設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。
(なるほど、本気を出せば地球破壊は朝飯前なのか…)
SAORIとAKIKOを特殊な養液が入ったガラス管に入れ、取り扱い説明書をよむのは道頓堀野郎。某推理アニメの犯人みたく、全身が真っ黒である。部屋の中にはその他にも色々な装置があり、ちょっとした研究室になっている。ページをめくるとアラームが点滅したので、説明書を置いて画面を見やる。
(ん?心が荒んでいる者を探知する"闇の感情レーダー"に反応が……なんだ、派生世界か。まぁいい、こいつらの性能を試すいい機会だ)
意地の悪そうな笑みを浮かべ、SAORIとAKIKOに目を向けた。
同時刻。その派生世界であるボケての幻想郷では、人里の一角に建っている鍛冶屋から包丁を研ぐ音が聞こえていた。研ぎ終えた店主は水洗いした包丁を布で包み、顧客に手渡す。
「はい出来たよ。でも刃はそんなに付けてないから、お刺身とか切るのは難しいかも」
「ありがとう小傘ちゃん、買い換えずに済んだよ。スーパーじゃこういうのやってくれなくってなぁ」
「包丁を磨ぐのは難しいからね、仕方ないよ。普通は出来なくて当然なんだし」
「だよな。じゃあ代金はここに置いてくから、またな」
「バイバーイ、また何かあったら来てねー」
「切れ味が落ちたので刃を付けて欲しい」
と相談に来た顧客を見送り出す。砥石を片付ける小傘だが、ため息と一緒に呟く。
「はぁ…お腹空いたなぁ…朝食は食べたのに…ん?誰かが話してる…」
窓に近寄って、耳をそばだてる。すると、こんな会話が聞こえて来た。
「よ、朝市帰りか?それにしちゃ少ないか」
「まぁそんなとこかな、こいつが戦利品だ」
「なんかよく切れそうな包丁だな……関孫六か?」
「と思うだろ?残念、これ作ったの小傘ちゃんなんだよ」
「えっ!小傘ちゃんこんな器用な事出来たのかよ!?すっげえなおい!」
「だろ?俺も最初は…」
(あぁ、行っちゃった。もうちょっと聞きたかったなぁ…驚いてくれたから良いんだけど。良いんだけど……なんか満たされないんだよねえ。お菓子の食べ過ぎでお腹が膨れてるって感じ)
幻想郷に”異変解決ツアー”が誕生して以来。当然ながら神霊廟や星蓮船のツアーも参加者は多い。威力を最小限に抑えた弾幕を参加者の死角から放つ事で、それなりには満たされていた。
だが効果は薄く、時間が経つと元に戻るのだ。
(やっぱり、怖がってくれないと駄目なのかなぁ)
窓の外に広がる青空を見上げながら、先の見えない現実に悩む小傘だった。
(うーん、流石に階段をセグウェイで下るのは無茶だったか……けっこう傷いったな、なんて言い訳しよ……っと、この部屋だ)
すり傷のついたセグウェイを降り、とある部屋をノックする自転車バカ。手には封筒とミニサイズのトロフィーを携えている。
「失礼します、フランドール・スカーレット様。俳句モデル選考委員会の者です。弾幕舞踏会のシード権を獲得されたので色々と持って参りました」
言い終わると同時にドアが開けられ、眩しいくらいの笑顔で自転車バカに抱きつこうとするフラン。だが、フランの後ろにいるきいろだまの殺気を感じた自転車バカが全力で避けたので空振りに終わる。
「そんな睨まないで下さいよ、今日は俳句モデル選考委員として来たのですから」
「俳句モデル選考委員?なんだそりゃ?」
「お兄様知らないの?自転車バカは私が去年参加した"弾幕舞踏会"の主催者なんだよ?だからこの人がここに来たって事は……」
「そうです、きいろだまさんの投稿された写真と俳句が今週の俳句モデルに選ばれました。
そして、売り上げが姉のレミリアさんを超えて過去最大となりましたので"ミス俳句モデル"のトロフィーを持って参りました。あくまでも暫定なので入れ替わる可能性がありますが」
そう言ってシード権とトロフィーを差し出すと、これ以上ないくらいに喜びを爆発させる2人。自転車バカは紛失に気をつけるようにだけ呼びかけるとその場を後にした。セグウェイを返すためだ。
(……そういや、見舞いに来てくれた人らで小傘ちゃんが一番元気なさそうだったっけか。命の恩人だし行っとくか)
◆
(家で悩んでても仕方ないよね……とりあえず"あそこ"に行こう、あそこなら相談出来る人が沢山居るし)
作業着から普段着に着替え、唐傘を持って家を出る。通りを歩いていくのだが、ふと近道があったのを思い出す。
人通りの少ない路地まで入ると、背後から声が掛けられた。
「さっきからため息ばかりだな、どうしてそんなに元気がないのだ?」
最早振り返るのも面倒な小傘は、背を向けたまま返事をする。
「ちょっとね、自分の存在意義がよく分かんなくなっちゃって」
「そうか、それは大変だな……だが、その問題が力で解決出来るとしたらどうする?」
「あっははは!力ぁ?そんなのでどうにかなるんなら是非ともお願いしたいよ」
「良いだろう、ならばくれてやる……!」
ポンと肩を叩かれると、何かが身体を通り抜けるような、痛みにも似た感覚が走る。そこで初めて後ろを振り返る小傘だが、猫が塀の上で昼寝をしているだけで他には誰も見当たらない。
今のは一体何だったのか、自分の知り合いなのだろうか、そこまで考えたところで異変に気付く。
(っ…な、何これ…力が…溢れてくる…!凄い…!これなら絶対……ッ!?)
喜んだのもつかの間、身体の奥からふつふつと黒い感情が湧いてくる。今まで一度も抱いたことの無い感情だ。抑えようにも上手くコントロール出来ない。そればかりか、次第に意識も薄れていくのがわかる。途切れる寸前、心の中でこう叫ぶ。
(助けて……自転車バカさん……!)
意識が途切れ、がっくりと下を向くと同時に、足元から湧いて出る黒いオーラが少しずつ小傘の姿を隠していく。そして完全に隠れると、そのオーラが火柱のように天高く舞い上がって太陽を隠してしまった。
セグウェイを返し自宅へと戻った自転車バカが、いきなり振り返る。
(今、誰かに呼ばれたような……?)
急いで靴を履き直して玄関を開く。瞬間、地響きと共に黒い何かが空を覆い尽くしていく。目線を下げてゆくと発生源が近いと分かり、野次馬精神も手伝ってその場へ急行する。
(黒いのが止まったか、何なんだアレ?いいや、この角を曲がれば分か……ッ!?)
発生源に着くと、異様な姿をした誰かが立っている。
目は両目ともくり抜かれたかのように真っ黒で、頭に乗せている傘は不気味な紫色だ。傘の柄は見当たらない、どうやら頭と連結しているようだ。全身が細長く伸びており、頭の上に乗せた肌色の物体から出る血が顔を伝って落ちていく。手のひらは無く、両腕の先端は槍を思わせるような突起になっている。その場に居る人々の反応はというと、
ある者は、泣き叫びながら逃げ出す。
ある者は腰を抜かし、小さな悲鳴をあげながら後退する。
ある者は呆然とし、ただ立ち尽くす。
"それ"を見て周りと同じように震え上がる自転車バカだが、ある事に気づく。
"それ"は白の長袖シャツに水色のベストのようなものと、同じく水色のミニスカートという服装なのだ。勇気を出して声を絞り出す。
「ひょっとして……小傘ちゃん?」
蚊の鳴くような声を聞き取った"それ"は、ゆっくりと声がした方向を向き、一気に襲いかかる。
「えっちょっおまっ…!」
長々と伸びた突起がこちらへ近づいてくる。死を覚悟し目を閉じた自転車バカが聞いたのは、固いものがぶつかり合う音だった。
恐る恐る目を開くと、お祓い棒と封魔針で"それ"の攻撃を防ぐ霊夢の姿があった。
「やれやれ、どうにか間に合ったわね……大丈夫?」
「た、助かったぁ〜」
身体中の力が抜けて地面に膝をつく自転車バカを、霊夢が励ます。
「しっかりしなさい、座ってる場合じゃないわよ!私が時間を稼ぐから、あんたは先に向かわせた魔理沙たちと一緒に里の人間を避難させなさい!
あ、終わったら魔理沙たち連れてきてよね!手伝ってもらうんだから!」
「りょ、了解でーす!」
腰の抜けた者も、立ち尽くしていた者も、霊夢が来た事で我に返り、自転車バカや魔理沙、アリスに早苗といった連中の指示で避難していった。
何度目かの衝突音が止み、"それ"と距離を取る霊夢。用意してきたメインウエポンの残りを確認してから、聞こえているかどうかはともかく話しかける。
「ったく、カカシみたいな体型の癖に中々やるじゃない。霊力で強化した封魔針へし折るってどういう腕してんのよ……」
そこに、魔理沙達が降りて来た。
「霊夢!連れて来たぞ!大丈夫か?」
「さりげなく嘘吐くの止めなさい、彼が居場所言おうとしたのにアンタが聞かずに行っちゃったから逆に遅くなったでしょうが」
「"飛んで探した方が早い"って言っても人里だって広いんですからね?事実見つけられてないじゃないですか」
「わ、悪かったって……それより状況は?」
「見ての通りよ、かったいの何のって。封魔針へし折られたわ」
「霊夢の針って金属貫通するんじゃなかったか?」
「の筈なんだけどね……どうしたもんかしら」
「……なぁ、これ弾幕ごっこじゃないんだし私ら加勢していいだろ?」
「えっ違うんですか?」
「違うわ、今やってるのは"妖怪退治"よ。私の役目だから1人で片付けたいってのはあるけど、仕方ないわね」
「普段なら黙って見てるんだけどな、こんな気持ち悪い奴は見てるだけで吐き気がする。早いとこ消えて貰ったほうがみんなの為だろ」
「同感だわ、たまーに出来る人形の失敗作よりも酷いもの」
「み、皆さん結構ボロクソ言いますね……ですが、気持ちは分からなくもないので加勢させて頂きます!」
魔理沙たちがスペルを発動する為の予備動作に入る。危険を感じ取った”それ”が邪魔しようとするが、そこは霊夢がきっちり防いだ。
腕の軌道を素手で反らし、腹を蹴って距離を取る。
「じゃあ行くわよ…"霊符 夢想封印"」
「へへっ…"星符 ドラゴンメテオ"」
「行きなさい…"大江戸爆薬からくり人形"」
「えっえーと…"蛇符 雲を泳ぐ大蛇"」
色とりどりの鮮やかな弾幕が"それ"の逃げ場を塞ぐように放たれる。目を開けていられないどころか、まともに立っていられない程の爆風に飛ばされそうになる自転車バカ。おさまったのを感じて目を開けると、信じられない光景があった。
「嘘だろ…アレ喰らって無傷かよ…!俺なんか吹き飛ばされそうになったのに」
「いえ、喰らってないわ」
「え?じゃ何であんな…?」
「相殺されたんですよ…"当たる直前で"。殺ったように見えたのはその為です」
「さて…どうしたもの」
「ふむ、こいつは意外と使えるな…」
「「「「「!?」」」」」
「しゃ、喋った!?」
「でも明らかに唐傘妖怪じゃない声だぜ…それに
"意外と使える"
って…」
「あなた、誰?」
アリスが尋ねると、"それ"はぎこちなく腕を広げた。
「ふん、お前らに名乗る名前など無い。強いて言うなら、俺はこいつを救ってやった救世主って奴だ」
「救世主ですって?何をバカな事を……どっちかって言うと状況的には破壊神だわ」
「アリスもたまにはいい事言うな」
「こいつの心に闇があった、"皆に驚いて欲しい"という闇がな。俺は
"それを力で解決出来るとしたらどうする"
と言ったんだ、そうしたらこいつは"
そんなのでどうにかなるんだったらお願いしたい"
と答えた。だから力を与えた。それだけの話だ……凄く簡単だろう?今やこいつの顔を見ただけで人々は震え上がり、絶叫し、泣き叫ぶんだ。殺しでもしたら、もっと恐怖するだろうな」
「「「「「!?」」」」」
「こいつはこれから、この世界で永遠に語り継がれる程の、記憶に嫌という程刻まれる恐怖を植え付けるんだ…邪魔をするな」
「ふん、幻想郷のパワーバランスを崩そうってのか?そんな事はさせないZE!」
(あの時、見舞いに来た中で小傘ちゃんだけ、元気がなかったのはそういう事だったのか……)
「そこの阿呆はともかく、これで理解出来ただろう…さぁ、そこを退け。こいつを救えるのは俺しか…っ」
そこまで言うと、"それ"は突然言葉につまる。一瞬苦しそうな表情を見せると、俯いてしまった。そして、
「けて……助けて…」
「声色が…変わった?」
姿勢はそのままに、"それ"は大きな声で叫ぶ。
「助けて!自転車バカさん!」
「この声…小傘ちゃん!?ってか呼ばれてますよ、自転車バカさん!」
「えっまさかの俺!?」
「お願い!助けて!ここから出して!こんな…みんなを悲しませるような力なんて欲しくないの!」
「で、でもさ。そしたらもう驚いてもらえなくなるんじゃないの?」
「それでも良い!もう2度と驚いて貰えなくたっていい!だってわちきは…"愉快な忘れ傘"多々良小傘なんだもん!」
「小傘ちゃん……よく言った!」
その時、分厚い雲を引き裂いて高速接近してくる物が現れた。それは自転車バカの元へ一直線に降りてきて、ある程度近づくとその場で浮遊した。
「これ、にとりさんが作ったtadだ……どうしてここ」
〈盟友!聞こえるかい!?〉
「に、にとりさん!?どうしたのこれ!?」
〈博麗の巫女が弾幕勝負する時に陰陽玉が浮かぶだろう?あんな感じの奴をBluetooth機能を応用して今さっき作ったんだ!これを使ってくれ!〉
「今さっきぃ!?あんた凄いな!」
「ごめんなさい、ちょっと待って。これどういう機械なの?あたしのクローゼットと同じくらいデカイけど」
「説明するより見せたほうが早いんだけど……ねぇ小傘ちゃん!もうちょっと耐えられそう!?」
「えっ!?う、うん!大丈夫だよ!」
「なら良かった、えーとスイッチは……これか」
タッチパネルを操作すると、スピーカーから出る赤外線がアリス、早苗、魔理沙、霊夢の順に照らしてゆき、全員の妖気の認識が完了した と音声で告げる。
「こんな感じで対象の妖気を感じ取って人物を特定して、その人(妖怪)のテーマ曲アレンジで格好良いのを流すと一定時間戦闘力が跳ね上がるっていうスピーカーなんだ」
「わ、私の曲もあるのか?」
〈勿論!全員分の曲はデータに入れておいたからね!〉
「おのれぇ……!一度は消した自我が戻ってくるとは、無駄な足掻きを!」「ちょっ、今いいとこなんだから邪魔しないでよ!」
「まずい、奴が戻ってきてるわよ!」
〈どうする?誰の曲を流そうか?盟友に任せるよ〉
「……じゃあ小傘ちゃんの曲で」
「「「「えっ!?」」」」
「……どうして小傘なの?」
「小傘ちゃんって身体乗っ取られてるんじゃん?だったら外野がとやかく言うよりも本人が中から追い出した方が速くね?って思って」
「なるほど……そういう事なら、私の管轄外ね。それで良いんじゃない?アンタ達もそう思うでしょ?」
『異議なし』
「準備は整った…五分でケリをつけろ!」
再生ボタンをタップすると、tadはこう言った。
〈唐傘奮闘記!~ラクトフェリンの果てへ~ 起動シマス〉
突如、道頓堀野郎の視界が歪む。目の前が真っ暗になり、視界が戻ると
「な、何なんだこの真っ暗な空間は…?」
「意識の世界へようこそ!沢山驚いて帰ってね!」
「お前みたいな小娘に負ける俺だと?」
「やってみなきゃ分かんないよ。手加減しないからね!いっくよー!」
後光 からかさ驚きフラッシュ
「ふん、こんな線がどう……ぐああああ!」
「あれぇ?予告線張ったから避けると思ったのに」
「よ、予告線……?」
「あなた弾幕ごっこの事なんにも知らないのね、ぷぷぷー!」
「小娘がぁ、舐めた真似を…くっ!」
「痛い?痛いだろうね、だって左手がないんだもん♪でもまだまだ続くよ!今度は予告線なしだから頑張ってね!それそれぇ!」
次から次へといきなり放たれるレーザーに、身体を焼かれてゆく道頓堀野郎。ほぼ無重力状態の為移動すら上手くいかないのだが、相手は前後左右から容赦なく撃ってくる。避けたと思った所に当たる様は、典型的なシューティングゲーム初心者と言えるだろう。
だがやられっぱなしで終われない道頓堀野郎は、防御壁を築いて防ぐ事に成功する。
「へぇ…やっと気づいたのね」
「避けるのが厳しいなら防ぐまでだ、もう好きにはさせん」
「そんなボロボロの姿で言われても説得力ないよね、ふっ」
「何とでも言え…当たらなければそれで良いのだ」
それを聞いて試しに一発撃ちこむが、言葉通り防がれてしまった。
「本当だ、防げてる…結構堅いのね。じゃあ"これ"は防げるかな?」
「…!?お、お前まさか…!」
「単発で壊せないなら1点に集中砲火するだけだもんねー♪」
先ほどは全方位に放っていた予告線が防御壁に集まっていくのを見て、嫌な予感がする道頓堀野郎。
予告線の動きが止まると同時にレーザーが放たれ、予感は見事に的中した。壁が一瞬でかき消され、文字通り光の速さで吹っ飛ばされる。が。
「あ、しまった」
「ははは、馬鹿め!深層意識に潜ってしまえばこちらのもの!もうお前に勝ち目は…」
「あるんだな、これが」
「い、いつの間に背後を…!」
「これでも喰らえ!」
傘符 一本足ピッチャー返し
壁を築く暇もなく全身に米粒弾や大玉の塊を浴び、身体がじわじわと消えてくのを感じ取る道頓堀野郎。最早手が出せない為、意識の世界から追い出されないように耐える事しか出来ない。
「うーん、もうちょっとで追いだせそうなんだけどなぁ〜」
{小傘!そんな奴相手にいつまで手こずってるんだ!さっさと出てこないか!}
「こ、この声はナズちゃん!?どうしてここに?」
{親友のピンチを見過ごすバカが何処に居るんだ!少々遅れてしまったが来てやったぞ!}
「ナズちゃん…!」
{さぁ、出て来い!}
「……うん!よーし、ラストいっくよー!」
放つ大玉に力を込め、断続的に塊をぶつける。すると流石に耐えきれなくなったのか、道頓堀野郎は意識の世界から追い出されてしまった。
「出てきた!今よ、魔理沙!」
「OK!弾幕は…パワーだぜ!」
魔砲 ファイナルマスタースパーク
「覚えていろ。近い内にお前らを、奈落の底へ突き落としてやる……!」
誰にも聞こえないように呟くと、黒い球体に身を包んでいた道頓堀野郎はマスパと共に天高く打ち上がり爆散した。爆風で雲が消え、月が顔を出し里を照らし出す。避難していた人々は歓声を上げ、それぞれが喜びを全身で表現している。
当の小傘は黒から青と赤のオーラに色を変え、オーラが消えると元の姿に戻っていた。それを見て目に涙を溜めたナズーリンが小傘を抱き寄せると、2人同時に泣き出した。
曲の再生を止め、自転車バカはパネルを見る。
「約2分30秒……けっこう余ったな」
「足りないよりはマシじゃないか、細かいことは気にすんなよ」
「だね、一曲で済んだし」
「これで一件落着ね、大した被害がなくて良かったわ」
「……折れた封魔針は被害に入らないの?」
「そういえば折れてましたね」
「あ、忘れてた。また調達してこないと……あーあ、面倒くさ。先に帰るわね」
「あ、私もキノコ採取途中だったの忘れてたぜ。つー訳でまたな!」
「ったく魔理沙ったら…どうせ後で家に来て"これでなんか作ってくれ!"って言うくせに…あたしも帰るわね」
「ん?この紙は……!いっけない!買い出し放り出して来たの忘れてました!自転車バカさん、私も失礼します!」
(なるほど、そういう流れか。じゃあ俺もどっか…)
行こうとして、手を掴まれた。
振り返った先には小傘が居る。
「こ、小傘ちゃん?何してんの?」
「まだ……貴方にお礼言ってない」
「いや、お礼言われるような事してないから。ただ現場に居合わせたってだけで」
「何を言ってるんだ、命蓮寺に来て
"ナズーリンさんを貸して下さい!"
って私の旦那(ペンギンGX)に頭を下げたのは君じゃないか。あれが無かったら私はここに居ないよ」
「そりゃそうだけど…でも本当に何も」
「したよ!貴方は私を助けてくれたよ!?」
「……ッ!」
目に涙を浮かべて遮る小傘の迫力に、自転車バカは気圧されてしまう。
続けて話す。
「最初に私を見て、名前を呼んでくれたでしょ?あれ…本当は聞こえてたの。
でも身体が勝手に貴方を殺そうとして、あそこで霊夢が来てなかったらどうなってたか…」
「じゃあ乗っ取られてた時、音だけは聞こえてたって事?」
「うん、聞こえてたよ。貴方の呼ぶ声、霊夢の独り言、魔理沙達の掛け合い…そして、ナズちゃんの声も」
「ふん、あれで聞こえてない方が不思議だ」
「でもね、あのままじゃどうにもならなかったの…声が聞こえても身体は思うように動かせなかったし…ずっと景色は真っ暗だったし…
それでも、思い出したの。私を一度救ってくれた自転車バカさんなら、どうにかしてくれるんじゃないかって。
凄いよね、本当に助けてくれたんだもん。信じててよかった。ありがとう、自転車バカさん」
「いや、あのスピーカーだって作ったのはにとりさんなんだけど……」
「まだ言うの…?いいよ、だったら言ってあげる!
貴方が言ってた通り、あのまま霊夢が私を退治しても何も変わらなかった!
私が、アイツをこころのなかから追いださなきゃいけなかったの!でも私だけの力じゃ出来なかった!それを手伝ってくれたのは誰!?音楽の力(物理)で…私をパワーアップしてくれたのは誰!?
貴方でしょ!?」
「……」
「貴方が私に力をくれたから!アイツを追い出す事が出来たの!
貴方が連れてきてくれたから!ナズちゃんの声援が力になったの!貴方が居なきゃ……今の私はここに居ないの!!」
言葉の出ない自転車バカに、ナズーリンが優しく話しかける。
「確かに、追い出したアレを吹っ飛ばしたのは白黒だ。このスピーカーとやらを作ったのも、あの河童なんだろう。
でも、小傘が負けそうになっていた形勢を逆転させたのは紛れもなく君なんだ。いい加減で認めたらどうだ?」
「ごめん、変な意地はっちゃったな」
「わかってくれたら良いよ…私こそ怒鳴っちゃってごめんね?」
「良いって事よ」
小傘の頭を、ポンポンと撫でる。
「まぁ、その……あれだ。よく頑張ったな」
「〜〜〜っ!」
再び涙腺のダムが崩壊し、泣きながら抱きつこうとする小傘。恥ずかしがった自転車バカは避けようとしたが、背後に回ったナズーリンに動きを止められたので抱きつかれてしまった。胸元が涙で濡れていく。
頭だけ動かし、ナズーリンを睨んだ。
「なんで避けさせてくんないんだよ」
「逆に何で避けるんだ。仮にも男だろう?こういうシチュエーションは願ったり叶ったりじゃないか。
つべこべ言わずに抱き締めてやれ」
「くっそ、他人事だと思って・・・!」
30秒以上かけて、両手を小傘の後ろへと回した。
「くそっ、この程度の力では駄目だったか…まぁ本来の10分の1程度しか出ていないし、無理もないか。
だが、こいつらは近い内に完全体となる…そうすれば、地球の破壊など朝飯前だ…ふはは、はーっはっはっは!
復活まで、後10だ…!」
続く。
おまけ。
文「明日の一面はこれで決まりですね」パシャリ
自転車バカ「あ、畜生!」
小傘ファンクラブ会員「なぁアンタ、ウチの名誉会長になってくれないか?」
自転車バカ「いや、悪いけどことわr」
小傘「頷くまで離さないから」
自転車バカ「是非ともやらせて下さい」
ナズーリン「そんなに恥ずかしいかい?ただのスキンシップじゃないか」
自転車バカ「るっせえ!童貞なめんな!」
皆『威張るな!』