純粋にネタですので、短編として見ていただければ幸いです。
昔々、地中海の近くにコルキスという国がありました。
そこで産まれた王子様は王様や王妃様、姉である優しいお姫様に可愛がられてスクスクと育っていました。
そんな穏やかな日々が続き、王子様が三歳になった時です。
王子様の枕元に見た事のない巻物が置いてありました。
巻物は東の果ての国の言葉で書かれた大変難しいものだったのですが、不思議な事に王子様にはその内容が良く分かりました。
その中に記された素晴らしい術や技を知った王子様の頭の中には、何時しか老師が住み着くようになり、巻物の技を身に付けるべく修行を行うようになりました。
技の修行は今までの武術の訓練など比べ物にならないほど辛いものでしたが、王子様は必死に耐えました。
何故なら、巻物を通して知った流浪の武術家に憧れたから。
民達の痛みや悲しみを自分の事の様に捉え、鍛え抜かれた技で元凶である悪を討つ。
一歩でも彼に近づきたいと修行に励む事7年余り、同じ歳の子供達の中では国一番に大きくなった彼の額には、東洋の文字が刻まれていたといいます。
ですが、穏やかで幸せだった日々は唐突に終わりを告げました。
アルゴノウタイと呼ばれる英雄達を乗せた船がコルキスに流れ着き、その船長の青年が王様に国の宝を渡すように迫ってきました。
さらに悪い事に、愛を司る女神様の企みでお姫様がその船長に恋をしてしまったのです。
お姫様は船長に愛されようと、魔術を使って国の宝を護っていた竜を眠らせ、船長に宝物を手渡してしまいました。
怒った王様が英雄達の船に追っ手を差し向けると、船長の命令を受けたお姫様は、弟である王子様を人質にして追っ手をやりすごそうとします。
本来の運命ならば、時間を稼ぐ為にお姫様によって王子様はバラバラに切り刻まれてしまうのですが、この物語ではそうはなりません、
何故なら───
「アチャーーーッッ!!」
化鳥の泣き声のような気合と共に、王子様の繰り出した指拳がお姫様の首筋に突き刺さりました。
眠りのツボを突かれて力なく崩れ落ちる姉を支えた王子様は、突き刺さるような視線で船長を睨みつけます。
「イアソン! 我が国の国宝を手にした上に、我が姉に肉親殺しの罪を犯させようとは……」
「わ……私はそこまでしろなんて言ってないッ! それに何も出来ない王子が生意気だぞッッ!!」
大気を振るわせるほどの怒りに一瞬ひるんだ船長でしたが、子供に気圧された事に気付くと顔を真っ赤にして言い返します。
ですが、それは王子様の激情に油を注ぐ事にしかなりません。
「ゆ……る……せんッッ!!」
彼の怒りに応じるかのようにパンプアップした筋肉は、バリバリと音を立てて上着を内側から引き裂きました。
上等な服の中から現れたのは、極限まで鍛え上げられた肉体と『闘』の文字が記された紅い肩当。
そう、王子様が持っていた巻物は『闘龍極意書』
超人一〇二芸が記された、超人拳法伝承者の証だったのです。
170センチに届こうかという上背に、細身ながらも鋼のような筋肉に覆われた身体は威圧感満点。
彼の大英雄ヘラクレスが感心するほどですから、どこからどう見ても10歳の身体ではありません。
「やれッ! あのガキを殺せぇぇッ!!」
船長イアソンの号令によって、一斉に襲い掛かる船員たち。
しかし、王子様は負けません。
「烈火太陽脚ーーーッッ!!」
「ウギャーーーーーッ!?」
「打穴三点崩し!!」
「グワーーーーッ!?」
「回転龍尾脚ーーーッ!!」
「ゲェーーーーッ!?」
次々と飛び出す超人一〇二芸の数々に、荒くれ者の船員たちも為す術がありませんでした。
そんなこんなで船員の半数が命を落とし甲板が血に染まった頃、ついにアルゴノウタイ最強の戦士が立ち上がります。
「王子よ。こちらの非道、そして非礼は承知している。だが、我等も歩みを止めるわけにはいかぬのだ」
「アトーーーッッ!!」
巨大な山を思わせるようなヘラクレスに、王子様は果敢に挑みかかります。
しかし百戦百勝脚や命奪崩壊拳、頂上拳と呼ばれる超人拳法の奥義である猛虎百歩拳すらも巌の如き大英雄の身体には傷一つつける事はできません。
王子様は思います。
(ヘラクレスと自分との強さは十倍の差がある。普通に闘っていては絶対に勝てない)と。
「フン、しょせんはガキだな! ヘラクレス! 捻り潰してしまえ!!」
調子に乗ったイアソンが高らかに降した命に、ヘラクレスは前に出ます。
しかし、王子様は諦めてはいませんでした。
「大英雄よ、貴方は私より十倍は強い……。だがしかしっ! まだ負けたわけではない! 百歩神眼ッッ!!」
超人一〇二芸の一つである透視能力でヘラクレスの急所を見抜くと、両の手を突き上げてこう叫びます。
「両手で命奪崩壊拳を放つ事で威力は二倍!」
そして手刀から巨大な虎を二匹出すと、それらを踏み台にして天空高く飛び上がりました。
「双星猛虎拳を利用して三倍の高さまでジャンプすれば、これで六倍ッ!」
そして空中を蹴り放つかのように、ヘラクレスに向かって錐揉み回転しながら猛スピードで突撃したのです。
「そしてッ! 二倍の回転の貫通力を加えれば、十二倍の威力になるーーーーッ!!」
叫びと共に加速する王子様。
瞬間、彼の身体は光の矢になりました。
「閃光命奪双撃拳ーーーーーッッ!!」
「なんだ、その無茶苦茶な理論はッッ!? グワーーーーーッ!?」
「ゲェーーーーッ!? ヘラクレスぅぅぅぅぅぅぅッッ!?」
胸の中心を貫かれて大の字に倒れるヘラクレス。
信じられない光景を目の当たりにした船長さんは、震える足で逃げようとしますが一歩遅かったのです。
「逃がさんぞ、イアソン!!」
「ギャーーーーーッ!?」
背後から現れた王子様は船長さんの顎を両手で掴み、背骨に膝を当てて大きく引き絞ります。
「ぬうぅ……」
ギリギリと背を反らされて、手をバタつかせながら船長さんはもがき苦しみました。
しかし、王子様の攻めは緩む事はありません。
「ぐるじぃ……やめ……助け、メディア……」
苦し紛れにお姫様に頼ろうとする船長さんの情けなさに、王子様の怒りが爆発します。
「
「ウギャーーーーーーーッ!?」
王子様の必殺技に、身体を上下に引き裂かれてしまった船長さん。
王子様は船長さんをラーメンにして食べる事で、コルキスの船に高らかに勝利を宣言しました。
この後、船長さんを助けていた神様達に狙われた王子様は、国を捨て流浪の旅に出る事になります。
彼は王子様であった時の名前を捨て、
ゆで理論>型月世界の法則