Fate/Nilotpalagita Synopsis 作:時雨
竜の王と小刀の話。
海底に潜む竜の悩み事
カーンダヴァの森に繋がっている、深い深い海の底。碧のベールに包まれた王座に鎮座している竜王タクシャカは、自分の娘ウルーピーと息子アシュヴァセーナのことについて悩んでいた。
『どうしたものか……』
はぁ、と溜め息をつく。ウルーピーは
「いきなり引きずり込んだと思ったら……。もう溜め息つくの止めたら?幸せが逃げるよ?」
悩みに耽っているタクシャカに、小さな客人が苛ついた口調で刃物の如く鋭い言葉を放つ。
『……そう、言われてもな。これは癖のようなものなのだ。お前に言われたところで治るようなものではない』
「あ、そう。じゃあ帰っていい?」
『まだ話は終わってないんだが』
困ったような声で、客人──シャストルラに話しかけるタクシャカ。彼女の機嫌がすこぶる悪いのは主に自分のせいなのだが、今日ばかりは彼女をここに呼ばずにはいられなかった。
何故なら……
『娘が「私の愛を受け入れてくれ」などと言ってアルジュナ軟禁をしてしまってな』
「は?軟禁?!」
タシン、タシンと先の紅い尻尾を冷たい床に振り落としながら、衝撃的な事を言った彼。アルジュナの軟禁が発覚したのは、つい昨日のことで、いつになく機嫌が良かった娘に何か良いことがあったのかと聞いたところ、ニッコリと笑って『ええ、とっても
すぐさま、ウルーピーを呼び出して何故彼があんなところにいるんだと問い詰めたタクシャカだったが、娘のある一言で彼のガラスのハートは綺麗に粉砕されてしまった。
『父様、しつこいです。年頃の乙女には秘密の一つや二つ、あったって良いでしょう』
──それに、互いの同意の上で彼はあそこにいるのです。私が『愛を受け入れて下さい』と言ったところ、彼は“是”と答えたのですから。
ウットリとした様子で頬をほんのりと赤く染めながらそう言った娘を見て『もう、我の手には負えない』と思ったタクシャカは、唯一親しいシャストルラに知恵を借りようと、彼女がよく訪れる湖からここに問答無用で引きずり込んで、今に至る。
「……なるほど。私をここに呼んだ理由は分かったけれど、私にヤンデレた娘をどうにかしろと言われてもねぇ」
軽く頬を掻きながら、そう言ったシャストルラ。何でこんな面倒くさい事態に巻き込まれなければならないのか。タクシャカがどうにかできないのだから、自分ができるはずないのにと心の中で文句を言う。
「アルジュナなら余裕で脱出できそうな気がするから大丈夫だと思うよ。……多分」
『
「バレたか。だって、あのアルジュナだし、早く戻らないとラクタパクシャに怒られるし……」
『あの鳥のことなど、気にしなくてもよいものを』
ラクタパクシャの名前を出した途端に、タクシャカは一気に機嫌が悪くなり、
「気にするよ。だって相棒みたいな
その言葉に、『うっ』と呻き声を上げるタクシャカ。彼女が言っていることは正論であり、自分の宿敵であるラクタパクシャに対する信頼の厚さが垣間見えたからだ。
そんな彼に、はぁーと長い溜め息をつくシャストルラ。前から思うが、何故ラクタパクシャとタクシャカはこんなにも仲が悪いのだろうか。ナーガ相手ならまだしも、同じ王として仲良くすればいいのに……。
「相談されたからには、ちゃんと考えるけれども。正直言って、何も思い付かない」
『そこを何とかしてほしいのだが』
「……とりあえず、説得してみるか。それがダメだったら、
『頼む、説得で終わらせてくれ。平和的解決が一番だろう』
物騒なことを言い出したシャストルラを、タクシャカは必死になって宥める。娘をどうにかしてほしいと言ったのは他でもない自分だが、話し合い(物理)で解決してほしいというわけではない。そこらへんが、彼女の師パラシュラーマに似てきている。
「なるべく、努力するよ」
フイと目をそらしながらそう言った彼女。本当に大丈夫なのだろうか。少し不安になったタクシャカだが、他に頼める
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太陽が真上に輝き、地上を照らしている昼頃。一羽の神々しい鳥が大空を羽ばたいていた。
『……友が、いない』
森を旋回し、シャストルラの姿を探していたラクタパクシャは、彼女が普段訪れている湖にも姿がないことを知って、内心焦りはじめていた。この時間帯なら、湖の畔に座って動物たちとよく戯れているはずだ。なのに、そこには誰もおらず不気味なほど静まり返っている。
『……? これは、鱗か?』
よく見ると、湖の畔の近くに蒼銀の硬い鱗が落ちていた。人の姿に成り、拾い上げてみる。それは人の手より大きく、滑らかな肌触りをしており、
「まだ、抜けたばかりの鱗だな。少しばかり硬いが曲げられる」
両手で、思いっきり二つ折りをする。すると、その硬い鱗はグニャリと柔らかい粘土のように彼の手によって折り畳められてしまった。そして、それを紙のようにぐしゃぐしゃに丸めて湖に投げ捨て──
「……あの、馬鹿竜。我が友を勝手に
ユラリ、と彼の回りに炎が立ち上る。その黄金の瞳には怒りが浮かんでおり、いつもの沈着冷静な態度はどこかに消え去っていた。
「友を連れていったのには、何かしらの理由があるのだろうが……。あの竜には一度、痛い目に遭ってもらわなければな?」
不敵な笑顔で、そう言ったラクタパクシャ。すぐさま鳥の姿に戻ると高く飛翔し、雷の如く素早い速さで飛び去っていった。
その姿を唯一見ていた太陽神・スーリヤは『