設定がハチャメチャです。
私には文章力なんぞ存在しません。
ご高覧の際にはご注意下さい。
翌日、ログインした自転車バカの装置が勝手に通話モードを起動する。
〈おはよう、自転車バカくん。調子はいかがかな?〉
「まぁ、それなりに……どちら様で?」
〈君が知らない者だ……まぁそんな事はどうでもいい〉
「は、はぁ……何の用で?」
〈何、お別れの挨拶でもしておこうと思ってね〉
「お別れの挨拶ぅ?」
〈あぁ。この電話が終わったら、君は死ぬんだ〉
「……はぁ!?何で!?」
〈昨日、運営から連絡があってね。馴れ合いを犯した者はアカウントごと削除する事になったんだ〉
「馴れ合い?俺はそんな事……まさか!」
〈思い出したようだね……そう、馴れ合いを犯したのは君じゃない。初代自転車バカだ〉
「何で今更……初代は指摘されてすぐに止めたって文献に書いてあったけど?
正しい経営をしない会社に未来はないから
って。俺関係無いじゃん。そもそもアレ犯罪行為でも何でもなくね」
〈それが有るんだよ、過去に一度でも馴れ合いを犯した者は、消さなきゃいけないんだ。再犯を防ぐ為にね〉
「だーかーらー、俺やってないって言ってんじゃん」
〈……まだ分からないのかい?そんなユーザー名を名乗っておきながら〉
「ユーザー名…?」
〈呆れた奴だ……運営はこうも言ったんだよ。
”有限会社チャリンコタクシーを継いだ者に限り、無条件でアカウントを削除する”
とね〉
「……いやいやいや、冗談だろ?あの運営がそんな事」
〈全ては決まった事だ、諦めてくれ……あ、そうそう。アカウントを消すにあたって身柄を確保してこいと言われたんだ。どうやら、生死は問わないらしいぞ〉
「……まじで?」
〈そこでだ。君は活動のほとんどを幻想郷で過ごしているようだし、その世界に住まう全ての能力者に看取って貰えたら本望だろうと、我々は考えたんだ〉
「我々……お前ら誰なん?」
〈どうせ死ぬんだ、教えてやろう。我々はな、道頓堀様の部下、"鬼の十傑"と"闇の四天王"だ〉
「あの時の!?」
〈積年の怨み……やっと果たす時がきた。我々によってマインドコントロールされた道頓堀様……
その世界の能力者達……
そして、同じくコントロールされたアホな運営によって……君の全てを消し去ってやる〉
「おま、それが何を意味するか分かって言ってんのか?」
〈当然だ。派生世界における最大の禁忌
”キャラクターのユーザー殺し”
これを犯した世界は、運営によって跡形もなく消滅する。人格も記憶もリセットされ、新しく生まれ変わるんだろう?
望むところだ〉
「……ッ!」
〈此所はボケてだ、君たちの近況報告の場じゃ無いんだよ〉
乱雑に、通話が切れる。脳の判断が追いつかず頭がパンクしそうになるも、ドアの外から嫌でも感じる妖気に当てられ正気に戻る。
(やべえ、早速誰か来ちゃったよ!とりあえず逃げ…)
ドアの外に立っている少女が拳を握ると、自転車バカの家は爆発した。
◇
インターホンが鳴り、玄関へ行った自転車バカが戻ってきた。テーブルに置かれた箱を、嬉しそうに開ける。
「…会長、聞いてもいい?何その趣味の悪いシャツとスマホカバー」
「Tシャツ教に入った記念だってさ、へカーティア様から頂いたんだ」
「Tシャツ教?何ですかそれ」
「あの人がツイッター上で立ち上げた宗教だよ」
「ごめん、ちょっと待ってくれ。君はいつから神様とFF内になったんだい?」
「ほら、さぬさん助ける時にツイッター世界に行ったろ?あの後フォロワー第一号になったのがへカーティア様だったんだ。確認したら本人だったのはビックリしたけど」
「ほえ~…あ、メモがあるよ」
小傘に言われ、中に入っていた紙を持ち上げる。
「何々?
”Tシャツ教へようこそ!プレゼントね~。これを身につけて広めるのが主な活動になるから、よろしくね♪私が丹精込めて作ったから着てて損しないわよん”
だってさ」
『…着るの?それ』
「当たり前じゃん、まだ寒いからインナーとしてだけど」
『…スマホカバーは?』
「付けるよ、俺のサムスン製だからちょっと不安だけど」
『私たちまで巻き込まないでね…?』
「だ、大丈夫だって!大丈夫だからそんな目で見るな!」
◇
爆発の衝撃で吹き飛ばされ、向かいの家の塀に叩きつけられる。そのまま地面に崩れ落ちるが、ゆっくりと起き上がった。
「あ、あれ?生きてる…能力使ってないのに…いや、今のは使ってもヤバかったな」
煙幕が消え、瓦礫と化した家の前にはフランが立っていた。
「ごめんなさい、本当は遊びに来ただけなのに……身体が言う事を聞かないの」
「大丈夫だよ。この家ローン組まずに即金で買ったから」
仁王立ちするフランは握った右手を開き、自転車バカに狙いを定める。
「……逃げて!このままじゃ貴方をキュッとしてドカーンしちゃう!」
「くそ!何だって今日は曇り空なんだ!」
立ち上がって逃げようとするが、脚に力が入らない。どうやら腰が抜けたようだ。
「嫌っ…逃げてぇ…!」
「やべっ……!」
フランが目を瞑った瞬間、白衣を着た男が自転車バカの前に現れた。首に赤アザを持ち耳に緑色の羽根飾りを付けた人物は、彼女が能力を使う寸前で自転車バカごと瞬間移動した。目を開け、辺りを見回しながら独り呟く。
「不思議な手応えがあったけど…何を破壊したんだろう……?」
驚異的な速度で森の中に移動した白衣の男は、座り込んでいる自転車バカに声を掛ける。
「大丈夫か?」
「お、おかげさまで……」
「そうか、見たところ腰が抜けたみたいだが……そっちはどうだ?」
言われるまま力を入れると、立つことが出来た。それをみた白衣の男はスマホを取り出し、誰かに連絡をつける。男がスマホを仕舞うと同時に、旧暦の人が空間に穴を開けて百鬼姫と一緒に飛び出てきた。
「臆病神!今の話ってマ!?」
「あぁ、事実だ」
「くそっ、一体どうなってるんだ……江戸川意味が分か乱歩だぜ」
「それについては、これから聞くところだ」
二人の視線が集まり、自転車バカが
「説明はする、だからその前に何がどうなってるのか教えてくんない?」
と言うと、白衣を着た男と旧暦の人が交互に話し始めた。
「自己紹介が済んでなかったな、俺は逃足速シ鳥神。覚えにくいなら臆病神と呼んでくれ」
「見た目は普通の人間だが、この人はなんやかんやあって創造世界からやって来た神様だ」
「この紅笹…通称”旧暦の人”とはトゥートゥー教の信者でな。元気にしてるかどうか久しぶりに見に来たんだが……人里を歩いてたら爆発音が聞こえてきたんだ」
「臆病神は色々な能力を持ってる、自転車バカを助けた時に使ったのはさしずめ、
”あらゆる物からも逃げ切る能力”
でおk?」
「あぁ、あれを使えば光よりも速く逃げられるからな……俺らが言えるのはこの程度だ」
「教えてくれ、自転車バカ。フランは何でお前を殺そうとしてたんだ?」
「ルーミアもいきなり居なくなったのじゃ……」
「百鬼姫、お願いだからちょっと黙ってて」
「す、すまぬ」
見慣れないメンバーに戸惑いつつも、自転車バカは説明を試みる。
「実は……」
◆
「なるほど……じゃがこうして見る限り、お主らボケラーは対象外のようじゃな」
「……おい、自転車バカって言ったか?お前に確認して貰いたいことがある。協力してくれ」
「何をどんな風に?」
「今この幻想郷にボケラーとやらは何人居るか教えてくれ、片っ端から協力を仰ぐ」
「そう上手く行くかな……」
ぶつぶつと言いながら腕の装置を操作する自転車バカを、紅笹が励ます。半信半疑で穂谷野(雷様)に電話をした所、喰い気味にOKが出たどころか幻想郷にいる全てのボケラーに協力させるとの返事が返ってきた。
電話を一度切ってスカイプに招待した所、予想外に集まってきた。
「すっげえ、町人Eさんもトムさんも来てる……今日に限ってはボケラー勢揃いじゃねーか!」
感動する自転車バカを他所に、穂谷野(雷様)がそれぞれに指示を出す。
〈さぬと町人E!何としても幽々子と妖夢を冥界から出すな!特に幽々子!〉
〈それについては心配無用です!〉
〈ゆゆ様と妖夢は操られてないぜ、冥界組は大丈夫だ。このぶんだと小町&山田も無事なんじゃないのか?なぁえーきよ〉
〈山田じゃねえ、ヤマザナドゥだ!いい加減覚えろ町人!
こっちも至って普通だ、いまちょうど小町が説教喰らってるよ〉
「ってことは依姫もとよ姉も無事か……本当に幻想郷にいる妖怪にしか効果ないんだな」
〈悪いが、操られてんのは妖怪だけじゃなさそうだぞ。俺の霊夢もどっか行っちまいやがった〉
「おい、しんたん。冗談キツいって」
〈諸君!何としても自転車バカに彼女らを近づけさせるな!ボケラーの意地をみせてやろうじゃないか!〉
〈おう!!〉
〈自転車バカ!君はそこに居るメンバーで敵の本拠地を探してくれ!コントロールする以上、幻想郷のどこかに居る筈だ!〉
「承知しました!やってみます!」
〈操られてない冥界組や彼岸組は、戦力が足りない所のカバーに行ってくれ!〉
〈了解!〉
〈では各自……行動開始!〉
「おし、ぽまいら。そうと決まればすぐに移動するぞ。此処じゃ色々とまずい」
紅笹がスキマを開き、中へ入るよう急かす。自転車バカが尋ねようとすると、辺りが急に薄暗くなった。背中に悪寒が走った自転車バカが振り返ると、黒い球体がまっすぐこちらに向かってきているのが見えた。ルーミアだ。スキマを開いたまま、紅笹と臆病神が眉をひそめる。
「くそ、もう来やがったか!やっぱり紅魔館の近くに飛んだのはマズかったな……!」
「おい臆病神!何故わざわざ敵の巣窟に飛んだのじゃ!?」
「逆に安全かなって思った結果がこれだよ!仕方ねぇ……臆病神!自転車バカを連れてスキマに飛び込め!あいつは俺らで食い止める!」
「分かった!頼んだぞ!」
スキマに飛び込みながら、自転車バカが叫ぶ。
「……大丈夫だとは思うけど絶対死ぬなよ!」
親指を天に向けた紅笹は、スキマを閉じた。
「ごめんなさい…ごめんなさい紅笹…!」
「泣くな、ルーミア。お前が魂ごと俺氏を消さない限り、何度でも復活するからよ……そもそも痛いの大歓迎だし」
「流石、ドMの鏡じゃな」
人里の外れ、迷いの竹林近辺に出た二人。臆病神が人里の被害状況を確認する傍らで、自転車バカはスカイプを開く。
「鯖の味噌煮さん、永遠亭の人らってどうなってる?」
〈やかましい!今妹紅とバトル中だ!座薬神 レモ吉が永琳に薬ぶっかけたら気合いで治したらしくてな、今二人で応戦中だそうだ!〉
「えーりん凄え!因みに慧音先生は?」
〈妹紅の話じゃ、家に閉じこもって編集してた所で……あっつ!
コントロールされたからそのまま作業続行中だとよ!良かったな!〉
「じゃあ竹林内はその内解決しそうな感じか!他当たってみるよ!」
〈何かあったら知らせる!〉
その後も仲間から情報を集めたところ、実態が明らかになってきた。晩の内に誰かが忍び込んで術を仕掛けたのではなく、今日の朝になっていきなり身体の自由が効かなくなったのだそうだ。
「って事は、奴らは朝早く……もとい、現実世界の夕方くらいからログインして術を仕掛けたのか」
「そういう事になるんすけど……うーん」
「何か言いたげだな」
「文献で読んだんすけど、そもそもボケラーが使える特殊能力に”マインドコントロール”とか言う精神攻撃の類いは存在しないんすよ。みんなは身体の自由が奪われただけでマインドコントロールじゃないし」
「そうなのか?」
「えぇ。能力を使うには何かしらの派生世界に居ないと無理ですし」
「……もう少し詳しく話してくれないか?」
「運営が能力を使えるようにしたのは、その派生世界で生死を彷徨ったボケラーが出たからです。幸いそのボケラーは死なずに済んだけど、運営はその事件を重く見た。
だから、星の合計や一つのボケでいくつ星を獲得したか、そういったデータを戦闘力や防御力として還元出来るように設定をしたんです。それ以来、死者はおろか怪我人すら出てないって話ですけどね」
「……決まりだな。彼女らを操ってるのは人間じゃない、機械だ」
「機械ぃ?」
「どういう原理か分からんが、今の話を聞いて理解した。最初は”広範囲に居る者を一斉にコントロールするとは、よほどの手練れか”と思っていたが……そんな力が定められていないとなれば、そういう事が出来る機械を使っているとしか考えられんだろう」
それを聞いて何か閃いた顔をした自転車バカは、腕の装置を弄る。
「……あっ!ボケ批評家たち、幻想郷にログインしてねーじゃねーか!」
「それ見ろ、別な世界から操るなど尚のこと不可能だ」
〈なぁ自転車バカ、さっき妖怪の山で不自然な電気反応があったんだ。見に行ってくれないか?〉
「雷様、それどういう事ですか?」
〈私は妖怪の山全土に微弱な電流を流すことで、ここにいる連中を抑え込んでる。
しかし、山の中腹あたりで不自然な電気反応があった。にとりの工房や、文とはたての家に電流を流したのとは別な反応なんだ〉
「それはもしかして……」
〈恐らく、今君たちが話していた代物だろう〉
「承知しました!すぐ向かいます!」
解決の糸口が見えた事で意気込む自転車バカだったが、走り出した途端に心臓が激しく痛み出す。
「ぐっ……!」
「お、おい。大丈夫か!?」
「はぁ…はぁ…。何だったんだ今の」
「それはこっちの台詞だ……走れるか?」
心臓を右手で叩き、再び走り出す。
「大丈夫ですよ!……多分」
「おい最後」
「ま、まぁまぁ。早く行きましょうよ」
「……全部終わったら、お前がトゥートゥー教に入れるよう交渉してやる。常に優しく、モラルを守る。人として重要なことをしっかり守れるものが、このトゥートゥー教徒となれるんだ。お前にぴったりだろう?」
「誘いは有り難いんすけど、Tシャツ教に入ってましてね。掛け持ちってアリなんすか?」
「……考えさせてくれ」
「臆病神、それ後回しでオネシャス」
「!?」
走る二人が振り返った先にいたのは、泣いている小傘と、小傘を見て悲しそうな目をしているナズーリンだった。
「臆病神、何とかなりますか?」
「任せろ
現実逃避”臆病風”
吹かれて消えな」
臆病神の手から、不自然な風が発生する。まともに受けた小傘とナズーリンは向きを変え、そそくさと帰って行った。
「……今のは?」
「俺の持ち技だ、あの風に吹かれた者は臆病になる」
「ホントに色んな技持ってるんすね」
「大体の敵はあれで居なくなるが……こいつらはどうだろうな」
「なっ!?」
二人の前に立ちはだかったのは、神霊廟の面々だった。
「しまった!神霊廟方面は旦那不在だったの忘れてた!ど、どうしよう臆病神!?」
「ドラえもんみたいに呼ぶな!
既に臆病風は出してるんだが……効果は今ひとつのようだな」
「マジすか・・・!」
自転車バカが後ずさりをすると、一斉に弾幕が放たれた。逃げようとする自転車バカを他所に、臆病神は手をかざす。
「舐めるな、この程度で殺せるとでも思ったのか」
臆病神に触れる寸前で弾幕は止まり、彼女らの元へ帰って行った。それぞれが驚きながらも相殺するが、爆発の煙で視界が悪くなる。
「今のうちに逃げるぞ、しっかり掴まれ!」
「お、おう!アンタすげーな!」
臆病神の肩を掴むと、二人は姿を消した。
その後コントロールされた妖怪達と事あるごとに遭遇したが、その度に臆病神の力で逃げおおせたのだった。
「お、おぉ!やっと妖怪の山まで来たか……特に何もしてないけどすっげー疲れたぜ……」
「やはり人間は脆いな、少しは紅笹を見習ったらどうだ?」
「ありゃ人間じゃねっすよ」
「だろうな……まぁいい、行くぞ。ここなら”電流の関係で弾幕の軌道は逸れる”んだろう?」
臆病神が腕の装置に尋ねると、穂谷野(雷様)が答える。
〈その通り、そういう風に電流を流してある。その代わり静電気が凄いことになってしまったが……怪我するレベルじゃないから安心してくれ〉
「なんか雷様が同じ人間に思えなくなってきた……」
〈いつから雷神が人間だと思っていたんだ?いいから入ってくれ、ロープウェイは使い物にならないから徒歩で頼むよ〉
動いていないロープウェイを眺めながら、二人は登山道を歩く。暫くすると気分が落ち着いたのか、自転車バカが尋ねる。
「夢幻姉妹が来た時は死を覚悟したな……生きてるから良いんすけど」
「流石にあのクラスは無傷じゃ無理だ、ナイトヘッドで幻覚を見せなきゃ逃げられなかっただろう」
「それ以前にある程度肉弾戦で渡り合えたのが凄えよ……マジで何者すか?」
「神様だって言ってるだろ」
「ですよね」
何気ない会話をしながら歩く二人に、上空から迫る人物が居た。
暗茶~黒のまっすぐな髪、茶色の眼、やや高めの身長。袖が無く、肩・腋の露出した赤い巫女服と後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの大きな赤いリボンがトレードマークの少女は、大きな陰陽玉をいくつも浮かび上がらせてこう叫んだ。
「陰陽玉行くわよ!気をつけて!」
『!?』
無数の陰陽玉が降り注ぐが、電流の関係で軌道はことごとく逸れる。しかし完全な弾幕で無いため、近くの木に当たる。
「ちょっ・・・!その木が俺めがけて倒れてくるって何!?結果的に死にそうなんだけど!」
「ごめんなさい、それ多分私の幸運が原因だわ!」
「変なとこで発揮するなよなーもー!」
「言ってる場合か!黙って走れ!」
「今走って…ぐあっ…!」
『!?』
心臓が痛み、目の前が暗くなる。走り続けなければならないのに、意に反して倒れてしまった。そこへ大木が迫り来る。だがしかし、意識は飛んでいなかった。
「やられて、たまるか!」
大木がのし掛かる直前、自転車バカは黄色と常磐色の光を放つ岩を投げつける。大木にぶつかると爆発音が轟き、煙幕が舞い上がる。
「……良いこと思いついた、現実逃避”ナイトヘッド”!」
霊夢に向け手をかざして念を送ると、何かぶつぶつと呟きながら何処かへ行ってしまった。戻ってこないことを確認し、自転車バカに声を掛ける。
「もう大丈夫だ、これで奴は追ってこない。起き上がっても大丈夫だぞ」
服についた土を払い落としながら立ち上がり、上空を見やる。
「今度は何したんすか?」
「奴に、お前があの爆発で死んだように見せかけたのさ。お前らの話が本当なら、これで追っ手は居なくなった筈」
「そっか。本当便利っすね、その能力」
スカイプを開いて、穂谷野(雷様)と情報交換をする自転車バカ。彼が二度に渡って見せた苦しそうな表情に疑問を抱いた臆病神は、未来予知で彼の未来を見通す。
(ッ!?こ、これは・・・!)
◆
「じゃあ、この近くにその機械はあるんですね?」
〈あぁ、反応があったのはそこら辺だ。探してみてくれ、手伝えないのが残念でならないよ。抑え込むので手一杯だ〉
「いやいや、充分ですって。ここまでやって頂いたんですから、後は俺らでどうにかします」
そこまで言って、自転車バカは画面を閉じる。
「という訳で、近くにあるっぽいし探しますか」
「……」
「ん?どうかしましたか?」
「今、お前に未来予知をしたんだが…その…」
「え?何だって?」
「……なんだ」
「はい?」
言葉尻が小さくなり、良く聞こえないので臆病神に近寄る。声を大きくするよう頼むが、ボリュームは変わらない。目と鼻の先まで近づくと、やっと聞き取れた。
「……嘘でしょ」
「あいにく、冗談言うのは苦手なんだ。それに、未来予知は絶対だ。外れることはあり得ない」
「防ぐ方法は?」
「有ったらとっくに言ってるさ」
「……少しだけ、時間を下さい。気持ちの整理するんで」
「あぁ……構わないだろう」
肩を落とし、近くの洞窟に入っていく。10分程経つと、気持ちを固めた目で戻ってきた。
「……泣いてる暇はないぞ、助けたいんだろ?」
涙を袖でぬぐい、自分に言い聞かせるように答える。
「えぇ、分かってますとも!」
必死に機械を探す二人だが、よほど小さな物なのか見つかる気配がない。仲間の為に、早く見つけ出そうとすればするほど深みに嵌まっていくのだが、気づく余裕はない。
いつの間にか登山道を離れており、軽い迷子になってしまった。それでも探していると、変化が起きた。山に入ってから歩くたびに感じていた静電気が、だんだん弱くなってきたのだ。初めは刺激になれたのかと思ったが、スカイプから苦しそうな声が聞こえてくるではないか。
「マズいな、みんな疲れてきてる……!」
「これだけ長時間戦っていれば当然だろう」
「くそっ!早いとこ見つけ……ん?何だこれ?」
拳を握りしめ、自分の脚を叩こうと下を向くと、視線の先にティッシュ箱ほどの黒い物体があった。持ち上げて確かめようとするが、既に壊れかけているので電流が流れてバチバチと音を立てている。腕の装置で調べると、ちょうど穂谷野(雷様)に確認を取った場所だ。
「間違いない、これがその機械だ!」
「しかも破壊済みとはな」
「ようし……雷様!機械は既に壊れてます!まもなくみんなも自由に動けるようになる筈です!」
〈……〉
「雷様?」
〈済まない、もう限界みたいだ……〉
通話画面の向こうから、続々と倒れる音が聞こえてくる。それに同調し、泣き叫ぶ声も。
嫌でも状況を把握した自転車バカが言う。
「……臆病神!紅笹が!」
「!!」
奴に言われ、俺の頭には紅笹の顔が浮かんだ。奴は常日頃から
「だーいじょぶだって、俺氏四分の三蓬莱人だから」
などと言っているが、完全な蓬莱人では無いのだ。その魂ごと消されてしまえば、二度と復活は出来ない。
「くそ!間に合ってくれ!」
残った力でテレポートする間際。奴に掛けられた言葉を……俺は、どうして理解できなかったんだろうな。
「……どうかお元気で、臆病神さま」
続く。
次回で最終回です。