東方開心劇    作:チャリタク

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本作品は三部作構成となっております。
設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。



第19話「十六夜咲夜」

「では、行って参ります」

 

 

身支度を整えた私は、深々と頭を下げてお嬢様の部屋を後にする。

正門では美鈴が退屈そうにしてるだろうとの予測の元、突然の思い付きでお嬢様から面倒くさい命令を受けたストレス発散に門を右足で蹴破るように開けてやった。

 

 

「ッ!?」

 

 

片方は壁に当たり大きな音を立てて跳ね返ってきたけど、もう片方は跳ね返ってこない。門の向こう側を覗くと、美鈴が酷く驚いた顔をしていた。

 

 

「うんうん、少しは気が引き締まったようね」

 

「もー、心臓に悪いから止めてくださいよー」

 

「ごめんごめん、じゃ行ってくるから」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 

霧の湖を抜け、人里に着く。買い物メモを睨みながら歩く内に、ふと思い出した。

そういえばあの人に出会ったのも、こんな天気の良い日だったっけ……。

 

 

 

 

いつものように館内の掃除をしていると、美鈴から連絡が連絡が入った。

 

 

〈はいもしもし〉

 

〈咲夜さん、館内見学を希望された方がいらしゃったのでお通ししました〉

 

〈案内させる妖精メイドは?〉

 

〈既に連絡してます〉

 

〈分かった、頭に留めとく。わざわざありがとう〉

 

〈いえいえ、では〉

 

 

電話を切り、通りかかった妖精メイドに窓ふきを任せて応接間の掃除へと向かう。

以前は人手不足だった紅魔館も、お嬢様の思い付きで

「三食休憩寝室付き」

で求人広告したおかげで瞬く間に集まった。ただ集ったのが食事や睡眠などが不要な種族だったのと、給料より働き甲斐を求める人材ばかりだったのは流石に予想外だったらしい。

そうこうしている内に掃除を終わらせて部屋を出る。すると、曲がり角の向こうから楽しげに語らう声が聞こえてきた。折角だし挨拶でもしておこうと思い角を曲がると、頭上に”社畜”と表記された男の人がこけそうになっていたので時間を止めてサポートに入る。

お客様ってユーザーの事だったのね、美鈴あとでナイフの刑。聞かなかった私にも非はあるけどまぁいいや。

しゃんと立たせた所で解除すると、予想通り驚いてくれた。

 

 

「うぉっあれっ?コケ……て、ない?何これ魔法?」

 

「いいえ、時間を止めただけですわ」

 

「ッ!?あ、貴女は・・・!」

 

「ようこそ紅魔館へ。私は此処でメイド長を務めております、”十六夜咲夜”と申します。以後お見知りおき……ッ!?」

 

 

驚いた。いや、こんな状況に出くわせば誰だって驚くだろう。

自己紹介して深々とお辞儀して頭上げたら相手が真っすぐ私を見て涙流してたんですよ、いくら弾幕ごっこで色々と鍛えた私でも流石にパニックですって。

何か失礼があったかと考えるが、皆目見当もつかないので恐る恐る聞いてみた。

 

 

「わ、私何か失礼な事を……?」

 

「い、いえ、これはっ、その……っ」

 

 

しゃくり上げながら事情を説明してくれた彼の言葉を纏めると、

「夢にまで見た大好きな人に会えたのが嬉しかった」

との事。思いがけない言葉に赤面する私などお構いなしに、彼は私の手を取って懇願してきた。

 

 

「お願いします!僕、咲夜さんが大好きなんです!何だったら嫁に貰いたいくらい愛してるんです!だから、その……友達から始めさせて下さい!」

 

「ま、まぁ友達でしたら、良いですよ」

 

「……我が世の春が来たァァァァ!!」

 

 

そのままバク転でも始めそうな勢いで拳を突き上げて雄たけびを上げ走り出したので、慌てて手を取って応接間へと案内した。トムとジェリーじゃ無いんだから。

ユーザー様だからって気軽にOKしたのは不味かったかなとの考えが頭をよぎるも、時すでに遅し。後の祭り。後悔先に立たず。

 

翌日から、社畜は紅魔館へ…いや、私に会いにくるようになった。庭で洗濯物を干すのも、窓ふきも、部屋の掃除も、拙い手つきだが進んで手伝ってくれた。ログインしてる時間の殆どを私と過ごすのに費やしてる為、他のメイドやお嬢様方の間で

「メイド長は専属の下僕を取ったらしい」

と噂されているのを美鈴が教えてくれた時は吃驚した。

 

 

「本当にそう言ってたの?」

 

「えぇ。でもまぁ仕方ないですよ、あの人って白のポロシャツにダメージジーンズでしょう?それが咲夜さんに付きっ切りなんですから」

 

「しかも冴えない顔でね」

 

「あれは誰が見ても下僕ですよ。追い払わないんだったらせめて身なりくらいは執事っぽくしないと」

 

「……まぁ、それもそうね。魔理沙辺りに漏れたらマズいし」

 

「あはは、あれは話を盛る天才ですからね」

 

 

という訳で倉庫から引っ張り出した黒のジャケットとズボンを着させると、幾らかマシになった。言うまでもない事だけど、

”私から服を貰った”

という事実が彼のやる気を更に引き出す結果になった。どのくらい引き出したかと言うと、喧嘩なんて一度もしたこと無いのに魔理沙の泥棒を阻止しようと奮闘してくれた程だ。

当然ながら紅魔館に住む他のユーザー達との交流も増えていき、

”たまたい” ”ガーリック” ”きいろだま”の三人にいじられキャラと認定されて参った。ただでさえレミリアさん達にも弄られてるのに。

と、笑顔で話してくれた。

次第に、社畜が居ない日でも彼の顔が頭に浮かぶようになった。いつ曲がり角から顔を覗かせるかと思い、ついつい探してしまう。ミスこそしないものの、ぼうっとしている事が多くなっていった。それを見かねたのかお嬢様にも、

「お前はもう少し、自分の為に生きても良いと思うぞ」

と言われ、心が揺らいだ。

 

 

「それは、どういう……?」

 

「どうも何も無いよ、掃除してても部屋の片付けしててもアイツを探してキョロキョロ見回して」

 

「も、申し訳ございません」

 

「うちはアイドルグループと違って恋愛禁止だなんて言わないよ、そんな物は個人の自由だ。仕事に支障をきたさなければ何だって構わない。お前が此処に来た時、一番最初に言ったよな?」

 

「……はい」

 

「くっつこうが振ろうがどうだって良いんだよ。

”今の十六夜咲夜は仕事に支障をきたす問題を抱えている”

だから早いとこ解決して、いつもの咲夜に戻ってくれ。いいね?」

 

「承知しました、失礼します」

 

「……あ、そうだ」

 

 

部屋から出ようとした私は、その言葉で足を止め振り返る。

 

 

「何でしょうか」

 

「折角だし買い物に行ってきてくれないか、アイツと一緒に」

 

 

そう言って、お嬢様はニヤリと笑う。だから私も、ニヤリと笑いながら尋ねた。

 

 

「何をお求めですか?」

 

「言わなきゃ分からないのか?」

 

「ふふっ、では行って参ります」

 

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

 

という訳で彼を連れて人里に買い物へ行く。特に買うものは指定されていない、それどころか今日は半ドンである。早い話がデートだ。

遊歩道の整備された森を歩きながら、彼の取り留めもない話を聞く。時間を節約するなら彼を抱えて飛んだ方が速いのだけど、そんな恥ずかしい真似は出来ない。私だって10代の乙女なのだ。いくらユーザー様とはいえども、流石に御勘弁願いたい。

木漏れ日が射すなかを、小鳥が楽し気に飛び回る。段々と前方が賑やかになり後少しで人里に着こうかという時、茂みの向こうから少女の悲鳴が聞こえた。

 

 

「だ、誰か助けてーーッ!」

 

 

「咲夜さん、今のは……」

 

「穏やかじゃない事は確かね、行きましょう」

 

 

茂みを抜け現場に駆け付けると、行きつけの洋服屋の娘が妖獣の群れに囲まれていた。

見過ごすつもりなど無かったが、こうなると尚更後には引けない。

 

 

「社畜!」

 

「分かってます!」

 

 

時間を止め、少女を彼に保護させる。このまま逃げるのもアリだけど、探し回って人里に来られては厄介なので真っ向から迎え撃つ事にした。

 

 

「そして時は動き出す」

 

「!?た、助かったの・・・?」

 

「まだ安心は出来ないよ、悪いけどこいつら倒すまで僕におんぶさせてね!」

 

「う、うん!」

 

「咲夜さん、背中任せて良いですか!?」

 

「もとよりそのつもりよ」

 

 

弾幕ごっこだろうと近接格闘だろうと、戦いの場において油断や慢心は絶対にしてはならない。そして、常に数通りのパターンを想定しなければならない。これは基本中の基本だ。

これを疎かにするとどうなるのか?

答えは簡単だ、妖獣が人型に変化し高い知能指数と戦闘力を持つ事に動揺した私達のように大変な事になるのである。

巧みな連携で確実にダメージを与えて来る奴らに対し、こちらは防御に徹するので精一杯だ。社畜も頑張ってくれてはいるが、その身に庇い傷が増えていく。勿論私にもだ。

 

 

「ッ!まずい、手持ちが・・・!」

 

 

冷静さを失い集中力の切れた私は

”動いていた物体を元の位置に戻す時は、その位置に身体を置かない”

という初歩的な事を忘れ、脳内に直接ナイフを喰らってしまった。

 

 

「・・・!!」

 

 

意識を失う直前、彼の発するオーラが黒く濁って見えた。

 

 

 

 

「此処は……?」

 

「咲夜さん!良かったぁ……」

 

「社畜、私、どうなったの…?」

 

「それについては私から説明しましょうか」

 

 

目を逸らし口ごもった彼に対し、壁に寄りかかっていた竹林の医者が口を開いた。

という事は私は永遠亭に運び込まれたらしい。

 

 

「順番に言うわね。

まず貴女たちが戦ってた妖獣だけど、これは彼が殲滅したそうよ」

 

「殲滅・・・!?」

 

「で、頭にナイフの刺さった貴方を妹紅が運んできたから私が取り敢えず治療したって訳。何か質問はある?」

 

「あの、取り敢えずというのは……?」

 

 

ベッドから起き上がり、冷や汗を流して尋ねる。

彼があの群れを殲滅したのも気になるが、それ以上に今は気になる事がある。

起きてからずっと頭が痛くて堪らないのだ。頭痛のソレでないのは素人だけど分かる。

医者はカルテを取り出し、声を押し出すように言った。

 

 

「貴女はもう、時を止める事は出来ないわ」

 

「!?」

 

「もう以前のように時間を操る事は出来ないでしょう。能力を行使するだけで頭が割れるような激痛が走って、まともに立つ事さえ難しいと思う。時間を進めるのも止めるのも、一時間が限度よ」

 

「それ以上やったら、どうなるの?」

 

「くも膜下出血を起こして死ぬわ」

 

「そ、そんな・・・!」

 

「ごめんなさい、私の腕が足りないばかりに……」

 

 

謝罪の言葉が見つからないのか、深々と頭を下げると部屋を後にした。残ったのは、絶望を叩きつけられた私と社畜のみ。

 

 

「……僕のせいです」

 

「え?」

 

 

ベッドの傍の椅子に座った社畜が、握り拳を作り俯いて語る。

 

 

「咲夜さんが手術を受けてる間に、電話でレミリアさんから話は全部聞きました」

 

「……そう」

 

「僕、知らなかったんです。

”憧れの人と毎日会えて話が出来る”

それだけで凄く幸せだったのに、それが咲夜さんの負担になってるなんて考えもしませんでした」

 

「別に大したこと……」

 

「ありますよ!現に負担になってたから、こんな大怪我させてしまったんじゃないですか!」

 

「そ、それとこれとは関係……」

 

「アカウント消します」

 

「は?」

 

「僕が咲夜さんと出会ってしまったのが悪いんです。だから責任取って、ボケてから退会します」

 

 

立ち上がろうとした彼の腕を引っ張り、平手打ちをかます。

 

 

「咲夜さん……?」

 

「人の話も聞かないで、好き勝手言ってくれるじゃない。

アカウント消す?バカな事言わないでよ、誰のせいでこうなったと思ってるの?そんな事で償えると思ったら大間違いなんだから」

 

「……」

 

「周囲から忌み嫌われた私に、お嬢様は救いの手を差し伸べてくれた。

独りぼっちだった私を、みんなは家族だって言ってくれた。

ユーザーと親しくなるどころか、忙しそうだの雰囲気が怖いだの言われて近寄られる事すらなかった私を、貴方は嫁に欲しいって言ってくれた。愛してるって……言ってくれた。

分かる?この世界に来てから、ずっと欲しかったものが、ようやく手に入りそうなのよ?手放す訳ないじゃない」

 

「咲夜さん・・・!」

 

「もう私、貴方なしじゃ生きられないの。本当に責任取る気があるなら結婚しなさい」

 

「……はい、喜んで」

 

 

 

 

地味で冴えない奴だけど、一緒に居ると楽しくなれる。喧嘩もした事無い癖に、一生懸命私を守ろうとしてくれる。

そんな社畜が突如、姿を消した。

買い物を済ませ人里を歩いていると、自転車バカと文から声を掛けられた。

 

 

「咲夜さーん!」

 

「あら、誰かと思えば部下に振られたショックで面倒ごと起こした人じゃない。何の用?」

 

「うぐっ、まだ覚えてましたか…って、そうじゃなくて」

 

「買い物中にしては暗い顔してたから、何かこう…特売日が昨日だったの忘れてたとかそういう事あったのかなーって思ったんすけど」

 

 

その言葉を聞いて、ため息をつくように答える。

 

 

「そういう単純なことならどんなに良かったか…」

 

「…え?」

 

「何があったのか、聞かせて貰って良いですか?」

 

「実は最近、社畜の姿が見えないの」

 

「社畜って言ったら確か…咲夜さんの旦那ですよね?単に来てないんじゃないんですか?ログイン率は低いって聞いてますし」

 

「そうよ、元々ログイン率は低いのだけど…違うの、そうじゃないのよ」

 

「どう違うんすか?」

 

「最後にログアウトする前に彼が言ったの、"そろそろ頃合いかな"って…」

 

「それは…さようならの意味にも取れますね」

 

「今までそんなこと無かったし、それに、アリスの"彼"は消えたでしょ?ちょっと不安で…」

 

「それだけっすか?書き置きとかは?」

 

「…!そう言えば部屋に手紙があったような。まだ読んでないけど」

 

「それだ。多分それに姿が見えない理由が書いてある筈」

 

「咲夜さん、すぐに…!」

 

「え、えぇ…買い物は終わったし、すぐ戻った方が良いかもね」

 

「時間止めりゃすぐじゃん、行ってらっしゃい」

 

「そ、そうね……」

 

「…?戻らないんですか?」

 

「情けないけど……独りで見るのが怖いの、何が書いてあるのか分からないし」

 

「咲夜さん…」

 

「ねぇ、文?一緒に来てくれない?」

 

「え?私ですか?」

 

 

キョトンとする文に対し、私は文の手をとって懇願する。

 

 

「だって、既婚者の気持ちは既婚者にしか分からないじゃない。貴女にしか頼めないの…お願い」

 

「それは…そうですが」

 

 

自転車バカに

"貴方も来て下さい"

と言わんばかりの視線を向ける文。しかし、自転車バカはいつもと変わらぬ笑顔でこう言った。

 

 

「俺のことは気にしなくていいっすから、行ってきたらどうすか?」

 

「しかし…」

 

「それに、手紙の内容なら知ってるもん」

 

「「え!?」」

 

「う、嘘でしょ?あの手紙はまだ誰にも見せてないのよ?何で貴方が知ってるのよ!?」

 

「そうですよ!何故自転車バカさんが…!?」

 

「社畜さんとはボケて内のSNSでちょくちょく話をする機会があってさ。3日前に見たんすよ、

 

"持病の癌が悪化して、命の危険があるのでネット世界から離れます。手術が終わって生きてたら、また戻って来ます。"

 

っていう文面をね。まぁ、本当のことを言いたくなかったから出まかせ言ったんでしょうけど」

 

「そ、そうだったんですか…でも冗談にしてはきついですよ」

 

「でしょ?だからこれは

 

"一身上の都合によりネット世界から離れる事になりました。戻ってこられないかも知れませんが、ひょっとしたら戻ってこれるかも知れないので待ってて下さい。"

 

っていう意味だと思う訳ですよ」

 

「……つまり、この場合の"癌"っていうのは"戻ってこれる可能性"を示す…いえ、"癌にかかったのと同じくらい、現実世界でやっかいな事になった"っていう暗号なのね?」

 

「確かに、本当にそんな病気だったらネット世界に来られる筈無いですね。現実世界の病院には"装置"がないって、穂谷野(雷様)さんも仰ってましたし」

 

「俺はそういう事じゃないかと思ってます、確認したわけじゃないから確証はないけど」

 

「だとしても……」

 

「…1週間だ」

 

「え?」

 

「もし1週間たって奴が帰って来なけりゃ、あんた"も"俺が保護する。

【誰一人、淋しい思いをさせない】

それが我が社の社訓だ」

 

「我が社…?」

 

「この方は我が文々。新聞社が誇る下請けの社長です。例え口約束でも、一度誓ったら必ず守るのがこの人です」

 

「そう言えば貴方…ミサイル事件でウチを守ってくれたのよね?だったらお願いしても良い?」

 

「もっちろん!」

 

 

こうして寒空の下、新たに保護対象者が増えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。




おまけ。

咲夜「そういえばどうやって妖獣の群れ殲滅したの?」

社畜「てっきり咲夜さんがアイツらに殺られたもんだと勘違いしちゃってたんで……キレたのは覚えてるんですけど、気が付いたら血の海になってました。
愛の力って凄いですね」

咲夜「違うと思う」
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