設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。
「さぁ、反撃開始と行こうか」
「はっ、味方が敵にならんかっただけで何をいきがっとんねん。どの道お前らは終わりや」
「後ろのSAORIとAKIKOを見て、まだ同じ事が言えるか?言えるんなら俺らに勝ち目はないよ」
「……っ!」
道頓堀野郎の背後に立っていたSAORIとAKIKOがうめき声を発する。頭を抱えて眉間に皺を寄せ、誰がどう見ても苦しんでいると分かる体制を取っている。
「スーパーセルが衝撃的過ぎてすっかり忘れてたけど、ソイツらの力は研究所で吸い取られて電気エネルギーに変換されてるんだってな」
「……そこまで知ってたんかい」
「ボケて歴史博物館の資料室で見たんだよ、全盛期のパワーまでは取り戻せてなかったみたいで何よりだ」
腕の装置で通話画面を呼び起こし、皆に伝える。
〈みんな聞いてくれ!そいつらは五分で復活するけど、回数には限度がある!そしてもう一つ!そいつらを倒すたびに、こっちに居るSAORIとAKIKOがダメージを受けるんだ!そいつらを召喚したのはSAORIとAKIKOだからな、本体と感覚が繋がってるって訳だ!〉
それを聞いた一同が更に活気付く中、にとりに指示を出す。
〈にとりさん!今すぐ工房に戻ってアレの起動を!〉
〈任せてくれ!〉
「SAORI!AKIKO!」
『させるかよバーカ!俺らが相手だ!』
「この人に手を出すと言うのなら、私が相手になってあげる」
「公式チートの名は伊達じゃないわよ?」
再び臨戦体制を取るが、自転車バカは空模様がおかしい事に気づく。
先ほど降っていた雹と全く同じサイズの隕石が空から降っており、それらの上空には直径1kmはあるだろうか。とてつもなく大きな隕石が浮かんでいる。だが、降ってくる隕石は全部山下のパシリや道頓堀野郎、SAORIとAKIKOを狙って降り注ぐ。
「Nick-Qさん……来てくれたんだ!」
「史上8人目に、星の合計が1000Kを超えた俺の力……見せてやるよ」
自転車バカは腕の装置を操作し、ボケての幻想郷に居るボケラーの数を確認する。
いま居るのは自分を除いて11人。加えて味方の妖怪が95名だ。
(……念のため、アレの準備をしとくか)
それから数十分が経過した頃、霧の湖付近で交戦していたチルノが大妖精に質問した。
「大ちゃん大ちゃん」
「何?」
「大ちゃんに言われた"パワースーツの関節だけ凍らせて"ってやつ、凄く面倒臭いから弾幕撃って良い?」
「……良い悪いじゃなくてさ、そもそも効果あるのかな?」
「うーん…いいや!やれば分かる!
雹符"ヘイルストーム"–lunatic–
いっけー!」
上空へと打ち上がった大量の氷塊が交わるような軌道を描いて降り注ぐ。絶対に避けられると踏んでいた大妖精だが、良い方向に裏切られた。避ける間も無くまともに喰らった山下の部下達が消えたのだ。
「な、何だと…!」
「おぉ!効果あるじゃん!」
「本当だ!しかも避け方がかなり下手だったね!ひょっとして弾幕系シューティングは未経験かな?」
「だろうね、寺子屋の友達の方がまだ良い動きしてたもん」
〈皆さん!このロボットみたいなの弾幕でも倒せますよ!しかも弾幕ゲーは一度もやった事のない素人です!チルノちゃんのヘイルストームで一発でした!〉
〈良くやった⑨!よっしゃあ、反撃の時間だぜ!〉
〈我が紅魔館に足を踏み入れた事、全身で後悔させてやろう・・・!〉
〈いや、このまま私の能力使って力関係逆転させてた方が楽じゃね?〉
〈よく言うよ、肩で息してる癖に……良いから少し休んでなよ、ね?〉
〈つ、疲れてねーし!全然余裕だし!〉
〈はいはい、じゃあ無駄使いを控えるって意味で休憩したらどう?〉
〈ぐぬぬ、針妙丸の癖に……!〉
〈何だ、弾幕が使えるのか。なら良いものを見せてやろう、四天王奥義"三歩…〉
〈ちょっと待て勇儀!"博麗神社を壊さない"縛り、忘れたんじゃないだろうね?〉
〈おっと、そうだった。うっかり全部吹き飛ばす所だったよ〉
〈封魔針で串刺しにされて死にたいなら使っても良いわよ?〉
〈遠慮しとくよ〉
〈分かればよろしい〉
「ふっ、平常運転で何よりだよ……にとりさん、起動までどれくらいかかりそう?」
〈分からない、何しろ190台のtadを立ち上げるには膨大な電力がいるんだ。まだまだ…って所かな〉
〈あやや、このままだとこっちが先にヘタっちゃいますよ?〉
〈……今データが出た。どうやら、起動時間を短くするには幻想郷中の電力を集めるしか無さそうだ〉
「集めたらどのくらいで済む?」
〈きっかり1時間だ〉
「分かった、それで頼む。みんな!後1時間だけ踏ん張ってくれ!」
〈任せて下さい!って事で椛、後宜しく〉
〈てめーも働くんだよクソ上司ぃぃぃぃ!!〉
〈イッツ・ルナティックターイム……〉
「おい誰だ弱気な発言した奴……切れたか」
「ふざけた真似を……アンタらがいくら足掻こうと無駄やで!此奴らを止める事なんか出来るわけないやん!」
「はっ!起きて寝ぼけてっと承知しねぇぞ!?
チンピラ必殺 メンチ切り!」
「くっ、ちょこざいな……!」
◆
「はぁ、はぁ……やっべ、使い切っちまったぜ」
「魔理沙!?」
両膝に手をつき前かがみの状態になったのを見て、好機と判断した山下のパシリ達が一斉に襲いかかる。援護に向かうが、僅かに相手が速い。
「魔理沙ぁぁぁぁ!!」
しかし、運は彼女に味方した。
「な、何だ…?身体が、ピクリとも動かねぇ…!」
「くそっ、一体どうなってんだ…?」
「スマホの電池が…!なるほど、そういう事か」
「…!」
「餓鬼どもが…何しやがった!?」
「残念だったな、時間切れのようだぜ?」
「は?どういう…」
「上を見てみろ、お前らの負けだ」
魔理沙が指差す先では、無数のtadが各地に散らばっていく光景が広がっていた。スピーカーから声が聞こえてくる。
〈このスピーカーがただの音楽再生機だと思ったら大間違いだ。Bluetoothで音質もカバーする為にとてつもなく強力な電磁波が出ているからね、お前達のスーツに影響が無いとでも?〉
〈さっすがにとりさん!〉
〈スピーカーってのは不思議な物でね、配線を変えると音を出したり拾ったりするんだ。それを応用して通信機能も搭載しておいた。更に今回、日光による日焼けを防ぐ為に透明な保護膜を貼ってある。音を干渉させない為の音響パネルとしての役割も付けてね。つまり……遠慮は無用だ、思う存分暴れると良い!〉
「……という訳で"準備は整った、五分でケリをつけろ!"アリス!」
魔理沙は"アリス用"と書かれた小型リモコンを天に掲げ、スイッチを押した。
「 暁Records - DOWN DOWN DOLL 起動シマス」
音楽が始まると、アリスの側で浮かぶ二台のtadから妖気を乗せ視覚化された七色の音色が放たれ、アリスを包み込む。
「凄い……もうすぐで使い切りそうだった魔力がどんどん供給されてる……!これが音楽の力(物理)なのね!」
「先鋒は任せたぜ、アリス。私は今のうちにしっかり回復しとくからさ」
「分かったわ、この曲が終わったら次よろしくね?」
「任せろ!」
「さて、あたしの魔理沙を傷つけた代償……きっちり払って貰うわよ!」
「!?」
電磁波で上手く動けない山下の部下達が見たのは、七色とは言いがたい、紫色と黒色のオーラが柱のように舞い上がる光景だった。
「おぉ、私の魔力も回復してる……種族は違えど魔法使いって事か。巻き添え喰らわない位置まで避難しよっと」
「兄貴ィ…壊した筈の人形がどんどん治ってるんスけど…!」
「喧しい!怯むな!所詮は餓鬼だ!数で押し切れば……ッ!?」
「ミジンコがいくら集まろうと、圧倒的な力の前では無力なものよ?
咒詛 "蓬莱人形"」
六体の蓬莱人形が、円を描きながら拡散しつつ赤色系のレーザーを発射する。防ごうとした者も居たが、喰らった大半が跡形も無く消え去った。
「なっ、こいつ…!」
「ふむ、今ので1/7って所か。結構居るなぁ」
「あなた達はもう、蜘蛛の巣に引っかかった獲物よ……。あたしの巣、土足で踏み荒らしたからには、生きて出られると思わないことね!」
レーザーを放つ蓬莱人形を更に拡散させ、次々と消し去っていく。身体の動かし方に気づいた者から反撃に入るものの、レーザーの前ではどうする事も出来なかった。逃げるだけで精一杯のようだ。それを見たアリスは蓬莱人形を引っ込め、人形達で囲い込む。
「大の男が敵前逃亡……しかも女に。恥ずかしくないの?」
「るっせぇ!」
「男の癖に見苦しいわ、せめて最後くらいは美しく散りなさい。
戦符 "リトルレギオン"」
「ぐああああ!!」
半径を広げながら攻撃する回転人形を円状に6体発射すると、山下の部下達は悲鳴だけを残して消え失せた。
その後も着実に倒していくアリスだが、人形自体の戦闘力がそこまで高くない事もあり、尚且つ敵が多すぎるために効率が良いとは言えないのが現状だ。上空から眺めていた魔理沙は声を掛ける。
「なぁアリスー!その調子じゃ時間が掛かって仕方ないぜ!お前が直接倒した方が早いんじゃないか?」
「それもそうね。美しさは無くなるけれど……拘ってる場合じゃなさそうだし、仕方ないかしら」
人形達を自動運転に切り替え、魔力を自身に集中させる。すると、彼女から放たれるオーラが巨大な本に変化してパラパラとページがめくられていく。それに応じて、地面と空中に無数の魔法陣が形成された。
「おぉ……こりゃ壮観だな」
「魔理沙、よく見ておきなさい……これが私の本気よ!」
『なっ!?』
無数の魔法陣から召喚されたのは、欧米の神話に出てくる幻獣達だ。
「ニーズヘッグ…フェンリル…ファーブニル…ヨルムンガンド…ケートス…ケルベロス…キマイラ…ケンタウロス…ミノタウロス…オピーオーン…グリフォン…テュポーン…バハムート…駄目だ、数え切れん」
「白磁気のような指で♪あどけない少女が本気出せば♪夥しい幻獣が♪不可思議な踊り踊り出す♪つってね」
「でも等身大じゃないんだな、私達と同じくらいじゃないか……わざとか?」
「単純に力不足よ、神綺様は等身大での召喚が出来るもの。修行が足りなかったわね」
「……これで修行不足かよ、魔界にゃ化け物しか居ないのか?」
「居ないわよ、そもそも人間が住む場所だと思って?」
「ですよねー」
「それにね、修行不足なのはサイズだけじゃないわ。召喚出来る時間だって、この曲が終わるまでしか持たないの。攻撃力も本来の力から言えば1/3くらいだし」
「にしちゃ随分なペースで倒していってるな……私の分残しといてくれよ?」
「大丈夫よ、まだ隠れてるのがそこそこ居るから」
「なら良いや」
二人が見下ろす先では、山下の部下達が必死に抵抗していた。ある者は距離を取りながら分析をし、ある者は正面からぶつかって玉砕していった。またある者は腰が抜けた為に、動く事も出来ず消し炭となっていった。
「兄貴ィ!どうしたらいいんすか!?」
「知るか!こっちが聞きたいくらいだ!ったく、これくらいの事で発狂&失神しやがって!」
「いやいやいや!無理ですって!むしろ小便チビってないだけでも褒めて欲しいくらいですよ!」
「クソが!こんな事なら余裕ぶってないでさっさと殺しておくべきだったな!今更後悔しても遅いんだろうがな!」
「分かってるじゃないっすか!てか喋る暇があったら作戦でも考えて下さいよ!」
「貴様!上官に向かって口答えするとは良い度胸だな!後でたっぷり灸を据えてやる!」
「後なんて無いじゃないっすか!アンタに着いてきた俺がバカだったよチクショー!」
「おーおー、この状況で仲間割れしてるよ。余裕あんなあいつら」
「いや、余裕あるんじゃなくてパニクってるんじゃないかしら。まぁ何でも良いわ……。
これが、貴方達が餓鬼と言った者の力よ
。"人を見かけで判断するな"
基本中の基本でしょ?」
「冥土の土産に良い事教えてやるよ……餓鬼ってのはな、右も左も分かってないだけで才能の塊なんだ」
『その中から自分に合った分野を見つけ、努力して来た私達を殺そうだなんて……百年早いわ!!』
幻獣達が最後の一撃を加えると、魔法の森が虹色に染まった。
曲の起動が終わり、静けさが戻った魔法の森を見渡しアリスが呟く。
「……あ、やっちゃった」
「何をだ?」
「ごめんなさい、魔理沙。貴女の分まで片付いちゃったみたい」
「おいいいい!さっき私忠告したよな!?」
「し、仕方ないじゃない!まさか最後の一撃でほぼ全員消えるなんて思わなかったんだから!」
「本気出し過ぎだろ!私の出番どうしてくれるんだよ!」
「だ、大丈夫よ。まだ残党くらいなら残ってるし」
「ったく……ん?」
「どうかした?」
「いや、こんなに少なかったっけ?あいつら。もっと居たような……」
「さっきあたしが曲に合わせてノリノリで…ん?曲……あ!」
『五分経ってる!』
「音楽がかかる前に私がマスパで倒したのがかなり居た筈、なのにどうだ?」
「……どこからも復活して来ないわね」
〈聞こえるか?こちら魔理沙!奴さん、五分経っても復活しないぞ!自転車バカの言った通りだったな!魔法の森にきた敵はアリスが大方壊滅させた!これより残党処理に当たる!〉
〈さぁ、一気に行くわよ!!〉
話を聞き、皆の方へ振り返った神子が言う。
「という事らしいけど……私らには必要のない代物でしたね、布都?」
「うむ。青娥殿がほとんど単独で片付けてしまいましたぞ、我らが参戦するまでもなく。あんなに強いお方であっただろうか?
仙人は鍛え続けなければ生きていけないのは重々承知しておるし、強いのは当たり前といえば当たり前なのだが……」
「彼奴らの誰かが"妖怪 人妻オババ"と言った所為じゃな、一番の理由は」
「青娥ってブチ切れたらあぁなるんだね……今後一切、アイツにだけは悪戯しないと誓います」
「それが良いと思う、うん」
5人が見つめる先では、山下の部下達がボロ雑巾のように横たわっていた。しかし、まだ消えていない。当の本人は辺りを見回して、復活する者が居ないか確認している。怒りの余り顔が大変な事になっているが、冷静さは失っていないようだ。
誰も復活しないのを見極め指パッチンをすると、その場に居た山下の部下達は全員消え失せた。
〈こちら神子、命蓮寺に来た敵は青娥が単独で片付けました。これより負傷者の手当てに当たります〉
「太子様。あれ、青娥殿……如何なさいます?」
『うーん……』
「芳香、お願いします」
「えっ!?いやっちょっ、いくらキョンシーでも流石に今のせーがには近寄りがたいというか、近づきたくないというか……」
『……』
「ねぇ何でみんな黙ってるのっていうかその
"戦争に犠牲は付き物だ"
みたいな目で見るの辞めていやその前に何で私の身体掴んでるのお願いだから気持ちの準備だけでもさせていや、ちょ、まっ……!
ちーかよーるなー!!」
「聖、負傷者6名追加です」
「この忙しい時に……」
南無三。
その後も次々と撃破報告が届き、遂にはほぼ全ての場所から敵が居なくなったとの報告があった。だが、
(まだ一つ残っている)
誰が言い出した訳でも無いが、ボケての幻想郷に居る妖怪は自転車バカの元に集まっていた。瓦礫だらけとなってしまった、人里に。
「くっ…!」
「みんなありがとう、おかげで準備は整った……後は俺がやる」
そう言うと、それまで自転車バカを覆っていたオーラに変化が起こる。色は常盤色と黄緑色に分かれ、黄緑色は紋章を地面に描き、常盤色はその上にそびえ立つ大きなボケ表示画面となった。チンピラ妖怪ズが声を上げる。
『な、何だこりゃあ…?』
「これが、自転車バカさんの言ってた"一族秘伝の技"ですか?」
「ザッツライト。昔は出来る奴結構居たけど、今は俺にしか出来ないだろうな……"ボケの召喚"は」
「ボケの召喚やて!?この技を使える者は滅んだ筈ちゃうんか!」
「滅んでねえよ、俺が最後の使い手だ!」
右手でボケ表示画面に触れると、文章と画像の読み込みが始まる。
「まず最初はこれだ!2013年3月3日に投稿された殿堂入りボケ…」
「「はい神の裁き ドーン!」」
読み込みが終わり、表示された画面から神と称される人物が出てくる。それと同時に、両手を前方にかざして対象の範囲を爆発させながら自転車バカと同じ台詞を言う。当然ながら、道頓堀野郎とその部下も巻き添えだ。
「やったか!?」
「甘いわ!その程度の不意打ちでくたばるとでも思ったか!!」
爆心地から、余裕をなくし標準語で怒鳴る道頓堀野郎の声が響く。不自然な風が巻き起こると、立ち昇る煙の中から球体状にバリアを張ったSAORIとAKIKOが姿を見せた。
「流石、弱っても最強だな。このくらいは余裕か……なら試させて貰おう、どこまで神の攻撃に耐えられるのか。すみません神様、お願いします」
『全然良いよ♪』
「ノリ軽っ!!」
『君達以外とやるねー。じゃあもういっちょドーン!』
再度爆発が起こるも、
「ふん、馬鹿のひとつ覚えが!そんなもの効く訳ないだろう!」
「おい待っ…!」
『あ、タメ口聞いた。はい死刑確定ー!』
「まずい……神の怒りだ。みんな伏せろ!じゃないと死ぬぞ!」
「!?」
『はいロンゴミアントの槍 ドーン!』
「なっ…!」
槍の矛先を道頓堀野郎に向けて振り回した瞬間、何重ものソニックブームが彼らを目掛けて飛んで行った。張っていたバリアもあっという間に砕かれ、身体を切り刻まれていく。
頃合いと見た神は、武器を交換した。
『はいダーインスレイブの剣 ドーン!』
槍投げの要領でぶん投げられた剣はあらゆる妨害を物ともせず、道頓堀野郎の部下を貫くと、部下ごと消えた。
『あ、この後用事あるんだった。そろそろ帰っていい?』
「アッハイ、わざわざありがとうございました」
『またなんかあったら呼んでよ、じゃーねー』
「最後までノリ軽かったな」
「あのお方はそういう方だから、ボケてが生み出した神はそれっぽい口調とか一切使わないんだよ。何故かは知らないけど」
「威厳も何もあったもんじゃねーな」
「おし、気を取り直して次行ってみよう!2012年8月4日に投稿された傑作ボケ…
無課金ユーザーが来た
この人の攻撃力はえぐいぞ!」
「そう何度も……同じ手を喰うか!」
壊れかけのスーツからは配線が覗いており、足どりもおぼつかない。だが、眼光の鋭さは最初から何一つ変わってはいない。その視線でSAORIとAKIKOに指令を出し、山下のパシリを大量に召喚させた。
「この俺こそが、宇宙を統べる支配者なのだ!反逆者は……一人残らず排除する!」
「またこいつらかよ、どこにそんな力が・・・!」
「力なんて、殆ど残ってないだろうよ。あるのは執念だけだ」
「行け!数で押し潰せ!!奴を止めろ!」
叫びも虚しく、山下のパシリ達は次々と虹色の光に姿を変えていく。
背後から組みついた者は腹に肘鉄を喰らって後ずさった所に来たかかと落としが脳天を直撃し、正面から向かった者はカウンターが顎にクリーンヒットし、両サイドから挟み撃ちにしようとした者は蹴りで一蹴され……三者三様、100人百通りにやられて消え去って行く。
全体の2/3が消えた所で、無課金ユーザーは姿を消した。
「止まるのはお前だよ、道頓堀野郎」
「くっ……!」
「2016年4月13日に投稿されたボケ…」
「マスオくん、どうやら囲まれたよう・・・なんじゃ、たったの50か」
『なめられたものですね、お義父さん。
これなら2~3分ってとこですかね…』
言い終わるや否や、山下のパシリ達を脅威的なペースで消し去ってゆく波平とマスオ。宣言通りに消え去った配下を目の当たりにして、道頓堀野郎はただ問う。答えなど帰って来ないのに。
「何故だ!奴らが手にしているのは1番アイアンと金属バットだぞ!なのに何故!誰もろくな抵抗が出来んのだ!」
キッと自転車バカを睨む道頓堀野郎の後ろでは、SAORIとAKIKOが完全に動かなくなっていた。
「波平さん、マスオさん、ありがとうございました」
聞き届けた二人は、穏やかな笑顔で消えて行った。それに合わせ、紋章とボケ表示画面も消える。自転車バカの身体を覆っていたオーラもだ。
「何なんだ……一体何者なんだ貴様はぁ!」
「はっ!こんだけやられてまだ分からないのか?だったら教えてやるZE!」
「その人は、私の優秀な元部下にして初めて出来た浮気相手であり」
「私と盟友トムを救ってくれた、物凄いお人好しであり」
「わちきを二回も助けてくれた、命の恩人であり」
「あたしとにとり、それに咲夜とレミリアを保護してくれた、文々。新聞社下請け会社の社長兼営業マンであり」
「度胸の無い私に、プロポーズをさせてくれたお嬢様の友人であり」
「私の愛しい旦那様を救って下さった、友達思いなボケラーであり」
「かけがえの無い、私の大好きな人」
『それが、自転車バカよ!』
「みんな……!って、アリスさん記憶が」
「私のコレ、記憶が無くなる前の私の妖力を保存してたのと型番が一緒だったのよ。で、妖力と一緒に戻って来たって訳。今はどうであれ、大切な人だもの。全て受け入れなくちゃ、前には進めないわよ。ほら、ちゃちゃっと終わらせちゃってよ」
「……そういう事だ、諦めろ。お前の腐りきった性根は、監獄が直してくれるさ」
「ふん!我らの動きを封じた程度で何をいきがっている!そんなボロボロの状態では手も足も出んだろうに!見ろ!元気なのは何の力もないお前だけではないか!」
「確かに、俺に出来るのは物や人を治す事くらいだ。でもな、俺は"神の力"を借りる事が出来るんだよ……依姫みたいにな!」
瞬間、自転車バカの身体から黄色と常盤色の光が放たれる。
「”この身を纏う 内なる力”
”全てを癒すは 無償の愛”
”命を繋ぐ 最後の砦”」
自転車場バカの頭上に表示されていた三つの数値が減り0になった瞬間、彼の身体から常盤色のオーラが放たれる。
オーラは意思を持ったかのように揺らめき、緩やかに、されど確実に右手に集まっていった。
「”それでも足りぬと言うのであれば このアカウントを差し出そう”
”全てを犠牲に求める力は 全てを無に帰す神なる力”!」
手元に集まったオーラが、カードの形を模す。人差し指と中指で挟み、天に向けて高々と突き上げた。
「”ボケて必殺 アルティメットサクリファイス”!」
呼びかけに応じたのか、幻想郷を覆っていた巨大なスーパーセルの切れ間からボケ犬が降りて来た。
「遂にこの時が来ましたか……という事は私が消した記憶、全部戻ったのですね?」
「えぇ、何もかも思い出しましたよ……俺が生まれる前の出来事も含めて」
「無茶な事をするお方だ、世界の為に誓約を破棄するなんて……どうなっても知りませんよ?」
「ったく、何が名づけの誓約ですか。勿体ぶった名前付けちゃって。
遅かれ早かれ、こうなる事は分かった上であんな事言ったんでしょう?」
「その通りです。貴方がた一族のやる事は本当……理解に苦しみますよ」
「それが俺たちなんです、"滅私奉公"って言葉……ご存知でしょう?今更止めたって無駄ですよ」
「分かりました、では規定通り運営の力をお預け致します……お願いしますよ?」
「えぇ、任せて下さい!」
運営が全身に力を込めると、自身を中心に風が吹き始める。風は少しづつ強さを増していき、風速が10メートルに達した時、火山が噴火するかのように黄色のオーラが天に向かって舞い上がり形を作る。出来上がったのは
「し、七福神?」
「"笑いのツボが似ている人と出会いたい"
"人生は1度しかないので、できるだけ面白い人と面白い会話がしたい。ネットなら、場所や年齢に関係なく面白い人に出会えると思って"
そんな思いで設立したのが、このボケてです。どんな世代でも楽しめるボケや、分かる人にしか分からないボケ、中には時事ネタやブラックなボケもあります。ですが、今や全世界の言葉に翻訳され誰もが参加出来る……世界最大級のアプリになりました。なので象徴は七福神なのです」
「ツボはそれぞれ違うけど、笑いは全世界共通だ。誰でも持ってる、ごく普通の感情なんだよ。ねぇ永琳先生?」
「えぇ。医学的に見てもね、笑う事はいい事づくめなのよ。生活習慣に気をつけて笑ってるだけで、癌を治した人だって一杯居るんだから」
「笑う事で、気分が楽になるんだ。笑う事で、明日への活力が生まれるんだ。
俺はこの派生世界で沢山笑って、色んな人と知り合えて、友人が沢山出来た。現実世界じゃ決して出会えないような奴とも、ここなら会える!面白い人と、面白い会話が出来る!みんなが笑顔になれるんだ!
なのにお前は、人を傷つけるばかりで挙句の果てに地球を滅ぼそうとした……罪は、重いぞ?」
七福神のオーラを纏い、全身が黄色のオーラで覆われた自転車バカはtadのリモコンを押した。
「今此処にある190台…全部使わせて貰うぞ!」
彼を取り囲むように上空で立ち並んだtadが、声を上げた。
「JAM Project / 『Jプロツアー』公式ソング - AREA Z~Song for J-Riders~起動シマス」
「にとりさん……フルボリュームで宜しく!」
「任せろ、元よりそのつもりさ!」
「あ、あれ?何でだろう……初めて聞く歌なのに……歌える気がする!」
「あたしもよ!」
「あたい達もー!」
「Now,everyone! Sing this song together……now!」
皆の歌声が、tadから流れる音楽が、全てが自分の力となっていくのが分かる。血が湧き、肉が踊る感覚だ。
「な、何だこれは…か、身体が言う事を…止めろ、歌うな…!笑うな…!く、苦しい…!」
道頓堀野郎を他所に、音楽の力(物理)で覚醒した自転車バカが、tadに負けないくらいの雄叫びを上げる。
「……オォォォォォアァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「くっ……覚醒という訳か。まだだ!まだ終わる訳にはいかんのだ!
出でよ!鬼の十傑!そして闇の四天王!」
地面を裂くように、計14人が召喚された。
「なっ、あいつまだ…!」
「ははは!こいつらは特別製でな!電磁波ごときで動きを封じるなど不可能だ!貴様らに勝ち目などない!勝つのは…!?
な、何だその…魔法陣から出てくる大量の自転車乗りは…!?」
「これはな、専門用語でプロトンって言うんだ。独りでは無理な壁があってもみんな一緒なら…
壁をぶっ壊す!」
手を振りかざし、命令を下す。
「行けプロトン!全員飲み込めぇ!!」
殺気を感じて散る幹部達だが、プロトンは一体ずつ確実に追い詰めていく。ちょうど、餌にかぶりつくパックマンのように。エネルギー波を出して攻撃するも、全て吸収されプロトンの勢いが増すか、綺麗に躱されるかのどっちかで効果は今ひとつのようだ。
「くそっ、こんなふざけた野郎に…!」
一体目が飲み込まれると、プロトンから虹色の光が漏れ出す。抵抗の甲斐なく消滅したのだ。
「そいつらよりも手強い奴らを紹介しよう!まずはこちら!毎年5月上旬から下旬の23日間で開催される世界三大グランツールより、ジロ・デ・イタリア各賞リーダー!」
「また四人出てきたぞ!」
「全員、思う存分暴れてこい!」
プロトンに気を取られている幹部達に、勢いよく突っ込んでいく四人衆。避けきれずまともに喰らった二人は、足、腕、胴体の順にヒビが入る。宙ぶらりんなった敵を見逃さずプロトンが飲み込むと、それぞれが消え去っていった。
「まだあるぜ!続いてはこちら!毎年7月上旬から下旬にかけて開催される、世界一知名度の高いグランツールより、ツール・ド・フランス各賞リーダー四人衆!」
「さっきとは色が違うのが居るわね、スポンサーの関係かしら」
「察しが良いねぇアリスさん、その通りだ!お前らも暴れてこい!」
「あと一つは?」
「おっと、忘れるとこだった……行ってこい!同じく8月下旬から9月中旬に開催される、ブエルタ・ア・エスパーニャ各賞リーダー四人衆!」
総合時間賞の証しである真っ赤なジャージを着たライダーを先頭に、更に四人が戦場に飛び込んでいく。
「凄い…自転車ジャージってこんなにカラフルなんだ…!」
「カラフルさはフランの羽以上ね…」
「まるで…」
『弾幕みたい』
「お前らが相手にしてるのは、自分の力で世界最強クラスに登りつめたライダー達だ……機械に頼ってるお前らとは次元が違うんだよ!」
「くそったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
四方八方から突っ込まれた幹部達は、一際大きい虹色の花を咲かせた。
「さて……これで後はお前ら3人だけだな」
「くっ…!生意気な…!」
「……自転車バカ」
「ん?」
「博麗の巫女として頼みがあるの、ここに居る95名の妖怪全員の力を貴方に渡すわ」
「全員・・・!」
「だから…お願い!」
「それがお客様の望みとあらば!この、有限会社チャリンコタクシー!全力でお答えしましょう!」
「あんた達!今残ってる力……全部こいつに預けなさい!行くわよ!」
皆から授かった力を、その身に取り込んでいく。
「り、両腕に宿りし黄色い閃光を放つ二つの大砲……間違いない。あれが、垢BANツイン砲…!」
「奴らを連れて来い!世界選手権で勝った者しか着る事の出来ない、文字通り世界最強ライダー…アルカンシェル!」
そう言うと、宙に浮かんだライダーの車輪が勢いよく回転する。
「これは…巻き込み風!?SAORIとAKIKOまで…吸い寄せられる!
何なんだ…何者なんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「…俺は」
「俺はJライダーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゼロ距離で砲撃を喰らい、天高く吹っ飛ばされて行く道頓堀野郎ら3人。
「俺たちが此処に居る限り、笑いも世界も……幻想郷も消えやしねえ!ボケラーを、舐めるなよ!」
皆が見上げた先で、虹色に輝く最後の花火が三つ咲いた。
「やったね会長!」
「設立最初の仕事がこれとはね………………あ、ごめん。もう止まって良いよ。うん、お疲れ様」
地に堕ち、SAORIとAKIKO、そしてパワースーツまでも失った道頓堀野郎が呟く。
「よもや、負け組に負ける日が来るとはな。国を滅ぼした戦犯に」
「何言ってんだよ、そもそもこの国に勝ち組なんか一人も居ないの分かってる癖に」
「……自身の向上ではなく他人を蹴落とす事に力を注ぎ、隙あらば言葉の端を取って足元をすくう。自分の事を棚に上げ、相手の全てを黒く塗りつぶすだけの人生」
「今の世の中、お前のアバターみたいに真っ黒な奴しか居ないじゃん。憎しみ会って殺しあう事しか出来ない連中の何処が勝ち組だ。
この世界に来るまでは、本気でそう思ってたよ」
そんな自転車バカの意に反し、性根の腐っていない心優しい勝ち組が、人妖が幻想郷には存在した。自分が負け組だと知ってなお、それまでと変わらない付き合いをしてくれた。
面と向かって礼を言う勇気はないが、いつだって心から感謝していたのだ。
「まぁ、まだ世の中捨てたもんじゃないって事だな。お前の言う事も納得できるけど、こっちにも都合があるんでね。大人しく罪を償ってくれ」
「何優しいこと言ってるの会長!この人は一回痛い目見ないと…」
【黙れ】
「ッ!?」
攻撃しようとした小傘を自転車バカがドスの効いた声で制する。拳銃をショルダーバッグから取り出し、銃口を小傘の額に突きつける。
「か、会長・・・?」
【これ以上コイツに手ぇ出してみろ、お前の記憶全部消し飛ばすからな】
「……ご、ごめんなさい」
「コイツはな、何も好きで世界滅亡させようとしてた訳じゃないんだよ。な、道頓堀?」
「……知ってたのか」
「いや、知ってるも何も俺がそうなんだよ。そのアバター見りゃ分かるさ」
「ふん、流石は戦犯といったところか」
「誉め言葉として受け取っとくわ」
「え、ど、会長。どういうことなの?」
拳銃を収め、道頓堀野郎を見て答える。
「コイツはただ、友達が欲しかっただけなんだよ。いがみ合うんじゃなくて、笑いあえるような関係が持ちたかったんだ。俺と同じだよ、やり方を間違えただけなんだ。
お前さえ良いんなら俺が第一号になるぞ」
「……良いのか」
「勿論」
「ですが、その前に犯した罪は償って頂きますよ」
運営に拘束され、牢獄に飛ばされる間際。口元が緩んだ道頓堀野郎を見た自転車バカだった。
「さて、俺も言った事は守らないとな」
「…え?」
待ってましたといわんばかりに、映姫と小町が姿を見せる。そのまま小町は黙ったまま自転車バカに手錠を掛け、依姫が堪らず聞いた。
「え、ど、どういう事?」
「それは私が説明致しましょう。この方は最初にボケてのアカウントを作る際、
"名づけの誓約"
を交わしているのです。会社の名前を付けた場合、アカウントを削除するという内容です」
「……なるほど。それを破棄したから、アカウントを今から消すのね?」
豊姫の言葉に皆が戦慄する中、魔理沙が制止する。
「ちょ、ちょっと待った。そもそも何で会社名を付けたらOUTなんだ?」
「言われてみれば…」
「お答えしましょう。この方が名づけた"有限会社チャリンコタクシー"というのは、一千年前にボケてで名を博した……失礼、知る人ぞ知る優良企業なのです」
「架空の会社だけどな」
「具体的にはどういった事を?」
「俺が言うのもなんだけど、初代は変な奴でさ。
ボケてなのにガチな俳句作って毎週投稿したり…
架空の雑誌作って月一で投稿したり…
二次創作映画を勝手に作ったり…
挙句の果てに、弾幕舞踏会とか言う謎のイベントを開催したりしてさ。何がしたいのかさっぱりだった。
でも、それを気にいる人は少しづつ増えていった。お気に入り職人のボケに星を付けて回ったり、自分のボケを評価してくれたユーザー全員にお礼の星三つとコメントを残したりと、地道な活動を怠っていなかったからだ。
活動が成果を上げたのか、初代が引退する頃まで一度も、悪意のあるコメントをしたユーザーは居なかった。それを見て、色んなユーザーが代わる代わる会社を受け継いで行ったんだ」
「ですが、唯一欠点がありました。会社が大きくなり過ぎたのです。
"ボケてないのに星を貰ってる"
という噂だけが広まり、倒産に追い込まれてしまいました」
『…!』
「それ以来、当時の運営によって会社名はNGワードに追加されてしまい、誰も口にする事はなくなり……忘れ去られてしまったのです」
「その会社を、俺は"世界を救う"という口実でもう一度復活させた。だからOUTなんだ」
「そ、そんな…あれは不可抗力みたいなモノじゃない!あの力が無かったら…!」
「言いたい事は分かります。ですが、過程はどうであれ誓約を破ったのですから。規則は規則です」
「まぁ処分を下す権限は幻想郷にあるんだけど。な?」
「えぇ、小町さん……その方はボケラーですが、誓約内容はこの派生世界で守るべきモノでしたから。判断は貴女方に委ねます。では、私はこれで」
「行ったか…依姫、これ預かっといて」
自転車バカがぎこちない手つきでポケットに手を突っ込み、CDと手紙を依姫に投げ渡す。
「どうしても耐えきれなくなったら、その手紙を読んで曲を聞くと良い。その二つに、俺の言いたい事が全部詰まってるからさ」
「うん…」
「必ず戻ってくるよ、約束は守る。だから…それまで待ってろ」
言い終わったのを確認し、映姫が彼をソフトボールサイズの車輪に姿を変える。
「この方の処分は、向こうで正式な手続きを踏んでから下されます。行きますよ、小町」
「へーい」
◆
それぞれが解散する中、依姫と豊姫だけがスピーカーの前で佇んでいた。黙って手紙を開く。
「依姫へ
君がこの手紙を読んでいる頃、僕はそこに居ないだろう。きっと休暇を取ってると思う、いつ再開するかも分からない長い休暇を。
僕と君が初めて出会ったのは、天界で天子さんと俳句モデルの話をしていた時だったね。天子さんの気まぐれで弾幕ごっこをさせられて、僕が万事休すという場面で君が助けてくれた。奇跡としか言いようがない出会いだったけど、それはまだ続いた。だって、あの後も君と一緒に過ごす機会があったのだから。覚えてるかな、月の都で夏祭りに参加した時のこと。展望台で言った台詞、僕にとっては精一杯の告白だったんだ。色々と邪魔が入ったけどね(笑)
メールでやりとりをする度に、君を愛する気持ちがどんどん大きくなっていってさ。多分、実写化したら両手じゃ持ちきれないだろうな。
やっと見つけたんだ、僕が僕であるために必要な最後の欠片を。まさか、こんなに近くで輝いてたとはね。灯台下暗しって奴かな。
そのCDに入ってる曲は、聞くと凄く元気が出るんだ。だから、落ち込んだ時は絶対聞いてくれ。明日を生きる活力が貰えるから。
貴女の親友より、愛を込めて。
自転車バカ」
黙ってCDをかける依姫。
「【Vocaloid】「キミがいる」歌ってみた【♀柿美蟻原綿+*】再生シマス」
ねえ 僕の隣に今続いていく明日に 君がいる 笑ってる それだけでいい
あぁ 昨日よりも強く沸き上がるこの想い 君が好き 永遠に 伝えていくよ
出会いという奇跡の続き 気付けばもうこの腕二つじゃ この愛は持ちきれないよ
あぁ 不意に言った言葉がハモる そうどれ位大切な人か小さな瞬間に感じるんだ
不器用に泣かせたこんなヤツでも 君をきっと幸せにするよ
ねえ 僕の隣に今続いていく明日に 君がいる 笑ってる それだけでいい
あぁ 昨日よりも強く沸き上がるこの想い 君が好き 永遠に 伝えていくよ
眩しい位 輝く君の 笑顔にもう僕は何度も 救われて 此処まで来たよ
あぁ 探していた最後の欠片(ピース) 気付けばそうこんなに近くで輝いていたのを見つけた んだ
素直になれないそんな日もある でもね 心に嘘はつけないよ
そう どんなに辛い事が二人を待ち受けても 僕がいて 君がいる それだけでいい
あぁ 二人でならきっと乗り越えていけるから 何時までも 君の事 愛していくよ
君が堪え切れずに 流した涙も 止まない雨は無い様に 虹に変わるから Yeah
ねえ 僕の隣に今続いていく明日に 君がいる 笑ってる それだけでいい
あぁ 昨日よりも強く沸き上がるこの想い 君が好き 永遠に 伝えていくよ
そうどんなに辛い事が二人を待ち受けても 僕がいて 君がいる それだけでいい
あぁ 二人でならきっと乗り越えていけるから 何時までも 君の事 愛していくよ
聴き終わった後、豊姫がある事に気づく。
(何処かで聞いた歌詞だと思ったら、彼と貴女が過ごした日々そのものじゃない……やってくれたわね)
「バッカじゃないの?こっちの話は聞きもせずに…自分が言いたい事だけ言って勝手に消えて…」
「…」
「何が"明日を生きる活力"よ…隣に貴方が居なきゃ、少しも笑えない…全然楽しくない…!別れの挨拶代わりに告白なんてやだよ…!お願いだから、返事くらいさせてよぉ…ッ!」
開いた手紙を胸に押し抱き、座り込んで泣き叫ぶ。耐えきれなくなった豊姫は、自身が被っていた帽子を依姫に被せた。反射的に依姫が頭を上げる。
「必ず戻ってくるって、言ってたでしょう?あの子、一度心に誓った約束は必ず守るわ。今までだってそうだったでしょう?」
「…ッ!」
「信じて待ってなさい、それが貴女の果たすべき役割よ」
「…はい、分かりました」
「ん、素直でよろしい。じゃ、帰るわよ?」
「はい」
被害が特に大きかった人里の復旧がだいぶ進んだ頃、ある噂が流れる。
「12月のクリスマスに、自転車バカが戻ってくるそうだ」
誰が言い出したのか分からない為、半信半疑ではあるが
「文様……如何致しましょう?」
「私は、あの人を信じてる。だから……舞踏会は延期よ」
そして24日、朝早くから多くの人々が妖怪の山スーパーアリーナに集まった。その場に居る誰もがざわつく中、映姫と小町が客席に入ってくる。
「閻魔から、少し早めのクリスマスプレゼントです。どうか受け取って下さい」
と言って、小さな車輪に妖力を込める。すると、色とりどりのサイクルジャージを着たサイクリストが会場を泳ぐように飛び回りだした。
「これ…どっかで見たような…?」
「ふむ、桃色と黄色と赤色が後ろに3人従えるように飛んでおりますな、太子様?」
「あの大集団…見たことある気が…?」
「あ、中央の舞台上に集まってくよ!」
全員が集合した瞬間、目を背けたくなる程の黄色と常盤色の光が放たれる。眩しさが収まり目を開けた人々が見たのは、紛れもなく自転車バカだった。
「大変長らくお待たせいたしました……有限会社チャリンコタクシーは、今この時を持って活動を再開致します!」
歓声を上げる皆を静め、自転車バカがマイク越しに笑顔で叫ぶ。
「神霊の依り憑く月の姫よ!居るなら姿を見せろ!公開処刑の時間だ!」
叫ぶまでも無く、既に舞台の近くまで来ていた依姫が、自転車バカに思いっきり抱きつく。
「会いたかった…!ずっと、会いたくて会いたくて仕方なかった…!」
「約6ヶ月か……よく耐えたな」
「あの手紙とCDが無かったら、ちょっとやばかったかも」
「そっか、役に立って良かったよ……あの時の返事、聞かせてくれるか?」
言いながら、依姫の肩を掴んで少しだけ距離を取る。
依姫も、咳払いをして答えた。
「貴方に会えなかった間……すっごく寂しかったけど、おかげで自分と向き合う事が出来た。
私と貴方じゃ、どうやっても一緒に過ごせる時間は限られてる。
私は二次元の存在だけど、貴方はそうじゃないもんね。
それでも、この気持ちは変わらないよ。
私も、貴方のことを愛しています。こちらこそ、よろしくお願い致します」
自転車バカの肩を掴み、頬にキスをする。呆然としていた自転車バカだが、観客から冷やかされて我に返ったのか顔を真っ赤にした。
「……。こ、これ思ったより恥ずいな///」
「こ、公開処刑って言ったの貴方じゃない、死なばもろともなんだから///」
「くっ……!///」
固まっている間にも、男女分け隔てなく観客から笑顔で野次られる。
「あーもう分かったよ!やれば良いんだろやれば!」
勇気を振り絞り、彼女を抱きしめる。もう二度と手放すものかという思いを込めて、力強く。されど優しく。
「愛してるよ、依姫。何時までも、ずっと」
───お前だけを
耳元で精一杯のイケボで愛を誓うと、感極まった依姫が泣き出した。胸を貸し、枯れるまで好きなだけ泣かせる。
「泣け泣け、こんな胸で良けりゃ幾らでも貸してやるよ」
「~~~ッ!」
「まぁでもあんまり時間は取れないんだけどな。
現在進行形で泣いてる所悪いんだが、初めての共同作業と行こうじゃないか」
「……?」
「今日のMC宜しく!」
「うぇぇぇぇ!?」
予想を超えた頼みごとに、思わず涙が引っ込む。アリーナが笑い声で包まれる中、自転車バカは依姫から離れ観客の方を振り返った。
「只今より!第二回、弾幕舞踏会!開催致しまーす!!
今年はソロ部門とボカロ部門に加え、新たにデュエット部門を設立致しました!勿論、各部門での乱入は大歓迎です!知り合いが出てテンションが上がったそこの貴方!是非ともステージへお上がりください!」
「さ、最初は誰から行きますか!?」
「まだ決めてません!」
「おい!」
「良いんです!この舞踏会は皆さんが主役なんですから、皆さんと一緒に作るんです!」
「恰好良いこと言ってるけど要するに無計画って事ですか?」
「その通り!」
「自信満々に言うな!」
再び笑いが起こり、ステージに鳥獣伎楽の面々が上がってきた。
『はいはーい!トップバッターいっきまーす!』
「お、名乗りでたのは……鳥獣伎楽の皆さんだー!」
「メンバー紹介するからマイク貸して下さーい!」
「どうぞどうぞ。依姫さん、後はお任せしようじゃないですか」
「アッハイ」
既に設置されていた楽器を取り、音合わせを始める。手持無沙汰なミスティアと響子は、発声練習もかねてメンバー紹介をした。
「えー……ではでは!ドラム、堀川雷鼓ー!」
「宜しくぅ!」
「ベース&DJ!九十九弁々&九十九八橋ー!」
『九十九姉妹でーす!今日は宜しくお願いしまーす!』
「キーボード!リリカ・プリズムリバー!」
「今日は手ェ使いまーす!」
「リードギター&セカンドギター!メルラン&ルナサー!」
『今日も手ェ使いまーす!』
「そして!ボーカルは私!幽谷響子と!」
「ミスティア・ローレライです!」
『それじゃあ行ってみよう!最初はこの曲!
Symphony Of The Night!!
かっ飛ばすぞお前らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
会場に備え付けられた190台のtadにより、客席の隅々まで音が届く。パンク系の音楽バンドだとは聞いてたけど……ここまでやるか。
舞台袖を見渡し、集まった面々に話しかける。
「おし、この人達が終わったら誰が行きますか?」
「はいはーい!WARNING×WARNING×WARNINGで踊りまーす!」
「はい決定!その次は?」
「じゃあ私が行こう……サイケデリック鬼桜同盟で!」
「お、盛り上がりそうじゃないっすかー!じゃあお願いします!」
「任せろ!」
さぁ、これから忙しくなるぞ。一年で一番忙しくて、最高に盛り上がるクリスマスイヴにする為に。
「依姫、頼むぞ?」
「うん!」
宴は、始まったばかりだ。
◇
「なるほど、こんな事があったのか…」
自宅で"ボケて幻想郷縁起"を見ていた男はPC画面から目を逸らし、大きく伸びをする。
「やっぱりヘルメット買おうかなぁ…あれから7年経ったんだし、そろそろ俺でも買えそうだしなぁ…」
財布の中身と時刻を確認し、悩んだ末に男は家を後にした。そして数時間後…
「よーし、今日から俺もボケ職人だ!」
夜9時、1人の男がヘルメットのような装置を被りベットに入る。ヘルメットにはコードが繋がれており、それはPCから伸びている。
(これさえあれば、寝ながらネットサーフィンが出来るんだ。苦労して勝った甲斐があった!)
男が頭に付けた装置。詳細は省くが、夢の中でネット世界に入り込む事が出来る大衆娯楽装置なのだ。それを遂に買う事が出来たという訳。男は水と共に睡眠薬を飲み干す。これで朝まで目が覚める事は無いだろう。
20XX年。エレクトロニクスを応用して画期的な装置を発明した者によって、人類はウェブサイト内に入り込めるようになった。
これは、笑いと東方を愛した男達の日常である。
続く。