Fate/Nilotpalagita Synopsis 作:時雨
結構文が滅茶苦茶なので、後で書き直すかもしれません。
ラクタパクシャに送ってもらった後、案の定シャストルラの想像通り、戦斧を構えて出迎えてきたパラシュラーマ。一見、笑っているように見えるが、その目は据わっている。
「遅かったな、我が弟子よ。まさか、競技会が真夜中まで行われていたわけではあるまい」
「はい、あの……すいませんでしたっ!!」
九十度に頭を綺麗に下げるシャストルラ。下手な言い訳をしたら殺られるのは目に見えている。かといって、正直に『カウラヴァの長兄に呼び出されていた』だなんて言った曉には、「ほう、そうか。
さて、どうしよう。師匠は黙ったままだし。このまま“逃走中inマヘーンドラ山~師匠と楽しいリアル鬼ごっこ~”が始まってしまうのか。
「師匠……。師匠?あの、なんで空を仰いでいるんですか」
「いや、お前はなんというか、潔いな」
「……はい?」
片手で顔を覆って、「はぁ」とため息をつく彼。早く中に入れとでもいうように、手招きをしている。側に寄ると軽くデコピンをされた。
「うわっ。なんですか」
「今日のところはこれで済ませてやる。夜も遅いし、さっさと寝ろ」
「……?分かりました」
師匠にしては珍しい。まさかこれだけで済まされるとは思いもしなかった。てっきり、怒り心頭で待っていたから説教をされるのかと思っていたのに。明日は槍でも降って来るのだろうか。
まあ、いいか。彼の言われた通りに、さっさと寝てしまおう。いろいろあって疲れたし。
スッと彼の隣を通りすぎて、自分の部屋へ向かう。窓辺には、先ほど私を送ってくれたラクタパクシャが留まっていた。月明かりに照らされているその姿は、とても幻想的だ。
『どうやら怒られずに済んだようだな』
「うん。師匠にしては珍しいよね」
『まあな。あの破天荒な奴が怒らないのは、多分
「え。私、結構怒られてると思うよ」
『そうでもないぞ』
バサリ、と翼を広げて中に入ってくる彼。次の瞬間、赤い炎に包まれたかと思うと、一人の少年がそこに立っていた。鋭い金の瞳は私を射ぬいている。私より頭一つ背の高い少年は、ポンと私の頭に手を乗せ、口を開く。
「御前は正直者だからな。それに自分の武術の腕を上げるが為に、日々努力をしているだろう」
「私は、正直者なんかじゃないよ。自分の保身にすぐ走ってしまう。弱い人間さ。武術だって、それこそ血を吐くような努力をしなければ、あの人には追いつけないしね」
「……その後ろ向き思考は、どうにかならないのか」
「これでも、昔に比べればまだマシなほうだよ」
人の姿になったラクタパクシャは、私を軽く抱き寄せてきた。心地よい暖かさに、思わず目を瞑ってしまいそうになる。
「……君は、相変わらず暖かいね」
「御前は昔から体が冷たいからな。余計だろう……まるで、海底まで行ってきたかのように、冷たい
ぎゅっと抱き締めてくる彼。さらりと彼の赤い髪が流れて私の首筋にかかる。きっと、海の底に潜む竜王の都に彼の母とナーガたちで行ったことを思い出しているのだろう。
「私は、大丈夫だよ。海の底に沈みはしないし」
「……だが、タクシャカと会ったのだろう?」
「いつも、ちゃんと帰してもらっているから、安心していいよ」
私がうとうとし始めたのを見てか、体を離して彼は私を横にする。
「そう、か。でも気を付けるに越したことはない。彼奴はナーガのように狡猾な奴だからな」
「うん。分かってる、よ」
コクリと頷く。だんだん目が重くなってくるが、それに逆らって、目を開こうとするとラクタパクシャは私の目に手をかざす。……大人しく寝ろという意味だ。
「お休み。我が友よ。ゆっくり休め」
「……う、ん。おや……す……み」
優しい炎の暖かさに、意識が微睡む。彼が側にいると、何故かとても安心するのだ。
──人といるときよりも、ずっと。
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『
珍しく、人の型をとっている鳥の王・ガルダは目の前にいる
『そう?私からしたら、君が人に成れることのほうが、よっぽど不思議だよ』
淡々と、アーシャはガルダの言葉に答える。その青蓮の瞳は、彼に向けられることはなく、ただ蒼空を見つめていた。
『……神でさえも
自分を乗り物としているヴィシュヌ神とその妃ラクシュミーは別だが。この人の子は、自分に声を掛け、しかも何の躊躇いもなく、炎の如く熱を発する自分の体に平気な顔で触れて来るのだ。
『へぇ、そうなんだ。私からしたら、君はただの綺麗な鳥にしか見えないけれど』
空を見つめていた瞳が、ガルダを映す。情けないが、彼女にその目を向けられた瞬間、たじろいでしまった。──ぞっとするほど、空っぽの瞳をしていたから。しかし、それは一瞬のことで、すぐに自分の見知った光を宿した瞳に戻る。
『御前は肝が据わっているな』
『そうでもないよ。たまに、君のその黄金の瞳が、怖いと感じるときもある』
じっと、彼女が自分を見つめる。随分と素直に物を言ってくるな……そこが、彼女の美点でもあるのだが。
『己も、御前のその碧の瞳が恐ろしいと感じてしまうときがある。まっすぐで、何もかも見透かしている。そんな目だ』
あえて、空っぽの瞳だとは言わない。彼女は時に、他の人間が言葉を発していなくとも、その心情を見抜くのだ。だから、己の言ったことはあながち間違いではない。神鳥である自分も、不思議とこの人の子に心の内にある感情を見抜かれている気がしてならないのだ。
『神様に、恐がられる様な目はしていないと思う……』
そう言って、少し落ち込んでしまった彼女。すまない、と言って灰色の頭を撫でる。すると、驚いたようにこちらを見て、照れ臭そうに俯いてしまった。
『びっくりした……君の手が、あまりに暖かいものだから』
『そうか?御前の体が冷たいからだろう』
頭を撫でていた手を、彼女の頬に当てる。ひんやりと、冷水に浸っていたかの様に冷たい。母と、千匹のナーガたちと行った、海底に潜む竜王の都の薄暗い冷たさを思い出す。
──ガルダ、彼女を
あぁ、そうだな。己はこいつを護らなければいけない。だって、こんなにも脆く、儚い存在なのだから。
──小さき友よ、御前をどこまでも己は見守ろう。
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競技会の次の日、パラシュラーマにこれでもかというほど、手合わせで扱かれたシャストルラ。どうやら、昨日鬼ごっこをしなかったツケが今日に回ってきたようだ。
「あー。どうせなら、昨夜鬼ごっこをしていたほうが、まだ良かった気がする……」
『まあ、そう言うな。これからまた町に行くのだろう?』
「うん。気分転換に」
『近くまで送っていくか?』
「お願いするよ」
『承知した』
昨晩とはうって変わって、鳥の姿に成っていたラクタパクシャ。その背に乗って、町の近くまで行ってもらい、そこから歩いて町に入る。昼の町は人に溢れており、とても賑やかだ。……軽く、人酔いをしてしまったが。
ふらふらと一人、町をぶらつく。すると、どこかから金属同士がぶつかる音、矢が空気を裂く音が聞こえてきた。訓練場でも近くにあるのだろうか。興味本位で、音のする方へ行ってみる。
「……ここか」
覗いてみると、男の人たちが一生懸命に武術の訓練をしていた。やっぱりここは訓練場らしい。ウズウズと血が騒ぐ。飛び入り参加は、しても良いのだろうか。
「そこで、何をしているのですか」
「っ!びっくりした。いや、ただ彼らの様子を見ていただけです」
油断していたせいか、後ろから近づいてきた気配に気づかなかった。思わず飛び上がってしまうのも無理はない。後ろを振り向くとそこには、目を丸くしているアルジュナが立っていた。
「貴方は、昨日の……」
「はい。競技会に飛び入り参加した者です。昨日は無礼な行為をしてしまい。申し訳ありませんでした」
「いえ、そんなことは」
私が謝ると何故か口ごもる彼。……私、アルジュナに何かしたっけ?訝しげな顔で彼を見上げる。その整った顔は困惑した表情を浮かべていた。
「どうかしましたか」
「……失礼ですが、近くでみると、その、とても弓を引いて的を破壊できるような人物には見えなかったので」
「なるほど?」
なにさ、君も私が華奢で細いと言いたいのか。そして、ドゥリーヨダナと似たようなことを言わないで欲しい。
「それで、貴方は何故ここに?」
「町を歩いていたら、金属のぶつかる音が聞こえてきたので。気になってここに来ました」
「そうですか。もしよければ、貴方も参加してみますか?」
「え、いいんですか?」
アルジュナの言葉にパッと顔を明るくする。あ、でも昨日の様子を考えると、身分とかそこら辺は大丈夫なのだろうか。というか彼、今から訓練に参加するんだね。
「ええ、この訓練場は全ての者に開かれています。……それに、昨日の競技会で貴方は“剣が得意”と言っていたでしょう?その腕を見てみたいと思いまして」
「そういうことですか。以外ですね。てっきり、弓の腕を見たいと言われるのかと思ったのですが」
「確かに、弓の腕も気になりますが……」
若干、遠い目をしながら言うアルジュナ。昨日のことを思い出しているのだろう。うん、言いたいことは分かるよ。
「えっと、すみません。とりあえず、中に入りましょう」
「そうですね」
では、お先にどうぞ。と彼は言う。あれ、そこは自分が先に入るとこなのでは?私、一応部外者なのに……。不思議そうな顔をしていると、彼は「私が先に入ってしまうと、貴方が入りにくくなってしまうので」苦笑してそう言ってきた。ああ、なるほど。彼は人気者だから、人だかりができてしまうのか。
じゃあ、遠慮せずに先に入ってしまおう。「失礼します」と小さく呟いて入る。キョロキョロと辺りを見回してから、すぐさま隅っこに避難をした。
私の後から、アルジュナが入ってくる。すると、訓練場にいる人々は一斉に彼を見て、歓声を上げた。まるで、アイドルのコンサートのようだ。幸い、私が入って来たのを誰も気づいていない。なので、無駄な注目を集めずに済んだのだが……些か、これはひどすぎると思う。もちろん、いい意味で。
人に囲まれている彼はというと、にっこりと完璧な笑顔で周りに対応している。私は表情筋が滅多に働いてくれないので、あんな笑顔を作ることはできない。少し、痛々しい感じがするが、きっと周りの人たちはそんな事に気づいていないのだろう。
ボーッと、その光景を見ていると「ポンッ」と誰かに肩を叩かれた。振り向くと深い智恵を宿した瞳を持つ一人の男がそこにおり、人懐こい笑顔を浮かべて私に話し掛けてきた。
「やぁ、君は昨日の競技会に来ていた少年だね?」
「はい。そうですけれど……」
「まさか、こんな華奢な体つきをしているとはね。ちゃんと食べてる?」
「食べてますよ。失礼ですね。あなたもドゥリーヨダナ様と同じ事を言うのですか──ユディシュティラ様」
「あ、僕のこと知ってるんだ。それにしても、あのドゥリーヨダナも僕と同じ事を言っていたのかい」
意外そうに、そう言って驚く彼──パーンダヴァの長兄、ユディシュティラ。それにコクリと頷けば、珍しいことを聞いたとでもいうように、目を見開く。
「へぇ、そうなんだ。で、君の名前は?」
「シャストルラといいます。と、言ってもこれは師から貰った仮名ですが」
「小刀、ねぇ。僕の名前は君が知っているとおり。パーンドゥが長男、ユディシュティラだよ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
礼儀正しい子だなぁ、と感心したように言う彼。いや、全然。全く礼儀正しい子ではないと私は思う。だって、礼儀正しければ、競技会に乱入しないでしょう。普通。なんか、見た目に反してすごいフワフワした人だ。
ざわざわと、彼と話している内にアルジュナの周りにいた人だかりは散っていた。彼は「あ、アルジュナ。こっちだよ」と手招きをして、アルジュナをこちらに呼び寄せる。
「兄上、来ていたのですか」
「うん、大分前からね。そう言えば、シャストルラ。彼には挨拶した?」
「いえ、まだです。名乗るのが遅くなりました。師から貰った仮名ですが、シャストルラといいます」
「シャストルラ、ですか。私の名はアルジュナといいます」
よろしくお願いします。と再度、挨拶をする。ユディシュティラはそれを、親が子を見守るかのような優しい目で見ていた。
「意外だね。アルジュナが他の人を誘ってここに来るなんて」
「……見ていたのですか」
「いや、ここから偶々見えただけだよ」
悪戯っぽく笑うユディシュティラ。一方、そんな彼を見て、溜め息をつくアルジュナ。こうみると、普通の兄弟にしか見えない。だが、彼らは神の血を持つ半神半人なのだ。
「ところで、シャストルラは何が得意なの?」
「私は剣が得意ですが……昨日、言ってませんでしたっけ」
「ごめん。僕の中での君の印象は“弓で的を破壊した”ということしかなくて……」
「すみません。私の兄上が失礼なことを言って」
「いや、気にしてないので大丈夫です」
「そうですか。ならいいのですが……」
不安そうに、こちらを見るアルジュナ。何故そんな目でみるのか。私、そんな師匠ほど心狭くないよ。クシャトリヤだからって、理不尽に怒らないから。……多分。
「じゃあ、僕と手合わせしようよ」
「えっ。ユディシュティラ様とですか?」
「様、は付けなくていいよ。言いづらいでしょう?」
「でも、」
「いいから。ね?」
「アッ、ハイ」
「……兄上。貴方という人は」
有無を言わさない圧力だった。アルジュナは兄の言葉に呆れている。ドゥリーヨダナはまだ良いとして、彼はあれだ。おおらかな人故に、無言の圧力が強い。……さすが
結局、その後。彼と手合わせをすることになったのだが、何故か私が勝ってしまった。あれ、私、ただの人間なんだけど。「華奢なのに……どこからそんな力がでるの……?」地に膝をついて、言っている彼。華奢言うな。
「逆に聞きますが、何で私よりも力が弱いんですか」
「僕は頭脳派だから……。自分の非力が憎い」
「(それは、言い訳なのでは……?)でも、あなたも強かったです」
「本当?」
「嘘は極力言わないようにしているので」
そっかぁ、と気の抜けるような声で言うユディシュティラ。アルジュナはそんな様子の兄を見て、一言いった。
「まさかとは思いますが、兄上。貴方、
「確かに……ユディシュティラ、あなたは私に手加減をしていました……よね」
「えーっと……」
目が凄い勢いで泳いでいるユディシュティラ。え?まさかあれが本気なの?嘘だよね。手加減してたんだ……よね?そうだ。そうだと言ってくれ。じゃないと、私が君の弟たちに扱れる。例えば、目の前にいるアルジュナとかに。
「だって、しょうがないじゃないか!僕が得意なのは戦車の扱いなんだし!!」
「じゃあ、何で意気揚々と私と“剣で”手合わせをしようと思ったんですか?」
「それは……ね。正直に言うと、舐めてました。すみませんでした」
「……………………」
「……………………」
「ふ、二人とも。何で無言で睨むの」
慌てるユディシュティラ。そんな彼を私とアルジュナは凍えるような冷たい目で見ていた。
その後、シャストルラは勿論帰りました。……アルジュナと二人で、ユディシュティラを説教してから。
この件は番外編かなんかで書きたいと思います。