捨てる羽目になるか分からないのだから。だから友達を作る権利なんて無い、誰かと喧嘩する事だって無い。
ましてや告白なんて在る筈が無いと、本気で思い込んでいた。
しかし今、その夢が現実になろうとしているのだ。
やっべ、これ油断したら泣いちゃうやつだ。
「私と…私と…
どうなりたいの?」
「ッ!?」
訂正、やっぱ幻想のままだわ。
盛大にズッコケ、立ち上がって突っ込む。
「いてて…
んなの知らねえよ!こっちが聞きたいわ!何これまでの雰囲気台無しにしてくれちゃってる訳!?」
「だ、だって!
いざ考えてみると既に旦那は居る訳だし、結婚してくださいは変だから付き合って下さいが妥当かな?二号になって下さいはおかしいしなぁ。
とか考えたら自分でも何が言いたいのか良く分かんなくなっちゃって」
「やれやれ、その様子じゃ文さんに浮気なんて無理そうっすね」
「ってことは無理ですか?」
「まぁどっかの統計じゃ?誰かを一途に愛する人は食糞家よりも数が少ない生粋の変態らしいんで、浮気なんてのは自然現象なんかなとは思ってますけどね」
「じゃあOKですか?」
「話は最後まで聞きなさい」
「アッハイ」
「それを踏まえても、やっぱり俺は文さん…もとい、誰かと付き合うだなんて無理っすよ。
明日もログイン出来るっつー確証が何処にも無いんすから」
「それは現実が忙しくなるという意味でですか?」
「いいえ、死ぬかも知れないからです」
「!?」
「勝ち組・負け組って話をしたの、覚えてます?」
「……トムさんとですよね?」
「ええ。この際なんで正直に言いますけど、アレは比喩じゃなく実際に存在する階級なんです。
負け組っつーのは常に自分を犠牲にして、勝ち組が快適に過ごせる環境配備をしなくちゃいけないんです。
奴らの命令には、どんなものでも従う義務があるんです。
……極端な話、死んでくれと言われたら理由も聞かずに殺されなきゃならないんすよ」
「そ、そんな・・・!!」
「だからね、文さん。俺は此処にログイン出来るだけで幸せなんすよ。
貴女は生まれて初めて出来た知人で、
尊敬する上司で、
友人なんです。
これ以上俺を幸せにしないで下さい、死にたくなくなっちゃうじゃないっすか」
「・・・ッ!」
泣きそうな顔で、それでも微笑む。背を向け立ち去ろうとする彼の背には、哀愁が漂っていた。
何でよ。何で二十歳そこそこの若者が、こんな苦労しなきゃいけないのよ・・・!
堪らず駆け寄り、羽まで使って抱きしめる。この温もりが無くなるなんて、そんなの許さない。
絶対に許されない。
「……何してんすか?」
「お願いだから、もっと。叶いもしない夢を願ってよ。若者らしく大言壮語してよ。自画自賛してよ。子どもみたいに騒いでよ!」
「してみたいっすね、それ」
「幸せを感じることが不幸になる?ふざけないでよ!だったら何でこの世界に来たの?どうしてヘルメットを買ったの?
幸せになりたいからでしょ!?
辛く苦しいだけの人生が嫌だから、安らぎを求めたんでしょ!?
罵倒されて踏みにじられるのが嫌だから、一緒に過ごすと楽しくなれる友達が欲しかったんでしょ!?
心から愛して愛される恋人が欲しかったから、”綿月依姫”と繋がったんじゃないの!?」
「…ッ!?文さん、アンタまさ…ってえ!」
言葉を遮るように突き飛ばし、地面に押し倒してマウントポジションを取る。顔を挟むように両手を付き、懇願した。
「貴方があの人を好きだって事は理解してる!私に勝ち目がないのは分かってる!
だけどそんなのどうだって良いの!」
「……」
「貴方が居なくなると悲しむ人は、此処に居るの。今まで誰も、そんな事言う人居なかったかもしれないけど。
貴方はもう独りじゃないの、簡単に死なないで。
明日も明後日もその先もずっと、此処に来て?」
あの二人を幸せに出来ない俺は、君と付き合う資格が無い。悪いが他を当たってくれ……告白してくれてありがとな、凄く嬉しかった。
と去り際に言いかけた言葉を口にする事は無く、返事の代わりに優しく抱きしめた。
透明なドーム型天井の下で。二人は気が済むまで抱き合っていた。
続く。
おまけ。
自転車バカ「地面ちょー冷たいから今背中だけすっごい冷えてる」
文「気温はちょうど良かったんですが床暖房までは手が回らなかったっぽいですね」
自転車バカ「ついでに言うとコケた時に擦りむいた鼻も痛い」
文「マジすんませんでした」