東方開心劇    作:チャリタク

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本作品は三部作構成となっております。
設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。



第24話「それ以上いけない」

「えーと、302号室302号室……お、ここだね」

 

「ですね」

 

 

自転車バカの見舞いに来た、にとりと文。病室の札を確認し引き戸を景気よく開けると、ベッドに横たわる彼はゆっくりとこちらを向いた。

 

 

「……二人とも、来てくれたんすね」

 

 

ベッドから起き上がろうとするが、激痛が走り苦痛に顔を歪める。

 

 

「いっ……!」

 

「む、無理しないで下さいよ。まだ一週間なんですから」

 

「……聞いた通りの重体だね」

 

 

酸素マスク、点滴、包帯を巻かれ三角巾で固定された両腕。

顔色が思わしくない自転車バカを見て、改めて事の大きさに身震いする二人。

文は顔を覗き込むようにして聞く。

 

 

「体調はどうですか?」

 

「まぁ、だいぶ良くはなりましたよ。直後とかクッソ痛かったっすからね」

 

「そんなに酷かったのかい?」

 

「麻酔が切れた反動で気持ち悪いし、痛み止めの効果が無くなったら傷口が痛みだして動くことすら出来ないし」

 

「あやや……お風呂とかはどうしてるんですか?」

 

 

率直な疑問を投げかけた文だったが、何故か自転車バカは赤面しだした。

 

 

「ど、どうかしましたか?」

 

「……優曇華マジ許すまじ」

 

「何があったんだい?」

 

「簡潔に言いますね、アイツ発情期だったのに俺の風呂入る手伝いしてたんすよ」

 

『うわあ』

 

「背中洗うのに胸押し付けてくるし息子(柿の種)はしっかり反応するしそれ凝視されるしで最悪っすよ、思い出すだけで色々と腹立つ」

 

「なるほど、言語と行動で童貞心を弄ばれたのか」

 

 

何気なくにとりが口にすると、自転車バカは俯いて感情を吐露した。

 

 

「……リア充がそんなに立派な人間かよ。セックスの経験の有無が、差別されなきゃいけないほど重要なステータスなのかよ。何で童貞ってだけでボロクソ言われなきゃいけないんだ」

 

「じ、自転車バカさん……?」

 

「ふむ……」

 

 

どうやら、弄ばれたのは己の存在価値のようだな。

言った本人はそんなつもり無かったかも知れないが、発情期の時点で思考回路は狂ってただろう。

 

腕を伸ばし、頭を優しく撫でる。

 

 

「いちいち気にするな、そんなものは酔っぱらいの戯言と同じだろう?」

 

「にとりさん……」

 

「それに、奴はリア充じゃない。そんな真似するのは世間一般では変態と呼ばれる行為だ」

 

「大体、自転車バカさんはボケての幻想郷(仮想空間)の設定で"R-18禁止"にしてるでしょう?

いざという時は制御装置が作動しますから心配無用ですって」

 

「そーいやそーだ」

 

 

三人で雑談に花を咲かせていると、レミリアと咲夜がドアを申し訳なさそうに開いて覗き込んだ。

 

 

「……そろそろ入ってもいいかしら?」

 

「あ、お二人も来てくれたんすね。美鈴さんその後どうっすか?」

 

 

咲夜がドアを開けながら、主人に写真を手渡す。紅魔館の正面玄関前で撮った集合写真だ。中央にいる新郎と新婦が照れくさそうに笑っている。

 

 

「問題なしよ。この通り挙式にまでこぎつけたから」

 

「おぉー!美鈴さんドレス似合わねー!」

 

「ちょっ、開口一番で何て失礼な事いうんですか!」

 

「盟友、ひょっとしてまだ根に持ってる?」

 

「いいのよ、似合ってないのは事実なんだし。ねぇ咲夜?」

 

「えぇ。寧ろそれで式の間中みんなでイジって遊んでましたから」

 

(((お、思ったより容赦ねえ・・・!)))

 

 

三人は息をのむが、レミリア達は楽しそうに式の様子を話してくれた。

まさか美鈴さんいっつもこんな感じで弄られてんの?それはそれでキツイな。

 

 

「……いけない、忘れる所だったわ」

 

「え、その話しに来てくれたんじゃないんすか?」

 

「違うわよ、いやまぁそれも話に来たのは来たのだけど」

 

「来たんかい」

 

「ねぇ自転車バカ。貴方ホントに怒ってないの?」

 

「……はい?」

 

 

理解が追いつかないので聞き返すと、レミリア達は悲しそうな表情を浮かべて言った。

 

 

「だって、私達が土下座までしてお詫びに何かさせてって言ったのに何も言わなかったじゃない」

 

「あの時は納得しちゃったけど、よくよく考えたら

”流石にそれは虫が良すぎる”

って事で満場一致したの。ホントに何もしなくていいの?」

 

 

頭が掻けるなら間違いなく掻いていただろう。困った自転車バカは考えに考えた末、ある結論に達した。

 

 

「……じゃあ俳句と雑誌の定期購読でお願いします」

 

「咲夜、異論は?」

 

「ありません」

 

「咲夜さん、文々。新聞は?」

 

「要りません」

 

「いやあ良かっ……待てコラ!何しれっと契約切ってくれてんですか!」

 

「だって新聞も俳句も結局は売り上げアンタのとこに行くんでしょう?だったら……ねぇ、お嬢様?」

 

「それな」

 

「いやだから”それな”じゃ無くてですねー!」

 

「盟友、喉乾いてないかい?何か買ってこようか?」

 

「お、あざーす。じゃあ麦茶で」

 

「飲んどる場合かーッ!」

 

 

この一部始終を、永琳は監視カメラで見ていた。

 

 

 

 

適度に差し込む日差しを浴び竹林内を歩く妹紅と自転車バカと、退院と聞いて付き添いで来たにとり。妹紅がにやけながら話しかける。

 

 

「あそこに二回も運び込まれたユーザーはお前が初めてだろうよ、この調子だと三回目もありそうだな」

 

「出来ればもう行きたくないっすね、病院食も食べ飽きたし」

 

「神社で安全祈願のお守りでも買ったほうが良いんじゃないかい?効果があるかどうかは別として」

 

「お守りも効かない程の不幸が自転車バカの身に……つってな!」

 

「一回目は植物人間で、二回目が生死の境目を……あれ?段々酷くなってね?次死ぬパターンかな?」

 

「安心しろ、香典くらいは出すさ…2度と"此処"へ来られなくなるからあんま意味ないけどな」

 

「それは困るなぁ……」

 

 

その言葉を聞き、立ち止まるにとり。

 

 

(自転車バカが…居なくなる…?)

 

 

「……どったの、にとりさん?」

 

「あ、いや、何でもない」

 

「おかしな奴だな……まぁ良い、出口だ。じゃあな」

 

「バイバーイ……さて、どうしよう。やる事あり過ぎてどっから手ェつけたらいいか分かんねえ」

 

「なら最初に私の工房へ来ると良い、装備一式を修理してあげるよ」

 

「じゃあそれで」

 

 

そう言って歩き出す自転車バカを、にとりが制す。

 

 

「あれ、飛ばないのかい?」

 

「良いよ、別に急いでる訳じゃないし。それに、こっからロープウェイまで大した距離無いじゃん?」

 

「まぁ君がそれで良いなら」

 

 

流石に一ヶ月じゃ街並みなんて変わらんか。

と心の中で呟く自転車バカ。人里の端を縫うように移動しているので交通量は少ないのだが、彼を見かけた顧客は冷やかし半分に心配してくれた。

一人や二人ではなく通りかかった人から次々と話しかけられるのを見て、にとりは文の記事の反響を再確認した。

いや、違うか。あの号外が目を引いたというよりは、盟友の活動や人柄が皆に認められてるって感じだな。

 

 

「……ふっ」

 

「うん?何か言った?」

 

「いや、何でもないよ……うん。引っ掻いたような傷こそあるけど問題ないね、動作もばっちりだ」

 

「本人は生死の境目を彷徨ってたのにほぼ無傷かよ……流石にとりさんのメカ」

 

「褒めてもお茶しか出ないぞ?こんな風に」

 

 

伸縮自在のアームを巧みに使い、視界に映らない場所から2人分の飲み物が机に運ばれる。一口飲んで落ち着くと、にとりが目線を下げたまま口を開く。

 

 

「ここへ来る途中でも言ったけど、仲間想いもほどほどにしてくれ。君が"此処"から引退するならともかく、過保護が過ぎて死ぬなんて……私は嫌だ」

 

「マジごめん」

 

「君の目標は確か、"無くなったら困ると言われるような会社になりたい"だったね。なら下請けのままってわけじゃないんだろう?」

 

「うん、いつかは"下請けから卒業して独立する"。これが当面の目標かな」

 

「いい目標だね、きっと近いうちに実現するさ」

 

「ありがとう、お世辞でも嬉しいよ」

 

「お世辞なんかじゃないぞ、ここへ来る途中に色んな人から声をかけられたのが根拠だ」

 

「……」

 

「君が考えてる以上に、固定客は確実に増えていってるよ。もっと身体に気をつけてくれ」

 

「わ、分かった。気ぃつける」

 

「じゃないと……」

 

 

 

胸に手を当て、自転車バカの目を見て、ニカッと笑いながら話を続ける。

 

 

「ここに1人、君が消えると泣く奴が居るからね」

 

 

瞬間。にとりの笑顔にドキッとした自転車バカの頭の中を、彼女と過ごした思い出が走馬灯のように駆け巡る。そして、ある結論が出てきた。

 

 

(そうか…俺、にとりさんの事……)

 

「…?」

 

(まずいな…一緒に居る時間が多すぎて芽生えてはならない恋心が…!これトムさんにばれたら殺されるぞ)

 

「どうしたんだい盟友、じっと見つめて…私の顔に何かついてるかい?」

 

(落ち着け俺…素数を数えて落ち着くんだ…あ、駄目だ。文系だったからそもそも素数が分からん…!)

 

「ねえってば」

 

「いや、何もついてないよ。俳句モデルが溜まってるのを思い出しただけだ。片付けなきゃいけないから帰るよ、またね」

 

「……いつになく挙動不審だったな」

 

 

自宅に戻ると、既に文さんが今週の俳句モデルに応募された写真達を机の上に広げてた。

「今日からまた再開っすね」

と言うと、文さんは

「と思ったでしょう?残念、入院と聞いた時点で写真と俳句をセットで応募したので来週からいつも通りに戻るだけなんです!」

と、自慢気に報告してくれた。

そのドヤ顔さえなければ完璧だったのになぁ……。

なんやかんやで選んでいると、たまたいさんが送ってきた写真と俳句だけレベルが段違いだったので即決定。売り上げは過去最高を記録した。レミィさん俺が入院してる時も毎回買ってくれてるって聞いたし、何の前触れもなく行って驚かせてみよう。

 

 

「……という訳で、こっちが舞踏会のシード権。こっちが"ミス俳句モデル"のトロフィーです。暫定という事もあり入れ替わる可能性がありますのでレプリカですが」

 

「あら、嬉しいわね。トップだなんて。後で咲夜とたまたいを褒めておかなくちゃ♪」

 

(パタパタいってる、羽根がすっげえパタパタいってる。あんな風に動くもんなんだ)

 

「……いけない、聞き忘れる所だったわ///」

 

「何を?」

 

「舞踏会の会場よ、時間は昨年と同じでも構わないのだけど……屋外だと困るのよ」

 

「それなら心配要りませんよ、去年使った会場を既に抑えてありますか……痛っ!」

 

 

右手から何かに挟まれたような痛みを感じたので見やると、犬耳を生やしたちっさい咲夜さんが俺の手(中指の先端)を噛んでいる。何だこの生き物可愛いな。

 

 

「これが噂の"犬咲夜"ですか、噂通りちっさいですね。本家よろしく時間を操れたりするんですか?」

 

「勿論よ、それ以外も出来るのだけど…なんせサイズがサイズだから物凄く長い事止めてないといけないらしいわ」

 

「あーあ」

 

 

犬咲夜に視線をおとすと、掲げたプラカードに[私についてきて下さい]と書いてある。視線を戻し尋ねた。

 

 

「……行ってきて良いすか?」

 

「屋内と分かれば充分よ、どうぞどうぞ」

 

 

廊下をふわふわと飛ぶ犬咲夜の後ろを、黙ってついていく自転車バカ。三つ目の角を曲がった所でプラカードが出る。

 

 

[着きました、なるべく音を立てないようにしてこの部屋を覗いて下さい]

 

 

セグウェイを止め、そうっとドアの隙間(30cm)から注意して見る。

すると部屋の真ん中あたりにゆっくりと、時計盤のような銀色に光る紋章が浮かび上がってくるではないか。1分足らずで完全に描かれると、紋章の上に真っ白に光る球体が出現する。球体は少しずつ大きくなってゆき、人型になると輝きが消えた。現れた人物は辺りを見回し、鏡台に置いてある写真を持ち上げてこう言った。

 

 

「ヒャッハー!帰ってきたぜ!生きてるって素晴らしい!咲夜さんも素晴らしい!」

 

 

(帰ってきて早々なんつーハイテンションだよ……教えてくれてありがとな)

 

 

犬咲夜を持ち上げて頭を撫でると、キリッとしていた表情が(*´ω`*)モキュ~♪ って感じに変化する。

何こいつ、持ち帰っていいかな。

 

 

(でさ、咲夜さんを一番に会わせてあげたいんだけど……どこに居るか知ってる?)

 

[そういう事でしたら少々お待ちください、今連れて来ますので]

 

 

どのくらい止まっていたのか定かではないが、瞬きをすると戻って来ていた。

 

 

[連れて来ました]

 

 

咲夜が言葉を発する前に、自転車バカが肩を叩いて小声で用件を伝える。

 

 

「帰って来たよ、良かったね咲夜さん。これで君の保護も終わりだ……早く行ってあげなよ」

 

 

そう言って視線を部屋へ向けると、全てを理解した咲夜が走る。愛しき旦那の元へ。咲夜が部屋の中に入ったのを確認し、SNSで皆に知らせる。

 

 

「おし、これでOKだな。帰るか」

 

[社畜に会わないのですか?]

 

「いや、あれ邪魔しちゃ悪いでしょ。そもそも咲夜さんの保護は社畜さんに頼まれてやったんじゃないんだし」

 

[ですが]

 

「だーいじょぶだって、みんなが来るまで席外すだけだから」

 

[なら良いです]

 

「……」

 

 

良かったね、二人とも。

 

部屋に知らせを受けたユーザーが集まるまでの時間、社畜と咲夜は何も言わずただ抱き合う。互いの肩は涙で濡れる事になるのだが、それは2人だけの秘密……にはならなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 




おまけ。

レミリア「女性に頭撫でられて慰められるって……男としてのプライドは無いの?」

自転車バカ「んなもん持ってたらとっくの昔に死んでますけど何か」

レミリア「……ごめんやん」

咲夜「何故に関西弁?」
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