東方開心劇    作:チャリタク

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本作品は三部作構成となっております。
設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。


第31話「君のための」(前編)

人里、迷いの竹林、魔法の森、幻想郷のありとあらゆる場所を、私達は走り回る。消えた主を探して。

 

「はぁ…はぁ…」

 

きっかけは、些細な事だった。

 

「はぁ…はぁ…紫様…!」

 

ほんの些細な、言い争いが原因だった。

 

「藍しゃま…紫様、どこに行っちゃったんですか…?」

 

走るのを止め息を整えた私は、橙の頭を撫でながらこう言って落ち着かせる。

 

「大丈夫だよ橙、心配はいらない。あの人は必ず、私が見つけ出してみせるから」

 

迂闊だった。全くもって予想外だった、まさかこんな事になるなんて…!

 

事の始まりは、今から数時間前。いつものように三人で朝食を摂っていた時だった。

 

 

「わぁ美味しそう!いっただっきまーす!」

「あんまりがっつくと喉に詰まるわよ…って、言ってる側から詰まってるし」

「けほっけほっ!う゛〜、死ぬかと思った……」

「美味しそうに食べてくれるのは結構だけど、あまり紫様の手を煩わせるんじゃないぞ?」

「うぅ、以後気をつけます…」

「なんか、アレね」

『はい?』

「いくら料理が美味しくても、面倒くさい用事があると箸って進まないわね」

「面倒くさい用事…ですか?」

「結界の修補よ、霊夢がうっかり穴開けたらしくて」

「うっかりで穴開けるんですか、あの通り魔は……穴ってどれくらいデカイんですか?」

「そうね…ざっとこのくらいかしら」

 

説明するより早いと悟ったのか、左手でスキマを広げその大きさを示す。

 

「なぁんだ、それくらいなら私が行ってきますよ?」

「本当?今回のは結構面倒な壊れ方だから私が行くつもりだったのだけど……」

「大丈夫です、お任せ下さい。1時間もあれば治せますから。それに……」

「それに?」

「その程度の修補に紫様が出られては困るんです、周りが異変と勘違いしかねないので」

「ふふっ、やぁねぇ。そんな事あるわけないじゃない」

「とか言って治しに行ったらあともう少しで戦争にまで発展しかけたこと、ありましたよね?」

「うっ…そ、そうだったかしら?」

「ったくもう…貴女は"妖怪の賢者"なんですから、もう少し思いつきで軽はずみな行動をするのは控えて頂かないと」

「むっ…だって家に居ても暇なんだもの、仕方ないでしょう?」

「それは分かりますが、その度に異変を起こされてはかないません。どうせ足止めをするのは私たちじゃないですか。ボロボロに破れた服の補修だって楽じゃないんですからね?」

「…何よ、姑みたいな事言っちゃって。そんな式神に育てた覚えは無いわよ?」

「私だって好きでこうなった訳ではありません。いつも上に振り回されてるので自然と身についてしまっただけです。昔からよく言うじゃないですか、

"上がちゃらんぽらんだと下がしっかりする"

って」

 

それを聞き、ガタンと音を立てて立ち上がる紫様。俯いている為、表情がよく分からない。振り返って居間の引き戸を開け、私たちに背中を向けたままスキマを開けて中に入る。

 

「紫様…?」

「…それもそうね。藍の言う通りかも。だから、ちょっと自分を見つめ直す旅に出てくるわ。留守をお願いね、"しっかりした"式神さん?」

 

ゆっくりと閉じていくスキマから勢いよく飛び出た道路標識によって、朝食の並んでいたちゃぶ台は木っ端微塵になってしまう。その光景にただならぬ悪寒を覚えた私たちは、消えた主を探して家を後にしたのだった。

 

 

「……お、ちょうど良かった。今から連絡しようと思ってたんです」

 

机の上に置かれた写真と睨み合いをしていた自転車バカは、視界の端に移った紫に気づいて先を制するかのように話しかける。

 

「私に?」

 

適当に並んでいた写真の中から一枚を手に取り、紫に見せながら続けた。

 

「えぇ、藍さんが送って下さった写真と俳句が一番良かったので、今週の俳句モデルは貴女に決定しました。まだ製品化していないのでどのくらい売れるかは分かりかねますが……まぁ行けるでしょう」

「あら、そういう事だったのね。どうもありがとう」

 

自転車バカは写真を机に置き、立ち上がりながら言葉を返す。

 

「……嬉しくないですか?」

「おかしな子ね、どうしてそんな質問するのよ」

「だって紫さん、ここに現れてからずっと思いつめたような顔してるじゃないですか」

「……分かる?」

「いや、分かるも何も隠す気ないでしょう。眉間に皺寄せて ”どうもありがとう”って 言われたら誰だって気づきますよ」

「……」

「……俺と文さんが天界に行った話はしましたよね?」

「えっ?えぇ」

 

突然何を言い出すのかと思っていると、自転車バカは感謝の気持ちを述べた。

一介のボケラーである自分が奇跡的に依姫と出逢えたのは、依姫との関係が今日まで続いているのは、貴女のおかげなのだ。だから、何か困っているのなら恩返しをさせてくれと。

 

「何があったんですか?」

「そうね…話してしまおうかしら」

「……」

「貴方、引退するって本当?」

「なっ!えっどっ、どこでそれを!?」

「つい最近、本来の世界で引退するってボケを投稿したでしょう?あれを偶然見つけたのよ」

「……そうでしたか」

「冗談にしてはキツ過ぎるもの、一度本当かどうか聞いておきたかったのよ。まぁ、貴方の事だから嘘じゃないんでしょうけど?」

「……その通りです。俺は、あの二人の保護が終わったら消えるつもりです」

「一応聞くけど、考え直す気は?」

「ありません。最初、にとりさんを保護した時からずっと考えてきて、この前やっと決心がついたんです。訂正なんかしません」

「そう。だったら仕方ないわね・・・!」

「っ!?」

 

何がどんな風に?と聞く前に、禍々しい妖気でその身を纏う紫。呼吸が苦しくなり片膝をついた自転車バカは、グローブを装着し能力を発動させる。バリアで自身を覆うと、酸素が体内に行きわたりだした。

 

「はぁ…はぁ…。一体、何を!?」

「決まってるでしょう?貴方の考えが間違いだと、身体に教えてあげる・・・!」

「くそっ、R-18的な奴なら喜んでOKしたのになぁ!!」

(私こんな奴の為に身体はって頑張ってるの?)

 

自転車バカは両手に力を込め、精神を集中する。すると、3つの⭐︎が浮かび上がった。

 

「……何それ?」

「本来はこういう使い方じゃないんですがね、そいやっ!」

 

掛け声と共に撒かれた⭐︎は地面に触れた瞬間、目を開けていられない程の光を放つ。あまりの眩しさに目を覆う紫。収まったのを感じて目を開けると、そこに自転車バカは居なかった。その代わり、玄関のドアが空いている。どうやら逃げられたようだ。

 

「やってくれるじゃない。そっちがその気なら、こっちは数の暴力でお相手するわ・・・!」

 

スマホを取り出し、「至急、拡散希望」のメッセージを添えて先ほどまでの会話を録音したデータを電話帳に登録している全員へ送る。これで知らない者は居なくなるだろうという計算だ。

 

「ふふっ。貴方を食い止めるのは、貴方が今まで助けてきた者ばかり。かつての味方が対峙してきた時、貴方はどうするのかしら……?」

 

紫から連絡を受けた者は、彼を止める為に動き始める。

二人の少女は、消えた主を探して幻想郷を駆け巡る。

 

それぞれが譲れない想いを胸に抱き、既に交わりを見せる最中。自転車バカは、恩人に刃を向けなくてはならない状況に陥っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

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