やっつけ小ネタ集   作:アキ山

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 ランモバの影響で超兄貴を久しぶりにやっていたら降りてきました。

 なんでこんなの書いたんだろうか?

 供養の意味も込めて投稿します。

 暇つぶしになれば幸いかと。


【ラングリッサーⅡ】レイガルド帝国白竜看護師団長『慈愛』のニーム

 エルサリア大陸を揺るがしたレイガルド帝国がその旗を起こす少し前。

 

 光の大神殿にほど近いサルラス領の小村にニームという少年がいた。

 

 少年は物心がつく前に両親を失った孤児であったが、持ち前の正義感と面倒見の良さからリーダーとして同じ境遇の仲間を引っ張っていた。

 

 頼れる大人がいないからといって、彼等は犯罪に走るような事はしない。

 

 『正しい行いをすれば、正しい結果が付いてくる』

 

 何処の誰が口にした言葉かは分からない。

 

 しかしニームは頭に残り続けたその言葉を真摯に受け止めていた。

 

 だからこそ盗みやスリの代わりに、孤児達を引き連れて農業をはじめとする村の用事を手伝ったり、光の大神殿へと引き取られた妹分のリアナの伝手で行事の労働力となったりと、真っ当な手段で日々の糧を得ていたのだ。

 

 しかし、日々を懸命に生きていた彼を二年前に病魔が襲った。

 

 全身の筋肉が衰え、最後には衰弱死するという治療法も分からない奇病。

 

 最初は常より疲労感を感じる程度だった病状は見る見るうちに進行し、全身の筋肉が衰えて骨と皮だけになった彼は今ではベッドから起き上がる事もできなくなっていた。

 

 当然、近所でもガキ大将として子供達を引っ張っていたニームは有名であり、彼を助けようと大人たちもいた。

 

 しかし光の大神殿の神官をもってしても手の打ちようのない病と知れれば、彼等は一人また一人とニームの前から去っていった。

 

 こうして仲間達からも過去の者として忘れ去られたニーム。

 

 リアナ以外に寄り付かなくなった古びた小屋の中、藁を敷き詰めた粗末な寝床の上で彼は一心に祈っていた。

 

 彼が望むモノ、それは救いではない。

 

 自身の身体を動かすための筋肉であった。

 

 もとより聡明であった彼は、神官の言葉と自身の身体に起こった異常から必要な物は何かを悟っていた。

 

 エルサリアに古くから信仰されている光の女神ルシリス。

 

 その御力ですら救済できないのであれば、漠然と救いを求めたところで意味はない。

 

 ならば、具体的に必要な物を願った方が少しは建設的ではないか。

 

 筋肉を増やすだけならば、ルシリスでなくとも助力を得られる可能性はゼロではない。

 

 そうして古い木板の天井越しにある宇宙を見据えながら紡いだ思い、それをはるか宇宙の彼方にいるとある神は拾い上げていた。

 

 ある時、ニームが目を覚ますと身体の上に見慣れない器具があった。

 

 『聖なるブルワーカー』と書かれたそれの説明書には『このブルワーカーで鍛えれば、まったく・簡・単に・貧弱ボディな坊やもムキムキのナイスガイに!!』と書かれていた。

 

 普通なら死ぬほど怪しいと警戒するところだが、後がないニームは藁にも縋る思いでそれに手を伸ばした。

 

 当然、立てない程に筋肉が衰えた彼ではトレーニングなど無理な話で、器具の左右に張られた弦に指を掛けるのが精一杯だった。

 

 それでも諦めずに弦を引き続けると、なんと一週間後には腕にうっすらと筋肉が戻ってきたのだ。

 

 ブルワーカーを引き摺るのではなく持ち上げる事が出来た時、助かる事を確信したニームは小屋の中で一人号泣した。

 

 そうして一歩一歩健康な体を取り戻していたニームだが、ある夜に彼は夢を見た。

 

 自身の意識に広がる果て無き宇宙、その先で何かがニームに呼び掛けていた。

 

『少年よ。さらなる筋肉を求めるなら聖地を訪れよ』と。

 

 ブルワーカーの件もあってお告げを信じるようになっていたニームは、次の日から足を重点的に鍛え始めた。

 

 彼の記憶に刻まれた聖地のある場所は、今の貧弱な体力では到底辿り着くことが出来なかったからだ。

 

 そうして一月が経ち小屋がすっかり汗臭くなった頃、ニームは旅立ちの日を迎えた。

 

 最低限の荷物とブルワーカーを背負った彼には、小屋で臥せっていたかつての儚さは無い。

 

 最後まで自分の世話をしてくれていた妹分のリアナへ宛てた手紙を残し、彼は慣れ親しんだ我が家を後にした。

 

 聖地までの道程はとても険しく、鍛え続けたとはいえ健常者と同程度の身体能力しか持たないニームには過酷な旅であった。

 

 しかし、命の恩人である夢のお告げに応えねばという使命感と飽くなき筋肉への憧れが、彼に茨の道を踏破させた。

 

「よう来たのぅ、若人!」

 

「ここまで来るのは大変だったろうが安心せィ!! ワシらと鍛えれば、その貧弱ボディもすぐにムキムキじゃあっ!!」

 

 神殿に辿り着いた彼を迎えたのは二人の先輩だった。

 

 二人が見せる猛々しい肉に打ち震え、感動の涙を流すニーム。

 

 即決で入門を決めた彼は、その日から憧れを叶えるために荒行へと励むこととなった。

 

 そこから先はまさに修羅の道だった。

 

 ブルワーカーなど赤子の遊びだと思い知らせるような荒行の数々。

 

 神殿の中で徹底的に身体を苛め抜き、口にできる食料は『聖なるプロテイン』のみ。

 

 先輩達の兄貴分であるイダテン、そして凄女ベンテンと共に宇宙を駆け巡り、数多の戦いの中で己の筋肉を見出す!

 

 そうして数年にも及ぶ頭が禿げ上がるほどの荒行の末に宇宙の彼方で先輩達と共にボ帝ビルを倒した時、彼は完成していた。

 

 汗と筋肉とプロテイン溢れる癒しのオーラを放つ『慈愛』のニームへと。

 

 黒のブーメランパンツ一丁でも動じない己が身体への絶対的自信。

 

 塗りこんだワセリンで光り輝く日に焼けた肌にそれを盛り上げる猛々しい肉。

 

 そして全ての人の胸を透くような清々しい笑みはまさに慈愛の徒であった。

 

 激戦を制し、ビルダーとして故郷に錦を飾ろうとしたニーム。

 

 しかし、久方ぶりに降り立ったエルサリアは戦火に見舞われていた。

 

 数年前から帝王ベルンハルトが率いるレイガルド帝国が破竹の勢いで侵略を行っていたからだ。

 

 『慈愛』を名乗っているニームだが、彼が掲げる信条は他者を傷つけてはならないという生温いものではない。

 

 ボ帝との死闘で北斗神拳伝承者ばりに『倒すことが愛』と悟ったニームは、元凶であるレイガルド帝国を打倒すべく神殿を旅立った。

 

 サルラス領からかなり離れた平原。

 

 大陸最強と言われた帝国軍を前にただ一人立ち塞がるは蛮勇の徒。

 

 完全武装に身を包んだ数多の兵を前にして裸一貫で全く動じる様子を見せないニームに興味を持ったベルンハルトは、巌のような逆徒の希望通りに一対一の勝負を受けた。

 

 剣も鎧も無粋とばかりに戦場で繰り広げられる肉と肉のぶつかり合い。

 

 その中でニームはベルンハルトの剛拳を通じて彼の真意を知った。

 

 日が沈み両者が拳を降ろした時、ニームはベルンハルトに臣下の礼を取っていた。

 

 彼の力に屈した訳ではない。

 

 帝国の脅威になど跪きはしない。

 

 ニームが膝を折ったのは、特別な血筋など持たない只人が伝説へと挑まんとする高潔な意思に感動したためだ。

 

 何故ならニームもまた何も持たない孤児だったのだから。

 

 涙ながらに忠を誓い、自らが与えたベルンハルトの傷を癒すニーム。

 

 それに対して帝王が残した言葉は『ぬぅ……雄臭い』の一言だったという。

 

 その後、ニームは帝王に比する武力と光の大神殿の神官長を上回る治癒術を買われ、『白竜看護師団』の団長に任命される。

 

 その際、帝国軍では女性士官がこぞってセクハラだと訴えたり、男性兵士が傷を受けてなるモノかと奮起したのだが、大した事では無いので割愛する。

 

 そして時は経ち、運命の皮肉はニームをかつての妹分と敵対させることとなる。

 

 『光輝の末裔』の血を引く遊歴の騎士エルウィンを中心として集った反帝国同盟。

 

 炎竜将軍バルガスに重傷を負わせ、青竜騎士レオンを出し抜いて聖剣ラングリッサーを手にした彼等は、その勢いのまま帝都へと攻め上った。

 

 そんな彼等を待ち受けていたのは、瀕死であったバルガスの命を繋いだニームであった。

 

 エリザ夫人の証言によると、一命を取り留めた際にバルガスは無意識の中で『……酸っぱ臭い』と呟いたという。

 

 白竜看護師団の中で動ける者を全てをかき集めたニームは、何時ぞやのように裸一貫で反乱軍の前に立ち塞がる。

 

 ここが抜かれれば帝都への侵攻を防ぐ術はない。

 

 炎竜・白竜を除く三軍はベルンハルトと王城の護りに回されている。

 

 眼前の軍隊を帝都に踏み入らせれば、多くの罪のない民間人が犠牲なるだろう。

 

 如何に指揮官が高潔でも、末端の兵士までそうとは限らない。

 

 略奪や強姦は戦場とは切っても切れないのだ。

 

 不退転の覚悟を決めて、ニームは自身の猛々しい肉を迸らせる。

 

「よく来たな、帝国に仇為す反乱軍よ! ワシは『白竜看護師団』団長、『慈愛』のニーム! ここを通りたくば、自慢のボディを踏み越えていくがいい!!」

 

 帝国兵が敷く防御陣を背に大喝を上げるニーム。

 

 対するエルウィン達は、戦場でありながらブーメランパンツ一丁で腕を組む禿頭マッチョの大男を前に戸惑いを隠せなかった。

 

 なにせ相手は威勢の良いことを言っているのに反して、白い歯が眩しい満面の笑みなのだ。

 

 これで『応ともよ!!』と臨戦態勢をとれる方がおかしい。

 

「ニーム!? もしかしてサルラスの村にいたニームお兄ちゃんなの!?」

 

 反乱軍の面々がドン引きする中、唯一反応したのはリアナであった。

 

 もはや原型を留めていないニームを自身の幼馴染と見抜いたのは、ブーメランパンツ以外に彼が身に着けていた首飾りを目にしたからだ。

 

 ニームの首に下げられた木彫りの鳥を模したペンダント、それは幼いリアナが彼に送った物だった。

 

 あと、日に焼けたナイスボディがカッコいいと思ったのは秘密である。 

 

「リアナか、思った通り別嬪になったのぅ……」

 

 美しく育った妹分に浮かべていた笑みを深くするニーム。

 

 それに反して、リアナは目に涙を溜めながら声を張り上げる。

 

「あの時、どうして黙って居なくなってしまったの!? 病で動けなかったお兄ちゃんが消えてしまって、私がどれだけ心配したと思っているのよ!!」

 

「心配を掛けてすまぬ。ルシリス神の力ですら救えぬワシの命を繋ぐには、かの神殿に向かわねばならなかったのじゃ。その道程は旅慣れた者でも危険な代物、お主を巻き込むわけにはいかんかった」

 

「それでも……直接…言って……ほしかった」

 

 しゃくり上げるリアナに笑顔は崩さぬものの困ったように後頭部を掻くニーム。

 

 そんなしんみりとした空気を破るように別の方向から声が上がる。

 

「だ…だ……だったら、なんでアンタは帝国軍にいるのよ? リアナの幼馴染ってことはサルラスの人間なんでしょ?」

 

 かなり引き気味で問いを投げたのは、カルザス王国の現王女シェリーである。

 

 マッチョが苦手な彼女は、向き直ると同時に『ムンッ』っと胸筋が強調されるポーズを取ったニームを見て『ヒィッ!?』と引き攣るような悲鳴を上げた。

 

「数年前、ワシは暴虐を諫めんと単身ベルンハルト陛下に立ち向かったことがある。その時、ワシは拳を通して陛下の思いを知ったのじゃ」

 

「ベルンハルトの思い……」

 

「ていうか、なんであんなパンイチの変態相手に殴り合ってるのよ、ベルンハルト。普通だったら問答無用で衛兵を嗾けるでしょうに……」

 

 シェリーの無粋なツッコミを他所に、悠然と腕を組んだニームはエルウィンの零した言葉に答えを返していく。

 

「うむ。陛下は大陸を統一する事で、小国間の小競り合いが絶えぬこの地から戦争を無くすつもりなのだ。それは同時にエルサリアを襲うであろう闇の勢力に対抗するために、人間の力を結集する事にも繋がる」

 

「ベルンハルトは魔族と戦うつもりなのか?」

 

「然り。彼の御仁はお主の手にある聖剣を欲したのもそれ故よ」

 

「そりゃおかしいだろ。だったら、ヤロウがアルハザードに手を出す理由が何処にあるってんだ。んな大ボラよりも、我欲に取り憑かれて魔剣を振るってるって方がよっぽど信じられるぜ」

 

 異を唱えるレスターという海賊風の男に、やれやれと肩をすくめて見せるニーム。

 

 どう見ても変人に馬鹿にされるという屈辱で、レスターの額にメロンのように青筋が浮かぶ。

 

「あの御仁がアルハザードの封を破ったのはのぅ、大陸統一の一助とする以上に魔族が活動を始める時を明確にする為よ」

 

「魔族が動き出す時を?」

 

「そうじゃ。大陸統一で戦争を根絶しても、魔族という脅威を駆逐できんのでは片手落ちでしかない。しかしアルハザードが封印されている限り、魔族がいつ何時復活するかは誰にもわからん。だからこそ、陛下は敢えて魔剣の封印を解いたんじゃ。アルハザードが人の手にあるのなら、正統な所有者であるボーゼルは奪還に動き出すからのう」

 

「つまり、自分を餌に魔族をおびき出そうという事ですか」

 

 シェリーの従者をしているカルザス軍将官のキースが零した言葉に、ニームは力強く頷く。

 

「そこまで考えているなら、どうして他の国に協力を申し込まないで侵略なんてするのよ!? 最初から事情を説明してくれたなら、カルザスだって協力したのに!!」

 

「それはやっても意味が無いのだ、尻娘よ」

 

「誰が尻娘よ! 誰がッッ!?」

 

 激昂するシェリーを他所に、ニームは言って聞かせるように持論を語る。

 

「国家とは国体、王制や共和制などといった国の形を維持し、国益を追求することを最大の目標としておる。故にある程度なら兎も角、大幅にそれを度外視した行動は取れん」

 

「それがどうしたのよ?」

 

「例えば、お主の言うように全ての国を同盟で結んで魔族を迎え撃ったとしよう。そしてAという国が魔族の侵攻を受けた。最も早く増援が出せるのはBという国だが、Bは国庫の兼ね合いと他国の為に家族を危険に晒すなという国民感情の為に増援を出すのが遅れてしまった。結果、Aは魔族に滅ぼされ、その土地は大陸の橋頭堡となった。───こんな事態が無いと言い切れるかの?」

 

「それは……」

 

「同盟を結んだとて全ての国が自国を最優先せねばならん以上、本当の意味で一丸となることは出来ん。各々が守るべき民や国を持っておるのだ、それも当然よ。しかしな、そんな烏合の衆では魔族には勝てん。陛下が侵略という手に出た理由の一つがそれよ」

 

「じゃ……じゃあ、他の理由って何なのよ?」

 

「『光輝の末裔』の力に頼ることなく魔族を退ける事じゃ」

 

 笑みを消したニームの放った言葉に、反帝国同盟は思わず息をのんだ。

 

 リーダー格のエルウィンを始めとして、カルザス王女のシェリー、『光輝の巫女』たるリアナと反帝国同盟の中心には『光輝の末裔』が多数参加している。

 

 大魔術師ジェシカとルシリス神の導きで大陸を覆う闇を払おうとしていた彼等にとって、ニームが告げたベルンハルトの目的は己が存在意義を揺るがすものだった。

 

「伝承に謳われる1000年前のエルスリード王国の騎士ディハルトに始まり、直近では数百年前のバルディア中興の王レディン。この大陸に魔の影が差す度に『光輝の末裔』が現れ、聖剣を振るいそれを討ってきた。じゃが、それは何時まで続く? 『光輝の末裔』は傑物ばかりを生み出すワケではない。もしそうなら、バルディアはおろかエルスリードも滅んでおらんだろうからのう。そしてルシリス神の信仰も永遠とは限らん。信仰を失い忘れ去られたなら、神はその存在は維持できんのだ」

 

 朗々と語るニームに誰も言葉を返す者はいない。

 

 兄貴たちと共に星々を渡り歩いた彼は知っている。

 

 神は不滅ではなく、その力にも限界があるという事を。

 

「故に人は『光輝の末裔』とルシリス神の庇護から抜け出ねばならん。不測の事態で彼等が消えても魔族に負ける事が無いようにのう。その聖剣も陛下にとってはアルハザードが想定外の事態に陥った時のカウンター機構以上の価値はないのじゃ」

 

 熱く語るニームに『光輝の末裔』はただただ圧倒されるばかりであったが、しかし全く感銘を受けていない者達も同盟軍には存在した。

 

 そう、レスターとエルウィンの相棒たる魔術師へインである。

 

 『光輝の末裔』でもない二人は、その存在を否定されても屁とも思っていなかった。

 

 レスターはルシリスの代理人たるジェシカの付き人をしていたが、彼が恩義を感じているのはジェシカ本人であり神や『光輝の末裔』はさして重要視していないのだ。

 

「なんつーか、見た目に反して頭いいよな。あのヤロウ」

 

「そうだね。でも語る度に一々ポージングするから、言ってることが頭に入ってこないけど」

 

「つーか、どうせ敵なんだから相手の言葉なんて聞く必要ないよな」

 

「それもそっか。じゃあ、サクッとやっちゃおう。メテオっと」

 

「おい」

 

 まるでスナック感覚で放たれる隕石落下魔法。

 

 直撃すれば一軍をも壊滅に追いやる広域殲滅攻撃を何の呵責も無く放つヘインに、レスターは内心ドン引いた。

 

 大気を振るわせて、天空から堕ちてくる赤熱化した破壊の権化。

 

 いとも容易く放たれたエゲツナイ不意打ちを前に、『白竜看護師団』の運命は風前の灯火と思われた。

 

 だが────

 

「ふんはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 気合一閃、天空高く舞い上がったニームは両手を組んだまま頭頂部だけで隕石を受け止めたのだ。

 

「「「「「「「「なにぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」」」」」」」」」

 

「フハハハハハハハハハハッ! この程度のデブリなぞ、ボ帝との戦いで厭きるほど食らっておるわ! たかが石ころ一つ、ワシのマッスルで押し出してくれるっ!!」

 

 何気に死亡フラグをおっ立てながら、隕石との接地面を支点にギャンギャンと高速回転を始めるニーム。

 

 その奇行っぷりからは、先ほどまでの理知的な面は一ミクロンも感じることは出来ない。

 

「さあ行くぞ! これぞアドン・サムソン兄貴直伝────」

 

 隕石の温度と回転による摩擦熱から煙を上げていた頭頂部、そこから白い光が漏れる。

 

「メンズ・ビィィィィィィィィィィィィムッッッ!!」

 

 乾坤一擲、放たれた純白の極光は隕石を惑星外まで一気に押し上げた。

 

 同時に巨大質量とエネルギーの激突は膨大な余波を生み出し、それによって反帝国同盟と『白竜看護師団』の面々は一斉になぎ倒されてしまう。   

 

 後処理を終えて地上に戻ってきたニームの眼に映ったのは死屍累々と化した戦場。

 

 幸いな事に死人はいないようだが、このままでは全員一週間はまともに動くことはできないだろう。

 

「やれやれ、軟弱な事よ。だが、ワシも『慈愛』のニームと呼ばれる漢。倒れ伏した命を見捨てるような真似はせん。『ヒィィィィィィィィルッッッッ!!』」

 

 巨木の幹のような上腕二頭筋をアピールするポージングで放たれる青い光。

 

「ぎゃああああああああああっ!?」

 

「ぷあっ!? 沁みるぅ!!」

 

「うおっ!? オス臭ぇ!!」

 

 それは彼の二つ名を示すように敵味方分け隔てなく傷を癒していくのだった。

 

 

 

 

 その後に語ることはそれほど多くない。

 

 同盟軍の主要メンバーは治癒魔法の副作用で悶絶している内に捕縛され、帝国の裁判に掛けられることとなった。

 

 この際、一番の戦功者であるニームが褒章を返上して彼等の助命を嘆願した為に彼等は極刑に至らずに済む事となった。

 

 その後、アルハザードの封印が解除すると同時に儀式で疲労していたボーゼルはメンズ・ビームで消滅。

 

 出力を上げ過ぎた漢の極光は、傍らにあった魔剣までも消し飛ばしてしまった。

 

 こうして魔族の脅威が消え去ったエルサリア大陸はレイガルド帝国の手によって統一されることとなる。

 

 戦乱の終結を見届けたニームは白竜看護師団の職を辞した。

 

 その後の彼の足取りはようとして知れないが、ある村人は『光輝の巫女』を背に乗せたマッチョが空を飛んでいたのを見たという。

 




『慈愛』のニーム

クラス・ビルダー

A87 D76

部隊補正 A42 D34

スキル

メンズ・ビーム

ヒール(雄)          
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